第 5 章 タブレット PC による入力環境の認知 負荷軽減
5.5 文章入力時の誤記率の比較
いて分散分析した結果,ペンタブレットとタブレットPCにおいて,5%水準で有意差が あった(ペンタブレット:F(4,45) = 12.22,p < .01,タブレットPC:F(4,45) = 15.79, p < .01).
次に,コンテンツ形式毎にTukeyの方法で多重比較を行った.結果を表5.3と表5.4に 示す.
以上の結果から得られた,各デバイスで作成されたメモ書きの特徴は,以下の通りで ある.
紙媒体:全コンテンツにおいて,重要語やナレーションによる解説がコンテンツで の登場順に書き写されている.また,図や矢印等を使って,各語の関係や補足等も 書き込まれている.テキスト図と動画コンテンツにおけるメモ書きの量が多い.
キーボード:全コンテンツにおいて,重要語だけがコンテンツでの登場順に入力さ れている.
タブレットPC:テキスト図と静止画コンテンツにおいては,提示教材上にナレー ションによる補足が書き加えられていることが多い.テキストとテキスト+静止画 コンテンツにおいては,提示教材上の文章および重要語を下線引きや丸で囲むこと が多い.また,ナレーションによる補足や,提示教材上に記載されている単語や数 値を書き写す行為も見られた.動画コンテンツにおいては,他のコンテンツよりメ モ書きが多く,重要語やナレーションによる解説がコンテンツでの登場順に書き写 されている.動画コンテンツは,コンテンツ内の情報を学習後,資料として取り出 せないため,メモを多く残そうとする傾向が見られた.
ペンタブレット:タブレットPCと同様の書込みであったが,文字による書込み量 がタブレットPCよりも若干少ない.
コンテンツ形式毎に,書込み無しの水準を除く書込み方法を1要因として,誤記率に ついて分散分析した結果,全てのコンテンツ形式において5%水準で有意差があった(テ キスト:F(3,36) = 3.78,p < .05,テキスト図:F(3,36) = 9.33,p < .01,テキスト+静止 画:F(3,36) = 10.49,p < .01,静止画:F(3,36) = 7.82, p < .01,動画:F(3,36) = 8.06, p < .01).
次に,コンテンツ形式毎にTukeyの方法で多重比較を行った.その結果,タブレット PCでの入力は,全てのコンテンツ形式においてキーボードでの入力より有意水準5%で 誤記率が低かった.また,タブレットPCと紙媒体およびペンタブレットの間では誤記率
5.5 文章入力時の誤記率の比較 67
表5.3: 各デバイスの書込み文字数の多重比較
検定統計量 平均値の差 検定結果 紙媒体
テキスト テキスト図 −4.91 −44.90 * P<0.05 . テキスト+静止画 0.66 6.00 P>0.05 静止画 0.37 3.40 P>0.05
動画 −5.57 −50.90 * P<0.05 .
テキスト図 テキスト+静止画 5.57 50.90 * P<0.05 .
静止画 5.28 48.30 * P<0.05 .
動画 −0.66 −6.00 P>0.05 テキスト+静止画 静止画 −0.28 −2.60 P>0.05
動画 −6.23 −56.90 * P<0.05 .
静止画 動画 −5.94 −54.30 * P<0.05 .
キーボード
テキスト テキスト図 1.50 14.60 P>0.05 テキスト+静止画 3.88 37.70 * P<0.05 .
静止画 6.27 60.90 * P<0.05 .
動画 3.30 32.10 * P<0.05 .
テキスト図 テキスト+静止画 2.38 23.10 P>0.05
静止画 4.76 46.30 * P<0.05 .
動画 1.80 17.50 P>0.05
テキスト+静止画 静止画 2.39 23.20 P>0.05 動画 −0.58 −5.60 P>0.05
静止画 動画 −2.96 −28.80 * P<0.05 .
ペンタブレット
テキスト テキスト図 −4.11 −21.50 * P<0.05 . テキスト+静止画 −2.83 −14.80 P>0.05
静止画 −3.46 −18.10 * P<0.05 .
動画 −8.31 −43.50 * P<0.05 .
テキスト図 テキスト+静止画 1.28 6.70 P>0.05 静止画 0.65 3.40 P>0.05
動画 −4.20 −22.00 * P<0.05 .
テキスト+静止画 静止画 −0.63 −3.30 P>0.05
動画 −5.48 −28.70 * P<0.05 .
静止画 動画 −4.85 −25.40 * P<0.05 .
タブレットPC
テキスト テキスト図 −2.70 −21.40 P>0.05 テキスト+静止画 −3.97 −31.50 * P<0.05 .
静止画 −3.12 −24.70 * P<0.05 .
動画 −8.28 −65.60 * P<0.05 .
テキスト図 テキスト+静止画 −1.27 −10.10 P>0.05 静止画 −0.42 −3.30 P>0.05
動画 −5.58 −44.20 * P<0.05 .
テキスト+静止画 静止画 0.86 6.80 P>0.05
動画 −4.30 −34.10 * P<0.05 .
静止画 動画 −5.16 −40.90 * P<0.05 .
表5.4: 各デバイスの文字以外の書込み数の多重比較
検定統計量 平均値の差 検定結果 ペンタブレット
テキスト テキスト図 3.26 7.50 * P<0.05 . テキスト+静止画 −0.96 −2.20 P>0.05 静止画 1.48 3.40 P>0.05
動画 5.17 11.90 * P<0.05 .
テキスト図 テキスト+静止画 −4.22 −9.70 * P<0.05 . 静止画 −1.78 −4.10 P>0.05 動画 1.91 4.40 P>0.05 テキスト+静止画 静止画 2.43 5.60 P>0.05
動画 6.13 14.10 * P<0.05 .
静止画 動画 3.69 8.50 * P<0.05 .
タブレットPC
テキスト テキスト図 4.28 11.60 * P<0.05 . テキスト+静止画 −0.41 −1.10 P>0.05
静止画 4.54 12.30 * P<0.05 .
動画 5.68 15.40 * P<0.05 .
テキスト図 テキスト+静止画 −4.68 −12.70 * P<0.05 . 静止画 0.26 0.70 P>0.05 動画 1.40 3.80 P>0.05 テキスト+静止画 静止画 4.94 13.40 * P<0.05 .
動画 6.08 16.50 * P>0.05 .
静止画 動画 1.14 3.10 P>0.05
に有意差が無かったことから,手書き入力はキーボード入力と比較して,誤記を抑えて書 込みを行えると言える.
日本語のキーボード入力には,音韻をローマ字に変換→ローマ字入力→平仮名→漢字・
片仮名へ変換といった作業を伴う.この一連の作業の中で一箇所でも誤字や脱字がある,ま たは,正しい漢字表記が分からないと,最終的に正しい単語に変換できなくなる.その間 もナレーションは再生され続けるため,誤った文章をそのままにして次のメモ書きに移っ てしまうことがあると考えられる.一方,手書きでは,分からない漢字は瞬時に平仮名で 記入するため,誤記が抑えられたと思われる.
この結果から,手書きは,キーボード入力の日本語変換のような作業がないため,文 章入力時の操作にかかる外的認知負荷を減少させることが示された.