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先行研究からのマルチメディア教材作成原則

第 3 章 デュアル・チャンネル・モデルに基づ くマルチメディア教材提示法くマルチメディア教材提示法

3.1 先行研究からのマルチメディア教材作成原則

1. マルチメディア原理

マルチメディア原理は,学習者は言語だけより,言語と図からよく学ぶというもので ある.

Mayer and Anderson(1991, 1992)は,テキストのみと,テキストと静止画のコンテ ンツを比較した結果,テキストと静止画コンテンツでの再生テストの結果が高いことを示 した.また,Mayerら(Mayer 1989, Mayer & Gallini 1990, Mayer et al 1996)のナレー ションのみと,ナレーションとアニメーションのコンテンツを比較した結果では,ナレー ションとアニメーションコンテンツでの再生テストの結果が高いことを示した.

言語と図が一緒に提示される場合,学習者は言語的・図的メンタルモデルを構築し,そ れらを関連付ける機会を得る.しかし,言語のみの場合,学習者は言語的モデルを構築す

るが,図的モデルを構築し,更に図的モデルと言語的モデルを統合するのは困難である.

2. 空間的近接原理

空間的近接原理は,学習者は,対応する言語と図がどちらも視覚情報としてページや スクリーン上にある場合,互いに離れているよりも,近い状態で提示されているとよく学 ぶというものである.

Moreno and Mayer(1999)は,スクリーン上でテキストとアニメーションを統合して

提示したコンテンツと,テキストとアニメーションを離して提示したコンテンツを比較し て,前者の再生テストの結果が高いことを示した.Mayer(1989)では,紙資料でテキス トと静止画を統合して提示したコンテンツと,テキストと静止画を離して提示したコンテ ンツを比較して,前者の再生テストの結果が高いことを示した.Mayerら(1995)は,紙 資料でテキストと静止画を統合して提示したコンテンツと,テキストと静止画を離して提 示したコンテンツを比較して,特にトランスファーテストにおいて前者の結果が高いこと を示した.Swellerら(Sweller et al 1990)は,数学において,テキストと記号を図形の各 対応部分に統合した冊子と,テキストと記号を図形の下に記載した冊子とで学習効果を比 較し,前者でのテスト結果が高いことを示した.また,Tindall-Fordら(1997)は,電気 工学において,テキストを図中の対応する要素近くに配置した冊子と,紙面の上部にテキ ストおよび下部に図を配置した冊子とで学習効果を比較し,前者でのテスト結果が高いこ とを示した.

対応する言語と図が互いに紙面やスクリーン上の近くにある場合,学習者は,視覚的 に紙面やスクリーン上を探索するための認識資源を使用する必要がない.また,学習者は,

両方の情報を作業記憶中に同時に保持することができる.しかし,対応する言語と図が離れ ていると,学習者は目視により紙面やスクリーン上を探すことに認知資源を使用しなけれ ばならない.そのため,学習者は作業記憶中にそれらの情報を保持しておくことが難しい.

3. 時間的近接原理

時間的近接原理は,学習者は,対応する言語と図がそれぞれ聴覚情報と視覚情報とし て,交互に連続して提示されるよりも,同時に提示されていた方がよく学ぶというもので ある.

Mayerら(1999)は,ナレーションとアニメーションを同期提示したコンテンツと,ナ

レーションとアニメーションを交互に連続的に提示したコンテンツを比較して,前者の再 生テストの結果が高くなることを示した.また,Mayer and Sims(1994),Mayer and

Anderson(1991, 1992)で同様の実験を行ったところ,ナレーションとアニメーションを

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同期提示したコンテンツでのトランスファーテストの結果が高くなることを示した.更に,

Mayerら(Mayer et al 1999)で,非常に短いセグメント(1つの数秒のアニメーション

のアクションと,それに対応する短いナレーション)でナレーションとアニメーションを 連続的に提示した場合と,同期提示した場合を比較した結果,両者の再生テストに結果に 有意差はなかった.

対応するナレーションとアニメーションの部分が同時に提示された場合,学習者は,メ ンタルモデルを両チャンネルの作業記憶中に同時に保持できる.そのため,学習者は,聴 覚および視覚的なメンタルモデル間の接続を構築しやすい.しかし,対応するナレーショ ンとアニメーションの部分が時間的に分離されて提示された場合,学習者は,メンタルモ デルを両チャンネルの作業記憶中に同時に保持することができない.そのため,聴覚・視 覚的なメンタルモデル間の接続を構築することが困難になる.ナレーションを聞いて対応 するアニメーションの部分を見るまでの時間が短い場合,学習者は,まだ言語と図の間の 接続を構築することができるかもしれない.しかし,対応する言語と図の提示が時間的に 離れると,学習者は作業記憶中にそれらの情報を保持しておく必要がある.そして,時間 を置いて言語と図を精神的に接続・構築することは難しい.

4. 一貫性原理

一貫性原理は,学習者は,学習内容に関係が無い異物(テキストや図および音声や音 楽)を含んでいるよりも遮断されている方がよく学ぶというものである.

Mayerら(2001)はナレーション+アニメーションコンテンツと,ナレーション+ア

ニメーションに内容と関係のないテキストと絵を含めたコンテンツを比較し,前者の再生 テストの結果が高いことを示している.Harp and Mayer(1997, 1998)は,テキスト+静 止画コンテンツと,テキスト+静止画に内容と関係のないテキストと絵を含めたコンテン ツを比較し,前者の再生テストの結果が高いことを示している.また,Moreno and Mayer

(2000)は,ナレーション+アニメーションコンテンツと,ナレーション+アニメーション に音楽を含めたコンテンツを比較し,前者の再生テストの結果が高いことを示している.

更に,Mayerら(Mayer et al 1996)は,学習内容の要約文と静止画のコンテンツと,学 習内容の全文と静止画のコンテンツを比較して,前者の再生テストの結果が高いことを示 している.

無関係な絵や単語,音楽が含まれていると,学習者にとっては楽しくリラックスでき るものかもしれないが,学習は阻害されている.異物は作業記憶の認知資源を競合して使 用し,重要な教材から注意を逸らし,教材の理解の過程を混乱させてしまう.

5. 提示形態原理

提示形態原理は,学習者は,アニメーション+テキストより,アニメーション+ナレー ションの方がよく学ぶというものである.すなわち,学生は,マルチメディア教材中の言 語は印刷されたテキストではなくナレーションとして提示された方がよく学ぶ.

Mayer and Moreno(1998, 1999, 2001)は,アニメーションにナレーションを同期さ せたコンテンツと,アニメーションにテキストを同期させて提示するコンテンツを比較し て,前者の再生テスト結果が高いことを示している.

図と言語がともに視覚的(アニメーションとテキスト)に提示された場合,視覚チャン ネルに過負荷をかけ,聴覚チャンネルは未使用となる.言語が聴覚的(ナレーション)に 提示されると,聴覚チャンネルで処理でき,その結果,視覚チャンネルは図だけの処理に 専念できる.

6. 冗長性原理

冗長性原理は,学習者は,アニメーション+ナレーション+テキストより,アニメー ション+ナレーションの方がよく学ぶというものである.

Mousaviら(1995)は,テキストと図が印刷された紙資料とナレーションで学習した

場合と,図が印刷された紙資料とナレーションで学習した場合を比較した結果,後者のテ ストの結果が高いことを示した.Kalyugaら(1999, 2000)は,図とテキストとナレーショ ンを同時提示したコンテンツと,図とナレーションを同時提示したコンテンツを比較した 結果,後者のテスト結果が高いことを示した.Craigら(2002),Mayerら(2001),およ

びMoreno and Mayer(2002)は,アニメーションとナレーションを同期させたコンテン

ツと,アニメーションとナレーションおよびテキストを同期提示したコンテンツで比較し た結果,前者の再生テストの結果が高いことを示している.

図と言語がともにアニメーションとテキストという視覚情報として提示されると,視 覚チャンネルに過負荷がかかってしまう.しかし,ナレーションに専門用語が含まれてい る場合は,テキスト表示も有効かもしれない.

7. 個人差原理

個人差原理は,マルチメディアデザインの効果は知識豊富な学習者よりも知識の乏し い学習者に対して,空間能力が低い学習者よりも空間能力が高い学習者に対してより効果 的であるというものである.

Mayer and Gllini(1990)は,テキスト+静止画コンテンツとテキストのみのコンテ

ンツでの比較において,知識豊富な学習者と知識の乏しい学習者でのテスト結果の比較を 行ったところ,テキスト+静止画コンテンツにおける知識の乏しい学習者のテスト結果の