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○矢野 智紀、森山 悟、羽田 裕司、奥田 勝裕、立松 勉、鈴木 あゆみ、藤井 義敬

名古屋市立大学腫瘍・免疫外科学

症例は 72 歳女性、労作時の動悸を主訴に近医受診し、胸部 XP で縦隔から右胸腔に張り出す腫瘤影を指摘 された。過去の画像と比較して明らかな増大傾向を認めることから悪性腫瘍を疑い、CT、MRI では脂肪と同 程度の濃度、強度を示し、広範囲に縦隔、横隔膜に接しており巨大な縦隔発生脂肪肉腫の診断で手術を行っ た。頭側への浸潤を考慮し、反回神経損傷を器具し NIM 気管チューブを使用し、背臥位、CO2 送気で胸腔 鏡下に切除を試みたが、腫瘍は奇静脈弓頭側の気管前リンパ節周囲から肺門、横隔膜上まで頭尾側方向に長 く存在し、完全に横隔神経を取り巻くように存在し、剥離は容易ではなく、体位を左側臥位側方開胸に移行 し剥離を進めた。横隔神経を温存し、最大径 18cm の黄色弾性の腫瘍を切除し迅速病理にて脂肪肉腫疑いと 診断されたため、改めて横隔神経を切除した。横隔膜の縫縮を追加し手術を終了した。術後 5 か月経過し再 発の徴候なく、また呼吸機能低下に伴う明らかな呼吸困難感等は認めていない。縦隔発生の脂肪肉腫はとき に巨大な腫瘍を形成し、切除に難渋するため手術ビデオで症例を提示する。実際の手術手技に加えて、反回 神経麻痺の回避のために NIM 気管チューブは有用であり、横隔神経合併切除時には横隔膜の縫縮が術後の呼 吸機能低下を減じる意味で有用である。

第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)

Transmanubrial approach で摘除した von Reckling-hausen 病関連後縦隔神経節種の 1 例

○石川 真也、上田 雄一郎、千葉 直久、齊藤 正男、中川 達雄

天理よろづ相談所病院

【はじめに】von Recklinghausen 病は、神経線維腫症 1 型(Neurofibromatosis type 1 ; NF1)とされ、脳神 経系に腫瘍を生じさせる遺伝子疾患である。今回我々は、頸部から後縦隔に発症した von Recklinghausen 病 関連後縦隔神経節腫を transmanubrial approach で摘除した 1 例を経験したので報告する。【症例】症例は、

34 歳、女性。主訴は胸部異常陰影。既往歴は、14 歳時多発性の皮下神経鞘腫を切除、32 歳時に背部の神経 鞘腫を切除している。また、甲状腺機能亢進症を指摘されている。腰痛症で他院を受診し、胸部 CT 上、後 縦隔に腫瘍を指摘された。10 年以上前から頸部の腫れは自覚していたが、徐々に増大していることを自覚、

カフェオレスポットも確認され、既往歴から、von Recklinghausen 病に関連した頸部から後縦隔発症の神経 線維腫と診断し、増大傾向、悪性腫瘍の可能性も考えられたため、手術を施行した。手術は、耳鼻科により、

頸部襟上切開から、腫瘍を露出し、被膜を切開した。transmanubrial approach を追加し、椎骨動脈等を確認 後、被膜内で腫瘍をくりぬく形で摘除した。術後、ホルネル症候群、左手の発汗停止などを発症したが、再 発なく生存中である。病理学的には、神経節腫と診断され、交感神経由来と考えられた。【結論】頸部から後 縦隔に発症した von Recklinghausen 病関連神経節腫に対し、transmanubrial approach は、十分な視野を確 保でき、有効、安全な方法であった。

第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)

甲状腺癌頚部縦隔リンパ節再発に対する transmanubrial approach 変法を用いた系統的郭清術

○坪地 宏嘉

1

、遠藤 俊輔

1,2

、遠藤 哲哉

1

、眞木 充

1

、山本 真一

2

、手塚 憲志

2

1自治医科大学附属さいたま医療センター呼吸器外科、2自治医科大学呼吸器外科

【はじめに】頚部及び縦隔の系統的郭清のためには、腕頭動静脈、鎖骨下動静脈、内頚静脈周囲などの適切な 視野展開が必要となる。我々は、頚胸部境界領域の郭清を行う際には、transmanubrial approach(TMA)に 胸鎖乳突筋切断を加えた TMA 変法を行っている。【症例】79 歳女性。甲状腺乳頭癌に対して甲状腺全摘及 び両側頚部郭清を施行。4 年後に頚部リンパ節に再発あり、両側頚部追加郭清施行。さらにその 1 年後に右 鎖骨上及び傍気管リンパ節の再発を認め当科に紹介された。【手術】頚部進展位をとり、頚部は右半襟状切開 をおき、胸骨は第 2 肋間のレベルで横切し上方の hemisternotomy を行った。右胸鎖乳突筋は切断した。第 1、

第 2 肋軟骨を胸骨付着部で切断したうえで、鎖骨を鎖骨下筋から剥離し、胸鎖関節を温存のまま鎖骨を外側 に牽引した。左右腕頭静脈、腕頭動脈、左総頚動脈を taping し気管周囲の縦隔リンパ節を郭清した。次いで 右鎖骨下動静脈、右内頚静脈を taping。さらに右反回神経も taping して右静脈角から頚部にかけての郭清を 行った。手術時間 194 分、出血量 524ml。郭清リンパ節に甲状腺乳頭癌の転移を認めた。胸鎖乳突筋切断に 伴う頚部の運動制限は殆ど認められなかった。【結語】TMA に胸鎖乳突筋の切断を加えることで、良好な視 野のもとで頚部及び縦隔リンパ節の系統的郭清を行うことができる。

第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)

巨大上縦隔腫瘍に対する Transmanubrial approach の有 用性

○大沢 郁、清水 公裕、永島 宗晃、大瀧 容一、尾林 海、川島 修、上吉原 光宏、菅野 雅之、

伊部 崇史、懸川 誠一、渥實 潤、矢澤 友弘、中野 哲宏、竹吉 泉

群馬大学大学院臓器病態外科学

Transmanubrial approach(以下 TMA)は鎖骨の離断を伴わず、上肢機能を温存した上で、肺尖及び頸部 の良好な視野を確保する術式として、特に肺癌における Superior sulcus tumor(SST)に対して頻用されて いる。しかし、これまでに縦隔腫瘍に対して TMA を応用した術式の報告は少ない。そこで、今回我々は、

左反回神経麻痺を既往にもつ巨大右上縦隔腫瘍症例に対し、TMA に trap door を併用することで、右反回神 経を温存しつつ腫瘍を摘出し得た症例を経験したので、そのビデオを供覧し、本術式の knack and pitfall に ついて述べる。症例は 40 歳男性。2 年前より右上縦隔腫瘍を指摘されていたが放置していた。今回、右肩・

頚部痛と咳嗽が出現したため前医受診し、腫瘍の著明な増大を認め、手術目的に当科紹介となった。手術は 仰臥位にて行った。右鎖骨上から前胸部正中にかけて皮切をおき、胸骨丙を L 字に切開、第 1 肋骨を切離し TMA とした。胸膜頂に存在する血管と腫瘍との剥離は可能であったが、腫瘍は上大静脈に広く接し、尾側 は一部右肺門部まで達していたため TMA のみのでは摘出は困難と判断し、胸骨正中切開を第 3 肋間まで延 長、さらに第 3 肋間開胸を加え trap door 型とした。これにより胸腔内の視認性が格段に上がり、右迷走神 経を温存しつつ腫瘍を切除し得た。手術時間 300 分、出血量は 1217ml であった。腫瘍径は 11cm 大で病理結 果は悪性末梢性神経鞘腫の診断であった。TMA 自体は手技のこつをつかめば技術的には比較的容易であり、

合併症も少なく有用なアプローチと考える。また trap door と併用することにより肺門部の操作も可能とな り、巨大上縦隔腫瘍への応用も可能であった。

第32回日本呼吸器外科学会総会(2015年)

Pure VATS Lobectomy における肺動脈出血原因のパター ンとその対処方法

○佐野 由文

1

、重松 久之

1

、岡崎 幹生

1

、鹿谷 芳伸

1

、坂尾 伸彦

1

、藻利 優

1

、湯汲 俊悟

2

1愛媛大学心臓血管・呼吸器外科学、2愛媛医療センター外科

【目的】臨床病期 I 期肺癌に対する pure VATS lobectomy は、肺癌診療ガイドラインにおいても、「科学的根 拠は十分ではないが行うことを考慮してもよい」とされており、急速に普及してきている。しかしながらそ の Pure VATS の特徴に起因する合併症対策は未だ十分とは言えない。【方法】我々の経験した pure VATS lobectomy 中の肺動脈(PA)出血の原因をパターン化して再検討し、その対処法を動画にて供覧する。【原 因と対策】肺動脈からの出血の原因は、A.死角における出血、B.不用意な操作による出血、の二つに大別 できる。A.死角における出血は、VATS の 1.肉眼に比べ立体感・質感・奥行の感覚が劣る、2.拡大視で きるが視野が狭い、という特徴に、また B.不用意な操作による出血は、1.および 2.の特徴に加え、3.触 覚が使えない、4.使える道具が限られている、5.道具が入る方向が規定される、といった特徴に起因する と考えられる。またその対処においても、血管確保や縫合が困難という点を含め、VATS の特徴ゆえに対応 が困難になっているという問題があると考えられる。また出血に対しては、1.圧迫、2.シート状生物学的 組織接着・閉鎖剤の使用、3.縫合閉鎖、4.中枢・末梢 PA あるいは肺静脈のクランプ、等の方法を駆使す ると安全に対処することが可能である。これらの対処法については、動画を供覧して解説する。【結論】pure VATS lobectomy 中の肺動脈出血に対しては、pure VATS の利点および欠点を十分理解し、また出血危険部 位およびそのパターンを把握したうえで、落ち着いて的確な対応を行うことによって、安全に対処可能であ る。