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国有企業の実態

ドキュメント内 博士(経済学)学位論文 (ページ 84-99)

第 2 章 国有企業の地位の再評価

第3節 国有企業の実態

本節では、企業の収益性・成長性・生産性や資本の集中・賃金の伸びと付加価値の伸び などについて、主に『中国統計年鑑』の鉱工業部門のデータにより1999年から2010年ま での推移を概観することで国有企業または国有経済部門の実態を見てみる。

3-1 企業の概要

分析の対象となる『中国統計年鑑』の鉱工業部門の企業の概要は表3-1の通りである。

表3-1から見える1999年から2010年への推移の特徴は、国有及び国有控股企業(国有 株支配企業)は企業数、総生産額、資産総額、従業員数のいずれの項目でも総計に対する 構成比が減少しており、企業数・従業員数は絶対値でも減少している。これは政府が国有 企業改革の一環として小さな国有企業を国の所有から手放したことの影響が現われている。

一方、私営企業は国有および国有控股(国有株支配)とは逆に構成比、絶対値ともに拡大 し2010年の企業数、総生産額、従業員数の絶対値は国有及び国有控股(国有株支配)を凌 駕している。

しかしながら、企業 1社当りまたは従業員1人当たりの生産額や資産額の推移は、私営 の拡大度合いは国有及び国有控股(国有株支配)の拡大度合いを下回り、1人当り生産額の 絶対値では私有が1999年は国有及び国有控股(国有株支配)を上回っていたが2010年で は逆転している。例えば従業員1 人当り生産額の推移は、私営は 1999 年:14.16 万元/人

→2010年:64.41 万元で 4.5倍の拡大であるが、国有および国有控股(国有株支配)のそ

れは10.48万元→101.21万元で9.7倍である。また、1999年から2010年への1人当たり

生産額の伸びと 1 人当たり資産額の伸びとを比べると、国有及び国有控股(国有株支配)

は、1人当たり生産額の伸び(9.7倍)は1人当たり資産額の伸び(5.7倍)の 1.7倍であ るが、私営は、1人当たり生産額の伸び(4.5倍)は1人当たり資産額の伸び(3.5倍)1.3 倍であり、資産の生産額への寄与度合いは国有及び国有控股(国有株支配)のほうが私営 よりも大きく進展している。

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表3-1:鉱工業部門の企業の概要

1999年2010年伸び率)1999年2010年伸び率)1999年2010年伸び率)1999年2010年伸び率) 国有及び国有控股企業61,30120,2530.33035,571.2185,861.05.22580,471.7247,759.93.0793,394.61,836.30.541 ()内:各年度の対総計構成比(37.8%)(4.5%)(48.9%)(26.6%)(68.8%)(41.8%)(58.5%)(19.2%)  〔〕内:各年度の従業員1人当たり数値(万元/人)10.48101.219.65923.71134.925.691 内、国有企業50,6518,7260.17222,215.957,013.02.566(デタなし)79,888.02,412.0638.00.265 (31.2%)(1.9%)(30.5%)(8.2%)(13.5%)(41.6%)(6.7%) 9.2189.369.702125.22 国有控股企業10,65011,5271.08213,355.3128,848.09.648(デタなし)167,871.9982.61,198.31.220 (6.6%)(2.6%)(18.4%)(18.4%)(28.3%)(16.9%)(12.5%) 13.59107.527.911140.09 私営企業14,601273,25918.7153,244.6213,338.665.7532,289.2116,867.851.052229.13,312.114.459 (9.0%)(60.3%)(4.5%)(30.5%)(1.9%)(19.7%)(4.0%)(34.7%) 14.1664.414.5479.9935.293.531 外資企業含む、港澳台)26,83774,0452.75918,954.2189,917.110.02023,018.9148,552.36.453791.92,645.73.341 (16.6%)(16.4%)(26.1%)(27.2%)(19.7%)(25.1%)(13.6%)(27.7%) 23.9471.782.99929.0756.151.932 の他59,29485,3151.43914,937.1109,473.87.32911,189.179,701.97.1231,389.61,750.61.260 (36.6%)(18.8%)(20.5%)(15.7%)(9.6%)(13.4%)(23.9%)(18.4%) 10.7562.545.8188.0545.535.654 総計162,033452,8722.79572,707.0698,590.59.608116,968.9592,881.95.0695,805.19,544.71.644 (100%)(100%)(100%)(100%)(100%)(100%)(100%)(100%) 12.5273.195.84420.1562.123.083 中国統計年鑑鉱工業部門デの対象企業は、1998~2006年は国有企業の全及びれ以外の企業 年間収入が500万元以上の企業、2007年以降は年間収入が500万元以上の企業。 内の伸び率は、〔2010年/1999年〕1999年をる。〔内の従業員1人当総生産額、資産総計は、万元/人。 出所中国統計年鑑各年版より筆者が作

企業数 (社)総生産額  (億元)資産総計 (億元)年平均従業員数(万人)

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以上より、国有および国有控股(国有株支配)は、全体では総生産額、資産総計額とも その拡大の度合いは私営企業よりも小さいが、1人当たり生産額、1人当たり資産額ともに 私営企業のそれらよりも大きく拡大している。そして、資産当たり生産額(総生産額/資 産総計額)の数値は1999年2010年ともに国有及び国有控股(国有株支配)は私営よりも 低いが、1人当たり生産額と1人当たり資産額の推移より国有及び国有控股(国有株支配)

は私営よりも、1人当たり生産額も資産当たり生産額もその増加のスピードが速い、すなわ ち、生産性の改善のスピードが速いであろうと推定される。この点についての考察は本節 で後述する。また、国有と国有控股(国有株支配)とを比較すると、2010年の従業員数、

資産額、総産値ともに全体の数値でも 1 人当たりの数値でも国有控股(国有株支配)が大 きい。なお、2010年の1人当たり資産額によると、国有控股(国有株支配)は資本集約度 が最も高く、私営企業は労働集約度が最も高いと推定される。

なお、この統計データの対象企業は年間売上高500万元以上(1人民元=13.5円44とする と約67.5百万円以上)の規模である(但し1999~2006年の国有企業は全て対象である)

から、私営企業に多い小規模企業を含むことで私営企業の企業1 社当りまたは従業員1人 当たりの数値を極端に下げるという現象は避けられていると判断できる。

3‐2 企業の収益性・成長性・生産性

企業の収益性・成長性・生産性を売上高利益率、ROA(総資産利益率)、鉱工業増加値(Value

-added of Industry, 付加価値)、労働生産性と資本効率の相関、により見てみる。

3‐2‐1 売上高利益率

売上高利益率45は図 3-1 の通り、2010 年は国有及び国有控股企業(国有株支配企業):

7.58%(内、国有:5.60%、国有控股:8.45%)、私営企業:7.27%、外資企業(含む港澳台):

7.96%、と各企業区分間の差異は大きくない。

しかし、売上高利益率の伸長度合いは図3-2の通り、1999年の利益率を指数100とすると 2010 年は国有及び国有控股企業(国有株支配企業):273.21(内、国有:201.84、国有控 股:304.30)、私営企業:174.70、外資企業(含む港澳台):189.65、であり国有及び国有 控股企業(国有株支配企業)が最高の伸長を示している。国有と国有控股(国有株支配)

との比較では国有控股(国有株支配)が高い伸びを示している。

(「国有」と「国有控股」とのデータは、『中国統計年鑑』では2004および2006年以降 についてのみ表示されているため、「国有」と「国有控股」との指数は 1999 年の「国有・

国有控股」を100として算出した。次のROAも同様)

44 1999~2010年の年間平均の人民元為替レートは、約12~15円台/元で推移しており、

13.5円/元で換算した。(為替レートは『中国統計年鑑』による)

45 売上高利益率の分母と分子は、各々『中国統計年鑑』の「主管業務収入」と「利潤総額」。 利潤総額には営業外収益も含まれている。

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図3-1:企業区分別売上高利益率

出所:『中国統計年鑑』各年版より筆者が計算作製 0.00%

1.00%

2.00%

3.00%

4.00%

5.00%

6.00%

7.00%

8.00%

9.00%

10.00%

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

全工業 国有・国有控股 私営

外資(含む港澳台)

その他 国有 国有控股

(年)

売上高利益率(利益/売上、%)

図3-2:企業区分別売上高利益率の伸び

出所:『中国統計年鑑』各年版より筆者が計算作製 0.00

50.00 100.00 150.00 200.00 250.00 300.00 350.00 400.00

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

全工業 国有・国有控股 私営

外資(含む港澳台)

その他 国有 国有控股

(年)

(指数) 売上高利益率の伸び(指数、1999 年を100)

3‐2‐2 ROA(総資産利益率)

ROAは図3-3の通り、1999年以来私営企業が国有及び国有控股企業(国有株支配企業)

を常に上回っており、2010年は国有及び国有控股企業(国有株支配企業):5.95%(内、国 有:4.13%、国有控股:6.81%)、私営企業:12.92%、外資企業(含む港澳台):10.11%、

となっている。私営が高い要因は、統計データより私営は 1 企業当たり資産額、並びに従 業員 1 人当たり資産額ともに少なく、この事の反映である。且つ労働集約的な業種が多い ということによると推定される。

しかし、ROAの伸長度合いは図3-4の通り、1999年のROAを指数100とすると2010 年は国有及び国有控股企業(国有株支配企業): 479.70(内、国有:333.43、国有控股:

549.31)、私営企業:243.44、外資企業(含む港澳台):308.70、であり国有及び国有控股

企業(国有株支配企業)が最高の伸長を示している。国有と国有控股(国有株支配)との 比較では国有控股(国有株支配)が高い伸びを示している。

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図3-3:企業区分別ROA

出所:『中国統計年鑑』各年版より筆者が計算作製

出所:『中国統計年鑑』各年版より筆者が計算作製 0.00%

2.00%

4.00%

6.00%

8.00%

10.00%

12.00%

14.00%

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

全工業 国有・国有控股 私営

外資(含む港澳台)

その他 国有 国有控股 総資産利益率(ROA)(利益/資産、%)

(年)

図3-4:企業区分別ROAの伸び

出所:『中国統計年鑑』各年版より筆者が計算作製 0.00

100.00 200.00 300.00 400.00 500.00 600.00 700.00

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

全工業 国有・国有控股 私営

外資(含む港澳台)

その他 国有 国有控股

ROAの伸び(指数、1999年を100

(年)

(指数)

3‐2‐3 鉱工業増加値

鉱工業増加値(増加値は付加価値という意味、以後、鉱工業増加値と表記する)46は図 3-5 の通り、1999 年以来国有及び国有控股企業(国有株支配企業)が私営企業を常に上回 っており、2007年は国有及び国有控股企業(国有株支配企業):39,970.46億元、私営企業:

26,382.18億元、外資企業(含む港澳台):32,129.72億元であり、私営は国有及び国有控股

(国有株支配)の66.0%に相当する。なお2007年の鉱工業総生産額47は国有及び国有控股

(国有株支配):119,685.65億元、私営:94,023.28億元であるから私営は国有及び国有控 股(国有株支配)の 78.6%に相当するので、私営は国有及び国有控股(国有株支配)に対 して鉱工業総生産額よりも鉱工業増加値がより少ない関係にある。すなわち私営は国有及 び国有控股(国有株支配)に比較して生産工程での加工度が低い、生産性が低い、という 状況が現われている。

46 『中国統計年鑑』の「工業増加値(Value-added of Industry)」は日本語の鉱工業付加価 値に該当する。当該データは2008年(『中国統計年鑑』2009年版)以降は示されていない。

47 2007年の鉱工業総生産額は『中国統計年鑑』2008年版による。

83

一方、鉱工業増加値の伸長度合いは図3-6の通り、対前年比伸び率では私営はその絶対値 は高いが1999年以来低下傾向にあり、国有及び国有控股(国有株支配)は上昇傾向にある。

図3-5:企業区分別鉱工業増加値

出所:『中国統計年鑑』各年版より筆者が計算作製 0.00

5,000.00 10,000.00 15,000.00 20,000.00 25,000.00 30,000.00 35,000.00 40,000.00 45,000.00

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

国有・国有控股 私営

外資(含む、港澳台)

その他 鉱工業増加値(Value-added of Industry)

(億元)

(年)

図3-6:企業区分別鉱工業増加値の対前年比伸び率

出所:『中国統計年鑑』各年版より筆者が計算作製 -10.00%

0.00%

10.00%

20.00%

30.00%

40.00%

50.00%

60.00%

70.00%

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

全工業 国有・国有控股 私営

外資(含む、港澳台)

その他

鉱工業増加値(Value-added of Industry)の対前年比伸び率(%)

(年)

3‐2‐4 労働生産性と資本効率との相関

労働生産性と資本効率との相関関係を、従業員 1 人当たり鉱工業増加値と資産当り鉱工 業増加値とで見てみる(図3-7を参照)。

図 3-7 から、国有及び国有控股企業(国有株支配企業)と私営企業との関係は、両者が Y=X 線を挟んで全く正対している。すなわち国有及び国有控股(国有株支配)は労働生産 性が高いが資本効率が低い、私営とはまったく逆の様相である、ということが判る。外資

(含む港澳台)は労働生産性と資本効率ともバランスよく、労働節約的かつ資本節約的で あるが、その各々の数値は国有及び国有控股(国有株支配)や私営より低い。

また、資本集約度・労働集約度の平均的な度合いは産業の種類により異なり、すなわち 国有及び国有控股(国有株支配)には大型の設備を要する重工業や大型の石油採掘・鉱山 採掘が多くあり、私営には繊維業や消費財商品の加工製造業のような大型の設備を要しな

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