5 人民元為替レート変動の輸出財価格への影響
5.2 為替レートパススルーの存在性と完全性
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∆𝑙𝑛𝑃𝐸𝑋𝑗,𝑡 = 𝛿0+ ∑ 𝛿1𝑘∆𝑙𝑛𝐸𝑅𝑖,𝑡−𝑘
𝑛
𝑘=0
+ ∑ 𝛿2𝑘
𝑛
𝑘=0
lnIPIf𝑖,𝑡−𝑘+ ∑ 𝛿3𝑘
𝑛
𝑘=0
𝑙𝑛𝑃𝑓𝑖,𝑡−𝑘
+ ∑ 𝛿4𝑘
𝑛
𝑘=1
𝑙𝑛𝑃𝐸𝑋𝑖,𝑡−𝑘+ 𝜁1𝑙𝑛𝐸𝑅𝑖,𝑡−1+ 𝜁2𝑙𝑛𝐼𝑃𝐼𝑓𝑖,𝑡−1 + 𝜁3𝑙𝑛𝑃𝑃𝐼𝑓𝑖,𝑡−1+ 𝜖𝑡
(5-8)
(5-8)式において注目すべきは、為替レート(ER)が輸出価格指数に与える長期的な効 果𝜁1の有意性である。もし𝜁1の絶対値は 1 と等しいなら、為替レートの変動が完全に輸出 価格に転嫁されるといえる。また、𝜁1の絶対値は0から1の間になるなら、為替レートの 変動の一部しか輸出価格に転嫁されないといえる。
78 注:F検定の下方の臨界値と上方の臨界値は、5%の水準でそれぞれ2.79と3.67である。
**は5%水準で有意であることを示す。
さらに、表5-4は、AIC基準に基づき選択されたラグ数の下で、長期における各モデル の係数の推定結果がそれぞれ報告されている。前述の分析はすでに各方程式の長期均衡関 係を検証したが、それだけで為替レートパススルーが存在するとは言えない。長期均衡関 係が存在した上で、為替レートに関する係数が有意である場合に、為替レートパススルー が存在するといえる。そこて、推定された長期の弾力性の値に基づき、為替レートパスス ルーが存在するかどうかについて検討する。表5-4における弾力性の推定値は、総合、鉱 物性燃料、繊維品、電気・電子製品、機械及び輸送用機器における、為替レートの係数が 統計的に有意であることを示す。具体的には、為替レートが 1%増価したとき、総合、鉱 物性燃料、繊維品、電気・電子製品、機械及び輸送用機器の輸出価格指数が、それぞれ-0.025、-1.029、-1.767、-1.715、-1.281単位を減少する。
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表5-4 共和分検定における長期回帰係数
部門 名目実効為替レート 海外工業生産指数 海外同質商品価格
総合
-0.025**
(0.0120)
0.154**
(0.0799)
0.002 (0.002)
食料品・飼料 -1.102 (0.654)
-5.360 (6.139)
1.331 (0.848)
鉱物性燃料
-1.029* (0.573)
5.034 (11.604)
-0.076 (0.729)
化学製品
-1.534 (1.056)
6.051 (4.193)
1.411 (1.228)
木材・同製品 -1.941 (1.368)
-3.837 (2.522)
-0.098 (0.159)
繊維品
-0.767**
(0.373)
-2.142**
(1.404)
0.973 (1.827)
金属・同製品 -1.904 (2.339)
-3.251**
(1.280)
0.291 (0.332)
電気・電子製品
-0.715**
(0.404)
3.174***
(1.003)
-0.198**
(0.082)
機械及び輸送用機器 -0.281**
(0.154)
-1.856 (1.339)
0.071 (0.085)
9分類中、総合、鉱物性、繊維、電子機械、機械類の名目実効為替レートの係数が有意で ある。中国の貿易構造からみれば、2018年鉱物性、繊維、電子機械、機械類は総輸出の7 割を占める。その中で、繊維、電子機械、機械類はそれぞれ 16%、46%、8%を占めてお り、これらの企業は積極的に海外活動を参加し、相対的に為替レートの変動には敏感であ ると考えられる。
前節の結果に基づいて、総合、鉱物性、繊維、電子機械、機械類の名目実効為替レート のパススルーが完全かを検証するために、それらの係数を、-1(それらの部門における輸 出パススルーは負値である)と等しいかどうかをWald検定にて検証する。表5-5 により、
80 鉱物性以外の結果が、為替レートが完全に輸出価格指数に転嫁されるという帰無仮説を 5%レベルで棄却できる。総合、繊維、電子機械、機械類における為替レートパススルーが 不完全だといえる。
表5-5 Wald検定結果
部門 F値 p値 帰無仮説を棄却か パススルーが完全か
総合 3.695 0.0000 棄却 不完全
鉱物性燃料 1.616 0.2063 受容 完全
繊維品 4.299 0.0000 棄却 不完全
電気・電子製品 2.454 0.0320 棄却 不完全 機械及び輸送用機器 3.639 0.0054 棄却 不完全
繊維品、電気・電子製品、機械及び輸送用機器における為替レートが不完全である原因 として、それらの部門の輸出が、国際市場で相当な国際競争力が持っているため、外貨建 てで取引している場合に為替の変動に応じて価格を変更することができる。繊維品、電気・
電子製品、機械及び輸送用機器に関連ある企業が長年間海外市場に進出するため、海外相 手と取引行う間、先物為替予約、通貨オプション契約等々の為替リスク回避の対策を採用 し、輸出先相手と為替リスクをシェアできるということが考えられる。一方、鉱物性燃料 に関する企業が、国際市場ではプライステイカとして、リーダ企業が設定する諸価格を需 要しなければならない。そのため、人民元為替レートの変動が外国通貨建ての鉱物性商品 の輸出価格に完全に転嫁される傾向が高いのではないかと考えられる。