第 4 章 既存地域熱供給システム需要家の震災前後の熱負荷・電力負荷の変化の分析
4.6 気温影響を考慮したピーク熱負荷・電力負荷の変化
熱負荷は日射や気温といった気象要因の影響をうけやすい。そのため、正味の負荷の変化を分析 するには、気象要因を考慮した負荷分析が必要となる。そこで本研究では気象要因として気温を用 いて分析し、気温による影響を無くした場合の負荷変化を分析する。
4.6.1 震災前後の外気温の比較
図 4.6.1に、気象庁が公開している東京都大手町地点の2009年度と2015年度の時刻別気温デー
タを降順に並べたものを示す。グラフより、震災前後で概ね気温推移は同様であるが、30℃以上の 時間数が2015年度のほうが時間数でみると多く存在していることが分かる。
図 4.6.2に、東京都大手町地点における 2009 年度と2015 年度の30℃以上、35℃以上、0℃未満 の時間数を示す。この気温は真夏日(日最高気温が30℃以上の日)、猛暑日(日最高気温が35℃以 上の日)、真冬日(日最高気温が0℃未満の日)として定義されている気温を参考にした。2009年度 は30℃以上の時間が173 時間であるのに対し、2015年度は30℃以上の時間が309 時間に増加して いる。また、35℃以上の時間は0時間から8時間に増加し、0℃未満の時間は2時間から15時間に 増加している。そのため震災前後の熱負荷変化、特にピーク負荷は気温の変化も影響していると考 えられる。
図 4.6.1 東京の2009年度と2015年度の時刻別気温の比較(デュレーションカーブ)
図 4.6.2 東京の2009年度と2015年度の時刻別気温の比較(頻度積算)
4.6.2 分析方法
分析は、永富悠『東京電力管内及び東北電力管内における気温影響を考慮した節電効果に関する 試算』4-2)と管沼祐一『日最大電力からみた東日本地域での夏期のピーク時電力消費の減少動向の分 析と考察』4-3)の論文で用いていた方法を用いる。
図 4.6.3 に、分析方法のイメージを示す。この分析方法は、X 軸に比較年度の同月同週同曜日の
日平均気温の気温差、Y 軸に比較年度の同月同週同曜日の時刻別ピーク負荷の変化率をとった散布 図を作成する。その散布図の一次回帰曲線のY切片(日平均気温差0℃)が気温影響を無くした場 合の正味の増減率となるものである。例えば、図 4.6.3 の例では、Y 切片が-0.0862 であるので、
-8.62%となる。
本研究の気温影響を無くした場合のピーク冷熱負荷の分析は、X軸を2009年度と2015年度の7・ 8月平日の同月同週同曜日の日平均気温の気温差、Y軸を2009年度と2015年度の7・8月平日の同 月同週同曜日の時刻別ピーク負荷の変化率をとり、この時の分布から得られる一次回帰曲線の Y切 片を、気温影響を考慮した場合の正味のピーク冷熱負荷の増減率とした。ピーク温熱負荷の分析は、
両年度の1・2月平日のデータを用いて分析する。
この平日2ヶ月のデータを用いた分析は、冷熱負荷は7・8月、温熱負荷は1・2月の平日の2ヶ 月のデータによる分析が最も決定係数が高くなったため、この方法を採用した。
図 4.6.3 気温影響を無くした場合の負荷分析方法のイメージ
4.6.3 分析結果・比較
図 4.6.4に冷熱負荷、図 4.6.5に温熱負荷の震災前後のピーク負荷の変化率と気温影響を考慮し
たピーク負荷の変化率の比較結果を示す。
Aビルの震災前後の気温影響を考慮していないピーク冷熱負荷は8%減少していたが、震災前後 の気温影響を考慮したピーク冷熱負荷では、6.5%減少であった。また、震災前後の気温影響を考 慮していないピーク温熱負荷は6%減少していたが、震災前後の気温影響を考慮したピーク温熱負 荷では、2.6%減少であった。
Bビルの震災前後の気温影響を考慮していないピーク冷熱負荷は17%減少していたが、震災前後 の気温影響を考慮したピーク冷熱負荷では、26.5%減少であった。また、震災前後の気温影響を考 慮していないピーク温熱負荷は27%増加していたが、震災前後の気温影響を考慮したピーク温熱 負荷では、28.6%増加であった。
Cビルの震災前後の気温影響を考慮していないピーク冷熱負荷は5%増加していたが、震災前後 の気温影響を考慮したピーク冷熱負荷では、8.6%減少であった。また、震災前後の気温影響を考 慮していないピーク温熱負荷は3%減少していたが、震災前後の気温影響を考慮したピーク温熱負
荷では、22.3%増加であった。
Dビルの震災前後の気温影響を考慮していないピーク冷熱負荷は5%増加していたが、震災前後 の気温影響を考慮したピーク冷熱負荷では、1.4%減少であった。また、震災前後の気温影響を考 慮していないピーク温熱負荷は9%増加していたが、震災前後の気温影響を考慮したピーク温熱負
荷では、23.0%増加であった。
Eビルの震災前後の気温影響を考慮していないピーク冷熱負荷は 8%減少していたが、震災前後 の気温影響を考慮したピーク冷熱負荷では、9.2%減少であった。また、震災前後の気温影響を考 慮していないピーク温熱負荷は6%減少していたが、震災前後の気温影響を考慮したピーク温熱負 荷では、0.5%減少であった。
Fビルは温熱負荷データが欠如していたため、分析を行わなかった。Fビルの震災前後の気温影 響を考慮していないピーク冷熱負荷は14%増加していたが、震災前後の気温影響を考慮したピー ク冷熱負荷では、4.8%増加であった。
Gビルの震災前後の気温影響を考慮していないピーク冷熱負荷は8%増加していたが、震災前後 の気温影響を考慮したピーク冷熱負荷では、8.7%減少であった。また、震災前後の気温影響を考 慮していないピーク温熱負荷は10%増加していたが、震災前後の気温影響を考慮したピーク温熱 負荷では、25.2%減少であった。
Hビルの気温影響を考慮した場合のピーク冷熱負荷の増減率、ピーク温熱負荷の増減率を示す。
Hビルの震災前後の気温影響を考慮していないピーク冷熱負荷は4%減少していたが、震災前後の 気温影響を考慮したピーク冷熱負荷では、20.4%減少であった。また、震災前後の気温影響を考慮 していないピーク温熱負荷は13%減少していたが、震災前後の気温影響を考慮したピーク温熱負 荷では、7.4%減少であった。
図 4.6.4 震災前後のピーク冷熱負荷の変化率と 気温影響を考慮したピーク冷熱負荷の変化率の比較結果
図 4.6.5 震災前後のピーク温熱負荷の変化率と 気温影響を考慮したピーク温熱負荷の変化率の比較結果 -8 -7
-17 -27
5
-9 5
-1
-8 -9
14
5 8
-9
-4
-20 -30
-20 -10 0 10 20 30
Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル Fビル Gビル Hビル
ピーク冷熱負荷変化率[%]
震災前後のピーク負荷の変化率 気温影響を考慮したピーク負荷の変化率
-6 -3
27 29
-3 22
9 23
-6 -1
10
-25
-13 -7
-30 -20 -10 0 10 20 30
Aビル Bビル Cビル Dビル Eビル Fビル Gビル Hビル
ピーク温熱負荷変化率[%]
震災前後のピーク負荷の変化率 気温影響を考慮したピーク負荷の変化率
4.6.4 気温影響を考慮した場合のピーク熱負荷の変化率
図 4.6.6に、気温影響を考慮した場合のピーク熱負荷の変化率による分布を示す。気温影響を考 慮した場合、冷熱負荷は全ての建物で減少傾向を示した。また、温熱負荷は 7件中3 件増加、2件 減少、1 件同程度の傾向を示した。また、ピーク熱負荷の平均変化率は冷熱負荷、温熱負荷ともに 小さかったが、気温影響を考慮した負荷の平均は、冷熱は-10%し温熱は+13%であり、同じ気温条件 で補正した負荷の変化の平均は、一般的に言われている負荷変化と同様の傾向を示した。これによ り震災後、同じ気温条件であれば熱源機器容量を削減できる可能性はあるが、実際にはピーク負荷 に影響する最高気温や最低気温は年により変化するため熱源機器総容量の削減の可能性を断定する ことは難しいと考えられる。
-30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30
-30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30
ピーク温熱増減率[%]
ピーク冷熱増減率[%]
Aビル Cビル Dビル Eビル Gビル Hビル 平均
図 4.6.6 気温影響を考慮した場合のピーク熱負荷の変化率