(1)町からの伝達
防災行政無線による情報伝達
町地域防災計画では、防災行政無線等の管理、災害時情報連絡への専任担 当者の配置等により、情報を一元管理する計画となっていたが、今回の災害 時には、専任担当者は配置されなかった。
また、防災行政無線を使った避難準備情報や避難勧告などは、サイレンを 伴った「緊急時放送」により放送を行うことになっていたが、実際には、サ イレンを伴わない「通常放送」を行った。(「緊急時放送」は、同時刻に集落 放送が流れている場合に割り込み放送ができるが、通常放送は同時刻に集落 放送が流れていると、発信内容が放送されない仕様となっている。今回の災 害では、そうした事例はなかった。)
【主たる要因】
連絡の専任担当者については、町地域防災計画に記載されてはいたものの、
具体的な個人への指定はなく、所属も定めていなかった。そのため、専任担 当者は配置されなかった。
情報の収集、伝達は、総務対策部が行う役割分担となっていた。総務対策 部には、平時に防災行政無線を扱っている職員が所属していたが、道路の冠 水のため参集できなかった。そのため、本部室に所属する防災担当者が代行 することとなった。しかし、防災担当者は、「緊急放送」の機能を知らなかっ たため、「通常放送」により放送を行った。
なお、佐用町災害復興計画検討委員会のアンケート調査では、避難した人 のうち54.3%と約半数の人は、防災行政無線の放送を聞いていなかった。
防災行政無線以外による情報伝達
地域防災計画では、緊急時の伝達手段として、防災無線以外に、さよう安 全・安心ネット、佐用チャンネル及び広報車等を利用することとなっていた。
しかし、さよう安全・安心ネット、佐用チャンネル及び広報車での情報発信 は行われなかった。佐用チャンネル以外の放送機関に対しては、町から伝達 を行う計画はなく、今回の災害でも情報発信は行われなかった。
検証の視点 防災行政無線による情報伝達の状況 検証項目1
検証の視点 防災行政無線以外による情報伝達の状況 検証項目2
また、計画では情報発信先として、社会福祉施設や観光施設などの関係機 関に、各担当部署より電話連絡をする計画であったが、連絡は行われなかっ た。
【主たる要因】
さよう安全・安心ネットは、住民課、消防署、総務課など多くの課が、発 信可能なアカウントを取得しており、機能的にはどのパソコンからも発信可 能であった。しかし、平時に利用していたのは消防署のみであり、町役場で は利用しておらず操作には習熟していなかった。そのため、今回の災害時に も、町役場からは発信されなかった。
なお、さよう安全・安心ネットの登録数は約880人(平成21年8月9 日現在)であり、町民の約4%相当にとどまっている。
ケーブルテレビによる「佐用チャンネル」は、操作できる者が、まちづく り課の職員に限定されていた。また、放送を行うには、複数人の職員の参集 が必要であった。しかし、今回の災害時には、当日、自宅浸水により、操作 可能な職員に参集できなかった者がいたため、必要人数がそろわず、放送が できなかった。なお、庁舎の水没により停電し、非常用発電機も水没したこ とから機能も停止した。
広報車による情報伝達は、防災行政無線の整備後は、行わなくなっていた。
また、各対策部では、社会福祉施設や観光施設などの関係機関への電話連 絡体制・手順等を、事前には具体的に定めておらず、今回の災害時の混乱し た状況の中で、連絡が行われなかった。
町からの情報伝達の内容
8月9日午後7時45分に佐用川円光寺水位3.7m超過(避難判断相当水 位)による河川監視警報システムのサイレン吹鳴があり、町では、避難準備 情報として久崎地区に「千種川久崎地点 佐用川円光寺地点の水位が避難判 断水位に到達したため、ただ今久崎小学校のサイレンが鳴りました。1時間 後には、はん濫危険水位に達する見込みです。久崎集落の方は今後の避難情 報に注意してください。」と防災行政無線による放送を行った。
ひょうご防災ネットのメール配信で土砂災害警戒情報を受信、本部長指示 により、午後8時29分に全町を対象に「佐用町に土砂災害警戒情報が発表 されました。家の裏山の急なところは特に土砂災害に注意してください。危 険を感じたらすぐに安全なところに避難してください。」と防災行政無線によ る放送を行った。
佐用地区川原町の住民から家屋浸水の連絡を受け、副本部長(副町長)が 防災行政無線による放送を指示し、午後8時56分と同59分に避難準備情 検証の視点 町からの情報伝達の内容
検証項目3
報として佐用地区川原町に対し避難を促す放送を行った(放送内容の履歴な し)。
佐用地区新町の住民から山からの水で家屋が浸水しているとの連絡を受け、
副本部長(副町長)が避難勧告発令の指示を行い、午後9時10分に防災行 政無線で佐用地区新町に「新町山側と佐用小の下から佐用川までの間の方は 安全なところに避難してください。」と避難勧告を放送した。
地域からの被害の情報、河川監視警報システムの佐用川円光寺の河川水位 が上昇を続けていることに加え、フェニックス防災システムでは佐用地域の 雨量が継続して増加していたことから、本部長・本部室部長・本部室副部長 が協議し、午後9時20分に全町に「降り続く雨のため非常に危険な状況に なっています。このため近くの安全なところに避難してください。避難の際 は足元に十分に注意してください。」と避難勧告の放送を行った(表1)が、
放送内容の定型化ができておらず、避難準備情報なのか避難勧告なのか明確 でなかった。午後8時56分の放送を避難勧告と思った住民もあった。また、
避難指示は発令していない。
【主たる要因】
町では、避難準備情報や避難勧告を意識的に明確な区分をして運用してこ なかったことから、今回の災害時に発信した情報の放送内容には時間によっ て大きな差異がなかった。
災害時に、防災行政無線で発信する内容の文案を用意していたが、1パタ ーンのみであり、住民に状況に応じた行動指針・留意事項等を示す詳細なも のではなかった。
住民などに迅速・確実に情報を伝達できるよう、既存の情報伝達機器を より有効に活用する必要がある。
避難勧告等を迅速かつ確実に住民などに伝えるため、防災行政無線、さよ う安全・安心ネット、屋外スピーカーの未設置地域や防災行政無線が聞こえ にくい地域は広報車、マスコミ各社への様式を定めFAXを送信するなど、
多様な手段を用いて、伝達することが必要である。
また、他の情報についてもきめ細かく住民などに伝えられるよう、防災行 政無線、さよう安全・安心ネット及び広報車を活用するほか、佐用チャンネ ルでも河川の増水時に河川監視カメラの映像をリアルタイムで放送する必要 がある。
新たな情報伝達手段の導入について検討する必要がある。
災害時には、適切な情報を多様な伝達手段により迅速に伝達することが必 要であることから、より多くの媒体を整備することが望ましい。特に、大雨 時に防災行政無線やテレビ等では、十分に伝達の対応ができない屋外の者へ 伝達できる媒体である携帯メールについては、さよう安全・安心ネットに加 え、町民以外の出張者・旅行者などにも、町から防災情報を伝達することが できるエリアメールなどの導入を検討することが望ましい。
将来的には、数多くの伝達手段を通じて、効率的かつ確実に情報を伝達す ることができるよう、公共コモンズの実用化を視野に入れて検討する必要が ある。
※エリアメールとは、NTTドコモが、国・地方公共団体に提供している有料サービ スで契約している自治体では、避難勧告や津波への注意喚起などの防災情報を、自治 体内の全てのサービス対応携帯端末へ一斉配信できる。現在は、自治体が発信できる サービスは、ドコモのみのサービスだが、気象庁の緊急地震速報では、他社も同様の サービスを実施するなど、技術的には、すでに実用化されており、加入自治体が増え てくれば、他社もサービス開始するものと期待される。
※公共コモンズとは地上デジタル放送をはじめとする各種メディアにより、地域の安 心・安全に関する情報を迅速かつ効率的に地域住民に提供する仕組みで現在、実証実 験が行われている。
各種情報機器の操作に習熟した職員の養成が必要である。
各種の情報機器を緊急時において確実に操作を行うためには、平時から担 当者だけでなく多くの者が操作に習熟する必要がある。そのためにはマニュ
町からの避難勧告等の伝達の改善への提言
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