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研修員報告 〈体操 / 体操競技 大島 杏子〉

ドキュメント内 スポーツ指導者海外研修事業_27年度帰国者 (ページ 166-184)

・8月13日~16日

 2015P&GGymnasticsChampionship(全米選手権) 視察

Ⅳ.研修概要

(1)研修題目の細目

①研修動機

②アメリカ体操界と日本体操界の違いについて 1)Level分け選手強化システム

2)クラブ間の移籍 3)体操人気

4)選手の食生活(食事制限)

③研修先ElevateGymnasticsAcademyについて 1)練習時間(通常練習・サマートレーニング)

2)練習環境

3)試合スケジュール(Level6~10)

4)練習体制の違い 5)コーチミーティング

④帯同・視察した試合、イベント

1)2015ElevateGymFest(Level7~10) 帯同

2)2015P&GGymnasticsChampionship(全米選手権) 視察 3)InvitesyoutotheTeamBanquet(試合報告) 研修先イベント 4)2015SummerOlympic(発表会) 研修先イベント

(2)研修方法

 ElevateGymnasticsAcademyにて、現地のコーチと共にジュニア・シニア選手の 指導を行いつつ、時々一歩引いたところから現地コーチたちの指導法を研修する。主 にElevateGymnasticsAcademyの一番上の班の選手たち(Level 7~10)の指導を 行い、クラブの帯同コーチとして試合について行く。8月中旬より一つ下の班の選手 たち(Level 6~7)の指導も行う。研修先のクラブの事情によりホームステイが出 来なかったため、研修中はアパートで暮らし、車でクラブまで通う。また、ビザの関 係上、そして英語の語学向上指導を受けるため、語学学校へも通う。

(3)研修報告

①研修動機

 私がアメリカでの研修を希望したことにはいくつか理由がある。まず、選手の頃

(北京オリンピック後)より引退後はアメリカへ行き、強さの秘訣はもとより、幼 少期にどのような練習をしてきているのかについて、とても興味があった。また、

引退後すぐに、今回の研修先であるElevateGymnasticsAcademy(当時Byers GymnasticsCenterElkGrove)にて1ヶ月半コーチングをさせていただいた経験 もあり、更に学びたいと感じたことが研修動機の1つ目の理由である。

平成   26 年度・短期派遣(体操/体操競技)

 次に、2008年の北京オリンピック以降、日本女子体操も8強の常連となりつつあ る。しかし、4強ないしメダルを獲得出来るようになるためには、まだまだ大きな 差があるのも事実である。その差をいかにして縮められるかのヒントを、2012年の ロンドンオリンピック団体・個人総合優勝国であるアメリカで学びたいと感じたこ とが研修動機の2つ目の理由である。

 そして、3つ目で今回の研修の一番の強い動機として、現在のアメリカ女子ナショ ナルチームの跳馬の指導者であるMasWatanabe氏の下、基礎からの技術指導を学 びたいと思い、今回の研修先を希望した。また選手時代、MasWatanabe氏の指導 を受けたことがあったことも、今回の研修先を希望したもう一つの理由である。

②アメリカ体操界と日本体操界の違いについて

 アメリカ体操界と日本体操界において大きな違いといえば、細かくLevelが分 けられていて、6歳から試合に出られることではないだろうか。アメリカでは Level1から10までのLevel(JO=JuniorOlympicルール)で試合が出来るのに対し て、日本ではAクラス・Bクラス・Cクラス(JOルール)の3つのLevelと、とても 少ない。

 Level1から10のルールはアメリカ独自のJOルールであり、Level1から5まで は規定演技、Level6から10は自由演技になっている。また各Level間に大きな差 がないため、選手は無理なく次のLevelに進んでいけるようになっている。ただ、

Level8から9、Level 9から10は特別要求が厳しくなるため、中にはLevel8で止 まってしまう選手や、2シーズン同じレベルで試合に出場することになってしまう 選手もいるのも事実である。しかし、こうして細かくLevelを分けるのは、体操人 口の多いための対応であるのだろうと私は思う。

研修先のクラブ Elevate Gymnastics Academy

1)Level分け選手強化システム

 Level1から5までは規定演技を行い、Level6から10は自由演技を行うというこ とを前述したが、私自身、今回の研修ではLevel6から10までの選手たちの指導兼 研修をしていたため、このことについて明記したいと思う。

 Level6から10の大まかなルールや、主な演技内容・特別要求は表1で示す。

 表にも示しているように、Levelが上がるごとに特別要求が難しくなっていって いる。JOルールのため、10.00満点からの採点にはなっている。Level6から8まで は、演技のスタートバリューが10.00満点からになっていて、特別要求が満たされ ていれば常に10.00満点から採点される。しかしLevel9、10のスタートバリューは 9.7、9.5と、それぞれ0.30と0.50の組み合わせボーナスを取り入れなくてはならない。

特別要求と組み合わせボーナスが満たされて、初めて10.00満点から採点をされる ルールになっている(アテネオリンピックまでは国際大会もこの採点方法が適応さ れていた。しかしオリンピック後のルール変更に伴い、2006年の世界選手権より今 のルールに変更になっている)。JOルールを10.00満点の採点法にすることにより、

難易度の高い技に重点を置いた演技を実施するのではなく、美しく正確な演技を実 施することに重点を置かれるようになる。実際、試合を行っていても、無理をして 難易度の高い技を行っている選手は多くなかった。しかし、Eliteを目指している 選手やクラブは、無理をしてでも難易度の高い技を演技構成に組み入れてきていた。

FIGルールと分けてJOルールが作られていることも、体操人口の多さに繋がってい るのではないだろうか。

2)クラブ間の移籍

 日本体操界ではクラブ間の移籍は大きな問題があり、移籍後1年間は競技会に出 場出来ない等の決まりがある。それに対して、アメリカではクラブ間の移籍は大き な問題ではなく、頻繁に行われている。アメリカ人の考えとして、“自分の求める 指導力のあるコーチの下へ行き、指導を受けることが当たり前”という考えがある ようで、クラブ間の移籍は当たり前のように行われているようだった。実際、私の 研修中にも選手の移動があった。また、帰国直前にもクラブの移籍を考えている選 手が、何日間か体験で練習に来ていたほどである。

 日本にも、クラブ間の移籍がそれほど大きな問題ではないため、自分の求める指 導力のあるコーチがいるクラブへ移籍し、すぐに競技会に出場することが出来る競 技も幾つかあるようである。しかし、体操競技の場合、大学進学や親の転勤等、円 満に辞めない限り、後々難しい問題が出てきてしまうことも少なくない。例えば、

元のクラブの責任者からサインをもらうことが出来ず、1年間競技会に出られなく なってしまう等である。これは選手を取り巻く環境に問題があり、難しいようであ る。しかし、こうした問題を少しずつでも解決し、体操界全体で協力していかなけ れば、日本女子体操が世界でメダルを獲れるようになるには難しいように私は思う。

まずは、選手を取り巻く環境から少しずつでも変えていくべきであると、私は考え る。

平成   26 年度・短期派遣(体操/体操競技)

表1 Level 6~ 10 ルールまたは主な演技内容と特別要求

Level 6 Level 7 Level 8 Level 9 Level10

A=0.10 B=0.20 C=0.30

5A、1B 5A、2B 4A、4B 3A、4B、1C 3A、3B、2C

StartValue Bonus

10.0 ボーナス無し

10.0 ボーナス無し

10.0 ボーナス無し

9.70

組み合わせボーナス 0.30

9.50

組み合わせボーナス 0.50

A難度とB難度のみ 段違い平行棒のみ1C バー間の空中局面の移 動技は禁止

その他のC、D、E難 度以上も禁止

A難度とB難度のみ 段違い平行棒→振り上 げ 倒 立1/2ひ ね り、 ホ ンテン倒立、シュタル ダー倒立、ふっと倒立 等は可能

その他のC、D、E難 度以上も禁止

A難度とB難度のみ 段違い平行棒→振り上 げ 倒 立1/2ひ ね り、 ホ ンテン倒立、シュタル ダー倒立、ふっと倒立 等は可能

平均台・ゆか→ダンス 系要素のみC難度は可 能

その他のC、D、E難 度以上も禁止

A、B、C難度のみ 段違い平行棒→1回ひ ねり系、1つのDまた はE難度は可能 平均台・ゆか→ダンス 系要素のみDまたはE 難度は可能

制限なし

跳馬 転回跳び(10.0) 転回跳び(10.0) 主な演技内容 屈身ツカハラ跳び等

主な演技内容 ユルチェンコ~屈身跳 び等

主な演技内容 ユルチェンコ伸身、半 分ひねり、1回ひねり、

1回半ひねり、転回前 宙等

段違い 平行棒

特別要求 1.振り上げ

※最低水平まで 2.バー移動 3.グ ル ー プ 3、 6、

7から1つ 4.終末技

※最低A難度

特別要求 1.振り上げ

※最低45°以上 2・3.2つのバーに近

い回転系の技

・B難度

・グループ3、6、7 から

4.宙返りの下り技

※最低A難度

特別要求 1.バー移動

※最低1回 2・3.2つのB難度

・空中局面を伴う技

・グループ3、6、7 から

4.宙返りの下り技

※最低A難度

特別要求 1.バー移動

※最低2回

2.B難度以上の空中 局面を伴う技 3.C難度以上のもう

一つの空中局面を 伴う技

4.宙返りの下り技

※最低B難度

特別要求

1.空中局面を伴う技 2.B難度以上のもう 一つの空中局面を 伴う技

3.C難度以上のひね り系の技 4.宙返り下り技

※C難度以上

平均台

特別要求

1.1つのアクロバッ トグループ5、6、

7から

2.180 ゜の リ ー プ ま たはジャンプ 3.360 ゜ターン 4.A難度以上の終末

制限時間:1分15秒

特別要求

1a.アクロバットシ リーズ 空中局面を伴わな いAまたはB難度 1b.空中局面の技 2.180 ゜の リ ー プ ま

たはジャンプ 3.360 ゜ターン 4.A難度以上の終末

制限時間:1分20秒

特別要求

1.1つの空中局面を 伴う技を含む2つ のアクロバットシ リーズ

2.180 ゜の リ ー プ ま たはジャンプ 3.360 ゜ターン 4.B難度以上の終末

制限時間:1分30秒

特別要求

1.2つの空中局面を 伴うアクロバット シリーズ 2.180 ゜の リ ー プ ま

たはジャンプ 3.360 ゜ターン 4.B難度以上の終末

制限時間:1分30秒

特別要求

1.C難度以上の技を 一つは含む2つの 空中局面を伴うア クロバットシリー ズ

2.180 ゜の リ ー プ ま たはジャンプ 3.360 ゜ターン 4.BまたはC難度以

上の終末技

制限時間:1分30秒

ゆか

特別要求

1.1つのアクロバッ トシリーズ 2.1つの宙返り(前

方/後方/側方)

3.2つの異なるリー プ

4.360 ゜以 上 の タ ー ン

制限時間:1分15秒

特別要求

1.1つのアクロバッ トシリーズ 2.空中局面を伴う2

つ以上の前方系ア クロバットシリー ズ

3.2つの異なるリー プ

4.360 ゜以 上 の タ ー ン

制限時間:1分30秒

特別要求

1.2つの空中局面を 伴う1つのアクロ バットシリーズ 2.3つの異なる宙返

3.2つの異なるリー プ

4.A難度以上の宙返 りの終末技

制限時間:1分30秒

特別要求

1.2つの空中局面を 伴う1つのアクロ バットシリーズ 2.3つの異なる宙返

3.2つの異なるリー プ

4.B難度以上の宙返 りの終末技

制限時間:1分30秒

特別要求

1.2つの空中局面を 伴う1つのアクロ バットシリーズ 2.3つの異なる宙返

3.2つの異なるリー プ

4.C難度以上の宙返 りの終末技

制限時間:1分30秒

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