• 検索結果がありません。

研究分野紹介  教 授 : 木下 賢吾

ドキュメント内 加齢医学研究所年次要覧2011-2012 (ページ 55-58)

 当研究分野は2010年11月に新しく設立され,近年急激な勢いで増加している生命関連データを 計算科学的手法で解析することにより,生物学的に意味のある情報を引き出すことを目指した研究 を行っている.一言で言えばバイオインフォマティクス研究にと言われるが,バイオインフォマティ クスと言っても対象は広い.我々の研究室では,特に遺伝子の機能推定を中心的な課題として,遺 伝子の発現量情報,タンパク質立体構造情報,タンパク質間相互作用や2012年から開始された東 北メディカルメガバンクプロジェクトと連携した大規模なゲノム解析等を行っている.具体的には,

1)遺伝子の共発現データベースの構築,2)立体構造情報を利用した機能未知タンパク質の機能推 定法の開発,3)大規模ゲノム解析,4)分子動力学シミュレーションなどを行っている.

現在の主な研究

1) 遺伝子の共発現データベースの構築

 DNAマイクロアレイの登場により,ほぼ全ての遺伝子の発現量を同時に定量化することができ るようになった.当初は各研究室内で数例のマイクロアレイデータを取得し,解析することで知見 を得ていた.しかし,現在は公共のデータベースに数万を超える発現量データが蓄積され,誰でも 利用可能な状態になっている.そこで我々は,遺伝子の機能的な関係を検出するのに非常に強力な 武器となる遺伝子の共発現に着目し,データベースCOXPRESdb

の開発を行ってきた(http://cox-presdb.jp).COXPRESdbでは,ヒト,マウス,ラットを中心とした11種の生物種を対象として,

発現量が利用できる遺伝子全てを対象として,我々独自の共発現度合いを利用して,共発現の強弱 を定量化して提供している.このデータベースでは,各遺伝子から共発現している遺伝子リストだ けでなく,共発現している遺伝子群のネットワークも提供している.ネットワークには,共発現だ けでなく,すでに知られているタンパク質間相互作用情報やKEGGを利用した文献ベースの知見 情報も加えることで,実験研究者が利用しやすいインターフェースの開発を行ってきた.現在も,

対象とする生物種を増やすなどの機能拡張を続けており,さらに信頼性の高いデータベースとなる ことをめざして,開発を行っている.

加齢制御研究部門 50

2) 立体構造情報を利用した機能未知タンパク質の機能推定法の開発

 タンパク質の立体構造はそのタンパク質の分子機能と密接に関係していると考えられている.そ こで,機能未知タンパク質の分子機能推定のために,データベース中に存在するタンパク質・リガ ンド複合体を利用して,機能未知タンパク質のリガンド結合部位の予測法の開発を行ってきた.従 来は,リガンド結合ポケットの類似性と原子配置の類似性などが利用されていたが,網羅的なリガ ンド結合部位の比較を行う事で,これら2つの構造の見方の違いが相補的であることを明らかにす ることができた.その結果,速度的に速く感度も高い原子配置の類似性でのスクリーニングとポケッ トの形状と物性の類似性を利用した絞り込みにより高精度に機能関連部位を検出する手法の開発を 行う事ができた.

3) 大規模ゲノム解析

 東北メディカルメガバンクと連携して大規模なゲノム解析を行う基盤構築を行ってきている.こ のプロジェクトでは被災地の医療支援と並行して未来型予防医学の実現を目指したゲノム解析を進 めている.ゲノム解析の規模は本年度末までに1,000人規模の全ゲノム解析を行い,将来的には8,000 人の全ゲノム解析を行うことで,病気に影響を与えると考えられている低頻度変異(レアバリアン ト)をリストアップすることを目指している.

4) 分子動力学シミュレーション

 分子レベルで起こっている現象を観るための強力な手段として分子動力学シミュレーション

(MD)法がある.MD法では,全ての原子をあらわに考え,それら原子が従うニュートン方程式を 数値積分することで挙動をシミュレートする.近年の計算機速度の向上により,μ秒オーダーのシ ミュレーションを1研究室の計算機資源で計算することが出来るようになってきた.これに伴って,

シミュレーション結果の解析に大規模な計算が必要になるという皮肉な状況になりつつある.これ に対して我々は,電圧依存性のカリウムイオンチャネルの合計5μ秒のシミュレーションを行い,

その結果を情報科学的に解析する手法の開発を行った.その結果,イオンチャネルのイオン通過の 分子的なメカニズムがイオン濃度によって変化することを見いだすことができた.現在は,電圧の 変化によるイオン透過のメカニズムを明らかにすべくさらなる解析を進めている.

イン・シリコ解析研究分野 51

2.  研究報告

1) 著書

 1. 木下賢吾,笠原浩太 ゲノム情報・タンパク質情報の大規模解析,宇川 彰,押山 淳,

小柳義夫,杉原正顯,住明 正,中村春木編,岩波書店・計算科学,2012年,2章担当

2) 英文論文

1. Murakami Y, Kinoshita K, Kinjo AR and Nakamura H. Exhaustive comparison and classification of ligand-binding surfaces in proteins, Proein Sci, in press

2. Tenno T, Goda N, Umetsu Y, Ota M, Kinoshita K, and Hiroaki H. Accidental Interaction between PDZ Domains and Diclofenac Revealed by NMR-Assisted Virtual Screening, Molecules, in press 3. Kasahara K, Shirota M and Kinoshita K. Comprehensive classification and diversity assessment of

atomic contacts in protein-small ligand interactions. J Chem Inf Model, 2013 Jan 28 ; 53(1): 241-8

4. Obayashi T, Okamura Y, Ito S, Tadaka S, Motoike IN and Kinoshita K. COXPRESdb : a database of comparative gene coexpression networks of eleven species for mammals. Nucleic Acids Res, 2013 Jan ; 41 (Database issue): D1014-20

5. Shirota M and Kinoshita K. Analyses of the general rule on residue pair frequencies in local amino acid sequences of soluble ordered proteins. Protein Sci, 2013 Mar 23

6. Kasahara K, Shirota M and Kinoshita K. Ion concentration-dependent ion conduction mechanism of a voltage-sensitive potassium channel. PLoS One, 2013 ; 8(2): e56342

7. Tsuchiya Y, Kinoshita K, Endo S and Wako H. Dynamic features of homodimer interfaces calcu-lated by normal-mode analysis. Protein Sci, 2012 Oct ; 21(10): 1503-13

8. Takadate T, Onogawa T, Fujii K, Motoi F, Mikami S, Fukuda T, Kihara M, Suzuki T, Takemura T, Minowa T, Hanagata N, Kinoshita K, Morikawa T, Shirasaki K, Rikiyama T, Katayose Y, Egawa S, Nishimura T and Unno M. Nm23/nucleoside diphosphate kinase-A as a potent prognostic marker in invasive pancreatic ductal carcinoma identified by proteomic analysis of laser micro-dissected forma-lin-fixed paraffin-embedded tissue. Clin Proteomics, 2012 Jun 27 ; 9(1): 8

9. Sutheeworapong S, Ota M, Ohta H and Kinoshita K. A novel biclustering approach with iterative optimization to analyze gene expression data. Adv Appl Bioinform Chem, 2012 ; 5 : 23-59

3) 和文論文

1. 共の遺伝子発現データの二次利用.大林 武,木下賢吾,Surgery Frontier. 2012, 19(2): 89-94.

加齢制御研究部門 52

3. 国際学会・海外での講及びセミナー等

ドキュメント内 加齢医学研究所年次要覧2011-2012 (ページ 55-58)