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技術開発動向

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8.5 雪氷熱利用

8.5.5 技術開発動向

雪氷熱利用システムを構成する個々の空調関連機器については、成熟した技術であり普及のボ トルネックとなる大きな課題は残されていないが、貯雪庫のさらなる断熱性能の向上や熱交換効 率の向上等に技術課題が残されている。導入普及にあたっての最大の課題は低コスト化であり、

初期投資の抑制が鍵となる。

図表 8.57  雪氷熱利用の主な技術課題

技術課題  解決策・要素技術 

低コスト化

設備費・施工費の削減 • 既存建物の転用

• 建物と貯雪庫の一体化 収集費・輸送費の削減 • 地産地消

• 人工降雪機の活用 冷熱回収コストの削減 • システムの大規模化

高効率化 熱貯蔵効率の向上 • 貯蔵設備の断熱性能の向上

• 貯蔵設備構造の工夫 熱交換効率の向上 • 熱交換器の高効率化

(1) 低コスト化に係る技術課題

雪氷熱利用の低コスト化に係る技術課題は、「設備費の削減」、「輸送費の削減」「冷熱回収コ ストの削減」等が挙げられる。

1) 設備費・施工費の削減

雪氷熱利用システムのコストは、事例ごとに異なるが、全般的にランニングコストが低く抑 えられる一方、イニシャルコスト(特に貯雪庫整備)が大きく、普及のボトルネックとなって いる。イニシャルコストは電気冷房の2倍程度、ランニングコストは電気冷房の4分の1程度、

総コストは電気冷房の1割〜5割程度割高となる40

初期投資の削減策として既存建物の空きスペースの貯雪庫への転用が提案されており41、代表 的な実施事例として旭川豊岡センタービルが挙げられる(P471参照)。また、新築建物の場合、

貯雪庫を建物本体と別建てにせず、建物内部に組み入れることで施工費を削減する方策も考え られるが、削減幅には限界がある。

2) 収集費・輸送費の削減

雪氷熱利用のコスト削減課題の一つとして、雪の収集コスト・輸送コストの削減が挙げられ る。供給地と需要地が離れている場合は輸送コストがかかるため、雪氷熱エネルギーの利用は 地産地消が基本であり、雪を取得可能な地域内で利活用せざるを得ないのが実情である。

40 7回総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会資料

41 長田・濱田ら「空間改修型雪氷庫システムに関する研究」(2008, 日本冷凍空調学会論文集 Vol.25)

雪機を導入した冷熱供給システムが提案されている42。人工降雪機の雪製造コストが安いこと、

安定的な雪供給を実現できる等のメリットに着眼したものであり、システム成績係数(=生成 された雪の保有冷熱/電力消費量)10.3〜30.9(製雪能力により異なる)が確認されている。

3) 冷熱回収コストの削減

雪氷熱利用は一般的に大規模システムがコスト回収に有利とされている。大規模システムの 代表的な導入事例としては、北海道沼田町や美唄市における大規模米穀貯蔵施設等が挙げられ る。また、国土交通省東京航空局により、新千歳空港における大規模雪冷房システムの導入が 検討されており、2010年以降の運用開始が予定されている43

新千歳空港では冬期にプロピレングリコールを主成分とする防除雪氷剤・融雪剤を含んだ大 量の雪が発生する。この雪が春先に雪解け水として河川に流れ込むと、BOD44が上昇し環境汚 染を引き起こすため、現在は雪解け水を空港内の調整池に貯え、排出量をコントロールするこ とで河川への影響を低減している。しかし、調整池の容量には限りがあるため、融雪剤を含む 雪氷を雪山として夏期まで蓄蔵することで融解を遅らせ、BODの低減を図るとともに、その雪 氷熱を空港ターミナルビルの冷房に利用し、CO2 排出量の削減を図ることを目的とした「クー ルプロジェクト」が提案された。大量に発生する除排雪の処理対策の一環となるとともに、冷 熱を必要とするターミナルが隣接していること、大規模な雪山を造成するスペースがあること 等から、雪氷熱利用の導入メリットの大きい事例と考えられる。これまでに遮熱シート実験、

BOD低減実験、実システムサイズでの実験が実施されており、2010年度以降の運用に向けて諸 設備の設計・整備が行われている。

(2) 高効率化

雪氷熱利用の高効率化に係る技術課題は、「熱貯蔵効率の向上」、「熱交換効率の向上」等が挙 げられる。特に熱交換効率の向上が課題であり、個々のシステム設計・規模に合わせた適切な 冷熱回収システムを設計する必要がある。

1) 熱貯蔵効率の向上

雪氷熱を夏期に利用するためには、断熱材の利用、貯蔵庫構造の改善等により貯雪庫や貯蔵 庫の断熱性を高める必要がある。ただし現状の技術でも一定レベルの貯蔵が可能であることか ら、この技術が雪氷熱利用促進のボトルネックとなることはない。

沼田町における雪山の実験45では、断熱材として雪山の表面をバーク材、籾殻、麦わら等で覆 った場合、9月上旬でも高さ方向で1.5mの融雪のみにとどまっており、高い断熱効果が確認さ れている。

42 長田・濱田ら「人工降雪機を導入した冷熱供給システムの実験と解析」(2009, 寒地技術論文・報告集 Vol.25)

43 「雪を利用したBOD低減とCO2削減  新千歳空港クールプロジェクト」(国土交通省東京航空局資料)

44 生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand:BOD)。最も一般的な水質指標の一つ。一般に、BOD 値が大きいほど水質が悪いとされる。

45 室蘭工業大学  媚山助教授らによる実験。

雪の融解冷水で循環冷水を冷やす方式の場合、スノーブリッジ現象46等により、雪と循環冷水 の接触面積が確保されないため、安定して融解冷水を供給できない場合がある。この問題の解 決策として、導水路型雪氷熱交換器等の高効率熱交換方式が提案されている47

適切な冷熱回収方法は、システムの種類や貯雪庫のサイズ等により異なるため、個々のシス テムに合わせた工夫が必要とされる。

図表 8.58  導水路型雪氷熱交換器の仕組み

出典:新菱冷熱工業株式会社ホームページ(http://www.shinryo.com/

図表 8.59  導水路型雪氷熱交換器のモデル断面図

出典:新菱冷熱工業株式会社ホームページ(http://www.shinryo.com/)

46 貯めた雪の底部の外辺部分に給水すると不均一な水の流れとなり、循環冷水は一度できたその水路をずっと流 れるため、そこに雪の空洞ができ、雪と循環冷水の接触面積が確保できなくなる現象。空洞が大きくなると雪 の崩落事故にもつながる可能性がある。(新菱冷熱工業株式会社ホームページホームページより引用・抜粋)

47 長田・濱田ら「導水路型雪氷熱交換器による冷熱供給システムの開発」(2008, 寒地技術論文・報告集 Vol.24)

従来の雪冷房方式用 氷熱交換器

予測不能な水の流れ  一度できた水路を流れ続ける  ため、能力確保が期待できない 

均一な水の流れ  予め水路が決まっている  ため、水路を均一化できる  改良 

欠点  :  スノーブリッジの問題  冷凍機と同じ機能 

(ポリパイプ)

樹脂製多孔管

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