8.10 工場等排熱利用
8.10.5 技術開発動向
に削減することが可能となる。しかしながらいずれも、熱源の立地に左右されるため、全ての 事例において実施可能な対策ではない。
排熱回収装置の設備費は、回収する排熱源の種類によって異なる。例えば熱源となる排ガス 中に粉塵が多く含まれる場合は、熱交換器内に付着した粉塵を定期的に落とす必要があり、設 備費がかさむ。また腐食性の強いガスから熱回収する場合は、チタン製の熱交換器等が必要と なり、アルミニウム合金やステンレス鋼製の熱交換器と比較して大幅なコストアップになる。
ランニングコストについては、未利用エネルギーを利用するため、既存のシステムと比較し て燃料代の削減に寄与するが、排熱回収装置や補助ボイラ等のメンテナンス費が追加負担とな る。また、大規模なボイラの取扱いにあたっては、ボイラ取扱作業主任者としてボイラ技士を 選任する必要があり、人件費がかかる。
(2) 高効率化
高効率化については、熱源機器の高効率化や、配管熱損失の低減等が挙げられる。
熱源機器は、高温系のシステムにおいて吸収式冷凍機、低温系のシステムにおいてヒートポ ンプ空調機が主に使用される。吸収式冷凍機については、一般的な二重効用式の COP1.0〜1.2 に対し、現在三重効用式において COP1.6(高位発熱量ベース)を達成している73。ヒートポン プシステムについては、空冷ヒートポンプでCOP5以上、ターボ冷凍機においてCOP674以上を 実用化しており、飛躍的に高効率化が進んでいる。数十年前の機器を使用しているプラントに おいては、最新機器の導入により大幅な効率向上が可能となる。しかしながら、経済性の高い ビルマルチ方式等の普及に伴い、分散型システムに対する地域熱供給システムの競争力は低下 する傾向にあり、特にコスト高となる未利用エネルギー源を用いた地域熱供給システムはコス ト競争力を保つのが難しい状況にある。
配管熱損失の低減は、配管の断熱性能の向上が対策として挙げられるが、イニシャルコスト を押し上げる要因にもなるため、注意が必要である。また、熱損失の低減には、熱の移動距離 を短くする必要があり、供給地と需要地のマッチングが重要となる。
(3) 供給形態の多様化
供給形態の多様化として、蓄熱による熱供給、発電利用等が挙げられる。
蓄熱による熱供給技術として、潜熱蓄熱技術を用いた「トランスヒートコンテナ」が開発さ れている。トランスヒートコンテナは、これまで低温のため捨てられていた 200℃以下の排熱 をコンテナ内の潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)に蓄熱し、給湯や冷暖房の熱源とし て利用する技術である。潜熱蓄熱材とは、固液の相変化に伴って移動する潜熱を利用するもの で、一定の温度で蓄放熱できること、顕熱蓄熱よりも高密度で蓄熱できる点が特徴である。本 技術はドイツから輸入された。
図表 8.97にトランスヒートコンテナの概要を示す。熱源側の熱交換器を通して、熱媒油によ りコンテナ内の潜熱蓄熱材に蓄熱する。需要側では同様に熱交換器を通して、熱媒油により放
73 川重冷熱工業株式会社製
74 インバーターターボ冷凍機においては、部分負荷運転時のCOPは20を超えている。
トランスヒートコンテナの利用形態には輸送型と定置型がある。輸送型はトラックで需要地 へ輸送する方法で、従来の地域熱供給のエリアが半径 0.5km〜2km 程度に限られるのに対し、
トランスヒートコンテナの場合輸送距離 10〜20km 程度まで経済的な搬送が可能とされている
75。定置型は、排熱源の近くにトランスヒートコンテナを設置して利用する方法である。蓄熱し て利用することにより、熱負荷の時間変動に対応可能であり、工場内建物の熱源として利用で きる。トランスヒートコンテナのエネルギー利用効率76は高く、輸送型・定置型双方において 90%以上を達成している。
図表 8.97 トランスヒートコンテナ システム概要
出典:「熱輸送ネットワークによる低温排熱の地域内利用研究」(2009, EPOC)
75 三機工業株式会社ホームページホームページ(http://www.sanki.co.jp/news/press/contents_59.html)
76 供給熱量−(熱媒油循環ポンプ動力+輸送燃料)