ニュータウン地区等の土地区画整理事業、六甲アイランドセンターや東京臨海副都心地区等のウォ ータフロント開発などがある。 行政の動きでは、東京都では、1991 年および 1994 年に「地域熱供給推進に関する指導要綱」を大 幅改訂し、「環境保全型地域熱供給推進指導基準」を創設した。これにより、未利用エネルギーの活 用、省スペース、アメニティなどの新たな方向づけが行われた。そして、名古屋市、大阪府や横浜 市でも要綱や推進指針が制定された。 未利用エネルギーの活用では、下水処理水利用の幕張新都心ハイテクビジネスパーク地区や生下 水利用の後楽一丁目地区、海水利用の大阪南港コスモタウン地区やシーサイドももち地区、河川水 利用の富山駅北地区などがある。 また、供給開始後20 年程度を迎える 1990 年代に導入された地区は全国の半分強にあたる。その ため今後、熱源システムのリニューアルを迎える地区が多いことが考えられる。1990 年に千里中央 地区、1993 年に新宿新都心地区で高効率システムを導入した設備更新が行われている。 (4)低迷期(2000 年代) 1990 年代は飛躍的に導入が進んだが、後半には日本経済のバブル崩壊による景気低迷や地価下落 等の影響により、都市開発が停滞し、地域熱供給の導入は激減した。また、高効率なパッケージ空 調機の開発普及もあり、地域熱供給にとっては厳しい時代を迎えた。前半には、晴海アイランド地 区や六本木ヒルズ地区などを始め全国14 地区で導入されるが、後半は 5 地区のみである。また、7 地区が事業廃止あるいは熱供給事業法適用外となった。 一方、世界的に地球温暖化が問題になる中で、2002 年に京都議定書が批准され、「地球温暖化対 策推進大綱」が制定された。そして、2008 年には、「低炭素型都市・地域構造や社会システムの形 成」「集約型・低炭素型都市構造の実現」などが位置づけられた。そして、低炭素都市づくりの核と して、エネルギーの面的利用システムや未利用エネルギー活用システムとしての地域熱供給が大き く期待されるようになった。そして、2 つのプラント間で連携する名駅東地区、熱源水・冷却水に 河川水を全面活用する中之島二・三丁目地区など、新しいタイプとして期待されるものが導入され た。 (5)再生期(2010 年代) 2000 年代は地域熱供給の導入にとっては低迷期であったが、2010 年代に入ると、2011 年の東日 本大震災を契機に地域熱供給の普及促進につながる動きが始まった。大震災後の計画停電や電力使 用制限など、エネルギー政策において電力需給逼迫が大きな課題となる中で、特定電気事業地区で もある六本木ヒルズ地区のコージェネレーションシステム(CGS:Cogeneration System)を用いた自 立分散型エネルギー供給システムが注目された。そして、平常時のエネルギー効率向上による省エ ネルギー・省CO2のみならず、災害時に地区の機能維持:BCD(Business Continuity District)が重要
第2章 既存地域熱供給システムの東京特別区内の建物の省エネルギーに
対する影響分析
2.1 研究概要 本章では既存地域熱供給システムの熱供給システム効率に資する基礎資料を整理する前に、地域 熱供給システムが建物の省エネルギー化に与える影響を定量的に把握するために、二つの分析を行 った。一つ目は、東京都特別区内の事務所建物に対する地域熱供給システム地区内の事務所建物の 延床面積割合の分析である。二つ目は、1998年から2015年までの18年間の熱供給システム効率及び CO2排出量の推移の分析である。 一つ目の分析では、東京都特別区内の事務所ビルを対象に、地理情報システム(以下GIS : Geographic Information System)を用いて、東京都特別区内の事務所総延床面積と地域熱供給システ ム供給地区内の事務所総延床面積を推計し、東京都特別区内の事務所建物に対する地域熱供給シス テム地区内の事務所建物の延床面積の割合を算出した。 二つ目の分析は、東京都特別区内の地域熱供給システムを対象に、18 年に亘る販売熱量や原・ 燃料使用量などの運転実績、及び供給地区面積と供給延床面積を調査し、各地域熱供給システムの CO2排出量と熱供給システム効率の推移を推計した。 2.2 東京都特別区内の建物における既存地域熱供給システムの需要家建物の割合の調査 2.2.1 使用データ概要 (1) GIS(地理情報システム) 本研究では東京都特別区内の地域熱供給システムの供給地区や需要家建物の位置を把握するため にGIS を用いた。 GIS は現実世界の現象や物事に含まれる様々な情報、要因をコンピューター上で「空間的」に管 理することで、効率的・合理的に現象を理解・分析するためのツールである。また、様々な情報を 「位置」を基に統合化することで、空間的な関係性を分析することができる。 GIS データは、地図画面上の図形(多角形:ポリゴン、線:ライン、点:ポイント等)とそれに関 連する属性情報が組み合わさっている。そのため、1 つの GIS データを構築するために、いくつか の拡張子のデータがセットになっている。中でも、図形情報は拡張子.shp の shape ファイル、属性 情報は拡張子.dbf のデータベースファイルに対応している。また、本研究では GIS データの編集に ESRI, Inc.の ArcGIS を用いた。3.3.2 分析概要 (1) 分析データの概要 a) 負荷データの特性と整理 負荷原単位作成の前段階として、使用データの整理を行う。熱負荷データは使用データのほとん どが地域熱供給の販売熱量データであるため、温熱負荷データは建物により給湯・温熱負荷を含ん だ値となっている。事務所施設は給湯負荷を含むデータが混在しているが、建物の施設上、温熱負 荷全体に対する給湯負荷の比率は非常に少ないものと考えられるので、両者を同一のデータと見な し温熱負荷として扱った。また、官公庁・宿泊施設は全ての建物の温熱負荷が給湯負荷を含む値、 病院施設は給湯負荷を含まない温熱負荷として熱負荷原単位の作成を行った。 また、地域熱供給を受けている建物は一部に個別熱源(パッケージ空調機など)を保有している 場合があるが、個別熱源による空調面積の比率が小さい建物データはそのまま分析に用いた。しか し、個別熱源面積の比率が極端に高い建物は、分析対象から除外するなどの対応を行った。事務所・ 官公庁施設に関しては、ペリメータ負荷の処理方法(パッケージ空調機など)により、地域熱供給 の販売熱量データにペリメータ負荷分を含まない建物があるが、今回使用している建物の殆どは延 床面積10,000 ㎡以上の建築物であり、全体の熱負荷に対するペリメータ負荷の比率は小さいと仮定 し、両者を区別しないで分析を行った。 また、宿泊施設の温熱負荷は全ての建物が給湯負荷を含んだ値となっているが、給湯に関しては、 地域熱供給からの受入蒸気を使用した貯湯式給湯システムである為、時刻別負荷は給湯需要をその まま反映した推移ではない点に注意が必要である。
図 4.7.1 全分析建物の震災前後の冷熱負荷率の出現頻度割合
表 5.3.9 にガスエンジンコージェネレーションの震災前後の年間稼働時間を示す。両年度におい て2 月を除き、稼働時間は同じであった。2015 年度は閏年があるため、2 月で稼働時間が多くなっ ている。
2015(GE-3 台)の場合は、GE-1 と GE-2 が 2015 年度(GE-2 台)の GE-1 の場合と同じ稼働時間数で あり、GE-3 は 2015 年度(GE-2 台)の GE-2 の場合と同じ稼働時間であった。
表 5.3.9 ガスエンジンコージェネレーションの年間稼働時間
GE-1 GE-2 GE-1 GE-2
第7章 既存地域熱供給システムのコージェネレーション設置利用形態と
リニューアル内容の調査分析
7.1 研究概要
ⅰ受電形態:個別受電 ⅰ受電形態:個別受電 ⅰ受電形態:個別受電
図7.2.5-1 A-Ⅰタイプ 図7.2.5-2 A-Ⅱタイプ 図7.2.5-3 A-Ⅲタイプ
ⅰ受電形態: プラント側 一括受電[a] ⅱ受電形態: 需要家側 一括受電[a] ⅰ受電形態: プラント側 一括受電[b] ⅰ受電形態: 個別受電
図7.2.5-4 A-Ⅳタイプ 図7.2.5-5 A-Ⅴタイプ 図7.2.5-6 A-Ⅵタイプ
7.3.2 調査結果
(1) コージェネレーションシステム設置利用形態
(5) 発電電力の供給先が変更 図7.4.7にa地区の改修前後のシステム比較図を示す。 a地区は、改修前のCGS設置利用形態がA-ⅠとA-Ⅱタイプの複合タイプであった。そして、2012年 に発電電力の供給先をプラントとプラント設置建物内需要家からプラント設置建物内需要家と一般 需要家建物に変更したことにより、改修後のCGS設置利用形態がA-ⅡとA-Ⅲタイプの複合タイプに なった。 図7.4.7 a 地区の改修前後の CGS 設置利用形態の系統図 (6) 非情時対応のみの追加 k 地区は、CGS 本体の改修ではなくプラントに設置されていた CGS をブラックアウトスタート対 応(BOS(Black out start):商用電力停電時に自動で運転を再開する機能)ができるように改修した。