8.11 温度差熱利用
8.11.5 技術開発動向
配管敷設に係る工事費を大幅に削減することも一案である。しかしながらいずれも、熱源の立 地に左右されるため、全ての事例において実施可能な対策ではない。
地中熱利用システムは、地中熱交換井の掘削コストが大きく、その削減が課題となっている。
特に日本は地質が多様であることに加え、非常に崩壊しやすい地質が多いことから諸外国と比 較して掘削コストが高く、欧米3〜5千円/mに対し、日本においては1〜2万円/mと、3〜4倍 のコストがかかる82。掘削コストを削減する取組みとして、建物の基礎杭を活用したシステムが 提案されている(図表 8.105)。
図表 8.105 基礎杭を利用した地中熱空調システム
出典:「地球熱利用システム 地中熱利用ヒートポンプシステムの特徴と課題」(2006, NEDO)
(2)高効率化
高効率化については、熱源機器の高効率化や、スケール・スライム対策、配管熱損失の低減 等が挙げられる。
現在ヒートポンプは近年技術開発が進み、業務用冷凍機の定格COPは6を超える水準に達し ている83。数十年前の機器を使用しているプラントにおいては、最新機器の導入により大幅な効 率向上が可能となる。しかしながら、経済性の高いビルマルチ方式等の普及に伴い、分散型シ ステムに対する地域熱供給システムの競争力は低下する傾向にあり、特にコスト高となる未利 用エネルギー源を用いた地域熱供給システムはコスト競争力を保つのが難しい状況にある。
配管熱損失の低減は、配管の断熱性能の向上が対策として挙げられるが、イニシャルコスト を押し上げる要因にもなるため、注意が必要である。また、熱損失の低減には、熱の移動距離 を短くする必要があり、供給地と需要地のマッチングが重要となる。
河川、海水等を利用するシステムについては、スケール・スライムの付着による熱交換効率 の低下防止が重要となる。現在はスポンジボールやブラシなどによる物理的洗浄(図表 8.106、
図表 8.107)のほか、薬品洗浄などにより対策が立てられている。
地中熱利用ヒートポンプについては、地中からの採熱量予測に基づき適切なシステム設計(地
82 「地球熱利用システム 地中熱利用ヒートポンプシステムの特徴と課題」(2006, NEDO)
83 「ヒートポンプ・蓄熱システムデータブック2009」((財)ヒートポンプ・蓄熱センター)
の特性を把握するサーマルレスポンス試験により予測される。
図表 8.106 スポンジボールによる熱交換器内洗浄の概要
出典:東芝キャリア株式会社ホームページ(http://www.toshiba-carrier.co.jp/)
図表 8.107 ブラシ式チューブ自動洗浄装置
出典:荏原冷熱システム株式会社 地中熱利用ヒートポンプシンポジウム資料(2007)
(3) 高耐久化
河川水、海水等の温度差エネルギー利用システムは、熱交換器等の腐食対策が重要となる。
一般的に、腐食対策としてはチタンを用いた熱交換器が用いられている。8.11.4 の事例に挙げ たとおり、河川水等を利用した地域熱供給システムは既に20年近くの運転実績があることから、
熱交換器の耐久性が普及阻害要因となることはない。しかしながら、チタンは非常に高価であ り、イニシャルコストを押し上げる要因となっている。
地中熱利用システムについては、熱交換器は半永久的(耐用年数50年レベル)に使用可能で あり、耐久性に関しては普及要件を満たしている。
(4) 運用・管理
河川、海水等を利用する場合には、水中の浮遊物や海洋生物の処理が必要となる。河川水を
●システム図
コンデンサ スポンジボール
ボールセパレータ
ールベッセル スプールパイプ
冷却水入口 冷却水出口