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生産性・利潤に係わる一般的な現象、法則

ドキュメント内 博士(経済学)学位論文 (ページ 196-200)

第5章 国有企業の労働生産性と資本の効率に関する考察 はじめに

第 2 節 生産性・利潤に係わる一般的な現象、法則

次節以降で個々の株式上場企業を取り上げて、その生産性の変化の分析を通じて売上高 利益率やROAの変化の要因を分析するが、それは個々の企業の「従業員1人当たり(営業)

利益額」、「総資産(営業)利益率(ROA)」の推移、および「売上高(営業)利益率」の推 移などを分析するので、本節では、次節以降の分析の前提として、「売上高(営業)利益率」、

「総資産(営業)利益率(ROA)」、「従業員1人当たり(営業)利益額」と利潤率などとの 関連、および資本主義的生産の発展に伴って現れる資本の有機的構成の高度化、一般的利 潤率の傾向的低下、機械と労働の生産力について、『資本論』を参照しつつ確認、考察する。

2-1 売上高利益率、総資産利益率、1 人当たり利益額について

利潤率40は、

m m v v

C c+v C = m'・ c+v

p' = = = m'・

である(これは可変資本または流動資本の回転が1回/年の場合である)。さらに、資本の 回転を織り込むと、可変資本(または流動可変資本)の回転数:n回/年の場合(なお、

流動不変資本は可変資本と同じ時間で回転すると見なして、可変資本回転数=流動不変資 本回転数=流動資本回転数〔または流動資産回転数〕とする41)、年間剰余価値総量:M=

m x n、剰余価値年率:M'=m'n、年間労賃総額:V=v x n、となり、利潤率は、

40 『資本論』第3巻第1篇「剰余価値の利潤への転化と剰余価値率の利潤率への転化」第 3章「利潤率と剰余価値率との関係」、第4章「回転が利潤率に及ぼす影響」、並びに『資本 論』第2巻第2篇「資本の回転」第16章「可変資本の回転」第1節「剰余価値の年率」を 主に参照。

41 資本家によって可変資本に投下された資本も流動不変資本に投下された資本も、ともに 生産物が売買されて貨幣形態でもって資本家に還流するので、その資本投下から還流まで の時間は一般的には同じとみなすことができる。『資本論』第3巻第1篇第4章「回転が利 潤率に及ぼす影響」では、回転数と利潤率の関係の事例を示すに際して「簡単にするため に、以下のすべての例で流動不変資本は可変資本と同じ時間で回転することにするが、こ れは実際にもたいていそうなっていることであろう」と記されている。『資本論』第3巻第 1分冊、92頁(独82)。

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M v V v vn

C = M'・ C C c+v c+v

p' = m'・ = m'n・ = m'・

である。

不変資本:cについて生産過程での生産物への価値移転の形態に応じて、c=c1+c2

+c3、 その各々はc1:固定資本の内の当該年度内に摩滅されずに次年度以降に使用され る部分、c2:固定資本の内の当該年度内に摩滅される部分、c3:不変資本の内の流動資 本(当該年度内に消費される原材料など)とすると、

m v

(c1+c2+c3)+v (c1+c2+c3)+v

p' = = m'・

M mn vn

(c1+c2+c3)+v (c1+c2+c3)+v (c1+c2+c3)+v

p' = = = m'・

と表される(これは流動資本の回転がそれぞれ1回/年、n回/年の場合である)。

次に、売上高利益率、総資産利益率(ROA)、1人当たり利益額と利潤率または剰余価値 率とを比較してそれらの関係を確認するが、その比較がし易いように上記の利潤率の記述 に用いた表記号を用いて表せば、次の通り。

(1)売上高利益率は、利益(p)/売上高であり、pの量とmの量は同じである(p'と m’とは同率ではない)。売上高は、当該年度内に売上げられた生産物の原価(すなわち、生 産物価値から剰余価値を引き去った部分、費用価格)と利益(または剰余価値)によって 構成されるので、売上高=c2+c3+v+m、と表される。以上より、

m v

(c2+c3)+v+m (c2+c3)+v+m

売上高利益率 = = m'・

と表される(これは流動資本の回転が1回/年の場合である)。さらに、流動資本の回転を 織り込むと、年間消費流動不変資本:C3=c3 x n、となり、

M mn vn

c2+C3+V+M c2+(c3+v+m)・n c2+(c3+v+m)・n

売上高利益率 = = = m'・

と表される。

(2)ROAは、利益/総資産であり、(総資産の全てが生産活動に投下されているとの前提 条件の下では)総資産=(c1+c2+c3)+v と表される。流動資本の回転が 1 回/年 の場合は、

m v

(c1+c2+c3)+v m'・ (c1+c2+c3)+v

ROA = =

流動資本の回転がn回/年の場合は、

M mn vn

(c1+c2+c3)+v (c1+c2+c3)+v = m'・ (c1+c2+c3)+v

ROA =

と表される。

(3)従業員1人当たり利益額は、剰余価値率と比較すると、

m 剰余価値率: m' = v

m 従業員1人当たり利益額 = 従業員数

192 流動資本回転数がn回/年の場合は、

mn 剰余価値率: m' = vn

mn

= v 剰余価値の年率: M' = m'n

、 mn

従業員1人当たり利益額 = 従業員数

vと従業員数とが正比例関係もしくは概ね同様の変化の傾向であれば、従業員数をvの代 替値とみなして、剰余価値の年率の変化と従業員 1 人当たり利益額の変化とは同様の傾向 の変化を表わす42

以上の式より剰余価値率、利潤率、売上高利益率、ROAの関係を整理する。剰余価値の 年率は利潤率、売上高利益率、ROAのいずれよりも大きい値になり、剰余価値率はm’=m n/vnであるから、売上高利益率より大きい値になり、概ね利潤率、ROAよりも大きい 値になるが、不変資本部分が小さい場合には分母のvnが利潤率、ROAの分母のcよりも 大きくなる可能性もあり、その場合にはm’の値は利潤率、ROAよりも小さくなる。

次に、利潤率とROAとの関係は、上記の式から分かる通り一致する。但し、利潤率の分 母は当該年度の期初に投下された資本であり、一方、ROAの分母は資本が当該年度中にn 回転するのに伴い産出された剰余価値または利益が蓄積されて期末の総資産額は期初のそ れよりも増加するので、期中の平均総資産額や期末の総資産額を分母にした場合は、その ROAは利潤率より低くなる。

さらに、売上高利益率とROA(または利潤率)との関係は、ROA=(利益/売上高)x

(売上高/総資本〔または総資産〕)=(売上高利益率)x(総資本回転数)であり、総資 本回転数が1回/年を上回ればROAは売上高利益率を上回る。一方、以上の式で用いた「n」

は流動資本回転数であり総資本回転数より大きい。売上高利益率の分母はc2+(c3+v

+m)nで、ROA の分母はc1+c2+c3+vであり、分子は双方ともmnであるから、

双方の分母が一致する場合(または総資本回転数が1の場合)は「売上高利益率=ROA」

となり、固定資本のc1が小さく、流動資本回転数:nが大きくなって売上高利益率の分母 がROAの分母を上回る(または総資本回転数が1を上回る)場合は「売上高利益率<ROA」

となり、c1が大きく、nが小さくなってROAの分母が売上高利益率の分母を上回る(ま たは総資本回転数が1を下回る)場合は「売上高利益率>ROA」となる。

なお、『資本論』第3巻第3篇第13章「この法則そのもの」のエンゲルスによって補足 された部分に利潤率(1年間に実現された剰余価値または利潤の総資本にたいする割合、p

/Cと表記)と、商品1個当たりの利潤率(利潤/費用価格)(=1年間に実現された利潤 の 1 年間に生産されて売られた商品の費用価格の総計にたいする割合、または年間回転額 にたいする利潤率、p/kと表記)との関係が記されているが43、この年間回転額にたいす

42 『資本論』第1巻第3篇「絶対的剰余価値の生産」第9章「剰余価値率と剰余価値量」

の式M=(m/v)x V=k x(a’/a)x n より、(a’/a)=M/(k・n) つまり 剰余価値率=剰余価値量/(平均労働力1個の価値x常用労働者数)となる。『資本論』第1 巻第1分冊、400頁(独322)。

43 エンゲルスによって補足された部分は、年間回転額と総資本が一致する場合はp/k=

193

る利潤率と売上高利益率とは異なる、つまり、各々の率の算出式の分母は費用価格と商品 価格=売上高とであり、それらは異なる。上記の売上高利益率の式は、

M mn vn

c2+C3+V+M c2+(c3+v+m)・n c2+(c3+v+m)・n

売上高利益率 = = = m'・

であるが、年間回転額にたいする利潤率の式は、

M mn vn

c2+C3+V c2+(c3+v)・n c2+(c3+v)・n 年間回転額にた

いする利潤率 = = = m'・

であり、これらは異なる。

前述(「はじめに」)の中国の鉱工業のデータによる売上高利益率、年間回転額にたいす る利潤率(利潤額/〔売上高-利潤額〕 により算出)、ROAの各々の推移を比較すると図 2-1 の通りである。それは、売上高利益率、年間回転額にたいする利潤率、ROA の算出式 からも分かるように、利益がプラスでもマイナスであっても、売上高利益率の絶対値は年 間回転額にたいする利潤率の絶対値よりも小さく、ROA の絶対値はROAの式の分母が売 上高利益率の式の分母、並びに年間回転額にたいする利潤率の式の分母を上回る場合にそ れぞれの絶対値より小さく、それぞれの分母を下回る場合はそれぞれの絶対値より大きく なる。

図2-1:全鉱工業/売上高利益率・年間回転額にたいする利潤率・ROAの推移

出所:『中国統計年鑑』2013年版、2014年版より筆者が計算作成 0.00%

1.00%

2.00%

3.00%

4.00%

5.00%

6.00%

7.00%

8.00%

9.00%

10.00%

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

全鉱工業・売上高 利益率

全鉱工業・年間回 転額にたいする利 潤率

全鉱工業・ROA 全鉱工業/売上高利益率・年間回転額にたいする利潤率・ROAの推移(%)

次節では個別企業について当該企業の財務データを用いての考察を行うが、以上の利潤 率とROAとの関係より、「利潤率=ROA」として考察を進める。

p/C、年間回転額が総資本より小さい場合はp/C<p/k、年間回転額が総資本より 大きい場合はp/C>p/kとなる。「商業上の慣行では回転の計算は不正確なのが普通で ある。実現された商品価格の総額が充用総資本の総額に達すれば、資本は1回転したもの とみなされる。しかし、資本は、実現された商品の費用価格の総計が総資本の総額に等し くなるときに、はじめて完全な1回転を完了することができるのである」、と記されている。

『資本論』第3巻第1分冊、285-287頁(独237-238)。

ドキュメント内 博士(経済学)学位論文 (ページ 196-200)