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生徒1 ●
生徒2
● ●生徒3
生徒4
● ● ●生徒5 ● ● ●
生徒6 ● ● ●
生徒7 ● ● ●
生徒8 ●
生徒9 ● ●
生徒10 ● ●・ ●
生徒11 ● ●
生徒12 ● ▲
注) ▲は「難しい」という抵抗感をあらわしている
8.2 教育効果の量的分析
8.2.1 自尊感情度(R)の分析
「自尊感情度(R)」に関して、実践前と実践後の得点を、学級全体と男女別の得点 を、対応のあるt検定を行った結果は、Table 8。3に示すとおりである。学級全体とし ては、平均値で3.17ポイント、自尊感情が肯定的にとらえられ、1%水準で有意な差 が認められた。効果の性差はどうであろうか。Table 8.3に、対応のあるt検定の結果 を示した。男子は、2.25ポイントの自尊感情が肯定的にとらえられ、5%
水準で有意な差が認められた。また、女子では、4.08ポイントの自尊感情が肯定的に とらえられ、同じく5%水準で有意な差が認められた。
第2次の実験授業プログラムは、統制学級が編成できていないので明らかにはなっ たとはいえないが、生徒の自尊感情を肯定的な方向に変容させる効果の可能性がある ことが、男女ともに期待できる可能性も合わせて示されたといえよう。
一108一
Tab塵e 8.3 自尊感情度(R)の対応のあるt検定の結果
事前調査 事後調査 t値
実践学級
@ N=24
31.00 i5.02)
34.17 i4.27)
一3.65**
男子
@N=12
33.33 i4.01)
35.58 i4。68)
一2.46*
女子
@N=12
28.67 i4.98)
32.75 i3.44)
一2.78*
*P〈.05 ** o〈.01
注1)表中の数値は平均値である
注2)表中の括弧内の数値は標準偏差である
Tab豆e 8.4 「自尊感情度(R)」の事前事後の得点の階層別推移 実践学級
@N=28
実践学級男子
@ N=14
実践学級女子
@ N=14 上昇 不動 下降 上昇 不動 下降 上昇 不動 下降
高群
9 0 5i64.3)(0℃)(35.7)3 0 2
i60.0)(0の)(40.0)
2 0 2
i50.0)(0ゆ)(50.0)
低群
i85.7)(0.0)(14.3)12 0 27 0 2
i77.8)(0の)(22.2)
9 0 1
i90.0)(0.0)(10.0)
注1)表中の数値は生徒数である
注2)表中の括弧内の数値は割合(%)である
注3)高群と低群との境界は、各学級の事前調査の得点の中央値である
では、生徒の認知の階層差による効果の違いはどうであろうか。第1次実験授業で の分析と同様、事前調査の得点の中央値を求め、それより高得点を示した生徒を高群
とし、低い得点を示した生徒を低群として、学級ごとの人数の推移をクロス集計した 結果を、Table 8.4に示した。 事後に上昇した生徒、得点の変化かがなかった生徒、
得点が下降した生徒の3つの変化群に分類し表記した。
この結果、学級全生徒のうち、実験授業前に自尊感情の肯定的認知の低かった生徒 群14名のうち、12名がこの実験授業の後、自尊感情の肯定的認知を上昇しているこ
とが明らかとなった。この実験授業の教育効果の可能性が見いだされたといえよう。
9 本研究の成果と課題 9.1 本研究の成果
日本人の古くからの対人関係における文化に「阿咋の呼吸」で物事を進めたり、「暗 黙の了解」を前提として、契約性を重んじない接し方をしているようなところがある。
中学生と言えどもそのような文化は貫かれていないわけではない。しかしながら、生 活が欧米化し、契約性を重んじる社会の一面が大きくクローズアップされている今日、
そこから求められるのは、きちんと言葉にして物事を伝えること、ハッキリと自己主 張することである。現に生徒児童は、級友の考えが分からず不安感を抱いていること は、本論文の冒頭の問題の所在と各調査研究により明らかとなった生徒の実態でも述 べたように、子どもたちの仲間意識の変化、友人関係の希薄さや友人関係をうまく結 べず、疎外感や不安感を抱いている児童生徒の存在は明白である。ただし、何が何で も明確な自己の表明や主張をしなければならない、また、その能力が必ずしも必要十 分条件だとは考えているものではないし、その能力ばかりを要求する教育実践だけが 必要とされているとも考えているわけでもない。しかるにこの現状からの必要性に応 えるべく、学級集団というフォーマルグループ内における生徒の対人関係の課題を、
日本人に古くからある、察して交流する以心伝心的なコミュニケーションに加え、表 現して交流するコミュニケーションカを育成する授業プログラム開発の必要性を考え たのである。本研究の成果としてのまず第1は、このような生徒の学級における級友 との肯定的な人間関係の形成をはかるというねらいに加え、本研究は、そのプログラ ム全体の中の一過程を抽出し、短期の実験授業として独立させたことである。第2に、
統計的分析を中心に、質的な分析も加えられる実験授業でもあることである。第3に 本研究では、この実験授業案を実践し、その効果を検証することにより、この実験授 業の効果を証明し、しいてはこの授業プログラムの有効性の可能性を証明したことが、
本研究の成果だと考える。
9.2 本研究の課題
しかしながら、ただ単に「いいとこ」をあげ合えば、その効果が期待できるもので はない。「いいとこ」のつもりで取りあげたが、その対象となった生徒は、逆に「いい とこではない」とらえてしまう可能性がないわけではない。常にその危険性を内在し ているといえる。つまり、どんなに級友が吟味し、表現した内容が真実であったとし ても、対象者が「うん、分かった」や「うん、自分のことを分かってもらえている」
と思ったり、実感できなかったりすると、自己概念や自尊感情の肯定的な変容も他者 理解や他者受容の深化や発見・拡大化も望むことはできない。このような行動は、無 条件に望ましい効果をもたらすのではなく、許容可能な一定の条件や制約が存在する 可能性があることを無視することはできない。その一つとして考えられるのが、相手
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に対する既存の不信感である。このような級友に対する否定的な意識や感情は、本実 験授業の事後の感想文等にも一切表現されてこなかったのであるが、各心理尺度の分 析において、必ず、1−2名の否定的な認知を表す生徒の存在が認められた。ごく少数 の個の分析につては、次の研究を待たなければならないが、本実験授業の影響による ものか、その生徒の個人的な生活からの影響によるものか、その両方の相乗効果によ るものなのかという結論には至っていない。
また、相手に対する既存の不信感がこの授業プログラムの成立と効果に影響するこ とはすでに予想されていた。そこを打開するために重視したのが「気づき」であった。
級友に対して、そして自分に対しての新たな「気づき」が、肯定感、有用感、有能感 と結びつき、級友との新たな人間関係形成になるのではないかと考えたからであった。
第2の課題は、この実験授業によって、級友との人間関係における認知・感情が向 上したことが証明された生徒の肯定感の定着の問題である。この級友関係の肯定的な 認知・感情の定着の課題についてもやはり、次の研究を待たねばならない。ただし、
この授業プログラムのめざす実践形態は、1年間続く学級の中で、継続して取り組ま れることをめざしているものである。そうなると定着という観点での問題性は、別の 継続的に取り組まれての成果や課題の検証となる。
さらに別の観点からいえば、生徒個々の自己概念は一つではなく、「多元的自己」と 表現されるように、その場、.その集団によっても、人は全く違った姿をもって、自ら を呈示しているという考え方がある。つまり、学級集団が編成し直されれば、また新 たな級友関係が始まることになるのである。その意味においては、時限付きの成果で ある。しかしながら、他者理解や他者受容、自己理解や自己受容のための方略として のこの授業プログラムは、肯定的な人間関係形成のためのプロセスとして、強化され た学習となって、次の集団の中でも活かされていくものであろうことを期待している。
しかし、ここにおいてもまた次の研究を待たねばならない。
しかしながら、交流分析のストローク(S面ke)概念から見ると、別の課題が明確に なった。島崎(1999)によれば「ストローク概念は、Beme,E.を創始者とする交流分析 において用いられる概念である。Bemeによれば、ストロークとは「他人の存在を承 認する、全ての行為を示すもの」とされ、「存在認知」と訳されることも多い。肯定 的なストロークと否定的なストロークがあり、また、それぞれが条件の有無に分かれ ている。つまり肯定的なストロークを受け取れば、心地よいのである。」71まさに、
本研究の授業プログラムにおける「いいとこ発見」の学級通信である。ただし、肯定 的ストロークにも条件付きのものと、無条件付きのものがある。例えば条件付きでは
「○○君は、一度も遅刻をしたことがないので、しっかりしている」というような ストローク、つまり、存在認知である。この条件付きのストロークであった場合は、
次の時にも必ずその条件が満たされなければ、肯定的なストロークは受け取れない。
71島崎保1999ストローク概念から見た人間形成論
川島書店 pp.143−161.
人間主義心理学会編 人間の本質と自己実現