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8 結論とインプリケーション

8.2 インプリケーション

これらの分析結果は重要な政策的含意を持っている。

第 1、中国貿易収支黒字の削減のために人民元の切り上げることはあまり効果的ではな

い。マクロ経済視点から、中国の貿易構造、中国と貿易相手国の商品の関係などの原因と、

ミクロ経済視点から、企業の海外投資、企業の価格設定行為などの原因により、仮に人民 元が切り上げになっても、中国の貿易収支黒字に調整できない可能性が高い。この問題に 対して、中国産業構造の調整に力を入れ、付加価値の上昇、産業構造及び貿易構造を大き く転換すべきである。また、行政規制をさらに緩和し、市場開放を着実に推し進めること によって、輸入を一層増やし、貿易黒字を減らす必要がある。

第 2、中国の貿易収支黒字に調整するために、焦点を人民元為替レートよりも、内需刺

激策を通じて過剰貯蓄の削減、消費意欲の刺激を目指すべきである。中国現在は貯蓄と投 資ともに上昇する傾向がある。特に中国の貯蓄がGDPに対する比率は 4 割を占め、米国 の3割、日本の2割よりはるか大きいとわかる。中国の貯蓄が速く成長する理由として、

全ての所得層における貯蓄率が拡大しているのため、全体の家計貯蓄率が押上になる。ま た、医療保険、社会保障制度、金融投資などの未整備により、中国国内が金融商品に購入 する意欲が低く、安定な貯蓄を選択する人が相変わらず大きい割合を占めている。これら の問題に対して、国内の所得政策、社会政策などを積極的に講じて、国民の実質可処分所 得を引き上げ、内需を一層拡大して外需依存の経済体質から脱却すべきである。

本論文は中国のデータを用い分析を行った。その結果からみると、為替レートの変動か ら直接に貿易収支に与える影響は極めて小さいとわかる。これは決して為替レートはマク ロ経済調整の役割がなくなることを意味しない。現在の世界的な貿易収支不均衡問題は、

単純な米中2国間の問題ではなく、日本、ドイツなどの工業国、サウジアラビアなどの産

油国、ASEANなどの新興工業国なども含めた多様な黒字国と、インド、フィリピンなどの

発展途上国、イギリス、フランス、スペインなどの先進国で構成されている。その点を考 えると、人民元為替レートの変動が直接に米中二国間の貿易不均衡の現状を解消できない が、人民元為替レートの変動が中国と第三国の貿易関係を調整し、また第三国と米国の貿 易関係を調整できるではないかと考えられる。例えば、中国と日本の間は補完的な関係で ある。人民元の切り上げにより、中国の輸出が減少し、日本の輸出もともに減少すると想

126 定できる。そのため、人民元の切り上げは中国だけではなく、日本の貿易収支黒字も影響 を与えるではないかと考えられる。また、人民元の切り上げが第三国のGDPを変化させ、

総需要の変化がさらに輸出入を変化させるという効果を指す。例えば、国と東アジア諸国 の貿易構造が代替的な時、人民元の切り上げは自国財に対する需要を喚起させるので、自 国ではGDPの上昇、中国ではGDPの下落がみられる。それらは中国との間の輸出入に影 響を与え、中国では貿易収支の改善、自国では貿易収支の悪化につながる。中国の貿易収 支の改善をするとき、東南アジア諸国の貿易収支の悪化につながる。結果として、グロー バル・インバランスが縮小できる。

人民元の変動が中国貿易収支に与える影響は、大別すると直接効果と間接効果に分けら れる。本論文は人民元為替レートが貿易収支に与える直接的な影響を分析したが、間接効 果に関する分析は言及してない。人民元為替レートの変化が中国の貿易収支に与える間接 効果とは、為替レートの変化が各国のGDPを変化させ、総需要の変化がさらに輸出入を変 化させるという効果を指す。このような為替レートとGDP、GDPと貿易収支を検証してい くことが今後の一つの課題である。また、第5章と第6章の結果より、人民元為替レート が輸出・輸入価格に対するパススルー率は2015年8 月を境として異なることが確認でき たが、本論文のサンプル期間内、他のブレイクポイントが存在するかということと、為替 レートパススルーがいつから低下傾向を示しているかの検証検証などの問題をより詳しく 検証することも今後の課題である。そして、人民元為替レートと貿易収支間の関係につい て、本論文は人民元為替レートが貿易収支に与える影響のみを注目したが、実際に貿易収 支の動きも為替レートの変動も影響も与えている点を踏まれると、為替レートと貿易収支 不均衡の関係を検討するとき、貿易収支から為替レートに与える影響を考えていくことが 必要である。他方、取引ベースの貿易収支と付加価値ベースの貿易収支がかなり乖離して いる。取引ベースからみると、中国の輸出について、電気・電子製品、輸送機械は半分以 上占めている。これら部門の輸出では、海外から中間財・部品の輸入と工業製品の再輸出 が行われており、最終の輸出品に占める国内付加価値額が低くなっているのである。付加 価値の部分が低ければ低いほど、為替レートの変動が当該産業に与える影響も、従来の取 引ベースの値から想定される影響より小さくなることを示している。つまり、為替レート と貿易収支間の関係を議論するとき、ここまで為替レートの変動が取引ベースの輸出と輸 入ではなく、付加価値ベースの輸出と輸入にどれぐらいの影響を与えるかを検証すること も必要である。

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謝辞

本論文は、滋賀大学経済学研究科における研究成果を博士論文としてまとめたものであ る。

本研究を進めるにあたり、4年間終始親切且つ丁寧なご指導とご鞭撻を賜りました恩師、

本学経済学研究科・小倉明浩教授に心より感謝を申し上げます。入学以来、知識に対する 探究心と慎重な姿勢を身につけるよう、常に御忠告下さいましたことに深謝申し上げます。

これは、研究者を目指している筆者にとって、今後とも研究の指針となるに違いありませ ん。

また、本論文の作成にあたり、詳細な御助言と御指導を賜りました本学経済学研究科・

得田雅章教授に深く感謝申し上げます。得田先生からは、貴重なお時間を割いて問題発見・

解決における倫理的思考法から論文の細部の訂正にまでご指導を頂き、筆者にとって貴重 な啓示と学習の機会となりました。同時に、研究を進める上で、統計学と計量経済学に対 して、多様な御教示と御助言を賜りました本学経済学研究科・金谷太郎准教授に心から感 謝致します。

外部評価において、立教大学経済学部会計ファイナンス学科・二宮健史郎教授よりより 貴重なご助言を頂き厚くお礼申し上げます。加えて、本論文における第 5 章の内容は

『Journal of Economics and Business』2019年第2巻第4号の投稿論文を加筆修正したもの であるが、投稿に当たって匿名査読者の先生方からも大変貴重なご指導を頂戴いたしまし た。

最後に、これまで故郷で見守り続け、励ましを下さった両親及びその他親戚一同、三年 間苦楽を共に味わってきた滋賀大学院生会の皆様及び211研究室同期の皆様に感謝いたし ます。以上をもって謝辞とさせていただきます。

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参考文献

[日本語文献]

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