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温度と電子線の AlGaN/GaN HFETs の電気特性への影響

3 業務実施結果

3.2 検討文献

3.2.13 温度と電子線の AlGaN/GaN HFETs の電気特性への影響

文献名 The Effects of Temperature and Electron Radiation on the Electrical Properties of AlGaN/GaN HFETs

出典 IEEE Transaction on Nuclear Science, Vol.56, No. 6, pp.3223-3228, Dec. 2009.

著者名 Jeffrey T. Moran, John W. McClory, James C. Petrosky, and Gray C. Farlow 対象デバイス Al0.27 Ga0.73 N/GaN HFETs

実験設備 -

照射線種及び エネルギーの区分

電子線 0.5MeV, 1.0MeV 単発現象又は

積算線量効果の区分

積算線量効果 実験又は理論の区分 実験

(1) 概要

Al0.27Ga0.73N/GaN HFETs に 80K で電子照射をした。ゲートリークとトランジスタ電流(ドレイン 電流)を測定し、理論上のトンネリングモデルにあてはめた。結果は以前の研究と一致し、明らかに

放射線がAlGaNの中に低温で正電荷を帯びた点欠陥をつくることを示している。

(2) はじめに

10年以上もの間、GaNなどのIII-V族半導体は過激な温度や高周波、高放射線環境で動作す る電子デバイスのため研究対象として注目されている。GaNベースのデバイスはGaN の広禁制帯 幅(ワイドバンドギャップ)、直接遷移、熱伝導率の高さ、高周波での動作範囲、外因性キャリア制御 範囲が大きいため、先に示した応用分野ではSiベースのデバイスより適している。最近ではGaNの 合金材料は黄、緑、青、紫外光を発光する能力があり、従来の光源と比較して低コスト、高効率の新 しい光源になるため半導体研究の最先端を担っている。

GaNベースのデバイスの応用分野は宇宙、安全保障、自国防衛システム用途も含まれている。こ れを念頭におき、現在の関連研究ではGaNとGaN合金で構成されたデバイスの電気特性への影 響調査が必要とされている。本研究は Al0.27Ga0.73N/GaN ヘテロ構造電界効果型トランジスタに対 する電子線照射効果の温度依存性を特定することを目的とした。

これらの応用分野には、GaNベースのHFETsを集積化し、数年間地球軌道で動作することを要 求する人工衛星システムに搭載することも含んでいる。宇宙システム用途では地球の放射線帯から のプロトン、電子の照射環境、広範囲の温度環境(約93‐520K)でHFETsが正確に動作することが 要求される。本研究では温度と放射線の複合効果に注目した。

これまでの研究ではHFETsや類似デバイスへのプロトン、中性子、イオン、γ 線の効果に着目し ている。White,Luo,Hu,Karmarkarらは各々室温で多種のエネルギー、フルエンスのプロトンを 使い上記のAlGaN/GaN HFETsへの放射線の効果を調査した。全般的にいえば、彼らは照射後 にドレイン電流とゲートリーク電流が減少することを観察した。Sonia らは、プロトンと重イオン(炭素:

C,酸素:O,鉄:Fe)を室温で照射した。彼らは高エネルギー(>2MeV)のプロトンとイオンの両方でド レイン電流が変わらないことを観察した。低いエネルギーではプロトンに対して変化せず、重イオン

に対してドレイン電流が減少することを観察した。McCloryらは約85Kで原子炉スペクトル中性子と 電子線照射を行い、照射後の 85K 環境での測定でドレイン電流の増加を観察した。照射後デバイ スを室温まで暖めると、約85Kで観察された電流の増加は実質的に減少した。約85K環境での照 射で増加したドレイン電流は室温でのアニ―ル後に元に戻った(電流の増加が減少)。一方室温にし て減少したドレイン電流はそのままであった。照射後のゲートリーク電流は室温でのアニール後も約 85Kから室温の範囲で元に戻らずに増加した。

低温での放射線照射に対するHFETsの反応を、我々の結果と以前の研究成果を比較して考察 した。低温では点欠陥が室温よりもゆっくりと消失し、点欠陥の影響を簡単に測定できる。さらに、

我々の以前の研究が低温での放射線の影響は室温と同一ではないことを示していた。これは GaN をベースとしたデバイスの低温環境での信頼性について熟知する必要があることを示している。特に デバイスが待機動作中に宇宙で直面するような温度環境で利用される場合には重要である。本研究 は以前の結果を更新したもので、以前の研究よりも照射前後の電気測定を厳密にし、電子のエネル ギー量とフルエンス量の効果に注目している。本研究の目的は電子線照射と温度のドレイン電流、

ゲートリーク電流、閾値電圧のシフト、ゲートチャネルのキャパシタンスへの影響を見極めることであ る。ゲートリーク電流は Trap-Assisted Tunneling モデルでフィッティングした。また、Charge

Control モデルを使ってトランジスタ電流(ドレイン電流、ゲート電流)を分析し、放射線照射による

HFETの電気特性変化のメカニズムを評価した。ドレイン-ソース電流とゲートリーク電流は約85Kと 室温での照射後に増加した。閾値電圧は約 85Kと室温で照射前よりも負の方向にシフトした。観察 された照射による電気的特性変化は、室温で数回アニールを行うことでほぼ完全に回復することを 示した。

(3) 実験

HFETs は 、413μm の SiC 基 板 上 に MOVPEで成膜した2μmのアンドープGaN 層と 25nm のアンドープ AlGaN 層による

AlGaN/GaN ヘテロジャンクション上に作製

した。トランジスタはウェハ上の25×25アレイ

のHFETsと一緒に研究用マスクレイアウトと

して生産した。メタルは低温蒸着法で成膜し た。トランジスタは Si3N4のパッシベーション 膜があるものとないものの両方を作成した。

Si3N4 による表面のパッシベーション膜は

AlGaN表面の電荷を減らすのに利用されて

いて、結果としてデバイス特性を改善するこ とができる。図3.2.13-1はデバイスの断面図 を示していて、単位ゲート幅が 50μm でトー タルゲート幅100μmである。図3.2.13-2は デジタル顕微鏡像でテストウエハの断片とテ

図3.2.13-1. 評価したAl0.27Ga0.73N/GaNデバイス HFETの断面図

図3.2.13-2. 本評価に使用した素子の拡大像と結線 したFATFETをクローズアップした像

スト用の組立状態を示している。サンプルはダイシングし、トランジスタへの放射線照射の妨げとなら ない14ピンの平坦なパッケージに実装した。

これらの HFETs のサンプルに異なる入射エネルギーおよびフルエンスの電子線を照射した。照

射試験では表3.2.13-1で示すように約85Kで真 空を維持した。HFET の測定項目はドレイン電流 (Ids-Vds)、閾値電圧シフトVth、ドレイン電流-ゲート 電圧とゲート容量で約85Kと室温でデータを収集 した。ゲートリーク電流(Igs-Vgs)は約85Kから室温 まで 4K 毎に測定した。照射前において、ゲート‐

ソース電圧 Vgs = –2, –3, –4V、ドレイン‐ソース電 圧 Vds = 0〜8Vの条件で、85Kおよび室温にお いて Igs、Idsを測定した(IV測定)。ゲート–ソー ス間のヘテロ結合容量(測定周波数 1MHz)を、

Vgs= 0〜–6V の範囲で温度 85K で測定した

(CV測定)。ソースとドレインの終端はCV測定 の間共通とした。すべての照射前後の測定は冷 却機に取り付けた同一測定器具を使って行っ た。

各照射実験毎に2つの試料を測定機器に取 付け、冷却器全体をバンデグラフ加速器に取り 付けた。真空度は 10-6Torrもしくはそれ以上の 状態にして液体窒素でおおよそ 85K にサンプ ルを維持するようにした。照射中デバイスは誘 導電流でゲートにダメージが入ることを避けるた めに回路との接続を外した。

電子照射は投入するエネルギーを 0.5MeV と 1.0MeV、 フ ル エ ン ス は 5×1014 か ら 5×1015 [e-/cm2]で行った。照射試験後に室温にて特性 測定した後、大気開放し、デバイスを取り外して室 温で保管した。照射後 12,24,36,48 日におい てデバイスは約85Kと室温で同一測定を行った。

本研究では、表3.2.13-1に示すように8つのパッ シ ベ ー シ ョ ン 膜 な し の HTETs サ ン プ ル (U01~U10)と 4 つのパッシベーション膜ありのサ ンプル(P01~P04)を評価した。本要約では主に パッシベーション膜のないHFETsの結果に注目 する。

表3.2.13-1. 電子線照射実験の要約

図 3.2.13-3. 電 子 線 照 射 前 後 の 典 型 的 な HFETのIds-Vds波形@Vgs=-2V。測定温度は 85K, 300K。フルエンス量は図に記載。

図3.2.13-4. 電子線照射前後及び24日間の 室温アニール後の典型的な HFET の Ids-Vds

波形@Vgs=-2V。測定温度は85K。フルエンス 量は図に記載。

(4) 結果

照射によりIV特性とCV特性に同様な変化が す べ て の 測 定 し た デ バ イ ス で 確 認 さ れ た 。 図 3.2.13-3 は、典型的なパッシベーション膜のない HFETsの照射前後におけるIdsの温度の影響を 示している。Idsは照射により、約85Kで75%、室 温で 60%増加した。図 3.2.13-4 に,パッシベー ション膜のない HFETs において照射により増加 したドレイン電流の室温アニーリング効果を示す。

24日の室温アニーリングによりIdsがほとんど完全 に 回 復 す る こ と が わ か っ た 。 図 3.2.13-3 と 図 3.2.13-4では、ゲートのバイアスは-2Vである。図

3.2.13-5 は、照射後の閾値電圧シフト計算の入

力値を規定するためにIds-Vgs波形の線形領域を 抜き取って(分離して)外挿したものである。図 3.2.13-5 ではゲートバイアス軸(X 軸)との交点を Vgsiとして、その値をVth=Vgsi-Vds/2 として使って いる。このとき Vdsは 1.0V とした。パッシベーショ ン膜がない HFETs では、平均の照射後閾値電 圧のシフト量は-0.5V であった。照射による電気 特性の変化の分析は、ゲートリーク電流の変化と 同様に SiNのパッシベーション膜のあるデバイス とないデバイスで行った。この分析の詳細は別の 論文で詳しく説明する。

Charge Controlモデルを使うことでキャリア濃 度の変化 Δnsは閾値電

圧の変化ΔVthにより評価 できる。このキャリア濃度 変化と,ΔIdsにより求めら れ る キ ャ リ ア 濃 度 変 化 Δns = (ΔIds) / (qWve-)と を比較した。ここでΔnsは ゲートキャリア濃度の変

化、ΔIdsはドレイン電流で観察された変化、q は元の電荷量、W はゲートもしくはチャネル長、ve-は チャネル内での電子速度である。

表3.2.13-2に本実験から得られた結果を示す。一番右の欄は2つの方法が19%内の誤差でΔns を予測していること示している。

図3.2.13-6は、ゲートバイアス-4Vでのゲートリーク電流の温度に対する変化を示す。これらのプ

ロットには、照射前後のカーブと同様に24日、48日後の室温アニールのカーブも示した。放射線が 表3.2.13-2. 射線照射による2DEGキャリア濃度の計算結果。

計算値はIds-Vds測定値、Ids-Vgs測定値から導出した。

図 3.2.13-5. 電子線照射前後の典型的な HFETのIds-Vgs波形@Vds=1V。測定温度は 85K。フルエンス量は図に記載。

図 3.2.13-6. 電子線照射前後、24 日、48 日の室温アニール後の典型的なHFET の Igs-T波形@Vgs=-4V。温度範囲は90Kから 290K。フルエンス量は図に記載。