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安心感が持てること

ドキュメント内 -介護現場で共に生きる視点から考える- (ページ 129-132)

第 2 節 コミュニケーションを円滑に進める上のキーコンセプト

2.2 総合考察により得られたキーコンセプト

2.2.4 安心感が持てること

安心感が持てることとは、所属する集団に居場所があると感じられることである。

A.H.マズロー(1971)は、人間の基本的な欲求 5 つ-生理的欲求、安全の欲求、所

属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求-を挙げ、これらの順にその欲求が満足さ れると、再び新しい欲求が出現すると述べ、基本的欲求はヒエラルキーを構成している という(A.H.マズロー1971:93)。また、これらの欲求は100%満たされてから次へ行 くのではなく、部分的に満足し同時に不満を持っているとする。

このマズローの基本的な欲求は、ヒエラルキーを成すということからだと考えられる が、図で示されることが多い。本論文においてもA.H.マズロー(1971)に基づき、下 記の図8の作成を試みた。

図8 マズローの示した5つの基本的欲求説

先述のとおり、生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の 欲求の順にヒエラルキーを構成する。また、各欲求の具体的な欲求については、その横 に、一行ないしは二行で端的に示した。ただし、本論文の調査対象者にもいたのだが、

イスラム教徒といった宗教観に基づいて生活を送るものには当てはまらない可能性が ある点を断っておく。

生理的欲求 承認の欲求 所属と愛の欲求

安全の欲求 自己 実現 の欲求

・空腹を満たしたい

・恐怖に晒されたくない

・守られたい

・所属するグループに居場所がある

・愛し、愛されたい

・人から理解されたい

・自尊心を持ちたい

・自分のなりうるものになりたい

さて、この基本的欲求の中で、所属と愛の欲求は2.2.3で見た平木(2008)のメイン テナンスのためのアサーションと重なる。つまり、自分はここにいてもいいという居場 所感、安心感、被受容感である。職場のように所属する場の人を受け止められることは、

その職場に身を置く人にとって重要である。本節2.2.1で示したキーコンセプト④に「外 国人介護人材にとって職場に居場所があると感じられる、受け入れてもらえるという感 覚が持てる、日本人職員にとって外国人と接する心理的なハードルを下げる『安心感が 持てること』」を挙げているが、外国人介護人材側の視点はまさしく所属と愛の欲求を 意味すると考えられる。この欲求が満たされて、平木(2008)で言えばメインテナンス のためのアサーションがなされてこそ、より働きやすくなると言えるだろう。この点か ら、介護施設という職場において、人間関係が保たれること、および安心して居られる ことは、介護職として業務にあたる上で大切な点であり、コミュニケーション支援とし てのみならずここへの支援の重要性が改めてわかる。

また関係を作る上で「自己開示」の必要性が指摘されることがある。

「自己開示」とは、藤原(1987:91)によると「未知既知を問わず、特定の他者に対し、

意図的に自分に関する情報を言語的に伝達する行為のこと。」である。ここで自己開示 に関連すると考えられる「ジョハリの窓(The Johari Window)」を取り上げる。

ジョハリの窓とは、対人関係における、自分と他者の観点による気づきを描いたもの であり、Joseph LuftとHarry Inghamにより1955年に提唱されたものである。以下 にLuft, J.(1982)38より引用した「ジョハリの窓」を次ページに転載する。

38 このジョハリの窓の原著と推定されるLuft, J. & Ingham, H. (1955). The Johari Window: A Graphic Model of Interpersonal Awareness. Los Angeles: U. of California Extension Office.が日本で手に入ら なかったため、Luft, J.(1982)の記事より引用することにした。ただしこちらの記事が収められてい る雑誌も、1982年版は手に入らなかった。この図の出典はインターネットより取得した記事のPDF らの引用である。

https://c.ymcdn.com/sites/fridayfellowship.site-ym.com/resource/collection/D1FD72B3-693E-4EE5-AB18-B1233BBE9C51/JohariWindow_JLuft.pdf 〉(201861日アクセス)

図9 ジョハリの窓(Luft,J.(1982)より転載)

この図から、4つのエリアがあることがわかる。左上から見ていく。

まず、「Area of Free Activity」は、なぜそのような行動をするか、自分も他人も知っ ているエリア(=窓)である。自分も他人も知っているということは、他人に自分のこ とを素直に見せることができていると言える。つまり、自己開示を行うことができてい るとも言い換えられる。

続いて「Blind Area」は、他人には見えているものの、自分では気づいていない窓で ある。

「Avoided or Hidden Area」は、自分は知っているが、他人には知られていない(繊細 な感情など)窓である。

「Area of Unknown Activity」は、なぜそのような行動をとるのか、自分も他人もわ からない窓である。

Luft, J.(1982)では、新しいグループが出来た当初は、「Area of Free Activity」の 窓は小さいが、グループが成長、成熟していくと、「Area of Free Activity」のサイズが 大きくなり、自分に対してより自由に(素直に)いることができ、他人についても、他 人本来の姿に気づくことができるという。

また他者と働くことは、「Area of Free Activity」の窓が十分大きくなることで、容易 になるという。そして「Area of Free Activity」の窓が小さくなると、コミュニケーシ ョンが乏しくなっていくとも述べている。

ここから、仕事場面などにおける他者との協働やコミュニケーションにおいて、その

相手である他者に対し、「Area of Free Activity」を大きくすることは重要であると言え る。つまり自己開示を積極的に行うことにより、八代他(2001)や原沢(2013)で言わ れているように、周囲との信頼関係の構築に役立つと言える。

しかし人から指示されて自己開示ができるわけではない。7章で日本人職員に見られ たように外国人と接する心理的なハードルがあるような場合、自己開示は容易に行える ものではないだろう。我々が自己開示をするときには、誰に対しても同様に自己開示を しているわけではなく、相手に応じて自己開示の程度を調整しており、話してもいいと 思える相手に自己開示をしていると考えられる。つまり相手に話してもいいと思える安 心感が持てることにより、自己開示が進むのではないか。このように考えると、先述の 所属している場所に居場所があると感じられることは安心感の一つの表れと言える。

安心感が持てることで、他者に対して自己開示が行い易くなる。そして、他者に対し て自己開示が行えることにより、他者との関係の構築が発展すると言える。他者との関 係の構築には改めて、安心感が持てることが必須である。

続いて、非言語コミュニケーションの活性化をみていく。

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