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第二章 “(是)……VO 的”文と“(是)……V 的 O”文の歴史的変遷

2.3 元代・明代・清代及び五四運動以降

2.3.4 明代(1368~1644 年)

明代の文献からは、“(是) ⋯⋯VO的”文が25例、“(是) ⋯⋯V的O”文が13例確認でき た。以下では、両形式における叙述の焦点、述語動詞の音節数、述語動詞の音節数と目的語 の音節数、目的語の種類という4つの項目の使用状況を示す。

29 1.叙述の焦点

元代と同様、本節は文の叙述の焦点について考察する際、袁毓林(2003)における「焦点 のマーカー」、张友和(2012)における「焦点の範囲」、刘月华(2001)における「焦点内容の分 類」を参考にする。以下では、“(是) ⋯⋯VO的”文と“(是) ⋯⋯V的O”文の焦点範囲内で 現れたすべての成分を動作主、時間、場所、状態、方式に分類する。まずはそれぞれの例文 である。

動作主の例文

(2-45) 西门庆饮酒中间,想起问李瓶儿:「头里书童拏的那帖儿,是你与他的?」李瓶儿

道:「是门外花大舅那里来说,教你饶了那伙人罢。」《金瓶梅词话万历本》第34回 (下線部訳:さっき書生が持っていたあの書き付けはあなたが彼にあげたのか?)

時間の例文

(2-46)吴大妗听了道:“像俺们终日吃肉,却不知转世有多少罪业?”薛姑子道:“似老菩 萨,都是前生修来的福,享荣华,受富贵。譬如五谷,你春天不种下,到那有秋之时,怎望 收成?”这里说话不题。《金瓶梅词话万历本》第50回

(下線部訳:奥さまは菩薩さまみたいなもので、全て前世で立派な行いをなすったから こそ、栄華をうけり富貴を授かるのよ。)

場所の例文

(2-47)望去屋内有一双鬟女子,明艳动人。官人见了,不觉心神飘荡,注目而视。那女子 也回眸流盼,似有寄情之意。官人眷恋不舍,自此时时到彼处少坐。那女子是店家卖酒的,

就在里头做生意,不避人的。《二刻拍案惊奇》第29卷

(下線部訳:あの女はお店で酒を売っているのだ。)

例文(2-47)は、例文(2-38)のような二義性を持つ文である。一つは、文末に“人”を補う と、主語の“那女子”(あの女)の職業に対する言及となり、もう一つは、“店家”(お 店)という「場所」を強調することになる。後続文の“就在里头做生意”(ただ中で商売 するだけ)にある“在里头”は“店家”と照応しているため、この文は“店家”を強調す る焦点文であると言える。この“是”は焦点のマーカーであり、文末の“的”は文全体に アスペクト的な影響がないため、文末助詞であると考えられる。

(2-48)妇人脱得光赤条,坐在他怀里,一面用手笼揝,说道:“怪道你要烧酒吃,原来乾这

个营生!”因问:“你是那里讨来的药?”西门庆急把胡僧与他的药,从头告诉一遍。《金瓶 梅词话万历本》第50回

(下線部訳:あなたはどこで薬を求めてきたのか?)

30 状態の例文

(2-49) 小道人道:“嬷嬷休如此说!前日是与小子觌面讲的话,今日他要赖将起来。嬷嬷

再去说一说,只等小子今夜见他一见,看他当面前怎生悔得!”《二刻拍案惊奇》第2卷 (下線部訳:前日私と会って話し合ったことを⋯⋯。)

方式の例文

(2-50) 我实对你说罢了,前者打太医那两个人,是如此如此这般这般使的手段。

《金瓶梅词话万历本》第19回

(下線部訳:この間、医者を殴ったあの二人は、そのように手管を用いたのだ。)

以下の表2-9は、明代の文献から確認できた“(是) ⋯⋯VO的”の例文25例と“(是)

⋯⋯V的O”の例文13例について、それぞれの叙述の焦点の内容を示したものである。元

代と同様、明代でも動作主の叙述の焦点を「動作主のみ」、「動作主+動詞」、「動作主+そ の他」3項目に分ける。

表2-9 叙述の焦点

(是) ⋯⋯VO的 (是) ⋯⋯V的O

動作主 動作主のみ

你(2),你娘,岳母,令甥,谁(2),那个,咱 家,我一个朋友卜志道,西夏刘参将,大官 人,东京何太监,淮上一个人,同窗舍人,

天(3) 動作主+動詞

这大郎叫拿来,你自锁他在房里,大姐亲口 動作主+その他

娘在时,我这里,小人在里头

動作主のみ 灶上,薛嫂儿 動作主+動詞 你凭媒,贫僧替他

時間 該当なし 前生,前缘前世

場所 店家 那里

状態 該当なし 白,偷

方式・原因 該当なし 气恼上,惜字纸,与小子觌

面,如此如此这般这般 表2-10は、“(是) ⋯⋯VO的”文と“(是) ⋯⋯V的O”文が、動作主、時間、場所、状態、

方式、原因のいずれを取るか、その頻度をまとめたものである。

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表2-10 「叙述の焦点」例文数及び割合

(是) ⋯⋯VO的 (是) ⋯⋯V的O 合計(割合%)

動作主 25(86%) 4(14%) 29(100%)

時間 0 2(100%) 2(100%)

場所 1(50%) 1(50%) 2(100%)

状態 0 2(100%) 2(100%)

方式 0 4(100%) 4(100%)

合計 25 13 38

叙述の焦点が動作主にある場合では、“(是) ⋯⋯VO的”文が用いられやすい傾向が強く、

25例(86%)を占める。叙述の焦点が時間、状態、方式にある場合では、“(是) ⋯⋯V的O”文 が用いられやすく、それぞれ2例(100%)、2例(100%)、4例(100%)を占める。叙述の焦点 が場所の場合、“(是) ⋯⋯VO的” 文と“(是) ⋯⋯V的O”文それぞれ1例ずつ占める。

2.述語動詞の音節数

“(是) ⋯⋯VO的”文と“(是) ⋯⋯V的O”文における述語動詞の音節数を検討する。ま ず例を挙げる。

単音節動詞の例文

(2-51) 西门庆道:“那马在家歇他两日儿。这马是昨日东京翟云峰亲家送来的,是西夏刘

参将送他的,口里才四个牙儿,脚程紧慢,多有他的。……。” 《金瓶梅词话万历本》第 38回

(下線部訳:この馬は、昨日東京の親戚の翟云峯が届けてよこしたんだが、西夏の劉参 将〔官職〕からもらったんだ。)

複音節動詞(動詞句を含む)の例文

(2-52)吴大舅说:“只怕他不受人情,要些贿赂打点他。”月娘道:“他当初这官,还是咱家

照顾他的。还借咱家一百两银子,文书俺爹也没收他的。今日反恩将仇报起来!”《金瓶梅词 话万历本》第95回

(下線部訳:当初彼のこの官職は、やはり俺さまが彼に与えたのだよ。)

(2-53) 五个弟兄,一人应出一百两,先将来下本钱,替你使用去。你写起一千两的借票 来,我们收著,直等日后断过家业来到了手,你每照契还我,只近得你每一本一利,也不为 多。此外谢我们的,凭你们另商量了。那时是白得来的东西,左右是不费之惠,料然决不怠 慢了我们。《二刻拍案惊奇》第10卷

(下線部訳:当時はどのみち金のかからない恩恵だ。)

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次の表2-11では、“(是) ⋯⋯VO的”と“(是) ⋯⋯V的O”それぞれの述語動詞を取り上げ ている。

表2-11 述語動詞の音節数

(是) ⋯⋯VO的 (是) ⋯⋯V的O

単音節動詞 与(7),送(4),赐(3),许,请,卖,

做,进

娶,顿,起,安,说,讲,

寄,使 複音節動詞

(動詞句を含む)

照顾,写与(2),领到,成就,约下 修来,讨来,积来,得来,欠 下

次の表2-12は、“(是) ⋯⋯VO的”文と“(是) ⋯⋯V的O”文における動詞と目的語の音節 数に関する共起関係の頻度をまとめたものである。

表2-12 述語動詞の音節数と頻度

(是) ⋯⋯VO的 (是) ⋯⋯V的O 合計(割合%)

単音節動詞 19(70%) 8(30%) 27(100%) 複音節動詞

(動詞句を含む)

6(55%) 5(45%) 11(100%)

合計 25 13 38

単音節動詞が使われた例文は27例確認できた。そのうち、“(是) ⋯⋯VO的”文に現れ るものは19例(70%)、“(是) ⋯⋯V的O”文に現れるものは8例(30%)あった。単音節動詞 は、“(是) ⋯⋯VO的”文が用いられやすいと言える。これに対して、複音節動詞(動詞句 を含む)が使われた例文は11例確認できた。そのうち、“(是) ⋯⋯VO的”文に現れるもの は6例(55%)、“(是) ⋯⋯V的O”文に現れるものは5例(45%)あった。この結果は、複音節 動詞は“(是) ⋯⋯V的O”文に現れやすいとする牛秀兰(1991)の指摘とはやや異なる。

その上で、用いられやすい述語動詞はどのような音節の語と共起しやすいかについて調 べた。次の表2-13では、“(是) ⋯⋯VO的”文と“(是) ⋯⋯V的O”文それぞれの動詞と目 的語を音節数で分類している。

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表2-13 音節数による述語動詞と目的語の共起関係

述語動詞|目的語 (是) ⋯⋯VO的 (是) ⋯⋯V的O 単音節|単音節 送我(2),与你(3),与我(3),与

他,送他,进香,请你,许 他,卖酒,做事,赐我(2)

娶妻,顿茶,起病,安胎,

说媒,讲话

単音節|複音節 送学生,赐我们 使手段,寄东西

複音節|単音節 照顾他,成就他,约下我 修来福,讨来药,积来福

複音節|複音節 写与令侄留哥,写与闻舍人,

领到这里

得来东西,欠下业债

表2-14は、“(是) ⋯⋯VO的”文と“(是) ⋯⋯V的O”文における動詞と目的語の音節数に 関する共起関係の頻度をまとめたものである。

表2-14 音節数による述語動詞と目的語の共起関係及び頻度

(是) ⋯⋯VO的 (是) ⋯⋯V的O 合計(割合%)

単音節|単音節 17(74%) 6(26%) 23(100%) 単音節|複音節 2(50%) 2(50%) 4(100%) 複音節|単音節 3(50%) 3(50%) 6(100%) 複音節|複音節 3(60%) 2(40%) 5(100%)

合計 25 13 38

表2-12に示したように、述語動詞が単音節の場合は“(是)⋯⋯VO的”文を取る傾向が あり、述語動詞が複音節の場合は“(是)⋯⋯VO的”文、“(是)⋯⋯VO的”文のいずれもあ

る。表2-13、2-14の結果を踏まえると、「単音節動詞、単音節目的語」の組み合わせは

“(是) ⋯⋯VO的”文を取るが、それ以外の「単、複」、「複、単」、「複、複」の組み合わせ は両形式における使用頻度の差がないとわかった。

3.目的語の種類

目的語が人称代名詞、一般名詞である例文をそれぞれ挙げる。

人称代名詞の例文

(2-54)县官笑道:“疑心有奸,怎么算得奸?以前反未必有这事,是你疑错了,以后再活转

来,同住这两日夜,这就不可知。却是你自锁他在房里成就他的,此莫非是他的姻缘了。况 已死得活,世所罕有,当是天意。我看这孩子仪容可观,说话伶俐。你把女儿嫁了他,这些

34 多不消饶舌了。”《二刻拍案惊奇》第35卷

(下線部訳:しかもあなたが自ら彼を部屋に閉じ込めて、彼の〔思い〕を成し遂げさせ たのであるならば、⋯⋯。)

一般名詞

(2-55)玉楼取了一条大红段子,使玳安交铺子里傅伙计写了生时八字。吴月娘便说:“你当

初原是薛嫂儿说的媒,如今还使小厮叫将薛嫂儿来,两个同拏了帖儿去,说此亲事,才有 理。”《金瓶梅词话万历本》第91回

(下線部訳:あなたは最初、薛おばさんに仲人をしてもらったんだから、……。)

次の表2-15では、“(是) ⋯⋯VO的”と“(是) ⋯⋯V的O”それぞれの目的語をを示し た。

表2-15 目的語の種類

(是) ⋯⋯VO的 (是) ⋯⋯V的O

人称代名詞 我(8),你(4),他(5),我们

一般名詞 令侄留哥,闻舍人,学生,香,

酒,事,这里,

妻,茶,福(2),药,病,胎,媒,

话,东西(2),业债,手段

表2-16は、“(是) ⋯⋯VO的”文と“(是) ⋯⋯V的O”文が目的語に人称代名詞を取る か、一般名詞を取るかについて、その頻度をまとめたものである。

表2-16 目的語の種類と頻度

(是) ⋯⋯VO的 (是) ⋯⋯V的O 合計(割合%)

人称代名詞 18(100%) 0(0%) 18(100%) 一般名詞 7(37%) 13(63%) 20(100%)

合計 25 13 38

目的語として人称代名詞をとる例文は18例確認できた。そして18例全てが(是)⋯⋯VO 的”文に現れた。つまり、目的語が人称代名詞の場合は、“(是) ⋯⋯VO的”文を取りやすい ことがわかった。これに対して、目的語として一般名詞をとる例文は20例を確認でき た。そのうち、“(是)⋯⋯VO的”文に現れるものは7例(37%)、“(是) ⋯⋯V的O”文に現れ るものは13例(63%)であった。目的語が一般名詞の場合は、“(是) ⋯⋯V的O”文を取りや すいことがわかった。

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明代に至るまで、“(是) ⋯⋯V的O”文では人称代名詞の目的語は確認できなかった。こ れは重要な知見である。

以上、明代の“(是) ⋯⋯VO的”文と“(是) ⋯⋯V的O”文について、叙述の焦点、述語 動詞の音節数、音節数による述語動詞と目的語の共起関係、目的語の種類4つの側面から 考察してきた。考察の結果は次の通りである。

(1)叙述の焦点:焦点が動作主にある例文は“(是) ⋯⋯VO的”文と共起しやすい。これ

に対して、焦点が時間、状態、方式にある例文は“(是) ⋯⋯V的O” 文と共起しやすい。

(以上表2-9、表2-10)

(2)述語動詞:単音節動詞を含む文では、“(是) ⋯⋯VO的”文が用いられやすいと見られ

る。これに対して、複音節動詞(動詞句を含む)が使われた例文は11例を確認でき、そ のうち“(是) ⋯⋯VO的”文に現れるものは6例(55%)、“(是) ⋯⋯V的O”文に現れるもの は5例(45%)あった。複音節動詞を含む文でも、“(是) ⋯⋯VO的”文が用いられやすい傾 向が強いと見られる。(以上表2-11、表2-12)

また、「単音節動詞、単音節目的語」の組み合わせは“(是) ⋯⋯VO的”文を取るが、そ れ以外の「単、複」、「複、単」、「複、複」の組み合わせは両形式における使用頻度の差が なかった。(以上表2-13、表2-14)

(3) 目的語が人称代名詞の場合は、“(是) ⋯⋯VO的”文に現れやすい。それに対して、

目的語が一般名詞の場合は、“(是) ⋯⋯V的O”文に現れやすい。(以上表2-15、表2-16)