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臨床症状(AIDS 関連リンパ腫の特徴)
はじめに
⑴ 臨床的特徴
悪性リンパ腫で頻用される Ann Arbor 分類の、B 症状(発熱、盗汗、体重減少)を呈する ことが多い(75~85%)。HIV 感染者で見られる原因不明の発熱では、悪性リンパ腫の B 症状 を鑑別に挙げる必要がある。節外性リンパ腫(中枢神経系、消化器系、呼吸器系、生殖器系、
骨髄、副腎、体腔など)の形態をとるものが多く、診断時にすでに進行期の stage IV である ものが多い。中枢神経リンパ腫が高頻度にみられ、しかも無症状のものも多い。また、トキソ プラズマ脳症、AIDS 脳症、CMV 脳症などとの鑑別が重要である。AIDS 関連リンパ腫の発 症には、高齢、CD4 陽性リンパ球数 200//µL 未満、あるいは ART 未導入と関係が深い。
⑵ 病理学的特徴
リンパ腫細胞の帰属が、B 細胞性のものが多い。組織学的には、immunoblastic、diffuse large B-cell(DLBCL)、Burkitt などに分類される、悪性度の高いものが 70~90% と多い。稀 ではあるが、ホジキンリンパ腫や MALT リンパ腫などが発症することもある。HIV 感染者に 特徴的なリンパ腫として、EBV と関連が深い原発性中枢神経リンパ腫、HHV8 と EBV の共感 染が関連する原発性滲出液リンパ腫、口腔内を好発部位とする形質芽細胞性リンパ腫なども見 られる。
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HIV 感染後に起こる原発性リンパ腫は AIDS 関連リンパ腫といわれ、持続性全身性リンパ節 腫脹(PGL)との鑑別が必要で、種々の画像診断と病理組織診断が重要である。AIDS 指標疾患 である全身性の非ホジキンリンパ腫及び原発性中枢神経リンパ腫と、非 AIDS 指標疾患であるホ ジキンリンパ腫に大別される。HIV 感染それ自体には直接的な発癌性はないと考えられている ので、EBV、HHV8 など種々のウイルス再活性化やサイトカインの産生異常、あるいは癌遺伝 子の活性化が、病因として考えられている。AIDS 関連非ホジキンリンパ腫の発生頻度は、HIV 感染者では一般人に比較して 60~200 倍高いとされ、AIDS 患者の生涯で約 5~20%に合併する ため、患者の長期予後を規定する最重要因子ともいえる。また、バーキットリンパ腫や原発性中 枢神経リンパ腫の発症リスクは約 1,000 倍であり、ホジキンリンパ腫も非感染者の 10~20 倍と 高頻度である。他の日和見疾患は ART 採用後その発症頻度が減少してきたが、非ホジキンリン パ腫の発症は減少していないとする報告が多い。また、ART の導入以来、欧米では非ホジキン リンパ腫の合併率は低下しているが、国内ではむしろ報告が増加している。ART による HIV 感 染者の生命予後の改善が AIDS 関連リンパ腫の増加につながっている可能性もある。HIV 感染 の診断がされておらず AIDS 関連リンパ腫で発症して病院を訪れる「いきなり AIDS」症例もあ るが、施設当たりの症例経験数が少なく、難治性かつ再発性で、AIDS 特有の合併症も多く、標 準的治療の確立が望まれている。
AIDS 関連症候群(ARC)の診断と治療 ~悪性リンパ腫~
HIV 感染症の臨床経過 77
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診断方法
治療方法
画像診断(X-P、CT、MRI、USG、EGD、CS、67Ga-Scinti、FDG-PET など)と病理組織診断(腫 瘍生検、骨髄生検など)、細胞診(腰椎穿刺・胸水穿刺・腹水穿刺など)が主体となる。髄液中 の EBV-DNA の検出は、原発性中枢神経リンパ腫を示唆する感度・特異度ともに極めて高い傍 証となる。
⑴ 治療の原則
1 AIDS 関連リンパ腫治療の特徴:治療することによる骨髄抑制・免疫不全の進行が原疾患 に与える影響と、治療困難な中枢神経原発が多いことが問題となる。造血能や免疫能によっ ては dose attenuation や G-CSF の使用などに工夫が必要である。
2 日和見感染予防対策:化学療法と並行して十分な感染予防策を施行する必要がある。特に、
CD4 陽性リンパ球が少ない患者では、発熱性好中球減少症への対策が重要である。NCCN ガイドライン 2015 年度版では、PCP 予防に加えて、好中球減少期のキノロン系抗菌薬の予 防内服、化学療法期のアゾール系抗真菌薬の予防内服が推奨されている。CD4 陽性リンパ 球が 100//µL 未満の場合には MAC 予防や G-CSF の予防的投与も推奨されている。また、
HSV/VZV 予防も強く推奨している。
3 ART:2013 年に発表された AIDS 関連非ホジキンリンパ腫についてのレビューでは、
ART の併用は完全寛解率を有意に改善し、全生存期間を改善する傾向があるとしている。
ART 導入により化学療法後の骨髄抑制や日和見感染症がコントロールしやすくなるからで ある。化学療法併用時の ART 薬剤選択には、抗腫瘍薬の血中濃度に影響を与える CYP3A 阻害作用が少なく、骨髄障害の弱いものを組み合わせるとよい。骨髄抑制の強い AZT、
CYP 阻害作用が強く VCR の副作用が生じやすい RTV、CYP を誘導し PSL の効果を減少 させる可能性のある EFV、過敏症の起こりやすい ABC 等をなるべく避ける。HIV 感染者 は半数以上に B 型肝炎の既往があるので、B 型肝炎合併患者及び既往患者では、化学療法 に伴う B 型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化を危惧し、共に強力な抗 HBV 作用を有する TDF/FTC をバックボーンとし、キードラッグにはインテグラーゼ阻害剤などを加えた初 回治療が推奨されている。その際は、化学療法による嘔吐・嘔気による服薬困難を考え、十 分な制吐剤の投与を考慮する。
⑵ 治療の実際
例 R-CHOP 療法(3~4 週間毎に 4~6 サイクル)
Rituximab 375㎎ /㎡ div day 1 CY 750㎎ /㎡ div day 1 ADM 50㎎ /㎡ iv day 1 VCR 1.4㎎ /㎡ iv day 1 PSL 100㎎ po day 1~5
1 DLBCL:DLBCL では、HIV 非感染者における R-CHOP といった標準的治療が確立して おらず、rituximab は CD4 陽性リンパ球が 50/µL 未満の場合には治療関連死亡(治療後早 期の感染症)が生じやすくなるので使用を推奨しない場合が多いが、CD4 陽性リンパ球が 50/µL 以上の場合には、rituximab 併用により良好な成績が期待出来る。R-CHOP 療法が施
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予 後
長期療養とケア
行される場合でも、HIV 非感染者と異なり、高度免疫不全状態では潜在的な骨髄機能が低 下しており、上記の薬剤をそのまま使用できないことが多い。CHOP 療法での完全寛解率は 45~65% となっている。欧米からの良好な成績に倣って、本邦でも dose adjusted-EPOCH 療法で好成績が得られつつある。
2 Burkitt リンパ腫:こちらも標準的治療が確立しておらず、しかも、DLBCL に有効な化 学療法では有効性が乏しい。HIV 非感染者同様、CODOX-M/IVAC、hyperCVAD などの 強力な化学療法が推奨されている。髄膜播腫予防のため、抗がん剤の予防的髄注が必要であ る。
3 原発性滲出液リンパ腫:標準的治療は定まっていない。通常は CHOP を考慮する。
4 中枢神経原発リンパ腫:中枢神経原発のものは、ステロイド薬を併用した 40Gy 程度の放 射線照射で 20~50% 程度の完全寛解が期待できるが長期生存は難しい。病変が孤立性病変 であっても、原発性中枢神経リンパ腫は基本的に多発性病変であることを考慮に入れ、全脳 照射を行う必要がある。放射線療法以外では、HIV 非感染患者と同様にメトトレキサート 3g/㎡による大量療法を用いた報告もある。
5 ホジキンリンパ腫:HIV 非感染者のホジキンリンパ腫と比較してより治療予後が悪いが、
現時点では標準的化学療法である ABVD が推奨される。
6 自家末梢血幹細胞移植:治療抵抗性あるいは再発した AIDS 関連リンパ腫に対する有効な 治療法は確立していない。ESHAP、DHAP、ICE などが施行されている。欧米では自家末 梢血幹細胞移植が試みられ、一定の成績を上げている。
7 同種造血幹細胞移植:難治性 DLBCL を有する HIV 感染症例に対して、CCR5Δ32/Δ32 の genotype を有するドナーを選択し、同種造血幹細胞移植により、DLBCL と同時に HIV 感染症そのものも制御しようとする試みも報告されている。
予後不良因子として、CD4 陽性リンパ球 100µL 未満が挙げられる。これに、国際予後指標(IPI)
を考慮に入れる。ART 時代に入って、AIDS 関連リンパ腫の予後は改善し、R-CHOP 施行群で 完全寛解率 77%、2 年全生存率 75% という良好な成績の報告もある(ART 導入以前は平均生存 期間の中央値が1年以内)。治療抵抗性あるいは再発症例に対しても、ESHAP 療法や ICE 療法 等のサルベージ治療を施行後、自家末梢血幹細胞移植により長期寛解を得られる症例がある。一 方、原発性中枢神経リンパ腫治療後の長期生存例では白質脳症などによる高次脳機能の低下が問 題となる。
HIV 関連悪性リンパ腫を合併した HIV 感染者では、長期間の治療を必要とする場合が多い。
リンパ腫診断時、治療継続期、社会復帰時、終末期医療移行期など、様々な場面で医療以外の心 理社会的ケアが必要になる。治療導入をよりスムーズにするために入院生活や治療への適応状況 を確認し、治療期間中は服薬・感染予防などの自己管理を支持し、疲労感・抑うつ状態・不眠症 などの心理的な副作用にも注意を払う必要がある。治療終了後には安定した社会生活への復帰を 支援し、病状悪化の際には終末期の緩和ケアや在宅医療へのスムーズな橋渡しも重要である。
AIDS 関連症候群(ARC)の診断と治療 ~悪性リンパ腫~