8.10 工場等排熱利用
8.10.1 技術の俯瞰
工場や変電所、地下鉄、地下街等からの排熱は、蒸気ボイラや吸収式冷凍機、熱導菅等を用い て地域冷暖房に利用することができる。変電所や地下鉄等からの低温熱は、ヒートポンプの熱源 として活用することができる。国内外において、これらの排熱を利用した地域熱供給事業が行わ れている。
(1) 主な排熱源 1) 工場
工場からは、生産プロセスによって高温(数百℃)から低温(数十℃)まで様々な温度レベ ルの熱が排出される。高温排熱は、プロセス内での再利用や自家発電等に有効利用されている ものが多いが、低温になるにつれて用途がなくなり、未利用のままのものも多い。
2) 発電所
日本の火力発電所や原子力発電所では、蒸気タービンからの蒸気を水に戻す復水器の冷却水 として海水が使用されている。従来、使用後の温排水はそのまま海に放流され、有効利用の方 法も養殖用等の漁業分野がほとんどであったが、近年この温排水を業務用の暖房熱源として利 用している例も見られる。
3) 地下鉄・地下街
地下鉄構内や地下街のような閉じられた空間は比較的熱密度が高く、空気の出入り口も限ら れていることから、地上に比べて排熱を回収しやすい。列車、照明、人体、換気用機器等から 熱が発生しており、換気により外部に放出されるか、地中に蓄えられる。これらの排熱はヒー トポンプの熱源として利用することができる。
4) 変電所・地中送電線
変電所の変圧器の効率は 99%以上と非常に高いものの、ロス分は熱となり機器温度を上昇さ せ絶縁劣化や絶縁破壊等を引き起こすため、通常絶縁油を循環させて熱を吸収させ、冷却して いる。また、都市部を中心に設置されている地中送電線は、送電効率を高めるため常時冷却さ れている。これらの排熱はヒートポンプの熱源として利用することができる。
図表 8.89 工場等排熱の種類と特徴
種類 形態 温度レベル 利用方法
工場排熱
高温ガス 200℃〜 発電、熱源、直接利用 温水 〜50℃ 熱源水、直接利用 LNG冷熱 〜5℃ 発電、冷熱源 発電所 温水(復水器) 〜50℃ 熱源水、直接利用 地下鉄・地下街 空気 10〜30℃ ヒートポンプ熱源水 ビル排熱 空気、水 20〜40℃ ヒートポンプ熱源水 変電所・地中送電線 冷却水・冷却油 20〜40℃ ヒートポンプ熱源水
出典:「未利用エネルギー面的活用熱供給導入促進ガイド」(2007, 経済産業省)
(2) 排熱利用システム
工場等排熱の利用システムは、数百℃の高温の場合と数十℃の低温の場合とに大きく分けら れる。高温排熱の場合は主に蒸気を製造して利用し、低温排熱の場合はヒートポンプの熱源と して利用する。
1) 高温排熱利用システム
工場等で発生する高温排熱は、排熱ボイラにて回収したのち蒸気を生成し、給湯や暖房等の 温熱供給に使用される。また、さらに蒸気吸収式冷凍機を用いて冷水を作り、冷熱を供給する こともできる。
図表 8.90 高温排熱利用システムの例
出典:(社)日本熱供給事業協会ホームページ(http://www.jdhc.or.jp/)より作成 工場等
排熱
排熱ボイラ 蒸気ヘッダー
蒸気吸収式冷凍機 冷水ヘッダー 冷水
蒸気 冷却塔
2) 低温排熱利用システム
変電所や地下鉄などの低温排熱は、ヒートポンプの熱源として利用することができる。また、
冷水槽および温水槽の蓄熱槽を設置することにより設備容量を削減することが可能となる。
図表 8.91 低温排熱利用システムの例
出典:(社)日本熱供給事業協会ホームページ(http://www.jdhc.or.jp/)