送電ロス補填電力の調達に関する規定の歴史(ドイツ)
ドイツでは、EU指令を受け、エネルギー事業法(EnWG)とグリッドアクセス規制(Strom NZV)により、透明性が高く 公平な市場を通して送電ロスを調達することを規定した。
■ドイツでの送電ロス補填電力の調達方法に関する規定の歴史は、下記の通り。
時期 法律名 内容
2005年7月
エネルギー事業法(EnWG)§22(1)
•
系統運用者が、透明性が高く公平な市場を通して、送電ロスを調達すること。2005年7月
グリッドアクセス規制(Strom NZV)§10(1)
•
系統運用者が、透明性が高く公平な市場を通して、送電ロスを調達すること。•
送電ロスは、大きな障壁がない限りにおいて、入札により調達すること。ただ し、顧客数10万人未満のDSOはこの限りではない。送電ロス補填電力の調達方法(ドイツ)
ドイツでは、送電ロスの補填電力を、長期と短期に分けて調達している。長期市場にて送電ロスのベース部分を確実 に調達した後に、バランシング費用を低減するように、短期市場にて変動分を調整しながら調達している。
■ドイツでの送電ロス補填電力の調達方法
•
長期市場と短期市場があり、それぞれ、下記のように調達している。TSO
調達比率入札 卸市場(EPEX)
Amprion
0% 100%
TransnetBW TenneT 50Hertz
TSO
調達比率入札 卸市場(EEX)
Amprion 100% 0%
TransnetBW 50% 50%
TenneT 100% 0%
50Hertz 0% 100%
*1: TransnetBW(ドイツ)の担当者へのヒアリング
*2: TransnetBW、TenneT、50Hertz(ドイツ)の担当者へのヒアリング
短期( 1 日前、当日) *
2長期 *
1送電ロスのベース部分を確実に調達する。
目的
入札と、卸市場での先物取引によって調達する。両者の 割合は、各TSOの方針次第。
入札の場合は、落札者の契約履行リスクがあり、卸市場 での先物取引の場合は、市場の流動性リスクがある。内容
変動分を調整し、バランシング費用を低減する。
目的
全量卸市場(EPEX)にて、予測手法を使用しながら調 達している。 EPEX
スポット市場で、1
日前からゲートクローズ時刻(受渡30分前)まで、15分と60分の商品を調達できる。
内容
事例 事例
−TSOの長期市場での調達比率*2− −TSOの短期市場での調達比率*2−
送電ロス填補電力の調達方法(ドイツ) −Amprionの事例(1/2)−
長期の送電ロスは入札と卸市場で調達され、その比率は、各社のリスクヘッジ方針による* 1 。Amprionの場合、長期 の送電ロスを全量入札で調達している。
*1: TransnetBW(ドイツ)の担当者へのヒアリング
*2: Amprionウェブサイトの情報を基に、トーマツ作成
全量入札により調達し、商品としては、Base Year、Peak Year、Base Quarter、Peak Quarterがある。
取引きする商品のロット数、取引量、商品の種類に関する情報は、入札の少なくとも3
週間前にAmprion
が公表する。※商品の取引は、インターネットプラットフォーム上で行われる。
長期
■長期市場での送電ロスについて、下記の要領にて調達している*2。
−長期市場での入札結果(2018年分を2016年に調達)−
入札日 商品 ロット数 調達単位
[MW/
ロット]
調達量
[MWh/
ロット]
平均価格
[€/MWh]
最大価格
[€/MWh]
2016.07.21 Base-Year 7 1 8760 26.51 26.51
2016.07.28 Base-Q1 5 4 8636 29.94 29.94
2016.08.04 Base-Year 7 1 8760 25.49 25.49
2016.08.11 Base-Q1 5 4 8636 28.54 28.65
2016.08.18 Base-Year 6 1 8760 25.48 25.48
2016.08.25 Base-Q1 5 4 8636 27.69 27.78
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
商品
参加 要件
参加要件として、Amprion管轄内のバランシンググループ又はそのサブグループであることと規定されている。
上記の参加要件に該当しない参加希望者が参加登録を行う場合は、バランシンググループが当該参加希望者に対 して送電ロス調達の責務を果たす旨を記載した文書を、TSOに提出しなければならない。※入札の参加者登録は、インターネットプラットフォーム上で行う。
短期市場では、まず、1日前市場において、長期市場にて調達したロスと予測ロスの差分を調達する。次に、当日市場 において、今までに調達したロスと取引直前時刻の実測ロスとの差分を調達し、取引時刻の実測ロスに近づけていく。
1日前
当日② 差分を1日前 市場で調達
送電ロス填補電力の調達方法(ドイツ) −Amprionの事例(2/2)−
■送電ロスの短期の調達方法について、下記に示す*1。
全量卸市場(EPEXスポット市場)にて調達する。 1日前市場と当日市場の2段階に分けて、予測手法を使用して調達している。(下記参照)
短期( 1 日前、当日)
長期
T
調達 予測ロス
T−1
③ 差分を当日 市場で調達
実測ロス
対象日 対象時刻
1日前
当日、取引時刻T予測ロス[MW] 更新時刻 実測ロス[MW] 更新時刻
2016.11.16 08:30 - 08:45
3602016.11.15 15:40
3812016.11.16 09:00 2016.11.16 08:45 - 09:00
3622016.11.15 15:40
3872016.11.16 09:10 2016.11.16 09:00 - 09:15
3772016.11.15 15:40
3982016.11.16 09:30 2016.11.16 09:15 - 09:30
3902016.11.15 15:40
3972016.11.16 09:40
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
−予測ロス(1日前)と実測ロス(当日、取引時刻T)の公表−
*1: Amprionウェブサイトの情報を基に、トーマツ作成
時刻(MW)
① 長期市場で 調達
実測ロス
取引直前 時刻
取引 時刻
④ 調整力・予備力 にてバランシング
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 送電ロス量 価格
ロス(GWh) 価格(€ct/kWh)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 送電ロス量 価格
ロス(GWh) 価格(€ct/kWh)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 送電ロス量 価格
ロス(GWh) 価格(€ct/kWh)
■送電ロスの調達実績*1
•
ドイツのTSO4社は、グリッドアクセス規制(Strom NZV§17)と電力ネットワーク料金規制(Strom NEV§10)に従って、送電ロス量と調達価 格を公表している。送電ロス填補電力の調達実績(ドイツ)
送電ロスの調達価格は2009年の約8€ct/kWhをピークにその後低下傾向にあり、2015年は約3.5€ct/kWhとなった。
送電ロス量は、各社2010年以降増加傾向にあり、特に2015年の伸びが大きい。(考察は次ページ参照)
*1: 各社ウェブサイトの送電ロスに関する情報を基に、トーマツ作成
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 送電ロス量 価格
ロス(GWh) 価格(€ct/kWh)
Amprion*
1TransnetBW*
1TenneT*
150Hertz*
1→次ページにて詳細分析を実施
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
0 200 400 600 800 1,000
2011 2012 2013 2014 2015
送電ロス量 送電ロス率
送電ロス量(GWh) 送電ロス率
注)
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000
2011 2012 2013 2014 2015
電力需要量
(GWh)
■
TransnetBWの送電ロスの調達実績
送電ロス填補電力の調達実績(ドイツ)
ドイツでは、電力需要量が低下しているにも関わらず、北部での風力発電所建設による送電距離の延伸と、隣国との ループフローやトランジットフローの増加等により、送電ロス量は増加している。
②
2015
年の送電ロス量は、2011
年に比べて13%
増加した。①
2015
年の電力需要量は、2011
年に比べて12%
低下した。送電ロス量と送電ロス率*1 電力需要量*1
電力需要量が低下している(①)にも関わらず、送電ロス量が増加している(②)理由*2
1.
北部の風力発電所の増加により、発電所と需要地間の送電距離が長くなったため2.
隣国との国際連系線を通じた、ループフローやトランジットフロー等の、計画外潮流が増えたため注) 送電ロス率=送電ロス量÷(送電ロス量+電力需要量)
②
13%増加
①
12%
低下*1: TransnetBWウェブサイトの情報を基に、トーマツ作成
*2: TransnetBW(ドイツ)の担当者へのヒアリング
送電ロス填補電力の調達(ノルウェー)
ノルウェーでは、送電ロスを卸市場(ノルドプール)にて調達しており、その調達価格は、ノルウェーの5エリアにおける スポット市場のエリア価格を基に算定されている。
■規定の歴史
• 1999年3月、Energy Actが改訂され、REG. no. 301のSection 5-3にて、送電ロスの計算方法が規定された。
■送電ロスの調達実績*1
•
ノルウェーの送電会社Statnettの送電ロス調達量は、2015年時点で2,513GWhであり、全電力需要量128TWhの約2%を占める。• 1MWhあたりの調達単価は、平均185NOK/MWhであった。
•
送電ロスの調達コストは、2015年時点で466 million NOKであり、Statnettの全収入5,906 million NOKの約8%を占める。■送電ロスの調達方法*2
• Statnettは、卸市場にて、送電ロスを外部から調達している。
•
その調達単価(Ploss)は、下記に示す通り、ノルドプールの卸市場(スポット市場)におけるエリア価格を基に計算される。P_
NO1〜P_NO5: ノルドプールの卸市場(スポット市場)におけるエリアNO1〜NO5のエリア価格wt1〜wt5: 月毎の電力需要量を基に計算されたエリアNO1〜NO5の重率
P loss = P _NO1 * wt1 + P _NO2 * wt2
+P _NO3 * wt3 + P _NO4 * wt4 + P _NO5 * wt5
ノルウェーのスポット市場のエリア毎(
NO1
〜NO5
)のエリア価格に 重率をかけて求める*1: StatnettのAnnual report、2015
*2: Nord REG、Economic regulation of TSOs in the Nordic countries、2012
送電ロス(電力量)の計測
全体の傾向として、送電系統のロスは正確に計測可能だが、配電系統のロスは、ノンテクニカルロスの影響もあり、
正確な計測が困難となる。
■フランス*1
•
送電系統と配電系統毎に、また、電圧毎(VHV、HV、MV、LV)に送電ロスが計算され、次の料金計算期間に適用される(2005年に計算され た送電ロスが2006、2007年に使われる)。•
公共の電灯、盗電、家庭内の消費分等も、送電ロスに含める。■ドイツ*2
(TSO)
• 2012年時点で、TSO(4社)の送電線の総延長距離は、EHVが34,780km、HVが61kmである。
•
電力の計測点は合計649地点で、内509地点(78%)は需要家の計測点である。(DSO)
• 2012年時点で、DSO(回答に応じた約800社)の送電線の総延長距離は、1,753,290kmである。
•
電力の計測点は、全てのネットワークレベルにおいて、合計48,769,032地点あり、内45,722,788地点(94%)が家庭用の計測点である。■ノルウェー*1
(TSO)
•
送電ロスは、1時間毎に、かつ、異なるネットワーク・電圧レベルの接続地点毎に計測されているため、正確である。(DSO)
•
家庭では、電力の検針を各家庭の報告に任せているため、送電ロスは正確に計測されていない。*1: ERGEG、Treatment of Losses by Network Operators, E08-ENM-04-03、2008
*2: BNetzA、Monitoring report 2013
3.
3.1
EU指令により、送電会社の機関設計に関して、「送配電部門の分離」「就任制限」「人事」の規制が制定されている。
一方で、配電会社に対しては、「就任制限」に関する規定は無い。
送配電会社の機関設計に関する規定(欧州全体)
■
EU指令による規定の経緯
1) 第1次エネルギーパッケージ(1996年12月)により、送配電部門の会計分離が求められた。
2) 第2次エネルギーパッケージ(2003年6月)により、送配電部門の最低限の法的分離(別法人化だが、詳細な就任規則等は含まない)が求められた。
3) 第3次エネルギーパッケージ(2009年7月)により、送電部門の中立性・独立性を厳格に義務付けるため、所有権分離(FOU)、機能分離(ISO)
又は厳格な法的分離(ITO)が求められた。
■ 送配電会社の機関設計に関するEU指令の内容
送配電部門 の分離
垂直統合型事業者(VIEC) から、配電部門の法的分離(ITO)がなされなくてはならない。
配電部門が垂直統合型事業者(VIEC)の一部である場合、その法人格、組織及び意思決定について、配電以外の活 動と関わりがあってはならない。
垂直統合型事業者(VIEC)から、送電部門の所有権分離(FOU)、機能分離(ISO)又は厳格な法的分離(ITO)を実 施すること。
垂直統合型事業者(VIEC)は、送電事業の支配や、何ら かの影響力を行使してはならない。就任制限
―
役員会、執行委員会や監査役会の構成員は、就任前3年 間、退任後4年間について、垂直統合型事業者(VIEC)と 職位・職責関係を有することができない。人事
配電会社 送電会社
配電事業の管理責任者は、垂直統合型事業者(VIEC)の 発電及び送電の責任者になってはならない。
発電会社の経営に大きな影響を与える者(発電会社の役 員会での議決権を有している者や、発電会社の株式を過 半数所有している者等)は、役員会、監査役会等の構成員 になることはできない。
役員会の構成員の指名や待遇の決定は、監査役会が行う。但し、規制機関から反対が無いことが条件となる。