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手書き入力による学習効果の評価

第 5 章 タブレット PC による入力環境の認知 負荷軽減

5.8 手書き入力による学習効果の評価

テキスト図コンテンツでの記憶と理解テスト以外のテスト結果でタブレットPC使用時の 正答率が,書込み無し時の正答率より有意水準5%で高かった.また,テキスト図とテキ スト+静止画コンテンツでの記憶テキスト以外のテスト結果でタブレットPC使用時の正 答率が,キーボード使用時の正答率より有意水準5%で高かった.タブレットPCと紙媒 体およびペンタブレットでは有意差がなかったことから,書込み無しおよびキーボードに よる入力より,手書き入力での書込みでの記憶・理解テストの正答率が高いと言える.下 線引きや丸で囲む等の書込みが多用されたタブレットPCとペンタブレットでは,学習者 は,ナレーションに合わせて下線引きや丸で囲む等の書込みを行うことで,デュアル・チャ ンネル・モデルにおける,聴覚チャンネルと視覚チャンネルの同期が支援され,記憶およ び内容理解を促進させることができたと考えられる.一方,メモ書きが主体である紙媒体 では,メモ内容の音韻的符号を再生しながら,書込む文章を見て書くことで,聴覚チャン ネルと視覚チャンネルの同期が支援され,記憶および内容理解を促進させることができた と考えられる.更に,書込みにキーボードを使用すると,操作にかかる外的認知負荷が増 大し,聴覚チャンネルと視覚チャンネルの同期が取り難くなり,学習内容理解と記憶保持 を阻害していることが考えられる.

この結果から,手書き入力によるメモ書きにより,学習者の内容理解と記憶保持が促 進されたことが示唆された.

5.8.2 メモ書き行為による学習効果

メモ書きしていたにも関わらず覚えていない場合もありえる.メモ書き行為が,学習 者の記憶保持を促進することについて,メモ書きが行われた単語や文章と,それに対応す るテスト問題の正答率から検証する.表5.8は,学習中にメモ書きされていて,かつそれ がテスト問題に出題されていた,全被験者のメモ書き総数と,そのメモ書き総数内での正 答率である.

コンテンツ形式毎に,書込み無しを除く書込み方法4群において,正答数と誤答数を 変数とした4×2分割表 の比率のχ2検定 を行った.その結果,テキスト+静止画と静止 画コンテンツ以外において有意差があった(テキスト:χ2値= 16.57, df = 3, p= 0.001, テキスト図:χ2値= 14.44,df = 3,p= 0.002,動画:χ2値= 17.66,df = 3,p= 0.001).

次に,有意差があったコンテンツ形式において,Ryanの方法で4群の比率の差の多重 比較を行った.その結果,テキストとテキスト図および動画コンテンツで,紙媒体とペン タブレットおよびタブレットPC使用時の正答率が,キーボード使用時の正答率より有意 水準5%で高かった.タブレットPCと紙媒体およびペンタブレットでは有意差がなかっ

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表 5.8: メモ書き数におけるテスト正答率(%)とメモ書き総数

(*:多重比較の結果,タブレットPCと比較して5%水準で有意差あり)

キーボード ペンタブレット タブレットPC

テキスト 正答率 80.82 59.41* 81.13 85

メモ数 73 101 53 40

テキスト図 正答率 77.61 53.73* 77.36 79.37

メモ数 67 67 53 63

テキスト+静止画 正答率 84.21 77.27 85.25 86.67

メモ数 114 110 61 75

静止画 正答率 81.82 70.89 82.72 84

メモ数 99 79 81 75

動画 正答率 81.03 64.29* 81.98 84.03

メモ数 116 126 111 119

たことから,手書き入力でのメモ書きでの正答率が高いと言える.手書きによりメモ書き を行うことで,デュアル・チャンネル・モデルにおける,聴覚チャンネルと視覚チャンネ ルの同期を誘発することができ,記憶を促進させたことが考えられる.

5.8.3 手書き入力による学習効果の評価

各デバイスでの学習効果が一時的なものでないことを示すために,実験から1週間後 に同一問題でテストを行った.図5.5に実験後のテストと,1週間後のテストの平均正答 率の比較例を示す.

図 5.5: 1週間後の記憶テスト結果例(テキスト+静止画)

コンテンツ形式毎に書込み方法を1要因として,記憶テストおよび理解テストの,実験 後と1週間後テストの正答率の差の平均について分散分析を行った結果,有意差は無かっ

た.この結果から,手書きによる学習は長期記憶での記憶保持にも効果があり,入力デバ イスによる違いは,忘却数には変化を与えないことが分かる.