8.10 工場等排熱利用
8.10.4 導入実績
工場等排熱を活用した地域熱供給の実績は、2005 年以降 15 件となっている。そのうち、工場 排熱を活用したものは1990年以降新規導入例がなく、2009年まで 2件に留まっている。また、
地下鉄排熱は1995年に導入された1件のみである。最も主流である、変電所・変圧器排熱につい ては1990年代に増加したが、1997年以降はほぼ横ばいで2005年以降10件である。発電所の蒸 気を利用した地域熱供給は2002 年以降2件に留まっていたが、2010年2月に東京電力川崎火力 発電所の発電後の蒸気を周辺の工場に供給する「川崎スチームネット株式会社」が営業を開始し ている70。
排熱利用されている工場の業種は、セメントおよび化学等の、エネルギー多消費型の工場であ り、エネルギーの有効利用が特に求められる業種である。また、排熱源の内訳では変電所・変圧 器排熱が多く、近くの河川水や下水等、他の温度差熱エネルギー源と合わせて複合的に利用して いるケースもある。
図表 8.95 工場等排熱利用の地域熱供給事業件数
0 2 4 6 8 10 12 14 16
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
熱供給事業件数(件)
年
工場排熱 地下鉄排熱 変電所・変圧器排熱 発電所抽気*
*抽気とは、蒸気タービンで膨張した蒸気を一部取り出すこと 出典:熱供給事業便覧((社)日本熱供給事業協会)より作成
70 東京電力株式会社プレスリリース(2010年2月1日)
<事例> 日立駅前地区熱供給事業(工場排熱)
日立熱エネルギー株式会社は、セメント工場の排熱を利用した熱供給事業を行っている。セ メントの粉体原料はロータリーキルン(焼成温度約1,450℃)に送り込まれる前にプレヒーター を通過する。このプレヒーターからの余熱(約 370℃)を回収し、熱供給プラントの地下に設 置した蓄熱槽と組み合わせて安定供給を図った地域冷暖房を実施しており、日立駅前地区の公 共、商業、業務施設に熱を供給している。
図表 システム概要
供給開始 1989年12月1日
供給区域 茨城県日立市幸町
区域面積 13.2ha (H20.3.31現在)
供給延床面積 133,798m2(H20.3.31現在)
供給建物 オフィスビル、ホテル等 供給熱媒 冷水(往) 7℃
温水(往) 60℃
熱源機 余熱ボイラ 5,563Mcal/h 吸収式冷凍機 計2,000RT
ターボ冷凍機 計650RT
蓄熱槽 1,560m3
図表 システム概略図
出典:日立セメント株式会社ホームページ(http://www.hitachi-cement.co.jp/netuene-1.htm)より作成
吸収式 冷凍機 ターボ冷凍機
空調機 吸収式
冷凍機 ターボ 冷凍機
空調機 クーリングタワー
蒸気 プレヒーター
ロータリーキルン
余熱回収装置 ダンパー
クリンカクーラー 粘土乾燥器 電気集塵機 270℃
冷水
水 0
(日立セメント工場) (プラント建設) (公 ) (日立駅前地区)
蓄 熱 槽 370℃
850℃
1450℃
熱交換器
<事例> 福島県いわき市熱供給事業(工場排熱)
小名浜配湯株式会社は、いわき市小名浜において地域振興と市民福祉のための給湯計画を受 けて設立され、1970年より日本化成株式会社小名浜工場の排熱を利用した地域給湯事業を行っ ている。熱源は工業薬品の製造設備から発生する排熱であり、工業用水を熱交換することによ り原湯を製造している。原湯は濾過された後、貯湯槽より塩素滅菌処理されて、一般家庭を中 心に飲食店等の営業用や学校・病院等の公共施設に配湯されている。
図表 事業概要
供給開始 1970年2月1日 供給区域 福島県いわき市小名浜地区 区域面積 90 ha (H20.3.31現在)
供給延床面積 251,000m2(H20.3.31現在)
供給戸数 約1,200戸 供給建物 一般住宅、レストラン等 給湯温度 50℃(最終需要者側)
図表 供給区域
①配湯設備(プラント) ②工場 ③病院 ④ショッピングセンター
⑤市役所支所 ⑥小学校 ⑦保育所
出典:(社)日本熱供給事業協会ホームページ(http://www.jdhc.or.jp/area/tohoku/03.html)
<事例> 新宿南口西地区熱供給事業(地下鉄排熱)
新宿南エネルギーサービス株式会社は新宿南口西地区において、旧国鉄跡地における再開発 に合わせ地下鉄排熱の活用を取り入れた地域熱供給事業を行っている。隣接する都営地下鉄大 江戸線新宿駅に設置した排熱回収ヒートポンプにより、電車や人体から排出される熱、車両冷 房による排熱を温水として回収し利用している。
また、電気・ガスを併用して一次エネルギー源を複源化することにより信頼性を向上させ、
氷蓄熱・水蓄熱を設置して夜間電力を利用することでエネルギーの平準化を図り、経済性の向 上を目指したシステムとなっている。
図表 システム概要
供給開始 1995年10月1日 供給区域 東京都渋谷区代々木2丁目 区域面積 9.4 ha (H21.3.31現在)
供給延床面積 383,283m2(H21.3.31現在)
供給建物 オフィスビル、ホテル、病院等 熱源機 熱回収ターボ冷凍機 1,055kW
ターボ冷凍機 3,516kW ブラインターボ冷凍機 2,989kW(製氷時)
蓄熱槽 水蓄熱槽:3,780m3 氷蓄熱槽: 810m3 図表 供給区域概観
出典:「新エネルギーガイドブック2005」(2005, NEDO)