4.2 東北大学電子光理学研究センターにおけるビーム試験
4.2.3 検出器試作機の S/N
J-PARCと東北大学で行ったノイズの測定結果と東北大学で行った運動量 200 MeV/cの
陽電子信号の測定結果を用いて、検出器試作機のS/N を評価した。S/N は次の式で定義さ れる。
S/N = 陽電子信号の電荷量 [e]
ENC [e] (4.2)
SlitA2013のアナログ出力モードを用いて、各検出器試作機の ch11・ch16・ch21・ch26の S/Nを評価した。図4.11に各検出器試作機のch16から得られた典型的な陽電子信号の波形 を示す。ノイズの解析はノイズ領域の波形を用いて行い、陽電子信号の解析は信号領域の波 形を用いて行った。また、陽電子信号はBDC4台にヒットのあったイベントを選択して解析 した。
hwaveV1742_0 Entries 125320 Mean 345.6 RMS 163.3
time [ns]
0 200 400 600 800 1000
pulse height [mV]
0 20 40 60 80
100 hwaveV1742_0
Entries 125320 Mean 345.6 RMS 163.3 hwaveV1742_0
hwaveV1742_1 Entries 197620 Mean 264.7 RMS 141.5
time [ns]
0 200 400 600 800 1000
pulse height [mV]
<10 0 10 20 30 40 50 60 70
80 hwaveV1742_1
Entries 197620 Mean 264.7 RMS 141.5 hwaveV1742_1
図4.11 東北大学のビーム試験における検出器試作機のch16で得られた典型的な陽電子 信号の波形。ノイズの解析はノイズ領域の波形を、陽電子信号の解析は信号領域の波形を 用いて行った。
検出器試作機で測定したノイズ
運動量200 MeV/cの陽電子ビームを照射したときに取得したデータを用いて、東北大学
で行ったビーム試験におけるノイズを見積もった。検出器試作機で得られたアナログ波形に 対して時間窓を信号領域外に設定し、その領域内の波高分布を求めた。時間窓は600 nsか ら850 nsに設定した。ノイズの解析手法は4.1.3で述べた手法と同じである。図4.12に各 検出器試作機で得られたch16のノイズの波高分布とガウス関数でフィットした結果を示す。
フィットの範囲は波高分布の平均値を中心として± 3標準偏差に設定した。表4.6に検出器
40 第4章 ビーム試験
試作機の各チャンネルにおけるノイズの標準偏差とENCの解析結果をまとめる。
h_A_noise Entries 1.2761e+07
Mean 0.1003
RMS 3.528
/ ndf
r2 3063 / 209
Constant 1.443e+05 ± 5.029e+01 Mean 0.104 ± 0.001 Sigma 3.527 ± 0.001
pulse height [mV]
<30 <20 <10 0 10 20 30
number of events
0 20 40 60 80 100 120 140
103
× h_A_noise
Entries 1.2761e+07
Mean 0.1003
RMS 3.528
/ ndf
r2 3063 / 209
Constant 1.443e+05 ± 5.029e+01 Mean 0.104 ± 0.001 Sigma 3.527 ± 0.001
h_A_noise Entries 1.2761e+07
Mean 0.1003
RMS 3.528
/ ndf
r2 3063 / 209
Constant 1.443e+05 ± 5.029e+01 Mean 0.104 ± 0.001 Sigma 3.527 ± 0.001
A-sensor ch16
h_R_noise Entries 1.2761e+07
Mean 0.09108
RMS 3.175
/ ndf
r2 2672 / 187
Constant 1.604e+05 ± 5.588e+01 Mean 0.0907 ± 0.0009 Sigma 3.174 ± 0.001
pulse height [mV]
<30 <20 <10 0 10 20 30
number of events
0 20 40 60 80 100 120 140 160
103
× h_R_noise
Entries 1.2761e+07
Mean 0.09108
RMS 3.175
/ ndf
r2 2672 / 187
Constant 1.604e+05 ± 5.588e+01 Mean 0.0907 ± 0.0009 Sigma 3.174 ± 0.001
h_R_noise Entries 1.2761e+07
Mean 0.09108
RMS 3.175
/ ndf
r2 2672 / 187
Constant 1.604e+05 ± 5.588e+01 Mean 0.0907 ± 0.0009 Sigma 3.174 ± 0.001
R-sensor ch16
図4.12 東北大学のビーム試験における検出器試作機のch16のノイズの波高分布。
表4.6 東北大学のビーム試験における検出器試作機の各チャンネルのノイズの標準偏差とENC。 Aセンサー 標準偏差 [mV] ENC [e] 試作機R 標準偏差 [mV] ENC [e]
ch11 4.4 860 ± 10 ch11 3.9 1000± 10
ch16 3.5 830 ± 10 ch16 3.2 810 ± 10
ch21 4.7 1100± 20 ch21 3.7 970 ± 10
ch26 4.3 1000± 10 ch26 4.5 1000± 10
BDCで測定した陽電子信号とヒット判定
EASIRCOモジュールは、外部からトリガー信号を入力することでそのタイミングの波高
情報を12 bitのADCに変換する。図4.13に、各ファイバーで取得した典型的なADC分布 を示す。0.5 mm角ファイバーで得られたADC分布で900 ch付近、1.0 mm角ファイバー で得られたADC分布で1300 ch付近を中心値としてなだらかなMIPのピークを確認した。
また、単一光電子(p.e.: photoelectron)による鋭いピークも確認した。このADC分布の ペデスタルと単一光電子によるピークをガウス関数でフィットして、ノイズの標準偏差と単 一光子のピークの間隔を求めた。単一光電子のピークの間隔から、ADC値を光量に換算する ことができる。陽電子信号の純度を高めるために、4台のBDCで取得したADC値に対して 閾値を設けた。閾値は、ペデスタルの平均値を中心として10標準偏差以上とし、この条件 を満たすイベントを選択して解析した。図4.14に各ファイバーで得られた光量分布を示す。
図4.13で示したADC分布に比べてMIPのピークをよりはっきりと確認することができる。
ランダウ関数にガウス関数を畳み込んだ関数でこの分布をフィットして、MIPの光量を求め
4.2 東北大学電子光理学研究センターにおけるビーム試験 41
た。MIPの光量は、BDC3 とBDC4 の0.5 mm角ファイバーで平均9.6 p.e.、1.0 mm角 ファイバーで平均23.2 p.e.であった。検出器試作機のストリップと同じ方向に0.5 mm角の シンチレーションファイバーが10本並んでいる。そこで、BDCのヒットの判定を0.5 mm 角ファイバーで得られた陽電子信号に対して0.2 MIP以上とした。
h_BDC4_5
Entries 36858
Mean 583.2
RMS 628.3
/ ndf
r2 1752 / 36
Constant 679.1 ± 8.4 Mean 6.419 ± 0.123 Sigma 12.5 ± 0.1
ADC [ch]
<1000 <500 0 500 1000 1500 2000 2500 3000
number of events
1 10 102
103
h_BDC4_5
Entries 36858
Mean 583.2
RMS 628.3
/ ndf
r2 1752 / 36
Constant 679.1 ± 8.4 Mean 6.419 ± 0.123 Sigma 12.5 ± 0.1 BDC4 ADC distribution of CH5
h_BDC4_7
Entries 72466
Mean 962.1
RMS 805.8
/ ndf
r2 3320 / 29
Constant 1335 ± 12.9 Mean 6.017 ± 0.082 Sigma 10.83 ± 0.07
ADC [ch]
<1000 <500 0 500 1000 1500 2000 2500 3000
number of events
1 10 102
103
h_BDC4_7
Entries 72466
Mean 962.1
RMS 805.8
/ ndf
r2 3320 / 29
Constant 1335 ± 12.9 Mean 6.017 ± 0.082 Sigma 10.83 ± 0.07 BDC4 ADC distribution of CH7
図 4.13 東 北 大 学 の ビ ー ム 試 験 に お け る BDC で 取 得 し た 陽 電 子 信 号 の ADC 分 布 。 BDC4のch5(0.5 mm角ファイバー)で得られたADC分布(左)。BDC4のch7(1.0 mm角ファイバー)で得られたADC分布(右)。
h_BDC4_5
Entries 3193
Mean 12.14
RMS 7.426
/ ndf
r2 66.2 / 23
Width 3.311 ± 0.126 MP 57.37 ± 0.30 Area 7.274e+04 ± 1.812e+03 GSigma 1000 ± 968.0
intensity [p.e]
0 10 20 30 40 50
number of events
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
h_BDC4_5
Entries 3193
Mean 12.14
RMS 7.426
/ ndf
r2 66.2 / 23
Width 3.311 ± 0.126 MP 57.37 ± 0.30 Area 7.274e+04 ± 1.812e+03 GSigma 1000 ± 968.0
SNRPeak: 7.37 +- 0.00
BDC4 intensity distribution of ch5
h_BDC4_7
Entries 6607
Mean 24.2
RMS 9.365
/ ndf
r2 335.6 / 49
Width 1.192 ± 0.146 MP 20.63 ± 0.26 Area 5245 ± 74.2 GSigma 7.063 ± 0.226
intensity [p.e]
0 10 20 30 40 50
number of events
0 50 100 150 200 250
h_BDC4_7
Entries 6607
Mean 24.2
RMS 9.365
/ ndf
r2 335.6 / 49
Width 1.192 ± 0.146 MP 20.63 ± 0.26 Area 5245 ± 74.2 GSigma 7.063 ± 0.226
SNRPeak: 22.68 +- 0.35
BDC4 intensity distribution of ch7
図4.14 東北大学のビーム試験におけるBDCで得られた陽電子信号の光量分布。BDC4 のch5(0.5 mm角ファイバー)で得られた光量分布(左)。BDC4のch7(1.0 mm角 ファイバー)で取得した光量分布(右)。
検出器試作機で測定した陽電子信号とS/N
運動量200 MeV/cの陽電子ビームを照射したときに取得したデータを用いて、陽電子信
号の電荷量を見積もった。各検出器試作機はFSとBSのコインシデンス信号をトリガーと してアナログ波形を取得している。信号の純度を高めるために、BDC4 台にヒットがあり、
42 第4章 ビーム試験 BDC4 台のヒット点で再構築したトラックのχ2 が10以下のイベントを選択して、検出器 試作機で得られたアナログ波形を解析した。アナログ波形に対して時間窓を信号領域(200
ns 〜 550 ns)に設定して、波形のピーク付近をガウス関数でフィットした。フィットの範
囲は平均値を中心に± 1標準偏差に設定し、得られたピークの中心値をヒストグラムに詰め た。図4.15に検出器試作機のch16で得られた陽電子信号の波高分布を示す。ランダウ関数 にガウス関数を畳み込んだ関数で波高分布をフィットし、MIP の波高を求めた。各検出器 試作機のch16で得られた MIPの波高は試作機 Aで90.4 ± 1.3 mV、試作機R で70.2 ± 0.9 mVであった。SlitA2013 チップを取り替えたあとの試作機A のch16 のゲインは26.3
± 0.4 mV/fCであった。そのため、読み出し ASICの各チャンネルのゲインを用いてMIP
の波高を電荷量に変換すると、試作機A で21500 ± 500 e、試作機Rで17700 ± 300 eと 求まった。2.2.1節で厚さ320 µmのシリコンストリップセンサーで得られる陽電子の電荷 量は24000 eと推定した。したがって、予想よりも試作機Aで20 %、試作機Rで30 %ほ ど低い電荷量が得られた。表4.7に、東北大学ビーム試験で得られた各チャンネルの陽電子 信号の波高と電荷量をまとめる。東北大学のビーム試験で測定したENCを用いて(6.2)式 からS/N を評価した。表4.8に、東北大学のビーム試験におけるS/Nの評価結果をまとめ る。次に、J-PARCのビーム試験で見積もったENCと東北大学のビーム試験で得られた陽 電子信号の電荷量を用いて各検出器試作機のch16のS/Nを評価した。J-PARCと東北大学 のビーム試験において検出器試作機で読み出したチャンネルが異なるため、各検出器試作機 のch16のみ評価した。試作機Aのch16のS/Nが24.0 ±0.6で、試作機Rのch16のS/N が21.7 ± 0.3であった。
h_A_pulseheight
Entries 1125
Mean 91.83
RMS 32.05
/ ndf
r2 34.74 / 62
Width 4.536 ± 0.535 MP 86.6 ± 0.8 Area 1920 ± 74.1 GSigma 9.388 ± 1.500
pulse height [mV]
0 50 100 150 200 250
number of events
0 10 20 30 40 50
h_A_pulseheight
Entries 1125
Mean 91.83
RMS 32.05
/ ndf
r2 34.74 / 62
Width 4.536 ± 0.535 MP 86.6 ± 0.8 Area 1920 ± 74.1 GSigma 9.388 ± 1.500
SNRPeak: 90.35 +- 1.34
A-sensor ch16 pulseheight
h_R_pulseheight
Entries 2123
Mean 71.88
RMS 32.23
/ ndf
r2 52.06 / 63
Width 4.398 ± 0.327 MP 67.6 ± 0.5 Area 3292 ± 99.0 GSigma 6.438 ± 1.068
pulse height [mV]
0 50 100 150 200 250
number of events
0 20 40 60 80 100
h_R_pulseheight
Entries 2123
Mean 71.88
RMS 32.23
/ ndf
r2 52.06 / 63
Width 4.398 ± 0.327 MP 67.6 ± 0.5 Area 3292 ± 99.0 GSigma 6.438 ± 1.068 SNRPeak: 70.17 +- 0.87
R-sensor ch16 pulseheight
図4.15 東北大学のビーム試験における検出器試作機のch16で得られた信号の波高分布。
4.2 東北大学電子光理学研究センターにおけるビーム試験 43
表4.7 東北大学のビーム試験で得られた検出器試作機の各チャンネルの陽電子信号の波高と電荷量。
試作機A 波高 [mV] 電荷量 [e] 試作機R 波高 [mV] 電荷量 [e]
ch11 105.3 ±2.2 20600 ± 500 ch11 82.8± 1.0 22000 ± 300 ch16 90.4 ± 1.3 21500 ± 500 ch16 70.2± 0.9 17700 ± 300 ch21 114.6 ±2.1 27500 ± 700 ch21 75.5± 1.8 19700 ± 500 ch26 99.8 ± 2.8 22400 ± 700 ch26 95.9± 2.7 22100 ± 600
表4.8 東北大学のビーム試験で得られたENCを用いた検出器試作機のS/Nの評価結果。
試作機A S/N 試作機R S/N ch11 23.9 ± 0.6 ch11 21.2 ± 0.3 ch16 25.8 ± 0.7 ch16 21.9 ± 0.3 ch21 24.4 ± 0.7 ch21 20.4 ± 0.5 ch26 23.2 ± 0.7 ch26 21.3 ± 0.6