第 5 章 きょうだい構成が結婚行動に与える影響とその趨勢
5.3 方法
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きょうだい構成要因として,そして出生順位と同等に結婚タイミングに影響を 及ぼしていると考えられるのが,きょうだい規模である.これまでの章でもみ てきたとおり,きょうだい規模は家族の保有する資源の平等的分配量を定める 重要な要素である.前項に示した仮説においても,きょうだい規模が多ければ 異性と出会うチャンスが増えるとか,家族内でのコンフリクトが生じやすいと いったような,きょうだい規模の大小と関連した仮説がほとんどとなっている.
それらをよく見てみると,きょうだい規模が大きいと結婚タイミングが早くな るというものと,反対に結婚タイミングが遅くなるとするものとの両者が存在 し,日本のデータを用いた研究で得られている知見は必ずしも一致していない.
本研究のこれまでの章,特に第3章では,家族の資源が希釈および選択され てきょうだいに投資されている可能性が示されている.そのことをふまえれば,
規模の大きいきょうだいでは資源の獲得についてのコンフリクトが生じている ことが考えられ,ゆえに定位家族から早期に離家することが想定される.しか し近年ほどきょうだい規模は縮小しているため,それにともなってきょうだい 規模の効果はみられなくなってきていると思われる.以上をふまえ,本章では きょうだい構成が結婚行動に与える影響とその趨勢を検証していく.
111 となっている.
5.3.2 変数
初めに,結婚相手のマッチングにおける出生順位や職業階層の影響を検証す るにあたって用いた変数について述べる.まず出生順位は,本人についても配 偶者についても「一人っ子」,「弟なし長男」,「弟あり長男」,「次三 男」,「弟なし長女」,「弟あり長女」,「次三女」と分類した.これは,同 じ長男や長女であっても後続きょうだいの性別によって配偶者選択に違いが生 じるかどうかを検証するためである.また,職業階層については「農業・自営 業」と「それ以外」に分類した.第3章や第4章において家業や土地の継承必要 性と,それを担うのが長男であることが示されていたためである.また,マッ チングの構造が世代ごとに異なっている可能性を検証するために,結婚した時 点を3つに分割して「結婚コーホート」を作成した.第1コーホートが1955-1975年に結婚したカップル,第2コーホートが1976年から1995年に結婚したカ ップル,そして第3コーホートが1996年以降に結婚したカップルである.これ らの変数を用いて,出生順位と配偶者選択におけるマッチングの関連とその趨 勢を記述的に示していく.
続いて初婚タイミングの分析に用いた変数は以下のとおり.従属変数には初 婚年齢時点で1をとる初婚経験ダミーを作成した.独立変数は,きょうだい数
(ダミー),出生順位,長男ダミー,長女ダミーである.長男ダミーは回答者
(男性)に兄が1人もいない場合に1をとるダミー変数,長女ダミーは回答者
(女性)に兄や姉がおらず,弟もいない場合に1をとるダミー変数である.弟 がいない場合に限定しているのは,女性のみのきょうだいの場合に親との同居 をする立場になりやすいのが長女であるためである.
統制変数は,父親職業,両親学歴、15歳時の居住地,回答者本人の出生コー ホート,学歴および初職である.これらの統制変数を使用したのは,先行研究 で既にその影響がみとめられているきょうだい構成以外の家族背景的要因(出 身階層や居住地域)や本人の社会経済的地位および世代を統制したうえでも,
きょうだい構成が影響をもちうるかを検証するためである.
父親職業については,企業の経営者と管理職(課長以上)を「経営・管理
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職」,それ以外の正社員を「一般従業者」,農林漁業職ではない自営業を「非 農自営業」,農林漁業職を「農林漁業職」,臨時雇いや無職,職業が不明の場 合を「臨時・無職・不明」とした.両親学歴は父親か母親のいずれかが高等教 育機関を卒業している場合に1をとる「親高等教育ダミー」とした.15歳時の 居住地は,「大都市」,「中小都市」,「その他の市町村」に分類した.回答 者の本人学歴については「四年制大学以上」と「短大・高専・専門」および
「高等学校まで」の3つに分類している.最後に本人初職は,専門職・技術職 の場合を「専門・技術職」,官公庁を含め従業員が300人以上の企業や団体の 正社員・正職員を「大企業・団体(大)」,従業員300人未満の企業や団体の 正社員・正職員を「中小企業・団体」,自営業主や家族従業者を「自営業」,
派遣・パート・アルバイト・内職・無職を「臨時雇い・無職」としてある.最 後にコーホートについては,第4章の世代間移動の分析に用いたのと同様の30 歳時コーホートを使用した.すなわち「1975年以前」「1976年~85年」「1986 年以降」の3つのコーホートである.これはきょうだい規模の縮小の影響と結 婚行動の変化を考慮するためである.
きょうだい規模が縮小し,4人以上のきょうだいが少なくなってきたのは戦 後生まれのコーホートである(西野2009).また,第13回出生動向基本調査の 結果より,恋愛結婚の割合は1935年以降一貫して増加し,1960年代に見合結婚 と恋愛結婚の割合が拮抗した状態となった(国立社会保障・人口問題研究所 2007).これらをふまえ,きょうだい規模が大きく恋愛結婚の割合が増加しつ つあった時期に生まれた1975年以前コーホート,きょうだい規模の縮小が進 み,恋愛結婚の割合が見合結婚よりも完全に大きくなった1976年~1985年コー ホート,そしてきょうだい規模が一貫して小さい1986年以降生まれコーホート というように時期を区分した.各変数の平均値と標準偏差は表5.3に示すとお りである.
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表5.3 記述統計量(JGSSデータ)
Mean S.D. Mean S.D.
きょうだい構成 きょうだい数
一人っ子 0.06 0.23 0.05 0.23 2人きょうだい 0.27 0.44 0.23 0.42 3人きょうだい 0.25 0.43 0.24 0.43 4人以上きょうだい 0.42 0.49 0.47 0.50 出生順位 2.46 1.65 2.54 1.70 長男・長女ダミー 0.55 0.50 0.14 0.34 その他属性
年齢 51.84 16.47 53.62 16.55
父親職業
経営・管理職 0.11 0.31 0.08 0.27 一般従業者 0.30 0.46 0.31 0.46 非農自営業 0.21 0.40 0.20 0.40 農林漁業職 0.25 0.43 0.26 0.44 臨時・無職・不明 0.12 0.33 0.14 0.34 父親不在・無回答 0.01 0.11 0.01 0.11 両親学歴
親高等教育 0.13 0.34 0.12 0.33 それ以外 0.71 0.45 0.69 0.46 親学歴不明 0.16 0.36 0.18 0.39 15歳時居住地
大都市 0.15 0.36 0.13 0.34 中小都市 0.25 0.43 0.26 0.44 その他市町村 0.60 0.49 0.61 0.49 30歳時コーホート
1975年以前 0.43 0.49 0.47 0.50
1976~1985年 0.21 0.41 0.20 0.40
1986年以降 0.36 0.48 0.33 0.47
本人学歴
高等学校まで 0.67 0.47 0.80 0.40 短大・高専・専門 0.03 0.16 0.05 0.22 四年制大学以上 0.30 0.46 0.15 0.36 本人初職
専門・技術職 0.10 0.30 0.09 0.29 大企業・団体(大) 0.27 0.45 0.22 0.41 中小企業・団体 0.38 0.49 0.34 0.47 自営業 0.11 0.31 0.07 0.26 臨時雇い・無職 0.07 0.26 0.17 0.37 初職不明・無回答 0.06 0.23 0.12 0.32
初婚年齢 27.19 3.82 23.95 3.34
男性(N=4546) 女性(N=4904)
114 5.3.3 統計的手法
本章の多変量解析では,イベントヒストリー分析の一種である離散時間ロジ ットモデルによる推定を行う.イベントヒストリー分析を用いることで,分析 の対象となる年齢段階においてイベントが発生していない者も含めてパラメー タ推定を行うことができる.また,離散時間ロジットモデルはCox回帰モデル と同様に,イベントヒストリー分析においてよく用いられる分析手法である.
今回は初婚のタイミングを年齢で尋ねており,データ構造が1年単位となっ ている.Cox回帰モデルはイベントの発生について連続時間を仮定しており,
イベントの発生が同時であるサンプルが多くなるとパラメータ推定値の信頼性 が損なわれる可能性がある.
よって本稿では,データ上同時にイベントが起こっていてもその影響を受け ることのない離散時間ロジットモデルを採用した.男女ともに初婚というライ フイベントが起こるリスク期間については,イベントが滅多に起こらない時期 を除外し,男女とも結婚が可能となる18歳から40歳までとした.
また,性別によって平均初婚年齢が異なっていることや,先行研究の知見よ りきょうだい構成の影響には性差があると考えられることから,男女別に分析 を行う.なお,使用したソフトウェアはStata13.1である.