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意味的な出現環境 2(どのような事象と共起するか)

ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 79-84)

4. 事例調査と分析

4.2 調査結果 1: 形容詞 I (schnell, langsam)

4.2.3 意味的な出現環境 2(どのような事象と共起するか)

ここでは、形容詞が述語的・付加語的・副詞的に用いられ、事象を表す語句と共起す

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る際に、それが状態、活動、到達、達成のどのタイプに属するかを観察する。

まず、schnellは収集した300例の中で、述語的用法で事象を表す語句を述語対象語に

取る例が見られなかった。66

付加語的用法では、事象を表す語句を被修飾語に取る例が 37例確認された。そのう ち 1 例は (148) の 0:3-Rückstand(0 対 3 の劣勢)のような状態、18 例は (149) の Ballwechsel(球の打ち合い)のような活動、17例は (150) のEntscheidung des Vatikan(教 皇庁の決定)のような到達、1例は (151) のRegierungsbildung(組閣)のような達成タ イプの事象を表す。

(148) Nach einem schnellen 0:3-Rückstand hatte sein Team im Finale einen schweren Stand.

(Mannheimer Morgen, 29.01.2001) <schnell, 付加語的、状態>

(すぐに0対3の劣勢になった後、彼のチームは決勝戦で形勢困難であった。) (149) Schnelle und harte Ballwechsel […] prägten ihr Spiel. (=(133)) <schnell, 付加語的、

活動>

(速く激しい球の打ち合いが[…]彼らの試合を特徴づけた。)

(150) Es wird mit einer schnellen Entscheidung des Vatikan gerechnet.67 (Süddeutsche Zeitung, 17.06.1998) <schnell, 付加語的、到達>

(即座の教皇庁の決定が計算に入れられている。)

(151) Sollte Marini sich aber durchsetzen, wäre der Weg zu einer schnellen Regierungsbildung frei. (die tageszeitung, 29.04.2006) <schnell, 付加語的、達成>

(万一マリーニが意志を押し通すのなら、速い組閣への道が開いているだろう。68

このように、付加語的用法で被修飾語が事象を表示する語句である場合、その事象は 状態、活動、到達、達成のどのタイプもありうる。ただし、活動及び達成タイプと、状 態及び到達タイプの事象では、schnellがその性質をどのように付与しているのかが、そ れぞれ異なるように思える。活動及び達成タイプでは、schnell は事象を内部から見て、

その性質を表しているように思える。すなわち、(149) のschnellは「球の打ち合い」が、

(151) のschnellは「組閣」が、一定の時間幅の中で速く展開することを表している。一

方、状態及び到達タイプの事象に関しては、schnellは事象を内部から見た性質を表して いるようには考えにくい。例えば、(148) の「0対3の劣勢」とはすなわち、「相手に3 点の先制をされている状態」を指すが、その状態そのものが「速く」持続しているとは 解釈できない。ここで表されているのは、その状態に至るまでの時間の経過の速さ、転

66 なお、脚注64 の述語形容詞文における述語対象語einer [=ein Rhythmus] は、分類するの であれば、活動タイプに属する事象である。

67 文法的には „des Vatikans“ とすべきだが、原文のまま挙げている。

68 Franco Mariniはイタリアの政治家である。

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じて必要な時間の短さだと思われる。到達タイプでも同様で、例えば (150) の「教皇庁 の決定」そのものは一瞬で終了する事象であり、それが「速い」とは考え難い。ここで

「速い」が示しているのは、決定しているという状態に至るまでの時間の経過の速さ、

時間の短さであろう。

さらにschnellの事例を確認すると、236例の副詞的用法の事例の中で、(152) の „die

Beamten sind vor Ort“(警察官たちは現場にいる)のような状態タイプは18例、(153) の

„der junge Mann ist gefahren“(その若い男は運転をした)のような活動タイプは61例、

(154) の „er [=Der Beifall] hört auf“(拍手が止む)のような到達タイプが最も多く131例、

(155) の „Sie bringen das Tier in eine kühlere Umgebung“(彼らは動物をより涼しい環境へ と連れて行く)のような達成タイプは26例であった。

(152) [...], waren die Beamten am Sonnabendmorgen gegen 1 Uhr schnell vor Ort und konnten die Übeltäter festnehmen. (Nordkurier, 20.09.2010) <schnell, 副詞的、状態>

(警察官たちは土曜の朝の1時ごろにすぐに現場に来て、犯罪人たちを逮捕できた。) (153) Nach Angaben von Zeugen ist der junge Mann nicht zu schnell gefahren. (=(134)) <

schnell, 副詞的、活動>

(証人の説明によれば、その若い男はスピードを出しすぎてはいなかった。) (154) Er [= Der Beifall] hörte aber auch schnell auf. (Nordkurier, 13.05.2014) <schnell, 副

詞的、到達>

(それ[=拍手]はしかしまたすぐに止んだ。)

(155) Wenn Sie glauben, daß dies Ursache für das Keuchen ist, bringen Sie das Tier schnell in eine kühlere Umgebung, [...] (Neue Kronen-Zeitung, 20.01) <schnell, 副詞的、達成>

(それがあえいでいる理由だと思うのであれば、あなたがたはその動物を速くより涼 しい環境へと連れて行きなさい。)

このように、schnellが副詞的用法で用いられる場合、動詞句が中心となり表示される 事象は状態、活動、到達、達成のどれでもありうるようである。ただし、付加語的用法 の場合と同様に、schnellが共起する事象が状態タイプである場合、形容詞はその状態の 様態を表しているのではなく、その状態に至るまでの時間の経過の速さ、転じて必要な 時間の短さを示しているのだと思われる。例えば (152) では、schnellは「現場にいる」

という状態が速く進むのではなく、現場にいるという状態を終了点とし、その状態にな るまでの時間が短いことを表しているのだと考えられる。つまり、3.2.2 で取り上げた

Maienborn (2003) の説明にもあるように、状態を表す述語文が、「現場にいる」ではなく

「現場に来る(着く)」という起動相的な意味で再解釈される。さらに、schnellが到達 タイプの事象と共起する場合も、同様のことが当てはまるように思える。例えば、(154) では、「拍手が止む」のは一瞬で終わる事象であるが、schnell はその時点の事象そのも

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のの性質を表すのではなく、拍手がやんでいるという状態に至るまでの時間幅を想定し、

その間の時間の経過が速い、転じて必要な時間が短いということを表していると考えら れる。

一方langsamでは、述語対象語が事象を表示する語句である事例は300例中4例であ

り、それらはすべて、(156) のder Fortschritt(進歩)のような活動タイプの事象である。

(157) のdie Reaktionen(反応)は、その語単独では到達タイプの事象であるようにも思

えるが、単数形ではなく複数形であることから、何度も繰り返される反復相の事象を表 していると解釈できる。Leiss (1992, 2000) から、反復相は無界的な動詞に属すると考え られるため、ここでは同じく無界的で、かつ時間幅に応じた展開がある活動の一種とし て分類した。いずれにせよ、これらの述語的に用いられるlangsamは、時間幅のある事 象と結びつき、その事象の時間幅で起こる継続的な事象に「時間がかかる」という性質 を当てはめていると考えられる。

(156) Darum ist der Fortschritt auch relativ langsam. (=(144)) <langsam, 述語的、活動>

(そのために進歩もまた比較的遅いのである。)

(157) Sind die Schleimhäute blass, die Herzaktion schwach und die Reaktionen langsam, hat das Tier massive Kreislaufprobleme. (Nordkurier, 05.07.2014) <langsam, 述語的、反復

(活動に分類)>

(粘膜が青白く、心機能が弱く、反応が遅いのであれば、その動物は激しい血液循環 の問題を抱えている。)

次に付加語的用法では、事象を表す語句を被修飾語に取る例が22例確認された。そ のうち17例は (158) のFahrt(走行)のような活動、3例は (159) のSterben(死)のよ うな到達、2例は (160) のDatenübermittlung(データ通信)のような達成タイプの事象 を表している。状態タイプの事象を表す名詞句が被修飾語になる事例は見られなかった。

付加語的用法の事例でも述語的用法の場合と同様に、活動及び達成タイプの事象では、

langsamはその事象の時間幅で起こる継続的な事象に「遅い速度で」という性質を当て

はめていると考えられる。一方、到達タイプでlangsamが性質を当てはめるのは、その 事象が成立する一時点ではない。例えば (159) において「死」そのものは一瞬で終わる 事象であるが、langsamはその時点までの時間幅において人が死に向かっていくという 状態の推移を想定し、その時間幅全体に「時間がかかる」という性質を付与していると 解釈できる。

(158) Doch das war glücklicherweise bei langsamer Fahrt. (=(136)) <langsam, 付加語的、

活動>

(しかしそれは幸運なことに遅い走行の際であった。)

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(159) Der gebürtige Bayer [...] sah seinem bewunderten Vorgänger beim langsamen Sterben zu. (NEWS, 17.04.2014) <langsam, 付加語的、到達>

(そのバイエルン生まれの人は[…]称賛された彼の前任者がゆっくりと死んでいく のを見守った。)

(160) Die langsame Datenübermittlung in überlasteten Funk- und Telegrafennetzen hatte zur Folge, dass [...] (Zeit Geschichte, 21.08.2012) <langsam, 付加語的、達成>

(混雑状態のラジオ・電信網における遅いデータ通信は[…]という結果になる)

さらにlangsamが副詞的用法の事例は250例あり、その中の、111例は (161) の „Sie

sprechen“(あなたは話す)のような活動タイプ、126 例は (162) の „er wacht wieder

auf“(彼が再び目覚める)のような到達タイプ、13 例は (163) の „die Straßen werden

repariert“(道が修理される)のような達成タイプである。状態タイプの事象を共起する 事例は見られなかった。

(161) „Sprechen Sie langsam und deutlich.“ (=(137)) <langsam, 副詞的、活動>

(「ゆっくりそして明瞭に話してください。」)

(162) Neun Wochen lang lag er im Koma, wachte dann langsam wieder auf. (Rhein-Zeitung, 04.06.2002) <langsam, 副詞的、到達>

(9週間、彼は昏睡状態にあり、それから徐々に再び意識を回復していった。) (163) Das heißt zum Beispiel, dass die […] Straßen – wenn überhaupt – weitaus langsamer

repariert werden. (Nordkurier, 25.03.2003) <langsam, 副詞的、達成>

(それは例えば、道が―たとえあったとしても―はるかに遅く修理されることを意味 する。)

このように、langsamは副詞的用法では活動、到達、達成タイプの事象と共起するが、

schnellとは異なり、状態タイプの事象と共起する例は見られなかった。これは、3.2.2で

取り上げたMaienborn (2003) の説明にもあるように、langsamでは状態を表す述語文が 起動相的に再解釈されえないということに合致する。また、langsamは、活動及び達成 タイプの事象に関しては、その事象がもともと備えている時間幅における動作や行為の 展開に対して「遅い」という性質を当てはめている。一方、langsamが到達タイプの事 象と共起する場合には、形容詞が表しているのは、到達タイプの事象が起こる時点の性 質ではない。例えば (162) では、langsamは本来一瞬で終わるはずの「目覚める」とい う行為に時間幅を想定し、その状態の推移に時間がかかっているということを意味して いると解釈できる。

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ドキュメント内 博士学位論文(東京外国語大学) (ページ 79-84)