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研修員報告 〈フェンシング 長良 将司〉

ドキュメント内 スポーツ指導者海外研修事業_27年度帰国者 (ページ 184-194)

続的に選手を輩出し続けてはいるものの、メダル獲得や入賞といった好成績にはほど 遠い結果が現状である。

 2007年よりサーブル種目においても外国人コーチを招聘し強化を図っているが、日 本人選手の技術レベルの把握や言語、文化の違いでのコミュニケーションを構築する にあたり時間が掛かり、なかなか合理的な強化が図れず好成績に恵まれていない。

 そこで、2020年東京オリンピックでのメダル獲得を目指すため、サーブル種目の世 界トップレベルのコーチが在籍しているアメリカ合衆国オレゴン州にあるOFAにて 技術や指導理論を学ぶと共に、日本人選手に合った指導方法を模索し日本のサーブル 種目の普及、発展に貢献できるよう研修するのが目的である。

 研修内容は下記のとおりである。

①幼少期又は初心者から世界トップ期までの指導理論  OFAはプライベートクラブであるため、

幼少期又は初心者から世界トップ選手に至 るまで同じコーチから技術指導を受けてい る。

 OFAに所属している世界トップ選手は、

アメリカ代表だけではなくメキシコやポー ランド、アジア各国から渡米し、世界トッ プコーチの指導を受けている。

 日本は、フルーレ種目においては全国 に数カ所のプライベートクラブはあるが、

サーブル種目においては皆無に等しく幼少 期からサーブルを始める選手がいないのが 現状である。

 OFAのような一貫指導をしているクラブで、どのような指導理論を持って選手 を育成しているのかを学ぶ。

②世界トップ選手への技術指導及びサポート

 OFAはオリンピックメダリストを何人も輩出しているため、世界トップ選手に 必要な要素(フェンシングの専門技術、心理サポート、フィットネス等)をどのよ うにアプローチしているかをコーチ及び選手から学ぶ。

③女子サーブルUSA代表合宿サポート及び国内大会の視察

 世界ランク1位(2015.7現在)であるアメリカ女子サーブル代表合宿をOFAに て定期的に行っているため、アシスタントコーチとして世界トップチームから直に 多くのスキルを吸収する。

④日本ジュニア代表男子サーブルW杯帯同

 日本ジュニア代表チームとワールドカップ(メキシコやアメリカ合衆国アリゾナ

OFA外観

平成   26 年度・短期派遣(フェンシング)

州)に帯同。男子ジュニアの世界レベルを把握すると共に日本人選手達の指導及び サポートを行う。

(2)研修方法

 アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド市 にあるOFAを拠点とし、OFAヘッドコーチ 及び女子サーブルアメリカ代表ヘッドコーチ であるEdKorfantyのもと研修。

 Edヘッドコーチから毎週1~2回技術及 び戦術を中心とした指導方法の講習をアシス タントコーチと共に1時間程度受ける。(①、

②)

 女子サーブルアメリカ代表の合宿にアシス タントコーチとして携わる。(③)

 ジュニア男子サーブルW杯へ日本代表選手 を帯同。(④)

(3)研修報告

①幼少期又は初心者から世界トップ期までの 指導理論

 Edコーチは、MarielZagunis(アテネオリンピック金メダル、北京オリンピック 金メダル)、RebeccaWard(北京オリンピック銅メダル、2006年世界選手権金メ ダル)や現在の世界ジュニアランク1位のSagePalmedoのような各世代の世界チャ ンピオンを幼少期から世界トップ期まで指導している。

 現在の日本フェンシング界には、このような一貫指導がないため非常に興味深い 研修となった。

 Edコーチがこのような優秀な選手を育成するにあたって最も重要としている事 は、“限られた時間の中でどの時期にどのような指導をするか”である。

 特にアメリカにおいて大学進学とは、アスリートにとって選手生命を大きく左右 する分岐点である。その理由として、ジュニアカテゴリー(17歳~ 20歳)の世界トッ プクラスの選手は奨学金を受けているため、大学に進学するとアメリカの大学リー グ又は各大学のルールにより世界を転戦することは非常に難しくなる。そのためオ リンピックを目指すような選手は、大学へ進学をするか、または休学等の手続きを して海外試合を重ねるかを早い段階で決断しなければならない。よって、幼少期か ら大学進学までに選手を育成することが重要視されている。

 このようなアメリカのスポーツにおいての問題点を考慮した上でEdコーチの指 導理論は成り立っている。

 

<Edコーチの教え>

・基礎技術にはあまり時間を掛けず、剣さばきとフットワーク(腕と脚のコーディ

OFA歴代世界チャンピオンの写真が飾って ある

ネーション)、戦術といった多くの要素を同時にインプットさせ、フェンシング の楽しさを教えていく。

・幼少期又は初心者に戦術を説明しても理解が難しいため、実技を中心に身体の使 い方を教える。そして経験を積むごとに自分なりに戦術を理解するようになり、

教わった事が徐々に自然とパフォーマンスに影響し自分のスタイルとして確立さ れていく。

・選手がフェンシングを始めた時から一貫した指導を受けているため、コーチと選 手の間に共通理解があり強化の短縮を図ることができる。

ビギナークラス(4歳~ 10歳の初心者)

Edコーチとのプラベートレッスン

エリートクラス(上級者)

ユースクラス(初心者から中級者クラス)

OFA通常練習日程

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日

8:30 ~ 12:00

個人レッスン エリートクラス

個人レッスン エリートクラス

個人レッスン エリートクラス

個人レッスン エリートクラス

個人レッスン エリートクラス

ビギナーズクラ ス(4歳~ 10歳)

14:00 ~ 18:00

ユ ー ス ク ラ ス

(10歳位からの 初心者)及びグ ループレッスン

ジュニアクラス

(10歳位からの中 級者)及びフィッ トネスクラス

ユ ー ス ク ラ ス

(10歳位からの 初心者)及びグ ループレッスン

ジュニアクラス

(10歳位からの 中級者)

ユ ー ス ク ラ ス

(10歳位からの 初心者)及びグ ループレッスン 18:00 ~

20:00

エリートクラス エリートクラス 及びアダルトク ラス

エリートクラス エリートクラス エリートクラス

及びアダルトク

ラス

平成   26 年度・短期派遣(フェンシング)

 以上のような指導方針をEdコーチから週1~2回のプライベートレッスンを受 け、習得したフェンシング理論や技術をOFAの子供達やエリート選手達に還元 し研修としていた。

②世界トップ選手への技術指導及びサポート  日本フェンシング協会では、特に 男子フルーレにおいて科学的なト レーニング(心理サポート、情報戦 略、フィットネス、栄養)を取り入 れJISSマルチサポートスタッフと共 に強化している。しかし、前述した とおりサーブルにおいては近年の競 技成績が良くないため、男子フルー レのような十分なサポートを受けら れない。

 この現状から、MarielZagunisなど

OFAに所属している各国の世界トップレベルの選手達がどのような指導やサポー トを受けているかを学び、日本のサーブルトップ選手や十分なサポートを受けられ ない若い世代の選手達に還元できればと思い研修した。

 OFAでは日々の練習において、どのような科学的トレーニングを取り入れてい るのか期待していたが、日本のように優秀な専門スタッフが練習に参加している様 子もなく、フィットネスにおいても専用ジムがある訳でもなかった。選手達は常に OFAのフェンシング場を拠点とし、ほぼ毎日同じルーティーンで練習をこなして いた。

 しかし、毎日同じ練習内容の中にコーチと選手の間にしか分からないような異変 があるとコーチはすぐに気付き練習内容を変更したり、精神的なサポートを行う。

 そしてワールドカップや世界選手権などの世界戦があると、帰国後ビデオ分析を 直ちに行い今後の対策を協議し、その対策を基に練習で修正や調整を行っていた。

 フィットネスにおいても、OFAのアシスタントコーチが選手とトレーニング内 容を協議し合いメニューを決定していた。もちろんアシスタントコーチは、フィッ トネスの基礎知識を持っていることが前提ではあるが、彼はフェンシングのスキル コーチでありフィットネスコーチが専門ではない。

 これらのことから、強化に重要な要素である心理サポート、情報戦略、フィット ネス等、規模は小さいなりにコーチと選手が自分達で補い合い、質の高いものを創 りあげていくことができる。

 もちろん、日本の男子フルーレのような質の高いサポートは必要であるが、

OFAのように一貫指導をすることで予算や環境が十分でなくても、指導者が補え る面も多くあると感じ、今後日本が目指すべきスタイルではないかと考えさせられ た。

M.Zagunisのフィジカルトレーニング 右アシ スタントコーチ

ドキュメント内 スポーツ指導者海外研修事業_27年度帰国者 (ページ 184-194)