○花岡 淳
1、堀本 かんな
1、林 一喜
1、白鳥 琢也
1、片岡 瑛子
1、五十嵐 知之
1、大塩 恭彦
1、 橋本 雅之
1、寺本 晃治
2、手塚 則明
31滋賀医科大学呼吸器外科、2滋賀医科大学臨床腫瘍学講座、3滋賀医科大学医療安全管理部
【はじめに】血管肉腫は稀な疾患であり,特に主肺動脈に発生するのは低頻度である.その浸潤性の進展のた めに治療に難渋することもあり,完全切除することが重要な予後規定因子である.今回,左主肺動脈発生血 管肉腫症例を経験したので,手術手技についてビデオで供覧する.【症例】63 歳,女性.人間ドックで胸部 異常陰影を指摘,気管支鏡検査施行されるも確定診断得られず,血痰が出現したため前医を受診した.胸部 CT・FDG!PET では,左下葉の空洞性結節と左肺門の FDG 高度集積の腫瘤が認められ,左肺動脈の狭窄の ため血流が低下していた.肺野結節に対して CT ガイド下生検が施行されるも確定診断は得られず,他部位 に転移を疑う所見も得られなかったため,精査・加療目的に手術療法を施行した.胸骨正中切開でアプロー チし,人工心肺下に左主肺動脈を切開,血管内腔より腫瘍の進展範囲を確認しながら切除し自己心膜パッチ で再建を行った(中枢は肺動脈弁近傍まで及んでいた).その後,左肺全摘術を施行し手術を終了した.術後 は良好に経過し術後第 15 病日に退院した.術後病理検査では肺動脈内膜肉腫の結果であったが,肺野の結節 には悪性所見は見られなかった.【考察・まとめ】肺動脈派生血管肉腫は急慢性血栓塞栓症類似の症状で発症 し,診断に難渋することが多い.本症例は血痰を主訴に画像検査で本疾患を疑った.肺全摘術を行うととも に、人工心肺使用下に肺動脈欠損部を自己心膜パッチで再建することで完全切除が可能は症例であった.
第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)
術後気管支瘻に対する一期的閉鎖術
○遠藤 秀紀、西沢 延宏、山本 亮平
長野県厚生連佐久総合病院佐久医療センター【はじめに】術後気管支断端瘻は、肺瘻切除または全摘後の手術手技の工夫により予防ができうるものと思わ れるが、発生すると救命が困難なことや、救命できても著しく QOL を損なう重篤な合併症である。今回、一 期的に鏡視下で大網充填を行うことで、開窓術を回避できた症例を経験したので報告する。【症例】症例は 74 歳男性、cT1bN0M0 StageIA の扁平上皮癌に対して胸腔鏡下右肺下葉切除術郭清を行った。術後から肺瘻が 遷延していたが、第 12 病日にエアリークの増加を認め、気管支断端瘻を疑い、胸部 CT を行った。肺炎の所 見はなかったが、胸水中の二ボーと気管支壁の途絶を認め、気管支断端瘻が強く疑われたため、再手術を行っ た。ドレーン孔より 5.5mm の Thracoport を挿入し、胸腔鏡で観察し、気管支断端瘻を確認した。ステープ ルライン近傍が 8mm 程度裂けており、周囲の癒着とフィブリンの析出を認めた。仰臥位、心窩部小開腹で 大網の右側半を遊離し、傍心膜沿いに胸腔内へ誘導した。左側臥位に体位変換した後、鏡視下に大網を断端 瘻に充填し、ドレーンを挿入して閉創した。【経過】初回手術後より疼痛が強かったが、再手術後の経過はお おむね良好で、再手術後 5 日目にドレーンを抜去し、3 週目に退院した。経過中は食欲低下も認められたが、
全身状態は順調に回復した。術後半年経過したが、癌や感染の再発徴候なく経過している。【結語】術後気管 支断端瘻に対しては、ドレナージのみで軽快する症例報告も散見されるが、開窓術による感染制御と二期的 な胸郭形成術が一般的な手術法と考えられる。しかし早期に診断できれば、これを回避しての一期的手術も 可能と思われた。
第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)
胸腔鏡下手術における若手医師指導のあれこれ
○伊藤 祥隆、嶋田 喜文、川向 純、新納 英樹、宮澤 秀樹
富山県立中央病院呼吸器外科近年では胸腔鏡下での肺葉切除は特殊な技能ではなく,一般化された手技となっている.当院では 3 年間 他院にて修練を経た医師が赴任したことで,2014 年の 4 月よりいわゆる「姫路式」での胸腔鏡下肺葉切除に 変更し安定した成績を収めている.一方で指導医にとって胸腔鏡下手術における若手医師の指導については,
まだまだ手探りの状態である.開胸・鏡視下を問わず手術では両手を用いた操作が必須であるが,特に胸腔 鏡手術においては初心者にとってこの両手での操作は非常に難しい.このため若手に手術を執刀させる際に は,指導的助手には視野の展開のみならず,しばしば若手術者の左手の役割までもカバーする必要に迫られ る.姫路式では助手側から 2 本以上の鉗子類が挿入可能であため,十分な操作が可能であり若手指導におい ても非常に有用な様式である.また当院では言葉による指示・指導だけでなく,指導的助手が若手術者と同 じ器具を胸腔内に挿入し,まず範を示して後に若手に「なぞらせるように」操作させ指導性と安全性を高め るようにしている.このため若手指導の際には同じ吸引管や鉗子を 2 組用意し使用している.会場では 4 年 目の医師の手術をもとに実際の指導について供覧する.
第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)
ソフト凝固による肺動脈出血制御の有用性を考察する
○桜木 徹、奥田 澄夫
大隅鹿屋病院胸部・心臓血管外科【目的】ソフト凝固は放電を伴わない純粋なジュール熱による凝固である。肺動脈出血に対する有用性を証明 するにあたり、定量化した客観的なデータの集積は困難である。それゆえ、過去の実験や臨床経験から考察 した。【方法】1.卵白を低エフェクト(低電圧)および高エフェクトにて凝固し観察する。2.ビーグル犬に おける肺動脈パンチアウトモデルによる視覚的(n=4)、顕微鏡学的(n=1)な考察。エフェクトは 3(88V 上限)3.術中肺動脈損傷による出血をビデオにて視覚的に考察。【結果】1.低エフェクトでは徐々に広がる 卵白の凝固が観察されたが、高エフェクトでは急速かつ急激な凝固が認められた。2.4 頭のビーグル犬にお いて肺動脈からの出血が制御可能であった。顕微鏡学的には炎症細胞の浸潤は伴わず、周囲組織(中膜およ び外膜)とフィブリンの短時間での凝固を想像させる蛋白凝固が認められた。(T. Sakuragi et al.!Interact Car-diovasc Thorac Surg. 2008 ; 7 : 764"766)3.完全胸腔鏡手術においては、結紮済み肺動脈根部の鉗子による 不注意な損傷、左 A3 末梢分岐部小分枝の損傷、および肺動脈 A6 小分枝引き抜き損傷の出血制御が可能であっ た。(開胸手術における非意図的な肺動脈のパンチアウトの出血制御が容易に可能であった。)【考察】卵白凝 固からは中等度エフェクトでの凝固の妥当性が推測された。動物実験の顕微鏡像から、凝固はほぼ瞬時的に 完成し、引き続く肺動脈狭窄などは引き起こさないと考える。実臨床において肺動脈からの出血制御の一つ の方法として有用と思われる。
第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)
VAL!MAP とステープラーによる完全鏡視下複雑区域切除:
再現性と確実なマージン確保のための工夫
○佐藤 雅昭、山田 徹、毛受 暁史、青山 晃博、陳 豊史、佐藤 寿彦、園部 誠、大政 貢、伊達 洋至
京都大学呼吸器外科【目的】Virtual!Assisted Lung Mapping(VAL!MAP)はバーチャル画像を使い複数個所に術前、経気管支 鏡的に色素を注入し肺に「地図」を描く手法で、区域切除にも有用である。複雑な区域切除を、再現性と十 分な切除マージンを確保し最小のエアリークで完全鏡視下に完遂するための VAL!MAP とステープラーの使 用法を検討した。【方法・成績】CT,3D 画像上で十分な切除マージンを設定し,これをもとに術式と 3!6 箇 所のマッピングポイントを決定した。VAL!MAP は手術 2 日以内に行った。手術開始時にマッピングを基に 切離線を設定し 3!0PDS の糸針をかけた。次いで肺門の脈管処理を行い,ステープラーが十分入るよう肺門 から約 2cm 抹消に向けて電気メスで切り上げた。2 面の区域切離面を生じる右 S1,左 S3 では肺門側を十分 に切り上げることでほぼ直線的な切除が可能だった。肺底区が絡む切除では横隔膜面のステープリングを先 行させると見通しが立ちやすかった。S10 を含む切除は葉間・背側両側からのアプローチが有用だった。肺 門剥離面をソフト凝固で処理するとエアリークはほぼ消失し通常術後 1!3 日でドレーン抜去が可能だった。
【考察】肺癌に対する区域切除は日本が世界をリードする分野である。電気メスによる解剖学的区域切除は職 人技ともいえる美しい手術だが、マージン確保とリークが時に問題となり、世界で再現性をもって広まるか 未知である。本術式はこれらの課題を克服しより世界に受け入れらやすい術式である可能性がある。【結論】
VAL!MAP とステープラーを用いる完全鏡視下区域切除は CT 上で想定した切除マージンを確保し、自信を もって最小限のリークで切除できる有用な方法と考えられる。