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第 6 章 広域空間の磁場の地図化 70

6.10 本章のま と め

数の行列積を 計算する 場合のみ並列計算を 行い, 計算速度の高速化を 行っ て いる). そのた め, GPUを 利用する こ と で, 更なる 高速化を 達成する こ と も でき る . ガウ ス過程の計算時 間はO(n3)(nはト レ ーニン グデータ の数)であり , その主な計算時間はn×nの逆行列を 求 める こ と に用いら れる . 逆行列を GPUを 用いて高速に求める こ と は難し いと 考えら れる が,

ガウ ス過程の計算にはn×nの行列の積計算も 多く 含ま れる . こ れを GPUを 用いて 高速化 する のみでも , かな り の高速化を 実現でき る と 考え ら れる .

6.9.2 磁場地図の精度に関する 考察

構築し た地図の精度を 検証する ためには, 実際の空間の磁場を 手作業で計測し , それと 比 較する こ と が有効である . し かし ながら , 前述の通り , 本実験環境の磁場を 地図化する には,

膨大な 時間が要求さ れる . そのため本研究では, 6.3.2項で述べたよ う に, 一ヶ 所の環境に おいて のみすべて の磁場計測を 行い, それと 推定精度の比較を 行っ た. その結果から , 磁場

計測が約60 cm間隔で行われて いれば, 十分な 精度で推定ができ る こ と を 検証し た. し か

し 当然ながら , こ の推定精度は環境によ っ て , すなわち 磁場の変動の状態など によ り 変化す る と 考え ら る . 実環境中の磁場のパタ ーン は多様であり , こ れに対する 推定の精度評価など は今後の課題と な る .

一方で, 自己位置推定実験よ り , 磁場地図を 用いて 真値の位置追跡を 行う こ と ができ たこ と は, 重要な 結果である . 本実験で行っ た磁場計測では, 磁場の計測間隔が60 cm以下に なる こ と に留意し て 行っ た. すなわち , 60 cm毎には正確な計測値が取得でき て いる と 判断 でき る . こ こ で磁場分布推定において 重要なこ と は, こ の間の磁場の推定精度が, 位置推定 に利用でき る 程度の推定精度を 有し て いる かである . 本研究で採用し たMCLにおいて は,

推定の不確かさ を 考慮し て位置推定を 行う 枠組みが組み込ま れている ため, 構築し た磁場地 図を 用いた自己位置推定を 達成する こ と ができ たいえ る . こ の結果から , 少なく と も 60 cm 毎に磁場計測を 行う と いう ルールを 守る こ と で, MCLを 用いた自己位置推定へ適用可能な 磁場地図構築が可能である と 考え ら れる .

6.10 本章のま と め

本章では, 広域空間の磁場を 効率的に地図化する こ と を 目的と し て , 移動ロ ボッ ト を 用い た磁場計測, およ びガウ ス回帰過程を 用いた磁場分布推定法を 提案し た. 本手法を 端的に述 べる と , 移動ロ ボッ ト が幾何地図を 用いた自己位置推定を 行いながら 磁場計測を 行い, 効率 的に磁場の値と その位置を 取得する . こ れら の計測データ を ト レ ーニン グデータ と みな し ,

6.10 本章のま と め

ガウ ス過程回帰によ り 空間すべて の磁場分布を 推定する . こ の方法を 用いる こ と で, 広域空 間の2次元, およ び3次元の磁場地図を 構築する こ と を 達成し た.

さ ら に, 本手法を 用いた磁場地図構築が有効である こ と を 示すために, 以下のこ と を 実施 し た.

ˆ ガウ ス過程回帰によ る 磁場分布推定精度の検証.

ˆ 手作業, およ び提案手法を 用いた磁場地図構築の所要時間の比較.

ˆ 構築し た磁場地図を 利用し たMCLによ る 自己位置推定の実験.

ガウ ス過程回帰によ る 磁場分布推定の精度検証を 行う ために, ま ず一環境すべての磁場を 手 作業で計測し た. こ の計測データ を 真値と し , そこ から データ を 間引いて 回帰を 行い, その 推定精度を 検証し た. こ の結果から , 磁場計測の間隔が60 cm以下であれば, 十分な精度で 推定が行え る こ と を 示し た. ま た, こ の際に手作業での磁場計測に要し た時間と , 提案手法 によ る 磁場地図構築の時間と 比較し た結果, 提案手法によ る 磁場地図構築が手作業に比べて 約30倍はやく な る こ と を 示し た. さ ら に, 構築し た2次元の磁場地図を 用いた MCLを 提 案し , こ れによ り 自己位置推定を 行う こ と が可能になる こ と を 示すこ と で, Fig. 1.2に示す アイ ディ アを 2次元平面空間以上の空間において 拡張し て 利用でき る こ と を 明ら かにし た.

こ れら の結果から , 本章で提案する 磁場地図構築法が有効である こ と を 示し た.

第 7 結言

7.1 各章のま と め

本研究では, 自律移動ロ ボッ ト が「 正確かつ安定し た自律移動を 実現する こ と 」 を 主目的 と し た. こ の主目的を 達成する ために, 自己位置推定に焦点を 当て た. 自己位置推定は, 移 動ロ ボッ ト における 研究において ポピュ ラ ーな枠組みであり , こ れま でに多く の方法が提案 さ れている . こ れら の方法では, カメ ラ やLIDAR (Light Detection and Ranging)を 用いて 幾何ラ ン ド マーク を 取得し て自己位置推定を 行う こ と が一般的である . こ れに対し て本研究 では, 磁気セン サを 用いて 自己位置推定を 行う 方法について 言及し て き た. し かし な がら , 磁気セン サを 用いて 自己位置推定を 行う こ と は, 多く の課題が存在する ため容易ではな い.

その主な課題と し て は, 磁気セン サを 用いて 高い精度で自己位置推定を 行う こ と , およ び広 域な磁場の地図を 構築する こ と が難し いこ と が挙げら れる . 本論文は, こ れら の問題を 解決 し , 磁気セン サを 用いて 自己位置推定を 行う 方法について ま と めて いる .

磁気セン サを 用いた位置推定を 行う にあたり ま ず問題と なる こ と は, 磁場が不可視である ためにその利用法を 直感的に理解でき ないこ と にある と いえ る . そこ で第2章において , 磁 場の性質を 実験的に調査する こ と で, 磁場を 移動ロ ボッ ト のための自己位置推定やナビゲー ショ ン を 行う 際の留意点を 明ら かにし た. こ の調査から , 磁気セン サの計測値が時間経過に 伴い変化する も のの, 環境中に存在する 磁場の乱れは時間変化に対し て安定し て観測でき る こ と を 示し た. ま た, 電磁デバイ スと 磁気セン サの間に一定の距離を 設ける こ と で, 電子デ バイ スの影響を 受けずに環境磁場を 計測でき る こ と を 示し た. さ ら に, 環境中に存在する 磁 性体に よ る 磁場の乱れが, こ れら 電子デバイ ス な ど の影響に 比べて 十分大き いこ と を 示し た. こ れら の結果から , 磁場の乱れを 移動ロ ボッ ト のナビゲーショ ン に利用でき る こ と を 明 ら かにし , さ ら にこ れら の利用方法について 述べた.

第3章では, 第2章の磁場の実験的調査に 基づいて , Rahokら に よ っ て 提案さ れた磁気 ナビゲーショ ン 法の再実装を 行っ た. 磁気ナビゲーショ ン 法は, 外界情報と し て 磁場だけを 用いて 自律移動を 行う 手法であり , 本研究において も 重要な概念を 提供する 手法である . 第 3章では, 磁気ナビゲーショ ン 法の再実装に加え , 当該手法を 用いた屋外環境での自律移動 実験を 行っ た. こ の結果から , 磁気ナビゲーショ ン 法における 利点や問題点を 示し た. 磁気 ナビゲーショ ン 法における 特に顕著な問題は, 走行経路周辺の磁場の地図化し か行っ て いな

7.1 各章のま と め

いために, 走行経路から 逸脱する こ と ができ ないこ と である . 走行経路周辺の磁場のみを 地 図化し て いる 理由は, 上述の通り , 広域な 空間の磁場を 地図化する のが困難な ためである . ま た, 経路位置脱を 防いだ自律移動を 行う ために, 経路追従に関する 多大なパラ メ ータ 調整 が必要と いう 点である . こ のパラ メ ータ 調整が必要と なる 理由も , 広域な磁場の地図がない ためである . 第4およ び第5章では, 磁気ナビゲーショ ン 法と 同様に, 走行経路の磁場のみ を 地図化し た状態で自律移動を 行う 方法を 提案し て いる . 特に, 幾何情報(LIDARな ど に よ っ て 計測さ れる 幾何ラ ン ド マ ーク)を 併用する こ と で, 上記磁気ナビゲーショ ン 法の問題 を 解決し て いる .

第4章では, 第3章に おいて 明ら かに し た磁気ナビゲーショ ン 法に おけ る 問題点を 解決 する こ と を 目指し て , 分散制御シス テム に よ り 経路追従を 行う 磁気ナビゲーショ ン 法を 提 案し た. 本手法では, 磁気セン サ, LIDAR, およ びオド メ ト リ の計測値に基づき 経路追従 を 行う モジュ ール(ナビゲータ)を 複数実装し , それぞれに優先度を 付加し た. 各ナビゲー タ は, 自ら が使用する セン サの観測値を 監視し , 観測値が有用である と 判断さ れた場合に,

高い優先度で制御入力を 行う . こ の際, 最も 優先度の高いナビゲータ の制御入力に 従いロ ボッ ト は経路追従を 行う . こ れによ り , ロ ボッ ト に正確な指定経路の追従を 行わせる こ と が でき る ナビゲータ の入力が採用さ れる こ と に な り , パラ メ ータ 調整を 行う こ と な く 正確な 経路追従を 行う こ と ができ る よ う に な っ た. ま た, 実環境での道案内デモン ス ト レ ーショ

ン(ROBOMEC2013にて開催)にて確実な自律移動を 達成する こ と で, 本手法の有用性を 示

し た.

第5章では, 磁気ナビゲーショ ン 法の利点を 他の位置推定法と 併用する こ と を 目指し , 幾 何ラ ン ド マーク を ベースと し た位置推定法において, 磁場地図を 用いた位置推定法を 組み合 わせる 方法を 提案し た. 具体的には, 幾何ラ ン ド マ ーク を 用いたMonte Carlo Localization

(MCL)において , 磁場地図を 用いた姿勢推定法を 組み合わせた. こ の際, 磁場地図は磁気

ナビゲーショ ン 法と 同様に, 走行経路上の磁場し か地図化さ れて いない. そのため, 磁場に 対する 計測のモデルを 構築する こ と が不可能であり , MCLにおいて 確率的な融合を 行う こ と ができ ない. そこ で, 磁場地図を 用いた姿勢修正に関する 経験的なモデルを 適用する こ と で, 幾何地図を 用いた位置推定法と 融合する 方法を 提案し た. こ の方法によ り , パーティ ク ルの姿勢方向に関する 分散を 小さ く 保つこ と が可能と なり , 幾何ラ ン ド マ ーク の存在し ない 地点において も , 正確な自己位置推定を 行う こ と が可能と なっ た. ま た, 移動ロ ボッ ト の技 術チャ レ ン ジである つく ばチャ レ ン ジを 通し て , 多く の歩行者が行き 交う 動的な環境での位 置推定の実現, およ び本チャ レ ン ジの課題達成を 成し 遂げ, 本提案手法の有用性を 示し た.

第6章では, こ れま でに述べて き た自律移動に関する 内容から 焦点を 離し , 磁場の地図化 に関する 問題に焦点を 当てた. 磁気セン サの観測は, セン サが存在する 一点のみである ため,