○鷲尾 一浩、栗原 英祐
公立学校共済組合中国中央病院呼吸器外科
【はじめに】高度分葉不全を伴った肺内気管支性嚢胞に対して cVATS 拡大 S3区域切除+右中葉部分切除を施 行した 1 例を経験したので報告する。【症例】患者は 40 歳代女性、胸部打撲にて近医受診し胸部異常陰影を 指摘され当院紹介となった。胸部レントゲン写真・CT・MRI にて右上中葉間に蛋白濃度の比較的高い液体を 貯留した正常気管支との交通が不明瞭な嚢胞性病変が認められ肺内気管支性嚢胞と診断され、増大傾向(58×
38mm→76×54mm)もあり当科紹介された。肺内嚢胞は A1+2rec、A3、A4+5、V1a+b、V3a,V3b、V4、V5、中葉 気管支を強く圧排しており、高度の右上中葉間の分葉不全が疑われたが、cVATS 拡大 S3区域切除+右中葉 部分切除を行うことでできるだけ呼吸機能温存し患者の希望である整容性を保ちながら嚢胞の完全切除が可 能と判断した。4 ポートで手術施行した。右上中葉間は分葉不全高度であり肺門腹側からのみ嚢胞の一部が 確認された。剥離は炎症のためか困難であったが A2rec、V1aから嚢胞を剥離し、A1、A3、V1b、V3a,V3bを結紮・
切離し S1に切り込むように S3を拡大切除し、A4+5、V4、V5、中葉気管支から嚢胞を剥離し右中葉を部分切除 し、嚢胞を完全切除した。【考察】肺内気管支性嚢胞は良性疾患であるが切除が不完全な場合再発するとの報 告例もあり完全切除が重要であるが、嚢胞が深部にある場合には嚢胞のみの切除・肺部分切除は困難とされ、
炎症を伴う場合には区域切除も困難とされる。今回、術前 CT の詳細な検討から右上中葉間の高度分葉不全 および肺動静脈・気管支と腫瘤との位置関係が十分に把握できていたため呼吸機能をできるだけ温存し腫瘤 の完全切除を行い得た。貴重な症例と考え報告した。
第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)
膿胸を併発した結核性荒蕪肺に対し胸膜肺全摘術を施行した一 例
○柴田 諭、花木 英明
国立病院機構 東広島医療センター 呼吸器外科
【症例】患者は、40 歳台女性。半年前から盗汗、微熱あり 4 ヶ月前に近医を受診し、喀痰検査で Gaffly 7 号 を認め、肺結核として当院に紹介入院となった。入院時より左肺は荒蕪肺となり尾側で気胸を呈し、右肺に は多数の散布性結節を認めた。未治療の糖尿病(HbA1c : 13.0)の合併があり血糖コントロールを行いながら、
INH+RFP+PZA+EB の化学療法を施行し治療開始後 2 ヶ月で排菌陰性となった。治療開始後 3.5 ヶ月の胸 部 CT で、左胸水が出現あり。左膿胸および結核病巣コントロール目的に手術を施行する事となった。治療 開始後 4 ヶ月で左開窓術(第 9・10 肋骨背側部 10cm を切離)を施行し、膿胸腔の鎮静化を図った。開窓術 から約 3 週間に気管支動脈塞栓術を施行し 3 日後に左胸膜肺全摘術を施行した。手術は第 5 肋骨を切除し胸 膜外剥離を開始。背側と横隔膜面の癒着が著しく、腹側及び頭側から肺門部までの剥離を行った後、左主肺 動脈、左肺静脈(共通幹)、左主気管支の順に自動縫合器で処理切離を行った。横隔膜からの胸膜剥離は開窓 部の創を延長し操作を行った。胸腔内の洗浄・止血を施行後に、有茎広背筋弁を用いて気管支断端を被覆し て手術を終了した。手術時間は 7 時間 20 分、出血量は 1500ml であった。手術後、創部皮下膿瘍を認めたが 軽快し、術後 27 日で退院となった。手術後約 8 ヶ月経過しているが、膿胸の再発を認めず、右側病変の悪化・
再排菌を認めず経過良好である。
第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)
繰り返す喀血のため、完全鏡視下に右肺中葉切除を行った肺放 線菌症の一例
○古垣 浩一
1、加藤 雅人
1、小楠 真典
2、井上 周
2、小宮 奈津子
2、北川 浩
3、神谷 尚彦
3、 酒井 正
3、田渕 正延
3、井久保 丹
3、鮫島 隆一郎
3、木戸 伸一
4、湯ノ谷 誠二
31唐津赤十字病院呼吸器外科、2唐津赤十字病院呼吸器内科、3唐津赤十字病院外科、4唐津赤十字病院病理部
[はじめに]1 年の間に 9 回の喀血を繰り返し、喀痰細菌培養・細胞診、気管支鏡下肺生検・細胞診などの内 科的精査では確定診断に至らず、診断と治療のために責任病巣と思われる右肺中葉を完全鏡視下に切除、切 除標本の病理学的検査にて肺放線菌症の確定診断を得た一例を経験した。[症例]症例:71 歳、女性。主訴:
繰り返す喀血。現病歴:平成 25 年 8 月頃より月に 1 回喀血あり。その後、8 回の喀血を認めた。今回、大量 喀血を来し緊急入院となったが、Hb が 12.5g!dl から 9.6g!dl まで低下した。既往歴:心房細動、僧房弁狭窄 症、大動脈弁閉鎖不全、左心耳血栓、右腎梗塞。抗凝固剤内服中。生活歴:喫煙(30"62 歳)10"15 本(ex smoker,
BI 320"400)。CT にて右肺中葉に増悪と緩解を繰り返す腫瘤影あり。完全鏡視下に右肺中葉切除施行(ビデ オ供覧)。切除標本にて肺放線菌症の菌塊を証明し、確定診断を得た。[考察]肺放線菌症は画像上、腫瘤様 陰影を呈することが最も多く、内科的な生検等による診断率が低い。生検にて診断できない場合には、悪性 腫瘍の可能性が否定できず、外科的切除により確定診断がなされる事が多い。今回の症例も内科的精査では 確定診断に至らず、診断と治療のため、右肺中葉を完全鏡視下に切除。切除標本にて菌塊を証明することに より診断し得た。[結語]炎症性疾患では腫大したリンパ節のため肺動脈の処理が困難な事が多いが、今回の 症例でも PA4 の処理に苦慮した。同部位の手技上の工夫を中心にビデオ供覧する。
第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)
気胸にて発症した画像診断不能のびまん性悪性胸膜中皮腫に対 し胸膜切除!肺剥皮術を施行した 1 例
○岩田 隆、原 幹太朗、井上 英俊、溝口 裕規、白川 岳、吉龍 正雄
関西労災病院 心臓血管外科・呼吸器外科【症例】59 歳男性。生来健康。居住歴として 18 歳まで山口県宇部市、その後は兵庫県尼崎市。48 歳まで電機 会社工場にて通信機器製作を行っており明らかなアスベスト暴露歴はない。X 年 11 月 会社の検診にて右気 胸を指摘され当科受診、入院の上ドレナージ。CT にて気腫性変化やブラを認めず、胸膜にも結節陰影はな かったが、悪性胸膜中皮腫を疑い胸水ヒアルロン酸濃度を測定したところ 24 万 ng!ml。胸腔鏡検査を提案し たが受け入れられずドレーン抜去後退院。退院一ヶ月後にすでに軽度気胸再発を認めた。3 ヶ月後再診時に も気胸を認めたため、胸腔鏡下生検を提案。X+1 年 6 月胸腔鏡検査を施行。迅速診断では悪性所見なしであっ たが、免疫染色にて上皮型びまん性悪性胸膜中皮腫と診断した。FDG"PET にて転移のないことを確認し、
同年 7 月胸膜切除!肺剥皮術を施行した。手術時間は 7 時間 50 分、出血量は術中浸出液を含む 1630g で、無 輸血で行った。当日より水封管理とし、強い咳嗽時のみ空気漏れが見られた。翌日より空気漏れはなくなり、
第 5 病日にドレーンを抜去、第 10 病日軽快退院となった。病理検査では臓側胸膜において明らかな肺実質へ の浸潤を認めず、剥離面での腫瘍の露出はなかった。T1bN0M0 stage IB と診断。補助化学療法として CDDP+
PEM 併用療法を行い無再発経過中である。【考察】気胸で発症する画像診断不能な悪性胸膜中皮腫は診断こ そ困難であるが、肺実質や周辺臓器への浸潤が強くないことが予想され、胸膜切除!肺剥皮術の良い適応とな る可能性がある。
第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)
肉眼病変を有しない臓側胸膜の剥皮は可能である
○黒田 鮎美
1、中道 徹
1、門司 祥子
1、橋本 昌樹
1、多久和 輝尚
1、松本 成司
1、近藤 展行
1、 坪田 紀明
2、長谷川 誠紀
11兵庫医科大学 呼吸器外科、2兵庫医科大学 胸部腫瘍科
悪性胸膜中皮腫に対する外科的根治術としてはこれまで胸膜肺全摘(EPP)が主に行われてきたが、近年 肺を温存できる胸膜切除!肺剥皮術(P!D)の利点が注目されてきている。しかし悪性胸膜中皮腫は稀な疾患 でもあり、P!D が施行された症例は未だ多くない。特に、胸膜が著明に肥厚している症例に対する肺剥皮は 比較的容易であるが、病的な肥厚を認めない臓側胸膜を有する肺の剥皮については困難が予想された。今回 我々は cT1aN0M0 の悪性胸膜中皮腫に対し P!D を施行し、肉眼的完全切除できた症例を経験したのでビデ オを提示する。患者は 50 代男性で、胸痛を主訴に医療機関を受診し、左胸水を指摘された。CT 上わずかな 胸膜肥厚以外の変化を認めず、PET!CT では明らかな集積を認めなかった。胸水細胞診で悪性胸膜中皮腫が 疑われ、胸膜生検にて悪性胸膜中皮腫(上皮型 cT1aN0M0)と診断された。生検時の所見として、左肺上葉 は胸壁と癒着しており、壁側胸膜に数箇所 0.5mm 大の白色小結節を認めるほかは肉眼的には正常胸膜であっ た。臓側胸膜には観察範囲に結節性病変を認めなかった。導入化学療法後、左 P!D を施行した。P!D 時の所 見でも壁側胸膜には目立った結節性病変を認めなかった。臓側胸膜は横隔膜面の一部にのみ数 mm 大の結節 性病変の集簇を認めた。壁側胸膜の剥離に若干の困難を伴ったが、臓側胸膜の剥皮は予想よりスムーズに進 行し、肉眼的完全切除(壁側臓側胸膜 100% 切除)を達成して手術を終了した。画像上あきらかな結節性病 変を認めず、肉眼的にも病的な胸膜肥厚を認めない悪性胸膜中皮腫に対して施行した P!D の手術ビデオを提 示する。