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研修員報告 〈サッカー 山尾 光則〉

ドキュメント内 スポーツ指導者海外研修事業_27年度帰国者 (ページ 108-117)

Ⅳ.研修概要

(1)研修細目

①1.FCReimsbachでの育成年代の指導及び環境についての研修

②FCSchalke04の育成年代の指導及び環境についての研修

③DFB(ドイツサッカー協会)の選手育成についての研修

④ドイツ代表戦(対アイルランド戦)の試合視察

⑤UEFAChampionsLeagueの視察

⑥Bundesligaの視察

(2)研修方法

 SaarlandのReimsbachに拠点を置く1.FCReimsbachを通常の研修先とし、年間を 通して育成年代への指導を研修、実践した。また、その指導環境についても研修した。

 特別研修としては、Bundesliga所属のFCSchalke04において、プロチーム下部組 織の育成年代への指導についての研修や、SaarländischerFussballverbande.v.(ザー ルラントサッカー協会)への訪問を数回行い、DFB(ドイツサッカー協会)が行っ ている育成年代への取り組みについても研修を行った。また、DFB主催の講習会に も参加し、その取り組みについてより深く研修した。

 それと共に、現在の世界のトップレベル、トレンドを知るためにも可能な限り、ス タジアムに足を運び試合観戦を行った。

(3)研修報告

①1.FCReimsbachでの育成年代への指 導とその環境についての研修

1)1.FCReimsbachについて

 SaarlandのReimsbachと い う 人 口 2,000人程の村にあるアマチュアクラ ブである。

 しかし、クラブ会員は、総勢284人

(2015年現在)在籍しており、この近 隣では、非常に規模の大きなクラブで ある。トップチームはドイツ6部リー グに所属して、セカンドチームはドイ

期   間 研 修 先 内   容

2015年4月13日 SaarländischerFussballverbande.v.

(ザールラントサッカー協会)

DFB(ドイツサッカー協会)の選手 育成の方策

2015年4月30日~

2015年5月10日 SportschlHennef DFB主催Coaching&Technical DevelopmentCourseに参加 2015年6月8日 SaarländischerFussballverbande.v.

(ザールラントサッカー協会)

DFB(ドイツサッカー協会)の選手 育成の方策

1.FC Reimasbachのピッチとクラブハウス

平成   26 年度・短期派遣(サッカー)

ツ9部リーグに所属している。施設も、天然芝のグランド1面と人工芝のグランド 1面の2面のピッチと大きなクラブハウスを所有している。クラブハウスは、サッ カー以外のイベントに利用されていて、この村のスポーツのシンボル的な存在と なっている。

2)選手のカテゴリー分け

 ドイツでは以下の様に、育成年代の選手を2歳刻みでカテゴリー分けをしている。

リーグ戦などの公式戦も、そのカテゴリーで行われている。1.FCReimsbachもそ れにならってカテゴリー分けをし、トレーニング、試合を行っている。また、各カ テゴリーの在籍人数も、以下の表に示す。

1.FC Reimsbach カテゴリー分けと在籍人数

カテゴリー 年齢 在籍人数

A-Jugend 18 ~ 19歳 17人 B-Jugend 16 ~ 17歳 19人 C-Jugend 14 ~ 15歳 22人 D-Jugend 12 ~ 13歳 32人 E-Jugend 10 ~ 11歳 16人 F-Jugend 8~9歳 17人 G-Jugend 7歳以下 22人

 

3)試合環境について

 試合時の選手数、ピッチサイズ、試合時間及び審判の人数は以下の通りである。

 選手数やピッチサイズは、そのカテゴリーの年齢に適した環境で行われていると 感じた。ピッチサイズが、大きすぎたり狭すぎたりする事なく、子供たちが体力、

技術や他の選手との関わりを獲得しやすい大きさ、サッカーを楽しめる大きさに なっている。また、選手数についても同様で、選手全員が攻守に関わりが求められ る人数で行われていた。

 その結果、一人当たりのボールを触る回数やゴール前の攻防が多くなり、その中 で選手は自然と多くを学んでいた。

 審判についても、1人審判制では当然、スピーディーな展開に審判が付いて行け ず、プレーについて判定しきれない場合もあるが、選手がフェアプレー精神に則っ

1.FC Reimsbach 各カテゴリーの試合オーガナイズ

カテゴリー 試合人数 ピッチサイズ 審判人数

A-Jugend 11対11 105m×68m 1人

B-Jugend 11対11 105m×68m 1人

C-Jugend 11対11、9対9 105m×68m、68m×52m 1人

D-Jugend 9対9 68m×52m 1人

E-Jugend 7対7 54m×40m 1人

F-Jugend 7対7、6対6 40m×30m 無し

G-Jugend 6対6、5対5 大会規程による。 無し

て自分たちで判断して、特に大きな問題もなく試合を円滑に行っていた。

4)指導状況

 基本的に各カテゴリーを1名の指導者が担当している。各指導者ともに、自分の 仕事を持ちながら選手への指導を行っている。平日の夕方にトレーニングを行い、

週末にリーグ戦やトレーニングマッチを行うのが、シーズン期の1週間の流れであ る。

 この規模のクラブ、いわゆるアマチュアクラブでは、このように指導者がサッカー の指導だけで収入を得ているのではなく、自分の仕事を持っているのが殆どである。

 彼らの行うトレーニングを観察して、彼らとコミュニケーションを取って、指導 や選手育成について感じたことがいくつかある。

 ま ず、 指 導 者 は、 選 手 の 自 主 性 に 任 せ な が ら も、 選 手 の 将 来 を 考 え て、

ピ ッ チ 内 の し つ け も、 ピ ッ チ 外 の し つ け も 大 事 に し て い る と い う こ と で ある。

 サッカーというチーム競技の中で、選手に与えられる自由とチームの中での役割 を理解させることを、重要視していた。これは、ドイツ人の国民性であるように感 じたが、集団の中での個人の責任の所在を明確にすることを常に求めていた。

 次に、試合や練習時に選手に過度のプレッシャーを与えていないことである。こ れは、指導者が目先の勝ちにこだわり過ぎないスタンスを持って指導しているから であろうと感じた。もちろん、試合などで厳しい要求をすることもあるが、勝利至 上主義でない考え方を根底に持っているから、選手に対するネガティブなコーチン グは皆無であった。

 その結果か、選手は自分のイメージを持って伸び伸びとプレーしていた。コーチ にサッカーをさせられている感はなく、自分で自主性を持ってサッカーというス ポーツをしていた。当然ミスもあり、上手くいかないこともあるが、自分を表現す るためにミスを恐れず積極的にサッカーに取り組んでいた。

 以上の事を、各指導者が強く意識して指導を行っているのではなく、長く続いて いるクラブの慣習、彼らのサッカー、指導に関する考え方が、自然とこのような指 導法にさせていると感じた。

5)指導の実践

 実際に、私もこちらに来て3ヶ月を経過した頃から、F-Jugend、G-Jugendを担 当させてもらい、継続的に指導を行った。その後、各カテゴリーの指導者が、仕事 などで練習に来ることができない場合には、私がその代わりに指導することとなり、

結果的には、A-Jugendを除くB-Jugend ~ G-Jugend全てのカテゴリーを指導させ て貰った。

 指導を実際に行って、まず感じたことは、どのカテゴリーでも共通することであ るが、シュート、ボールを蹴るということに関しては、日本人の同年代の子供たち と比較して考えると、相対的に上手であるということである。一番長く指導した F-Jugendについては例をあげると、9歳以下の子供たちなので、まだ上手くボー

平成   26 年度・短期派遣(サッカー)

ルを扱うことは出来ないが、ことボールを蹴るということになると、ボールを強く ミートして蹴ることができる。年齢が低い段階から、強くボールを蹴るということ の意識が強いので、身体全体を使い自分なりにより良いフォームを獲得していくよ うだ。もちろん、大人の試合などをよく見て真似できているのもあるだろうが、と にかく、ボールを強く蹴るという回数自体が多いとも感じた。どの年代の選手たち も、シュート練習を非常に好み、練習前も個人でシュート練習を行う。時には、コー チにもシュート練習を催促してくる程である。こういったことがキック、シュート の上手さに、繋がっているようだった。また、それに伴ってゴールキーパーを、や りたがる選手も多い。ドイツ代表ゴールキーパーのManuelNeuerの活躍もあると 思うが、それ以前に、ゴールを決めることと、ゴールを守ることが、サッカーの一 番の重要な部分であるというドイツ人のサッカーへの考え方が象徴されているよう に感じた。

 また、もう一つ感じたことは、どのカテゴリーの選手でも、自分のプレーに対し て、常に自分の意見を持っているということである。低年齢の子供たちの場合は、

拙い判断に伴ってのプレーの場合もあるが、それでも自分の意見を持って周りの選 手、指導者に主張することができる。よって、指導する際には、選手が納得するた めの論理的なコーチングやそれを理解しやすく説明するための、コミュニケーショ ンスキルが日本以上に必要であると感じた。

6)総括

  通 常 研 修 の 先 と し て、 こ の1.FC Reimsbachを選択したことにより非常 に実りのある研修を行うことができ た。多くのカテゴリーの練習見学やク ラブの全ての施設を自由に使用させて 貰い、深く研修することができた。

 この場を借りて非常にお世話になった 1.FCReimsbachのPräsidentNorberd Buchheit氏 とVizePräsidentMichael Buchheit氏に感謝申し上げたい。彼ら には、サッカーの部分だけではなく、

衣食住の全てにおいて助けて頂いた。

 彼らのようにアマチュアクラブの運営者たちは、その運営を行うにあたって報酬 を得ていない。彼らも自分の仕事をしながらクラブ運営を行っている。Saarlandだ けでもこのようなアマチュアクラブは、300以上ある。そのことは、子供たちも、

そして大人たちもであるが、自分のレベルに応じてサッカーをする環境が、いつで も身近にあるということである。彼らには、平日に練習を行い、週末に試合を行う というルーティンが、身体に染み込んでいる。サッカーをプレーしない人たちも、

週末にはどこかの試合を見に行き、みんなで試合について話し合う。こういったこ とが、サッカーが文化になっているということなのかと感じた。ここでの研修で、

1.FC Reimasbachのピッチとクラブハウス

ドキュメント内 スポーツ指導者海外研修事業_27年度帰国者 (ページ 108-117)