8.9 圧電発電
8.9.1 技術の俯瞰
図表 8.83 ペロブスカイト結晶構造(PZTの例)
出典:産業総合研究所ホームページ(http://www.aist.go.jp/MEL/soshiki/tokatsu/NEWS-text.html)
圧電変換素子の性能を評価する重要な指数としては圧電定数d33がある。これは、与えられた応 力によってどれだけの電荷が生じるかを表しており、単位はpC/Nで表示される。図表 8.84にd33
の開発トレンドを示す。1980 年代より、亜鉛ニオブ酸鉛(PZN:Pb(Zn1/3Nb2/3)O3)やマグネシウ ム ニオブ酸鉛(PMN:Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)等のリラクサー63とPbTiO3との固溶体単結晶であるPZNT やPMNT等が、ある組成において高いd33を示すことが発見され研究が進んだ。
図表 8.84 圧電材料のd33の推移
出典:「高効率圧電単結晶材料」(2004, 東芝レビュー Vol.59, No.10)
圧電材料において、結晶構造の変化により圧電特性が失われる温度をキュリー点(Tc)という が、BaTiO3では約130℃、PZTでは350℃付近である。但しTcの約半分の温度を超えると分極量 が急激に下がるため、実際に使用可能な温度域はBaTiO3で約80℃、PZTでは250℃程度以下であ る。d33の高いリラクサー系単結晶では、圧電特性を示す組成において PZNT は約175℃、PMNT
は約155℃とPZTに比べて低いため、使用温度範囲が限られる。
63 Pb(B1,B2)O3の一般式で表され、誘電率のピーク温度が測定周波数に依存し、緩慢な(relaxした)誘電率カー ブを示す化合物。
図表 8.85 使用限界温度と圧電定数の関係
AN : AlN(窒化アルミニウム) BT : BaTiO3
BIT : Bi4Ti3O12
GP : GaPO4
KN : KNbO3
LF4 : (K0.44Na0.52Li0.04)(Nb0.86Ta0.10Sb0.04)3
LGS:La3Ga5SiO14
LN : LiNbO3
PN : PbNb2O6
PT : PbTiO3
PZNT : 0.92Pb(Zn1/3Nb2/3)O3 - 0.08PbTiO3
PZT : Pb(Zr0.52Ti0.48)O3
SO : SiO2
※AlNとGaPO4の使用限界温度は圧電性を示す最高温 度(予測値)であり、その他の物質はキュリー点で ある。
出典:産業技術総合研究所ホームページ(http://www.aist.go.jp/index_ja.html)
圧電変換素子の用途例としては、携帯電話が身近な事例の一つに挙げられる。携帯電話の送・
受話器には薄い圧電変換素子が電極に挟まれて組み込まれており、音声と電気信号を相互に変換 する。また、ライターの着火子等で圧電変換素子が利用されており、瞬間的に加えられる衝撃に より放電に必要な電圧を得て点火する仕組みとなっている。また、電気エネルギーを機械エネル ギーに変換する方法としては、インクジェットプリンタにおいて電圧を加えることによりインク をヘッドに向かって吐出させ印刷する等の用途例がある。
図表 8.86 圧電変換素子の用途例
エネルギー変換形態 用途例
電気から機械へ スピーカー、アクチュエータ、ブザー、
インクジェットプリンタ等 機械から電気へ 着火子、加速度センサ、マイク等
電気と機械の相互変換 携帯電話(バイブレーション)、超音波探知機、ソナー等 電気から機械、また電気へ フィルタ、トランス
出典:「パーソナル分散型エネルギーシステム」(2005, 養賢堂、伊藤 義康著)より作成