第9章 教育プログラムの開発
第Ⅱ節 教育プログラムの設計
1)教育目的
「看護スタッフ能力開発」の実践を科学的に展開できる能力を開発して、病院看護部組織 の看護スタッフ能力を高め、組織の人材を戦略的に強化するための課題解決に貢献できる 専任教育担当者を中期的展望で育成する。
専任教育担当者は、看護部長の直属専従スタッフの位置づけにあり、看護スタッフ能力 開発の過程を展開する中で、ラインを超えたスタッフを組織化して統制する権限をもつと 同時に、ラインを通して能力開発や教育にも指示や支援ができる権限をもつ。
2)学習目的
<レベルⅠ>
看護部の人材開発システム全体を踏まえて、組織ニーズと現場ニーズに合った教育プロ
的教育プログラム開発」を展開する。この実践経験によって、教育プログラム企画運営の 責任者の役割や、現場と個人の変化を推進する役割が果たせることを目指す。
<レベルⅡ>
看護部の人材開発システム全体と人事戦略を踏まえて、能力開発ビジョンと能力開発の 中長期目標を設定して教育プログラムを開発する方法を学ぶ。この過程で、変革マネジメ ントを学びプロジェクトマネジメントを展開する。また、能力評価指標と評価方法を開発 し、クオリティ・マネジメント計画を立てる。この実践経験によって、能力開発システム を管理するリーダー役割と、組織の変革を推進する役割が果たせることを目指す。
2.レベルⅠコース・プログラム設計
レベルⅠコースは、教育プログラム開発の基礎的能力を確実に習得するために、基本的 知識を習得した後、実際に、短期的教育プログラムを開発し実施評価まで行う。自己学習 をベースに、講義と演習と実習を入れる。最小限の集合研修と各施設での実践を含めて約 1 年間コースとした。
<学習目標>
1)「看護スタッフ能力開発」の概念を理解する。
2)「ニーズアセスメント―教育設計―実施―評価」の展開方法を理解し実践に適用する。
3)「ニーズアセスメント」や「評価」の過程で、学習者や部署看護師長と協働で取り組む 意義を理解し、実際に教育を計画実施評価する。
4)他者との意見交換を通して、ものの見方や考え方を広げる。
5)専任教育担当者としてのやりがいや自信を見出せる。
<行動目標と学習内容>
1)「看護スタッフ能力開発」の概念と関連用語を理解する。
・病院看護部門の人的資源管理と人的資源の開発(人材開発)
・能力開発と教育訓練、キャリア開発と組織開発
2)「看護スタッフ能力開発」の仕事の全容について、『「看護スタッフ能力開発」循環サイ クルフロー』で理解し、自己の学習目標を確認する。
・「看護部の能力開発ビジョン、目標、ミッション」→「能力開発の中長期目標」→「年 間教育計画」→「研修の企画運営」までの流れや手順
3)教育プログラム開発方法の概要を理解する。
・教育プログラム開発の過程(「成人学習の原理」、「ニーズアセスメント-学習目標の設 定-学習内容と方法の設定-学習者のパフォーマンス評価とプログラム評価」)
4)ニーズアセスメントの必要性と意義が能力の視点から説明できる。
・コンピテンシーとは(職務遂行能力、看護実践能力)、保有能力(知識・スキル・態度
+固有能力)と、発揮能力(看護実践での行動:臨床における判断能力、問題解決能 力、人間関係形成能力、ケアの成果)
・職場での高いパフォーマンスの発揮<組織外環境+組織内職場環境(役割や期待のわか りやすさ、コーチング、インセンティヴ、業務システム、資源)+個人の能力(知識・
スキル・態度+固有能力)
・「ニーズアセスメント」:理想と現実のギャップを把握し、教育の必要性と教育ゴール を見極める。
5)ニーズアセスメントの情報源と情報収集方法を理解し、効果的効率的な方法の選択に ついて具体例で説明できる。
・ニーズアセスメント演習(研修リクエストに応える、現行教育プログラムを見直す、
問題現象に要因分析に関わる)
・アセスメント結論から解決策の優先順位(問題のリスクの高さ、解決方策の選択を「コ スト、実現性、期待効果」の 3 点で見積もる)
6)学習目標設定の意義を理解し学習目標の記述ができる。
・教育プログラム概要設計(学習目的と学習目標の記述、対象者、場所、時間、コスト)
・学習領域と行動目標、研修目標と実践目標における行動目標 7)研修の詳細設計が理解でき、設計できる。
・学習目標(学習の領域とレベル、研修目標と実践目標)
・教育内容の精選と構成、教育方法の選択、介入の指導技術 8)教育研修後の現場フォローアップ支援方法が立案できる。
・実践目標と部署師長との連携協働の計画
9)看護実践能力を開発する多様な方法を理解し、目標に合った方法が選択できる。
・ベナーの臨床能力の発達モデル、クリティカルシンキング、問題解決能力
・倫理的意思決定、人間関係形成能力、ナラティヴ、リフレクション、看護技術
・形式知と実践知、リーダーシップ、チーム学習、学習する組織、正統的周辺学習
(事例で開発方法を考える)
10)評価の4つのレベルと測定方法を理解し、現場の師長との連携計画を立てる。
・最初の教育設計(学習目的・目標)を確認する。
・評価レベル1:学習者の満足度を測る。
・評価レベル2:学習者の知識スキルの習得度を測る。
・評価レベル3:学習者の現場での行動変容を測る。
・評価レベル4:教育プログラムの看護への影響を測る。
間、品質、風土、顧客満足)
・アウトカムとは、教育効果測定の意義(質の保証、説明責任)=レベルⅡに向けて 11)研修で学んだ知識スキルを実践に適用して、情報収集能力、分析力、設計力、評価能
力を身に付ける。
・自施設に帰って教育プログラムを開発実施評価する。
・演習では、開発評価した教育プログラム1つを発表する。
・実践途中で進捗計画を報告し支援を受けられるようにする。
<教育方法の工夫>
上記の学習成果目標を達成するための教育方法の工夫を示す。
1)『「看護スタッフ能力開発」循環サイクルフロー』に沿ったテキストで事前の自己学 習をする。集合研修ではグループワーク中心に進める。
2)ニーズアセスメントの目的、意義、方法を理解するために、3 種類のケーススタディ を通しして、ディスカッションする。これによって実践におけるニーズアセスメントと 教育設計と評価のイメージをもつ。
3)看護実践能力の開発方法について、様々な学習に関する理論を学んだ後、事例を使っ て検討する。
4)現場での学習者のフォローアップと行動変容の評価ができるように、目標設計方法と 評価方法をケーススタディで演習しておく。
5)自施設に帰って、教育プログラムを開発実施評価する。その成果を発表する。有能な 教育プログラム開発の実績をもつ看護管理者がいれば助言者で参加してもらう。
6)実践途中で進捗状況を報告し支援を受けることもできる。
<評価計画>
1)最初の集合研修後:受講者満足度アンケート
2)計画発表の内容:発表内容の論理性と具体性、発表方法の簡潔明瞭性と論理性
3)最終成果発表の内容:実施した教育プログラムの目標達成度、受講者の成長実感アン ケート
3.レベルⅡコース・プログラム設計
レベルⅡコースは、レベルⅠコースでの学びを基盤にして、人事戦略から設定した中長 期目標に基づく特定人材層の教育プログラムの開発をする。実際に実施評価まで至るには 数年要するため、個人の実践と課題に応じて柔軟に進められる設計にする。オプションゼ ミとして学習資源を準備して、ニーズに応じて選択できるようにする。初回の集合研修は 4 日間程度として、その後、適宜コンサルテーションを入れながら、成果発表は、半年に 1
度設けて、5 年間計画で情報発信と交流の機会を設ける。
<学習目標>
1)戦略的ニーズアセスメントと能力開発の全体枠組みの構築の方法を理解する。
2)人材層別ニーズアセスメントと能力開発の中長期計画の方法を理解する。
3)看護実践能力の「評価と開発」のシステムとマネジメントについて理解する。
4)能力開発のクオリティ・マネジメントとアウトカム測定の方法について理解する。
5)能力開発ビジョンを描き、プロジェクトマネジメントが展開できる。
6)自施設の特定人材層の能力開発のための長期的教育プログラム開発計画に取り組む。
7)看護部の能力開発のチェンジエージェントとしての自信が芽生える。
8)他施設の人や有識者との意見交換を通して視野や発想を広げる。
<行動目標と学習内容>
1)戦略的ニーズアセスメント方法における情報の視点と収集方法を理解し、能力開発の 課題を設定する。
・外部要因と内部要因を分析し、能力開発の課題(重要度・緊急度)を明確にする。
・看護部が目指す人と組織のありたい姿(ビジョン)
・ビジョン実現のための目標、ミッション、組織体制、教育担当者の位置づけと役割
・人材に対する「組織の理念、価値観、使命、組織文化とダイナミクス」
2)人材フレームを作り人材層別の役割と能力を作成し、強化するべき人材層を絞る。
・役割別・能力別の人材層に区分して、期待する役割と能力を明確にする。
・人材プールの把握、個人履歴<学歴、職歴、研修、研究、レポート、ポートフォリオ 役割遂行および職務遂行(上司評価、同僚評価、自己評価)>
3)強化人材層の能力評価指標の開発方法について理解し、作成する。
〈以下の能力評価指標の開発の手順に沿って〉
・責任者、メンバー、プロジェクト
・コンピテンシーの定義、目的、実践領域の決定
・文献資料の基準の活用(標準ラダー、ベナーの新人からエキスパート)
・ハイパフォーマーの選出、データ収集とデータ分析方法
・コアコンピテンス、重要コンピテンスの決定
4)強化人材層の能力評価方法の開発について理解し、実行計画を立てる。
・看護実践における「臨床判断、倫理的判断、問題解決、意思決定、人間関係」の評価 方法、行動観察、看護記録、レポート、ナラティヴ、テスト
・評価のガイドラインの作成(評価のための範例と評価手順、誰が、いつ、どのタイミ