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マルチレベルモデルによる分析

第 3 章 きょうだい構成が学歴に与える影響とその趨勢

3.4 分析結果

3.4.3 マルチレベルモデルによる分析

(1) 長男であることの効果とジェンダー・トラックの効果

まず,長男であることそれ自体が学歴に影響を与えているかどうかを検証し たのが,表 3.3 である.四年制大学への進学については,長男であることが正 の効果をもっている.すなわち,長男は四年制大学に進学しやすい.だが,短 期大学・高等専門学校への進学しやすさや専門学校への進学しやすさについて は,長男であることの効果は確認されなかった.

加えて四年制大学とそれ以外の高等教育機関で結果を見比べてみると,四年 制大学以外の高等教育機関においては一人っ子であることの効果がみられない.

一人っ子であることのもつ大きな意味のひとつは,他のきょうだいがいないた めに,家族の資源を獲得する機会に恵まれているということである.四年制大 学への進学において一人っ子が2人きょうだいよりも有利であることにはそれ が反映されている一方で,短期大学・高等専門学校や専門学校への進学しやす さには家族の資源の配分の影響が相対的にはそれほど大きいものではないか,

費用の側面以外のメカニズムが機能していると考えられる.

続いてジェンダー・トラックが機能しているかどうかについて,男性ダミー の項より確認していこう.

10.94

16.09 19.50

34.22

39.81 37.87

36.83 47.44 42.79

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 35.00 40.00 45.00 50.00

1953-1973 1974-1983 1984-2001

(%)

女性 次三男 長男

71

3.3 マルチレベル多項ロジスティックモデル

四年制大学への進学しやすさにおける男性ダミーの効果は,統計的有意に正 の値を示している.オッズ比が約 2.6 であることをふまえると,男性は女性に 比べて四年制大学に約 2.6 倍進学しやすいといえる.さらに短大・高専の分析 結果をみてみると,男性ダミーが統計的有意に負の効果をもっていることがわ かる.したがって,男性は女性に比べて短期大学に進学しにくい.換言すれば 女性が男性よりも短期大学に進学しやすいということであり,家族属性的要因 や他の個人属性的要因を統制しても,学歴におけるジェンダー・トラックがみ とめられることが明らかとなった.加えて,専門学校への進学しやすさには性 別が影響を及ぼしていないことから,高等教育機関におけるジェンダー・トラ ックはやはり「男性は四年制大学,女性は短期大学」というトラッキングであ ることが示されたといえよう.

Coef.(S.E.) Exp(B) Coef.(S.E.) Exp(B) Coef.(S.E.) Exp(B) LEVEL2

切片 -6.298 0.002 *** -4.344 0.013 *** -4.013 0.018 ***

(0.203) (0.229) (0.208)

両親教育年数 0.465 1.592 *** 0.311 1.365 *** 0.211 1.235 ***

(0.016) (0.018) (0.016)

きょうだい数(ref:2人きょうだい)

ひとりっ子 0.196 1.216 * 0.056 1.058 -0.111 0.895

(0.095) (0.117) (0.120)

3人きょうだい -0.352 0.704 *** -0.208 0.812 ** -0.160 0.852 *

(0.070) (0.077) (0.073)

4人以上 -0.977 0.376 *** -0.944 0.389 *** -0.603 0.547 ***

(0.128) (0.147) (0.135)

LEVEL1

長男 0.118 1.125 0.076 1.079 0.020 1.021

(0.061) (0.139) (0.084)

男性ダミー 0.960 2.612 *** -1.752 0.173 *** -0.117 0.889

(0.069) (0.126) (0.085)

18歳時コーホート(ref: 1973年以前)

1974-83年 0.112 1.119 0.419 1.520 ** 0.442 1.555 ***

(0.088) (0.115) (0.121)

1984年以降 -0.206 0.814 * 0.261 1.299 * 0.759 2.136 ***

(0.090) (0.117) (0.117)

切片分散 1.633 1.371 1.088

χ2 7760.788 *** 6268.793 5608.541

四年制大学/高校 短大・高専/高校 専門学校/高校

LEVEL2 N=6413, LEVEL1 n=13631 ***p<.001, **p<.01, *p<.05, †p<.1

72 (2) 相続-教育代替関係の検証

前述の結果をふまえて,以下では四年制大学への進学のしやすさという点に 絞って話を進めたい.続く表 3.4 に示したのは,四年制大学への進学しやすさ に対して農家の長男であることの効果がみられるかどうかを検証した結果であ る.

3.4 出身階層・地域・長男ダミーの交互作用の検証

四年制大学/高等学校まで

Coef.(S.E.) Exp(B) Coef.(S.E.) Exp(B) Coef.(S.E.) Exp(B) LEVEL2

切片 -6.223 0.002 *** -6.139 0.002 *** -6.440 0.002 ***

(0.204) (0.207) (0.212)

両親教育年数 0.461 1.585 *** 0.461 1.585 *** 0.466 1.593 ***

(0.016) (0.016) (0.016)

父親農業 -0.509 0.601 ** -0.481 0.618 ** 0.211

(0.176) (0.176) (0.016)

東日本 -0.145 0.865 * 0.211

(0.062) (0.016)

きょうだい数(ref:2人きょうだい)

ひとりっ子 0.194 1.214 * 0.196 1.216 * 0.198 1.219 *

(0.095) (0.095) (0.095)

3人きょうだい -0.340 0.712 *** -0.342 0.711 *** -0.355 0.701 *

(0.070) (0.070) (0.070)

4人以上 -0.963 0.382 *** -0.973 0.378 *** -0.969 0.379 ***

(0.128) (0.128) (0.128)

LEVEL1

長男 0.111 1.117 † 0.096 1.101 0.394 1.482 **

(0.062) (0.077) (0.135)

長男×父親農業 0.131 1.140 0.048 1.049

(0.201) (0.198)

長男×東日本 0.035 1.036

(0.080)

長男×1974-83年 -0.065 0.937

(0.149)

長男×1984年以降 -0.444 0.642 **

(0.138)

男性ダミー 0.960 2.613 *** 0.961 2.614 *** 0.954 2.597 **

(0.069) (0.070) (0.070)

18歳時コーホート(ref: 1973年以前)

1974-83年 0.111 1.117 * 0.111 1.117 * 0.147 1.158

(0.088) (0.088) (0.119)

1984年以降 -0.213 0.808 * -0.210 0.810 * 0.003 1.003

(0.091) (0.091) (0.117)

切片分散 1.630 1.628 1.643

χ2 7732.977 *** 7724.215 *** 7771.317 ***

Model1 Model3

LEVEL2 N=6413, LEVEL1 n=13631 ***p<.001, **p<.01, *p<.05, †p<.1 Model2

73

Model1では,農家の長男であることによって四年制大学への進学しやすさが

異なるかどうかを検証している.「相続‐教育代替」説が適当ならば,農家の長 男であることは負の効果を示すはずである.長男×父親農業の項をみると,そ の結果は統計的に有意ではない.加えて,長男ダミーの主効果は統計的に有意 な正の効果を示している.

これらのことから,長男であることの効果は農家であるかどうかによって異 なるものではなく,総じて他のきょうだいよりも四年制大学進学に有利である といえる.この結果を見るかぎりでは,「相続‐教育代替」説は当てはまらない.

「相続‐教育代替」説が当てはまるかどうかについては,佐藤(粒来)(2004)

が指摘するように地域の文脈による違いが考えられる.東日本と西日本で長男 であることが異なる影響を及ぼしているために,農家の長男であることの影響 がみられないのかもしれない.そこで Model2において,Model1 に加えて東日 本ダミーおよび東日本ダミーと長男ダミーの交互作用項を投入した.結果とし ては東日本ダミーの主効果は統計的有意に負であるが,交互作用項の効果はみ とめられなかった.この分析結果からは,長男であることの効果が地域によっ て異なるとはいえない.表 3.4 には示していないが,それらの効果の趨勢につ いても統計的有意な効果はみられなかった.

(3) 長男の効果の趨勢と階層差

「相続-教育代替」説が表3.4に示すModel1とModel2により棄却されたが,

長男であることそれ自体は四年制大学への進学確率を高めるのも事実である.

そこで,長男であることの効果が時代ごとに異なっているのかどうかを,同じ く表 3.4 のモデル 3 で検証している.結果,長男ダミーの主効果が統計的有意 に正の値を示しており,1953年から1973 年の間,換言すれば高度成長期に18 歳となった人々については,長男であると四年制大学に進学しやすいことが明 らかにされている.

しかしながらもっとも若いコーホートである 1984 年以降に 18 歳になった 人々については,長男であることが負の効果をもっている.この結果から,長 男であることの優位性が時代によって変動しており,データ上もっとも新しい 世代では他のきょうだい員と長男とで四年制大学への進学しやすさにほとんど

74 違いがみられないといえる6

3.5 長男の効果の趨勢・階層差の交互作用の検証

上述の結果を受けて表 3.5 では,長男であることの効果とその趨勢が,出身 四年制大学/高等学校まで

Coef.(S.E.) Exp(B) Coef.(S.E.) Exp(B) LEVEL2

切片 -6.721 0.001 *** -6.720 0.001 ***

(0.245) (0.244)

両親教育年数 0.490 1.632 *** 0.490 1.632 ***

(0.019) (0.019)

きょうだい数(ref:2人きょうだい)

ひとりっ子 0.196 1.216 * 0.194 1.213 *

(0.095) (0.095)

3人きょうだい -0.353 0.702 *** -0.353 0.703 ***

(0.070) (0.070)

4人以上 -0.968 0.380 *** -0.968 0.380 ***

(0.128) (0.128)

LEVEL1

長男 0.975 2.651 *** 0.880 2.410

(0.263) (0.685)

長男×両親教育年数 -0.054 0.947 ** -0.045 0.956

(0.020) (0.061)

長男×1974-83年 -0.026 0.974 -0.261 0.770

(0.149) (0.766)

長男×1974-83年×両親教育年数 0.020 1.020 (0.067)

長男×1984年以降 -0.348 0.706 * -0.028 0.973

(0.141) (0.747)

長男×1984年以降×両親教育年数 -0.027 0.974 (0.065)

男性ダミー 0.970 2.638 *** 0.970 2.638 ***

(0.071) (0.071)

18歳時コーホート(ref: 1973年以前)

1974-83 0.132 1.141 0.132 1.142

(0.121) (0.121)

1984年以降 -0.035 0.965 -0.035 0.965

(0.120) (0.120)

切片分散 1.633 1.636

χ2 7771.317 *** 7772.306 ***

長男の効果の趨勢

Model4 Model5

LEVEL2 N=6413, LEVEL1 n=13631 ***p<.001, **p<.01, *p<.05, †p<.1

75

階層間で異なるものかどうかを検証した.家族の資源の配分が長男優先的であ り,出身階層間で保有する資源の絶対量が異なっていることを考慮すれば,出 身階層が高いほど長男であることが四年制大学への進学しやすさに与える影響 は小さくなり,逆に低階層ほど長男の効果が強くなるはずである.

Model4 の長男ダミーと両親教育年数の交互作用項の効果に注目してほしい.

この項が統計的有意に負の効果を示している.すなわち,出身階層が高い長男 ほど,四年制大学への進学しやすさにおけるきょうだい内での優位性が低下す るということである.このような長男優位の構造が時代によって異なっている かどうかを続く Model5 で確認したが,コーホートによる違いはみられなかっ た.