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清成 忠男

ドキュメント内 30人合体.PDF (ページ 56-60)

法政大学総長

21 世 紀 の 経 済 社 会 の 概 観 

現在、日本の社会そのものが転換期を迎えており、大学も 21 世紀の社会的ニーズに対応 していく必要があり、法政大学でも環境、高度情報化、少子・高齢化などの問題を意識して 新しい学部を創設する予定だ。

大まかに 21 世紀の経済社会を考えると、成熟経済に入って成長率はせいぜい 2〜3%もあ れば上出来だと思われる。全体としてはサステナブル・ソサエティというコンセプトに基づ き、どちらかというと生活者本位で生活環境や住環境、都市環境等を整備していくことが重 要になり、その中でも特に都市のあり方というものが一つの問題となるだろう。特に大都市 集中について考えなくてはならないが、一旦集中してしまい、社会資本もその状態に対応さ せてきたのだから、今後もマーケットメカニズムによって順調に分散していくことはあり得 ないだろう。 

サステナブル・ソサエティを考えると、環境問題への対応は一番の軸にならざるを得ない。

具体的には自動車や火力発電の分野での解決が重要であろうが、そのためにはひとりひとり のライフスタイルから変えていかなければならない。例えばスウェーデンでは、酸性雨の被 害などの体験によるものだろうが、国民の環境問題への意識が非常に高く、自治体レベルで 市民を巻き込んだ議論を展開している。自治体によっては「環境保護士」という資格を作っ て環境保護に取り組んでいるところもある。また、公共交通機関を活用した総合的な交通シ ステムが充実している。バスの乗り降りにもバリアフリーが徹底されており、道路というハ ードだけではなく、バス優先の制度など、ソフトも組み合わせた整備が行われていると感じ る。 

 

産 業 構 造 の 変 化

20 世紀を代表する大量生産型工業は成熟段階に達し、生産機能が国外に出ていっている が、この傾向はこれからも続くであろう。その一方では産業のソフト化及びサービス化が進 展し、就業構造や所得においてもサービス産業の比率が相当高まるに違いない。サービス産 業の中核部分は知的な創造活動なので、これからの大学の役割は非常に大きくなるだろう。

また、都心の再活性化は大学に依存する可能性が高く、都心型大学への回帰といった動きも あろう。

また、今後の生活者本位の時代の到来を考えると、住宅及び住環境関連、医療、福祉、介 護、環境、防災といったもののマーケットは相当に広がるだろう。特に大きく広がると予想 されるのは住宅及び住環境の分野であり、社会資本整備のあり方もこれまでの生産基盤重視 から都市づくりや情報インフラを重視する方向に少しずつ変わってくると考えられる。

高 度 情 報 化 と 集 積 及 び 分 散

高度情報化の進展により、情報が集積している拠点にいつでも円滑にアクセスできさえす ればどこに分散して住んでもよいという時代になるだろう。しかし、インターネットや電子 メールで瞬時に情報が入手できるといってもそれは定型的な情報に限られ、やはり非定型的 な情報は face‑to‑face でなければ入手できないし、人脈の重要性も存続するので、どこか に人が集まることは必要だ。今後は、一定の集積と分散が同時に進行していくのだろう。

また、これからの新しい集積は、従来の工業地帯に代表されるモノを作るための集積では なく、研究開発拠点的な集積でなければならない。こうした集積の典型であるシリコンバレ ーには多くの事業所があり、提供するサービスも年々増えていっているが、ハードの機能は 本当にミニマムのものしかなく、資材等の調達は世界最適調達に依存している。

研究開発拠点の中心となる知的創造活動は、結局は人間の頭脳に依存するので、スケール メリットは働かず人間がどこかに集まるしかない。だから大組織で囲い込むよりも、むしろ 専門家がネットワークを組む方がいい。いわゆる「中央研究所」の時代は終わり、ベンチャ ーの専門中小企業がネットワークを組み、大規模な囲い込みをせずに諸機能は基本的にアウ トソーシングで外部化されていくという構造になっていく。日本でも今まで非常に強かった 総合メーカーに元気がなく、特徴ある技術や知識を有する専業メーカーの業績がいいのもそ の現れであろう。

研 究 開 発 拠 点 型 の 集 積

日本でも、東京周辺で自然発生的に新しい集積とネットワークが形成されはじめている。

広域多摩地域と呼ばれる地域などがそうで、かつての京浜工業地帯などではない。地方部で は自然発生的にというのは困難であっても、高度情報化をうまく利用できれば可能性はある。

従来のテクノポリス構想などの問題点は、どれも金太郎アメのように同じコンセプトで行わ れてそれぞれが特徴を出せなかったことにある。例えば、各県がそれぞれ別個に農業バイオ を研究したとしても、個々の予算規模も小さく、結局何も生まれてこない。開発研究の立地 の自由度は高まってきているが、特徴のない拠点をあちこちにたくさん作っても、単なるハ イテク産業の工場誘致の手段になってしまい、集積拠点がネットワークで結ばれていなけれ ば研究開発の力は発揮できない。

知的創造活動が中心となるからには、大学との関係が重要となり、産学協同が進むだろう。

日本でも文部省が大学に対する研究費を増額しており、基礎研究が重視され始めている。基 礎研究が蓄積されてくると、大学を核とした集積がきちんと形成される。例えば、北九州市 では国公私立大学をジョイントさせ、一つのキャンパスに入れ、単位の互換性をはじめとし て連携させてしまおうという試みもあり、民間企業の研究所も参加するらしい。こういう動 きが出始めると、地方でも研究開発型の拠点が形成されていくだろう。また、拠点の形成と 同時に、どの分野で特徴を出していくかも重要で、北九州市は中国をにらんで環境技術に特 化しようとしているらしい。

国 境 を 越 え た 地 域 連 携

  グローバリゼーションの進展により nation‑state が相対化される反面、今度は国境を意 識しない region の位置づけが浮上してくるだろう。既に EU では国境を越えた地域連携が盛 んで、region を単位とした競争、そして協調が行われている。今後の交流の形は region、

nation‑state、国際機構による三重の構成になり、 region が nation‑state を超えて結び つき、それを国際機構のような超国家機構が支援するような形が主流になるのではないか。

もちろん、国益という概念がなくなるわけではないし、最近のアジア通貨危機に見られるよ うな問題を発生させないように、協力して金融市場や資金のコントロールをすることなどは 必要で、nation‑state の役割は依然重要なものとして残るのであるが。 

  アジアにおいても、既に国境を接している国々の間ではこうした連携が始まっているが、

日本は海に囲まれているため、そういう意識がまだ少ない。20 世紀の地域政策は、国境を 前提にして国の中で集中や分散を考えればよかったが、グローバリゼーションの進展により、

地域政策は根本的に変わり、国内で国土軸を議論する時代ではなくなってきている。 

ア ジ ア 諸 国 と の 関 係

日本とアジア諸国との関係はもっと密接になり、産業における生産機能などは現在以上に 国外へ出てしまうので、日本はその分だけ産業のソフト化を進めるしかない。同時に少子・

高齢化によって減少する労働力を補う意味で、移民を受け入れるかどうかの問題に直面する だろう。積極的に若い労働力を入れるべきだという意見と、日本のカルチャーが破壊される 可能性があるのでやめるべきだという意見と両論あるが、どちらかに割り切ってしまう問題 とは思えない。

これまでの大量生産型工業は資源を多量に消費する産業だったが、サステナブル・ソサエ ティを意識したこれからの産業は労働集約性が高いと考えられるので、質の高い、すなわち 知的創造活動が活発な労働力が求められ。移民を受け入れるとしてもセレクティブであるべ きだろう。ただ、今後のアジアの中でも地域連携なども想定すると、移民を受け入れること になる可能性は高く、その時発生する非常に大きな社会的摩擦に日本が耐えられるかという 議論が先にあるべきだろう。 

社 会 資 本 整 備 に 求 め ら れ る 広 域 的 な 視 点

シリコンバレーなどは自然発生的に形成されたが、日本ではかなり計画的に研究開発拠点 の基盤を整備をすることができる。地域内の交通と地域間を結ぶ交通の整備はその代表例だ ろう。もちろん道路だけでなく、交通システム全体で交通計画を立てる必要がある。

また、地域連携の単位はもっと大きくなり、region として何か特徴のある集積を作り、

市町村はその中で自らの役割を果たすことになるだろう。そのような状況下では、もちろん 福祉や住環境など市町村、すなわちローカルレベルで処理しなけばならないものもあるが、

都市づくりなどにおいては、region に注目して中心都市と周辺の市町村のネットワークを

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