第 2 章 分析手法とデータ
2.2 データの概要
2.2.1 全国家族調査(NFRJ)
全国家族調査は,日本家族社会学会全国家族調査委員会が実施している全国 規模の家族調査である2).これまでに 1998年度の第1回全国家族調査(National Family Research of Japan 1998、NFRJ98),2001年度の特別調査である「戦後日 本の家族の歩み」(NFJR-S01),2003 年度の第2回全国家族調査(NFRJ03),そ して 2008 年度の第 3 回全国家族調査(NFRJ08)が実施されている.加えて,
第3回調査の調査対象者のうち調査に応諾した対象者に対して,継続してパネ
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ル調査(NFRJ-08Panel)を実施し,2013 年度に5波にわたるパネル調査を行っ ている.
NFRJの対象者は第1 回,第2回,第 3回ともに28歳以上の日本国民である
3).標本抽出は層化 2 段無作為抽出法により行われ,いずれの調査も訪問留置 法によって実施された.以下の表 2.1 は,各調査の標本規模と回収率の一覧で ある.回収率は第1回が66.5%,第 2回が 63.0%,そして第 3回が55.4%であ った.NFRJ データは回答者の家族に関する詳細な情報が得られる貴重なデー タである.
表2.1 NFRJの標本規模と回収率
調査名 実施年 計画標本規模 有効回収数 回収率
NFRJ98 1999 10500 6985 66.5
NFRJ03 2004 10000 6302 63.0
NFRJ08 2009 9400 5203 55.4
本研究では,回答者の子どもに関する情報よりきょうだいデータを作成し,
分析した.NFRJ では,回答者の子どもの数や性別4)に加えて,上から 3番目の 子どもまでについては学歴や親子関係の良好さ,援助関係の有無など詳細な情 報を得ることができる.同じ定位家族に属するきょうだい内での比較を可能に してくれるきょうだいデータとして使用できる点が,NFRJの強みである.
以下では,NFRJ98,NFRJ03,NFRJ08 を合併して作成したきょうだいデータ を用いて,きょうだい構成に関する基礎情報をまとめておく.
表 2.2 をみてみると,データ内のきょうだいは 2 人きょうだいがもっとも多 く,3人きょうだい,一人っ子がそれに続いていることがわかる.5 人以上のき ょうだいは全体の 2%ほどしかいない.きょうだい数をさらに出生コーホート 別にみたのが図2.3 である.1945年までに生まれた子どもは他のコーホートに 比べて少ないが,4 人きょうだいの比率がもっとも大きい点が特徴的である.
戦後から近年に近づくにつれて4人きょうだいや 5人以上のきょうだいの比率 はどんどん低下しており,きょうだい規模の縮小をみてとることができる.他 方で,戦後は一人っ子の比率と3人きょうだいの比率はそれほど大きく変化せ
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ず,2 人きょうだいが半数を占めるという構造は高度成長期以降変化していな い.これらのことより,きょうだい規模の縮小と,きょうだいがいる場合は 2 人か3人という,きょうだい構成の画一化が起こってきたといえよう.
表2.2 きょうだい数の分布(NFRJ)
図2.3 出生コーホート別にみたきょうだい数の分布(NFRJ,数値は度数)
人数 度数 %
1 980 7.09
2 7416 53.62
3 4374 31.62
4 797 5.76
5 195 1.41
6 54 0.39
7 9 0.07
8 3 0.02
9 3 0.02
計 13831 100.00
556 317 99
8
4530 2280 589 17
2444 1315 596
19
348 212 212 25
74 65 116 9
0% 20% 40% 60% 80% 100%
1966年以 降 1956-65 1946-55 1945年ま
で
1 2 3 4 5人以上
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表2.3 出生順位の分布(NFRJ)
続いて,データ内の個人の出生順位の分布を表 2.3 に示している.長男はき ょうだい内で最初の男性か,一人っ子の男性である.次行の長女については,
一般的な長女の定義にさらに条件をつけ加えて,「きょうだい内で最初の女性」
かつ「下に男性きょうだいのいない女性」に該当する女性,すなわち女性のみ きょうだいの第1子か,一人っ子の女性である.データ内では,長男と本研究 における長女の定義に当てはまらない女性の比率が高くなっている.きょうだ い規模が大きくなればなるほど性別構成が男女混合になりやすくなるため,長 女に当てはまる女性の全体に占める比率は低下し,それに該当しない女性の比 率は上昇する.また,きょうだい内に男性が生まれた瞬間にその個人は長男と なるが,それ以降に男性が生まれた場合にのみ非長男男性に分類されるため,
長男の比率が非長男男性に比べて高くなるのは自然である.出生コーホート別 に分布を確認してみたところ,このような出生位置の分布は世代を通じてほと んど変化していなかった.きょうだい規模が縮小し,2 人きょうだいや 3 人き ょうだいが大多数を占める社会となっても,女性のみきょうだいの比率が増加 しているわけではないということが示唆される.
2.2.2 「社会移動と社会階層」全国調査(SSM 調査)
広く SSM調査という呼称で知られる「社会移動と社会階層」全国調査は,戦 後における量的な社会階層研究の基盤となる調査である5).1955年調査より 10 年毎に実査が行われており,2015年の調査が第 7回目となる.このように,長期 にわたって,10 年ごとに繰り返し調査を行ってきた国は他に存在せず,日本の 社会学は貴重なデータを保有しているといえる(直井2008).
これまで行われきた SSM 調査は,各時点それぞれで 20 歳以上 69 歳以下の 出生位置 度数 %
長男 5047 36.49
長女 1454 10.51
非長男男性 2100 15.18 非長女女性 5230 37.81
13831 100
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日本国民が母集団となっている 6).抽出法は層化 2 段確率比例抽出であり,個 別訪問面接法のみの場合と,個別訪問面接法と留置法の両方を用いている場合 とがある.
本研究ではこれまでの SSM 調査のうち 1995 年調査と 2005 年調査のデータ を使用するが,それらの計画標本規模と回収率は表 2.4に示すとおりである.
表2.4 1995年および2005年SSM調査の標本規模と回収率
回数 実施年 票区分 計画標本規模 有効回収数 回収率
第5回 1995 A票 4032 2653 65.8
B票 4032 2704 67.1
第6回 2005 14140 5742 44.1
本研究では 30歳から64歳の男性の現職情報と父親のおもな職業についての 情報を用いて世代間移動の分析を行うが,その対象者のきょうだい数の分布お よび出生コーホート別にみた分布は,表2.5 と図2.4 に示すとおりである.
表2.5 きょうだい数の分布(SSM)
前にみたNFRJ データにおけるきょうだい数の分布に比べて,きょうだい数 が4人以上という規模の大きなきょうだいが多いことがわかる.これは NFRJ
人数 度数 %
1 217 5.66
2 1040 27.13
3 1055 27.52
4 617 16.09
5 369 9.62
6 243 6.34
7 151 3.94
8 87 2.27
9 30 0.78
10 17 0.44
11 6 0.16
12 2 0.05
計 3834 100.00
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データを用いたきょうだいデータでは,回答者の子どものデータを用いている ために戦後生まれのきょうだいが相対的に多くなっていたのに対し,SSMデ ータでは戦前から戦後10年ごろまでの産業復興期に生まれた者がそれ以降に 生まれた者に比べて相対的に多いためである.出生コーホート別の分布をみて みると,世代間の変化の動向はNFRJデータとほとんど同様である. 2 人き ょうだいおよび3人きょうだいの比率が,戦後の出生コーホートである 1946 年コーホートより増加していること,1946-55年コーホートを境にして 4人 以上のきょうだいをもつ者の比率が減少していることが明らかである.この結 果は,合計特殊出生率が戦後間もなくは高い状態で推移し,のちに減少してい ったこととも整合的である.また,一人っ子の比率については増加傾向にある が急激な変化はみられず,高度成長期以降は安定的に全体の6~7%ほどを占 めているととらえられよう.一人っ子については安田(1971)の分析で用いら れたサンプルにおける一人っ子の比率17.9%と比較するとかなり少なくなって いるが,NFRJデータにおいても一人っ子の比率が10%以下であったことを考 慮すれば,この数値は妥当な数値であると考えられる.
図2.4 出生コーホート別にみたきょうだい数の分布(SSM,数値は度数)
続いて出生順位の分布を確かめてみると,本データでは長男に当たる人が約 半数を占め,中間子や末子に当たる人がそれぞれ20%程度となっている.なお
32 84 56 45
247 405 287
101
167 292 399
197
23 92 289
213
12 53 263 577
0% 20% 40% 60% 80% 100%
1966年以降 1956-65 1946-55 1945年まで
1 2 3 4 5人以上
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ここでの出生順位は,女性のきょうだいをすべて除き,男性のみでみた場合の 名義尺度的な出生順位であることには注意されたい.表 2.6 の分布を出生コー ホートごとに示した図 2.5 を見ると,中間子の比率の減少が著しいことが一目 瞭然である.きょうだい規模が縮小しているということは,かつて中間子にあ たったきょうだい員の比率が減少し,変わって長子や末子の比率が増加すると いうことを意味する.それがこの図にはっきり示されているといえよう.
表2.6 出生順位の分布(SSM,男性のみ)
図2.5 出生コーホート別にみた出生順位の分布(SSM,数値は度数)