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第 5 章 タブレット PC による入力環境の認知 負荷軽減

5.4 実験

本章では,eラーニング学習中に用いられる様々な書込み方法(書込み無し,紙媒体へ の書込み,キーボードによる書込み,ペンタブレットによる書込み,タブレットPCによ る書込み)を,eラーニング学習での様々な形式のコンテンツ提示環境(ナレーションを 含む,(1)テキスト,(2)テキスト図,(3)テキスト+静止画,(4)静止画,(5)動画)の下 で行い,タブレットPCを用いたeラーニング学習環境の効果の検証を行う.実験の詳細 は次節にて示す.

5.4 実験

5.4.1 実験概要

本実験は,学習者の入力デバイスの使用の様子,および書込み時の視点を確認するた め,アイマークレコーダを用いて,コンテンツ受講中の注視点を測定した.更に受講後テ ストを行うことで,マルチメディア教材におけるメモ書きの学習効果について検証し,ア ンケート調査から入力デバイスに対する学習者の主観評価を分析する.

本実験には被験者として情報系の工学部・工学研究科に在籍する3年生以上の大学習 者・大学院生50名が参加した.被験者は全員,キーボード入力は支障なく日常的に行え,

一般的にはキーボード熟達者に分類される.実験の様子を図5.1に示す.

5.4.2 実験機材

実験機材にはコンテンツ提示PC(モニタサイズ:19in)と,学習者の注視点移動データ を計測するために眼球運動測定装置であるアイマークレコーダ(Nac EMR-8, Tobii X50),

入力デバイスにはキーボード,ペンタブレット(WACOM intous3 PTZ-630),タブレッ トPC(HP EliteBook 2730p)を用いた.なお,タブレットPCでのペンの認識方法には,

ペンをディスプレイに押しつけた時の圧力で認識する抵抗膜方式(感圧式)と,専用ペン を近づけた時に電磁誘導を起こして認識する電磁誘導方式がある.抵抗膜方式はペンだけ ではなく指などでも操作できるため,書込み時に画面上に手を置くと誤作動を起こす可能 性がある.そのため,本論では専用ペン以外では反応しない電磁誘導方式のタブレットPC を採用した.

実験中,学習者はPCモニタ上のeラーニング・コンテンツで学習しながら,以下の 方法で書込みを行う.

ˆ コンテンツ提示のみ(書込み無し)

図5.1: 実験の様子(1:紙媒体,2:キーボード,3:ペンタブレット,4:タブレットPC)

ˆ PC外部の紙媒体(A4紙)へのメモ書き

ˆ eラーニング提示コンテンツ外部へのキーボードによるメモ書き

ˆ eラーニング提示コンテンツ上へのペンタブレットによる書込み(ペンタブレットで は,手元のタブレット上に専用ペンを使って書込む.そのため,画面への直接的な 書込みはできない)

ˆ eラーニング提示コンテンツ上へのタブレットPCによる書込み(ペンを使って画面 に直接書込める)

本実験で構築したペンタブレットとタブレットPCを用いたeラーニング学習環境では,コ ンテンツ受講中の操作や書込みは全て専用ペンで行われる.ページの切り替え操作は,画 面上のアイコンをペンでタップすることで行われ,アイコン以外の画面領域では書込みが 行われる.動画以外のコンテンツは全画面表示され,ページの切り替えと同時に講師音声

5.4 実験 63

(ナレーション)が再生される.動画コンテンツの場合は画面左上に動画が表示されてお り,それ以外の空白に自由にメモ書きを行うようにしている.画面上の書込み内容はペー ジ単位で切り替わり,その内容を画像として保存できる.

本実験では,教材内容がそれぞれ異なる5つの提示形式で実験を行った.実験に使用 した教材の提示形式と内容は,形式1:テキスト「知識社会の大学」(再生時間3分28秒),

形式2:テキスト図「eラーニング専門家の協働体制」(再生時間2分32秒),形式3:テ キスト+静止画「雷の発生原理」(再生時間3分27秒),形式4:静止画「自動車のフッ トブレーキ」(再生時間1分56秒),形式5:動画「アメダスの仕組み」(再生時間2分26 秒)である.画面表示例を図5.2に示す.提示形式と内容の組み合わせは,それらが最も 効果的になると期待される組み合わせとした.具体的には,テキストコンテンツでは,物 理的実態がない概念について説明しているコンテンツ,テキスト図コンテンツは,概念の 関係について説明しているコンテンツ,静止画コンテンツは,物理的実態がある概念につ いて説明しているコンテンツ,動画コンテンツは,物理的実態の動作を説明しているコン テンツ,としている.本研究では,教材内容と提示形式の組み合わせが固定した実験デザ インであるが,これは主な研究目標が,入力デバイスの違いが学習に与える影響の比較で あるためである.

図 5.2: コンテンツ画面

5.4.3 実験手順

学習者に対して実験の趣旨を説明する上で,あらかじめ,後日実験中に書いたメモ書 きを見ながら学習内容について振り返ってもらうことを伝えた.学習者はキーボード熟達 度について均一であると仮定し,表5.1の実験グループのひとつにランダムに割り当てら れる.まず,受講前に,実験後のテストと同内容のプレテストを受ける.そのため,学習 者はコンテンツ視聴前に学習内容が分かっている状態である.次に,学習者はアイマーク レコーダを装着してから,表5.1の実験グループの書込み方法パターンで学習を行う.こ のデザインでは各実験コンテンツの書込み方法パターンにつき10名が割り当てられる.学 習および書込み可能時間はコンテンツの再生時間通りの一度限りで,繰り返し再生は禁止 する.

表5.1: 実験における書込み方法パターン

実験グループ テキスト テキスト図 テキスト図+静止画 静止画 動画 1 書込み無し キーボード ペンタブレット タブレットPC 2 キーボード ペンタブレット タブレットPC 書込み無し 3 キーボード ペンタブレット タブレットPC 書込み無し 4 ペンタブレット タブレットPC 書込み無し キーボード 5 タブレットPC 書込み無し キーボード ペンタブレット

各実験コンテンツ学習後に,教材内容に関する再生テストを行った.テストには次の 2種類のテストがある

ˆ 記憶テスト:講義内容に出てきた用語などを答える,表層的な知識を問うテストで ある.1問1点.

問題例:「放電は (   )差 によって起こる.」

ˆ 理解テスト:仕組みや原理の説明を記述させる,深いレベルの理解を問うテストで ある.論述式のため1問10点満点で採点する.模範解答をコンテンツのナレーショ ン(またはそれに対応したテキスト)から生成し,それをn個 の文節および連文節 に分類する.下の模範解答例ではn= 10である.採点は,回答中の模範解答の各文 節および連文節に対応する表現が存在し,文章全体の中で意味的に正しく使われて いる場合,10/n点 加算する方法をとった.

問題例:「雷の光(雷光)と雷の轟音(雷鳴)が発 生する仕組みを説明せよ.」