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研修員報告 〈ハンドボール 高橋 豊樹〉

ドキュメント内 スポーツ指導者海外研修事業_27年度帰国者 (ページ 38-60)

・2014GoldenLeagueinデンマーク視察

・2014女子欧州選手権inハンガリー視察

・2014Men’sEHFChampionsLeagueFinal4視察

・TopCoachSeminar2013受講

・EHF"Rinck"ConventionOpenMasterCoachandLicensingCourse  (20141stmodule)受講

・EHF"Rinck"ConventionOpenMasterCoachandLicensingCourse  (20142ndmodule)受講

・2014GlobalCoachHouseinスコットランド参加

・スウェーデン 男子代表監督のトレーニング視察及び意見交換

・モンテネグロ 女子代表監督のトレーニング視察及び意見交換

・ドイツ THWキール、フレンスブルクハンドヴィット、フクセ・ベルリントレー ニング視察

・ハンガリー ベスプレム トレーニング視察及び意見交換

・イングランド男子U21代表トレーニング視察及びコーチとして参加

・INSEP視察

・AustrariaEuropaTrainingCenter視察

・LondonOlympic会場視察及び日本スポーツ振興センターロンドン事務所訪問

Ⅳ.研修概要

(1)研修題目の細目

①デンマークハンドボール協会の全カテゴリー(A代表・ジュニア代表・ユース代表)

のナショナルチームのトレーニングを視察し、世界トップレベルの現状を把握する

②デンマークハンドボール協会主催のタレントトレーニングでのタレント育成方法、

コーチング方法の習得

③デンマークハンドボール協会主催のコーチングライセンス講習会でのコーチ養成方 法、養成プログラムの習得

④AarhusHandballAcademyにて選手強化及びコーチング研修

⑤SKAarhusにて選手強化及びコーチング研修

⑥VRIHandballClubにて選手強化及びコーチング研修

(2)研修方法

①デンマーク国内各地で行われる男子・女子全カテゴリーのナショナルチームのト レーニングの視察及び意見交換を行った。

②デンマーク国内各地で行われるタレントトレーニングにオブザーバーとして参加 し、デンマークのタレント育成の現状の把握及び意見交換を行った。

③デンマーク国内各地で行われるコーチングライセンス講習会に参加し、デンマーク ハンドボール協会のコーチ養成プログラムを学んだ。

④AarhusHandballAcademyにて選手強化及びコーチング研修

⑤SKAarhus(女子エリートリーグ)にてコーチング研修及び外部コーチとして選手

平成   25 年度・長期派遣(ハンドボール)

強化に関わった。

⑥VRIHandballClub(女子3部)でヘッドコーチとして一年間チームを指揮した。

Ⅴ.研修報告

(1)デンマークと日本の基本情報比較

《デンマーク》

人  口 約567万人(2015年デンマーク統計局)(北海道よりやや多い)

     ※Aarhus 約32,6万人

面  積 4万2,923㎢(2015デンマーク統計局)(九州とほぼ同じ)

     http://www.dst.dk/en 競技人口 108,257人

クラブ数 856(DanmarksIdrætsforbund)http://www.dif.dk/da

《日本》

人  口 1億2,695万人(2015年総務省統計局)

面  積 37万7,962㎢(2015年総務省統計局)

競技人口 92,670人(公益財団法人日本ハンドボール協会)

チーム数 4,787(公益財団法人日本ハンドボール協会)

0 10000 20000 30000 40000 50000

0 - 12 13 -18 19 - 24 25 - 59 60

-Danmarks Idrætsforbund (2015)より作成 表1 デンマークハンドボールの年代別競技人口

0 10000 20000 30000 40000 50000

公益財団法人日本ハンドボール協会(2013)より作成 表2 日本ハンドボールのカテゴリー別競技人口

「TheDanishWay」

 デンマークにおいてハンドボール競技は国技としての地位を占めるほど、国民に浸 透しているスポーツである。ハンドボールをプレーする上で欠かすことのできない ハーピクス(松ヤニ)をどの体育館に行ってもほぼ100パーセント使用できる環境が 整備されている。そんなデンマークにおけるハンドボール競技を統括し、代表する団 体がデンマークハンドボール協会(DHF)である。

(2)DHFの歴史及びデンマーク代表の競技成績と推移

 DHFは1935年6月2日に創立された組織であり、デンマークにおけるハンドボー ルの普及・発展、及びハンドボールを通じて全ての人々にポジティブな経験を感じて もらうこと、国際大会におけるナショナルチームの活躍などを目的としている。場所 はコペンハーゲンから車で約20分のBrøndbyに位置している。DHFは大きく、ユト ランド半島ハンドボール協会(JHF)、フュンハンドボール協会(FHF)、東地域ハン ドボール協会(HRØ)の3地区の地方協会に分けられる。ユトランド半島ハンドボー ル協会(JHF)は8つの地区に細分化され、それぞれで普及び強化が図られている(図 1)。DHF全体で約100,000人のメンバーが登録されており、これはヨーロッパの中で ドイツ、フランスに次ぐ3番目に大きい協会となる。

写真1 デンマーク代表に声援を送る多くのサポーター

図1 デンマークハンドボール協会の各地方協会

JHF FHF HRØ

平成   25 年度・長期派遣(ハンドボール)

 1992年までデンマークハンドボール協会全体で国際大会におけるメダル獲得数は わずか2個(1962年女子世界選手権準優勝、1966年男子世界選手権準優勝)であった。

再び国際大会でメダルを獲得する1993年まで約30年間のギャップがあったが、そこ から女子の快進撃が始まることとなる。

①女子デンマーク代表における歴史

 デンマークハンドボールの歴史を語る上で欠かすことのできないことは女子デン マーク代表の歴史である。

 1993年から2004年までの間にオリンピックで3回の優勝、世界選手権で優勝、準 優勝、3位を一度ずつ勝ち取り、ヨーロッパ選手権では3回の優勝、2回の準優勝 を経験してきた。デンマークにおいて女子代表の歩んできた歴史はとても輝かしい ものである。

 このように輝かしい歴史を歩んできた女子デンマーク代表であるが、2004年アテ ネオリンピックでの優勝以降、国際大会のメダルから遠ざかることとなる。そこか ら2013年の世界選手権で3位になるまでその道のりはとても長いものであった。

②男子デンマーク代表における歴史

 女子デンマーク代表は2004年アテネオリンピック優勝以降国際大会におけるメダ ルから遠ざかることとなる。その間に国際大会の舞台で頭角を現したのは男子デン マーク代表であった。

 1966年男子世界選手権準優勝から約40年経った2002年にヨーロッパ選手権3位と なり、現在の2015年に至るまでの間に世界選手権準優勝2回、3位1回、ヨーロッ パ選手権優勝2回、準優勝1回、3位3回と、オリンピック以外の国際大会におい て高い確率でメダルを獲得している。

表3 主要国際大会における女子デンマーク代表の戦歴

大会名 優勝 準優勝 3位

1993世界選手権

1994ヨーロッパ選手権

1995世界選手権

1996ヨーロッパ選手権 1996オリンピック

1997世界選手権

1998ヨーロッパ選手権

2000オリンピック 2002ヨーロッパ選手権

2004ヨーロッパ選手権

2004オリンピック

③1993年から2004年にかけての女子デンマーク代表の成功要因

 1993年から2004年にかけて女子代表が国際大会で非常に強いチームとなった要因 は3つある。以下の3つのポイントは各代表合宿の視察の際でのインタビューにお いて、現女子ジュニア代表監督HeineEriksen氏、現女子ユース代表監督Fleming DamLarsen氏が共通して言及していた内容をまとめたものであり、入手した資料 から筆者が考察を行ったものである。

 1990年代の女子代表を支えた天才的プレーヤーとはAnjaAndersenのことであ る。彼女のプレーは非常に攻撃に優れ、大胆、それでいてスキルフルなものであった。

そのスタイルは当時のハンドボールの考え方や行動に囚われることなく、彼女の発 想のままに自由にプレーしていた。ボールと友達という表現で賞賛される選手がい るが、それはまさに彼女のことで、唯一無二のプレーヤーであった。しかしながら その一方で、彼女の持ち合わせる気性の荒さから、試合中に追放となり、試合自体

表4 主要国際大会における男子デンマーク代表の戦歴

大会名 優勝 準優勝 3位

2002ヨーロッパ選手権

2004ヨーロッパ選手権

2006ヨーロッパ選手権

2007世界選手権

2008ヨーロッパ選手権

2011世界選手権

2012ヨーロッパ選手権

2013世界選手権

2014ヨーロッパ選手権

1.天才的プレーヤーの存在 2.優秀な指揮官の存在

3.タレント発掘・育成により質の高いプレーヤーが供給できた

写真2 Anja Andersen(左)とUrlik Wilbek氏(右)(DHFより提供)

平成   25 年度・長期派遣(ハンドボール)

を壊してしまうことも多くあった。そ のため彼女が代表に定着した1989年か らも依然、代表チームが国際舞台でメ ダルを獲得することはなかった。そん な矢先の1991年、代表監督に就任した のが当時デンマークの強豪ViborgHK を指揮していたUrlikWilbek氏であ る。彼の特徴として、選手のパーソナ リティーを独自のフォーマットで分析 した上でコーチング方法を変化させ、

選手をモチベートするというものがあ る。この方法は現在のデンマーク代表 やデンマークリーグのチームでも採用

されている方法で、当時としては画期的なアプローチの仕方であったことは間違い ない。

 UrlikWilbek氏就任2年後の1993年に開催された世界選手権から女子デンマーク 代表の快進撃が始まることとなるが、タレント世代となる女子ジュニア代表(U20)

の強化はその数年前から始まっていた。1987年から1999年の約10年間に金メダル1 個、銀メダルと銅メダルを2個ずつ獲得している。

 この結果は、DHFが1980年代に国際競技大会におけるメダル獲得を目的とした タレント発掘・育成を促進したことによるものである。タレント世代の国際大会で も多くのメダルを獲得できるようになったことで、質の高い選手をナショナルチー ムに供給することが可能となった。

 1990年代の女子デンマーク代表の躍進は「天才的なプレーヤー」「優秀な指揮官」

「タレント発掘・育成」の3つの要素が合わさったことにより実現可能となった。

 UrlikWilbek氏は1996年アトランタオリンピック優勝後の1998年に監督を退くこ ととなるが、後のヨーロッパハンドボール協会へのインタビューで「1994年に最初 のヨーロッパ選手権を優勝できたことは私にとっても、女子デンマーク代表にも大 きなターニングポイントとなった。あの大会で我々は“勝つとは何か”というこ と学んだ。そして勝者のメンタリティを手に入れた瞬間でもあった」と答えてい

写真3  DHF主催トップコーチセミナーにおい てUrlik Wilbek氏による選手分析フォー マットの説明

表5 1987年から1999年における女子世界ジュニア選手権上位3カ国

開催年

1987 ソビエト連邦 デンマーク 東ドイツ

1989 ソビエト連邦 韓国 ブルガリア

1991 ソビエト連邦 韓国 デンマーク

1993 ロシア ブルガリア 韓国

1995 ルーマニア デンマーク ノルウェー

1997 デンマーク ロシア ルーマニア

1999 ルーマニア リトアニア デンマーク

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