8.8 熱電発電
8.8.5 技術開発動向
導率が低い。また、電気伝導率を上げると熱伝導率も高くなる。このように、キャリア濃度は 高くても低くても ZT 値は低くなってしまう。材料探索においては、物質の電気伝導率とゼー ベック係数の関係が非常に重要となる。
図表 8.79 ゼーベック係数、電気伝導率、熱伝導率のキャリア濃度依存性
S:ゼーベック係数(V/K) σ:電気伝導率(Ω/m) κ:熱伝導率(W/(m・K))
出典:“Vehicular Thermoelectrics Applications Overview”, U.S.Department of Energy, 2007 Diesel Engine-Efficiency and Emissions Research (DEER) Conference
ZT値は高いほど変換効率が良く、実用化のためにはZT>1が求められる57。近年、3元系以 上の材料探索が進んだことや、薄膜化・超格子構造等ナノスケール58での構造制御により、ZT
>2の性能をもつ材料が、複数発表されている(図表 8.80)。
57 ZT≒1の理論発電効率は約9%。
58 数ナノ〜数十ナノのレベルでフォノンと電子を制御できれば、性能指数(ZT)が2〜3(変換効率約30%)を 超える可能性があると言われている。
絶縁体 半導体 半金属 金属
キャリア濃度
出典:“Thermoelectric Developments for Vehicular Applications”, U.S.Department of Energy, 2006 Diesel Engine-Efficiency and Emissions Research (DEER) Conference
2) 伝熱性能の向上
熱源(高温側および低温側)の温度差を最大限利用して熱電変換モジュールで発電するには、
熱源と熱電変換モジュール間の熱移動を小さい熱抵抗で効率良く行う必要がある。熱電発電の 技術開発は、これまで材料開発に偏っており、実際の導入を想定した伝熱性能や、適切なシス テム設計等についてはあまり検討がなされてこなかった。
伝熱性能の向上には、熱源の熱荷体の種類や電力用途および使用環境に適した熱交換形態(ふ く射、対流、熱伝導等)の選定が重要となる。また、各々の制約条件や費用対効果を考慮し、
各伝熱形態の伝熱促進手法を可能な限り折り込むことが必要となる59。
(2) 低コスト化
熱電発電の実用化にあたっては、高効率化と同時に低コスト化が重要な課題となる。熱電発 電のコストを左右する要因は、「耐久性」「原料コスト」「製造コスト」等が挙げられる。
耐久性については、高温領域における酸化劣化対策が課題に挙げられる。従来から一部実用 化されている熱電変換材料としては、室温から約 300℃で使用されるビスマス・テルル系、室
温から約 1000℃でのシリコン・ゲルマニウム系および、室温から約 600℃の鉛・テルル系が挙
げられるが、これらの金属系材料は高温領域における酸化劣化が生じやすいという問題がある。
例えば、燃焼炉の排熱は約 830℃程度あるため利用できない。また、関連部材では電極部分の 酸化が特に問題であり、対策が必要とされる。
原料コストについては、ビスマスやテルルはレアメタルであり、高コストであることに加え、
59 熱電発電フォーラム資料(2006, (財)エンジニアリング振興協会)
Bi2Te3/Sb2Te3
Superlattices (RTI) PbSeTe/PbTe Quantum-dot Superlattices (LincolnLab)
トの削減、また安価な代替材料開発に取り組む必要がある。また、製造コストについては、熱 電材料の特性に合わせて、省エネルギー・高効率な製造プロセスの開発が必要である。
これらの課題に対して、現在セラミックス(金属酸化物)に注目が集まっている。セラミッ クスは一般に高温大気中でも安定であり、製造プロセスも低コストで61技術的に確立されている。
その中で、性能指数(ZT)が高く、環境に優しい材料として Zn-O系のn型半導体と Na-Co-O 系のp型半導体の組み合わせが代表的であるが、これら以外の組み合わせについても急速に研 究が進められており、熱電変換材料の実用化はセラミックスを中心に競争が始まっている。
図表 8.81 主な熱電変換材料の適用温度範囲
出典:「酸化物熱電変換素子の量産技術開発」(2008, 昭和電線レビュー Vol.58 No.1)
(3)製造技術
実用化に向けては、熱電変換素子を多数並べて一体化するモジュール化技術が重要であり、
接触抵抗を小さくすると共に、熱応力の緩和、信頼性・耐久性の向上等が求められる。電極接 合技術、電気絶縁と良熱伝導の並立技術、熱応力緩和技術、雰囲気封止技術、組立技術などが 重要な課題となる62。
60 原料の採取から製造、流通、使用、廃棄までの全過程での環境負荷を定量的に評価する手法のこと。
61 昭和電線ホールディングス株式会社は、産業総合研究所と共同で、酸化物熱電変換素子の量産製法を開発して いる。(昭和電線ホールディングス株式会社 プレスリリース (2007年12月18日))
62 熱電発電フォーラム資料(2006, NEDO)