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国際学会での講演およびセミナー等

ドキュメント内 加齢医学研究所年次要覧2011-2012 (ページ 194-197)

1 研究部門紹介  教 授 : 安井  明

3.  国際学会での講演およびセミナー等

高齢者薬物治療開発寄附研究部門 196

医用細胞資源センター

担当教授 松 居 靖 久

1. 研究分野紹介

 センター長: 松居 靖久(兼)

 教   授: 松居 靖久

 助   教: 前田 郁麻,望月研太郎(兼)

 技 術 職 員: 合原 生恵

 当センターは,細胞バンク事業と,生殖細胞および多能性幹細胞の制御機構に関する研究を行っ ている.細胞バンクでは,腹水癌細胞株および,ヒト癌細胞,白血病細胞をふくむ培養細胞株,薬 剤耐性細胞株,ハイブリドーマなどを対象とした細胞バンク事業を行っており,本施設が保存する 細胞株のカタログをホームページ上に公開し,希望者へ供給を行っている.当センターが保有する 細胞株のほとんどは,ナショナルバイオリソースプロジェクトの一環として,理化学研究所バイオ リソースセンターと共有化され,それら細胞の供給は理化学研究所が行っている.また現在,新た な細胞株の収集および分譲の準備を推進している.さらに,保有する細胞株の品質管理としてマイ コプラズマ検査と除去,DNAフインガープリンティング,およびアイソザイム検査を行っている.

 また大災害に備えて研究途上にある生物試料をバックアップ保存する,全国的な取り組み(大学 連携バイオバックアッププロジェクト (IBBP))が平成24年度から始まった.岡崎の基礎生物学研 究所に保存施設を作り,全国の研究者のバックアップ保存用の生物試料を無料で保管する.医用細 胞資源センターは,IBBPの東北地区大学サテライト拠点としてこのプロジェクトに参加している.

 さらに当センターは,生殖細胞と多能性幹細胞に関する研究を行っている.生き物のからだを作っ ている全ての種類の細胞に変化し,さらに複雑な形態形成を引き起こすもととなる生殖細胞の能力 が,どのようなメカニズムによって獲得されるのかを解明する研究を進めている.生殖細胞は,胚 発生の初期段階で多能性幹細胞の一部から分化運命を決定され,始原生殖細胞として現れる.さら にその分化過程では,独特なエピジェネティックな変化などにより,個体発生全能性を獲得する.

こういったプロセスを制御する分子機構を解明することにより,私たちのからだの成り立ちを最初 にコントロールしている根本原理を解明し,またそれによって不妊や先天性異常の原因解明や治療 法につなげたいと考えている.

附属研究施設

附属研究施設 198

現在の主な研究

1) 多能性幹細胞と生殖細胞の違いを生み出している分子機構

 多能性幹細胞は,通常は外胚葉性の細胞に変化したのち,そのごく一部が始原生殖細胞に分化す るが,生殖細胞と多能性幹細胞は共通した遺伝子発現などの性質を共有し,直接的に生殖細胞へ変 化する可能性が考えられ,実際に未分化状態で維持されているES細胞で,転写制御因子Maxの発 現を低下させると,生殖細胞特異的遺伝子の発現が全ゲノム的に上昇することをみいだした.また MaxはES細胞においてヒストンH3K9メチル化酵素のG9a, GLPと複合体を作り,さらに生殖細 胞特異的遺伝子のプロモーター領域に結合することで,H3K9メチル化を介してそれら遺伝子の発 現を抑制することが明らかになった.この結果から,多能性幹細胞ではH3K9のメチル化が,始原 生殖細胞へ変化することを押しとどめているバリアとして働いていて,このバリアが解除されるこ とが,多能性幹細胞が始原生殖細胞へ変化するためのスイッチの一つとして働いている可能性が考 えられる.

2) 始原生殖細胞特異的遺伝子発現のエピジェネティック制御

 遺伝子の働きはDNAや,それと結合しているヒストンタンパク質のメチル化などの化学修飾に よって制御されていて,それをエピジェネティックな制御とよんでいる.始原生殖細胞では核の中 のDNAが全体的に低メチル化状態になるなどの,他の種類の細胞ではみられないエピジェネティッ クな状態をとっていて,それが生殖細胞の分化や個体発生全能性の獲得に必要であると考えられる.

そして当研究室では始原生殖細胞特異的遺伝子は,それらの発現制御領域のDNAの脱メチル化に 依存して発現上昇することを明らかにした.一方で,体細胞で発現する遺伝子など,始原生殖細胞 で発現しない遺伝子はDNA脱メチル化状態にあるが,転写開始点付近で転写を抑制するヒストン H3リジン27のメチル化が起こっていることを示した.この研究により,DNA脱メチル化と抑制 的なヒストンメチル化が巧妙に組み合わさることにより,始原生殖細胞での特異的遺伝子発現が保 証されている可能性を初めて示唆した.このようなエピジェネティック制御は,多能性幹細胞にお いて転写を一時的に抑制するメカニズムとして働いていると考えられている2価(bivalent)ヒス トン修飾と同様,生殖細胞が受精後の胚発生過程で,細胞ごとにさまざまな遺伝子を迅速に発現す ることを可能にするために生殖細胞に備わったメカニズムである可能性が考えられる.

3) 始原生殖細胞の分化に伴う増殖の制御機構

 始原生殖細胞で特異的に発現する遺伝子のスクリーニングを行い,その結果得られたLarp7が始 原生殖細胞の増殖に重要な役割を果たしていることを見いだした.Larp7は7SK snRNP複合体の構

医用細胞資源センター 199 成因子であり,この複合体は転写伸長を促進するP-TEFbタンパク質と結合し,その活性を抑制す ることにより細胞内での転写活性を調節する働きがある.このLarp7遺伝子をノックアウトしたマ ウス胚では,始原生殖細胞がある程度増殖した後,正常胚と比べて早い段階で細胞周期がG1期で 停止し,始原生殖細胞数が顕著に少ない状態になることから,正常な始原生殖細胞ではLarp7が G1期からS期への移行を促進する働きがあることがわかった.さらにLarp7を含む7SK snRNPの 働きにより始原生殖細胞内の活性型P-TEFbの量が減少すると,G1期からS期への移行を阻害す るCDK阻害因子(CDKI)遺伝子の発現が抑制され,これにより始原生殖細胞の細胞周期の進行 が保証されることを明らかにした.

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