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1.2 建設投資の変動要因分析(住宅・事務所・倉庫)

1.2.4 建設投資動向(倉庫)の変動要因分析

(1) 倉庫建設投資の動向

①着工床面積の動向

図表1-2-57は1980年度からの倉庫30の着工床面積の推移を示したものである。倉庫の

着工床面積はバブル期の1990年度の18,372千㎡をピークにバブル崩壊後、減少の一途を 辿った。経営改善を余儀なくされた企業は物流システムを効率化する動きを強め、物流二 法31や倉庫業法32の改正による規制緩和が進んだ影響もあり、2002年度から 2006年度ま で増加傾向となった。2009年度にはリーマンショックの影響により、国内の経済は低迷、

着工床面積はピーク時の約80%減となる3,989千㎡にまで減少した。

ここ数年、産業構造の変換やICTの発達による国民生活の変化に伴い、倉庫が求められ る性質は多様化しており、昨今の倉庫需要を底堅くしている。こうした新型の物流施設は 不動産投資対象としても注目を集めていることも相俟って、足元の着工床面積は増加傾向 にあり、2014年度、15 年度も堅調に推移し、ようやくリーマンショック前の水準に戻る と見通されている。

図表1-2-57 倉庫着工床面積推移

(出典)2013年度までは国土交通省「建築着工統計調査」、2014・15年度は当研究所「建設経済モデル による建設通しの見通し(20152月推計)

30 建築着工統計調査における倉庫は営業用に使用する倉庫、自家用倉庫等を区別せず倉庫全般を含む。

31 「貨物自動車運送事業法」と「貨物運送取扱事業法」からなり、2003 年の改正により営業区域規制 の撤廃、料金改定の事前届出制から事後届出制への変更、利用運送業の許可制から登録制への改正が 行われた。

32 物流の効率化及び競争力の強化を目的に2002年に許可制から登録制へ、料金事前届出制度の廃止、

トランクルーム認定制度の法制化等の改正が行われた。

0 5,000 10,000 15,000 20,000

1980年度 1981年度 1982年度 1983年度 1984年度 1985年度 1986年度 1987年度 1988年度 1989年度 1990年度 1991年度 1992年度 1993年度 1994年度 1995年度 1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度

(千㎡)

バブル期

見通し バブル崩壊後

倉庫業法改正

リーマンショック

②倉庫の発注者別動向

次に倉庫を発注する発注者の業態を見てみる。図表1-2-58は建設工事受注動態統計調査 より2000年度から2013年度の間の発注者の業種別の割合の推移を示したものである。

倉庫を発注する主な業態は運輸業であることがわかるが、大きな割合を占めているもの の、近年、他業種の発注割合が増加している。中でも不動産業の発注割合は2000 年度に

は0.6%に過ぎなかったが、2000年代半ばには30%を超えるまでになり、リーマンショッ

クによる停滞はあったものの、2012年度、2013年度と再びその割合は増加している。規 制緩和が進み倉庫業や運輸業の競争が促進されたことや企業が倉庫の自社保有から賃貸倉 庫へシフトする傾向があり、賃貸型物流施設開発に参入する不動産業が急増している。

また、2000年度には卸売・小売業・飲食店の割合が7.7%であったのに対し、近年15%

を超える割合を占めるまでになっている。これはネット通販に対応するために専用の物流 倉庫を自ら新設する動きが広がっていることが考えられる。

倉庫の着工床動向は民間設備投資の動向によって大きく影響を受けている一方、発注者 の動向を見ると近年、倉庫を取り巻く産業構造に変化が起きていることがわかる。

図表1-2-58 倉庫の発注者別工事請負金額比率

(出典)国土交通省「建設工事受注動態統計調査」を基に当研究所にて作成

③倉庫出来高の地域別動向

次に地域別の倉庫の出来高動向を見てみる。ここでは民間非住宅建築の使途別、地域別 の動向を見るため「建設総合統計」を用い、その出来高の寄与度と伸び率にて動向を探る。

図表1-2-59は1990年度以降の倉庫出来高の地域ブロック別シェアの推移を示したもので

ある。関東は2013年度で全国の37.3%、1990年からの平均でも36.8%と全国の4割近いシェ アを持っており、長期的にはその割合は上昇傾向にある。次いで近畿は平均すると約16.9%、

15.9%

10.2%

9.8%

7.9%

15.7%

7.3%

5.1%

11.3%

11.0%

9.5%

8.7%

24.2%

9.1%

24.0%

19.4%

31.0%

4.3%

8.8%

22.0%

14.3%

38.5%

30.4%

22.4%

13.0%

6.4%

9.2%

1.4%

0.6%

35.0%

25.8%

46.5%

51.8%

34.4%

48.3%

37.5%

40.2%

42.0%

42.3%

57.2%

32.1%

61.8%

52.5%

19.9%

19.0%

17.0%

16.8%

17.7%

17.2%

9.3%

11.2%

11.1%

16.7%

14.9%

19.5%

8.9%

7.7%

9.8%

14.1%

22.4%

14.7%

10.1%

12.9%

9.7%

6.9%

13.5%

18.6%

12.8%

15.0%

18.8%

15.3%

1

0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 120.0%

2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度 2005年度 2004年度 2003年度 2002年度 2001年度 2000年度

製造業 不動産業 運輸業 卸売・小売業・

飲食店 その他 系列6

中部は平均で13.2%と一定のシェアを持っており、長期的には横ばいで推移している。また、

2012年度と2013年度では東日本大震災の復興関連需要と考えられる東北の出来高が中部を 一時的に上回っているのが特徴的である。

このように関東、近畿、中部にて全国の約7割のシェアを持っている。これは商圏人口の 多さに加え、港湾地域に倉庫が立地することが多いため、国際貿易港の数と規模も影響し ていると思われ、関東、近畿、中部の三ブロックの動向が倉庫全体の動向に与える影響は 非常に大きいと言える。

図表1-2-59 倉庫出来高の地域ブロック別シェアの推移

(出典)国土交通省「建設総合統計」を基に当研究所にて作成

図表 1-2-60 は倉庫出来高の前年度比伸び率推移と地域ブロック別の寄与度を示したも

のである。ここ数年の倉庫の出来高は2011年度の前年度比20.3%増、2012年度の同17.7% 増、2013年度の同14.0%増と3年連続で伸び率は二桁増と好調である。

1991年度からの推移を見ていくと、倉庫出来高は1994年度の前年度比△32.5%、1999 年度の同△23.8%、2009年の同△39.4%と3 回の大きな下落局面を経験している。1994 年度の下落はバブル崩壊後の落ち込みと考えられ、1991年度から1995年度まで5期連続 でのマイナス成長となった。1999年度の落ち込みは1998年に発生したアジア通貨危機に よる影響、2009年度はリーマンショックによる落ち込みと考えられ、国内経済の動きと倉 庫の出来高が関連していることがわかる。一方、2004 年度には前年度比 23.4%と大きな 伸び率を果たしているが、これは前述した2002年4月の倉庫業法改正による規制緩和が 進んだことによる出来高が発現したものと思われる。

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州・沖縄 線形(関東) 線形(中部) 線形(近畿) (%)

(年度)

前年度比二桁増と好調であった2011年度~2013年度の伸び率に対する地域ブロック別の 寄与度を見ると2011年度は関東8.9%、近畿4.8%、東北2.7%、2012年度は関東11.2%、東 北7.4%、中部0.6%、2013年度は近畿が4.5%、次いで中部3.3%、北陸1.8%、九州・沖縄 1.6%となっている。経年では伸び率の増減に最も大きく寄与しているのは関東地方であり、

ここ数年の動きでは東日本大震災の復興需要による東北の伸び率が顕著なことと、関東地 方の出来高の伸びが一服し、近畿、中部地域へと広がっているのが見てとれる。

図表1-2-60 倉庫出来高の前年度比伸び率推移と地域ブロック別寄与度

(出典)国土交通省「建設総合統計」を基に当研究所にて作成

次に、関東について詳しく見ていく。図表1-2-61は関東の倉庫出来高の前年度比伸び率推 移と都道府県別寄与度を示したものである。2011年度は前年度比24.1%増、2012年度は同 29.5%増、2013年度は同1.7%増となっており、2011年度、2012年度は全国よりも高い伸び 率を示した。2013年度は反動減もあり、全国では前年度比二桁増の伸び率を維持したが、

その寄与度は少ない。全国と同様に2011年度~2013年度の都道府県別の寄与度を見ると、

2011年度は東京が15.1%、神奈川7.8%、埼玉1.8%、千葉1.5%、2012年度は神奈川が18.0%

と最大で、埼玉の12.3%、千葉の3.1%と続き、東京はマイナスの寄与度となっている。2013 年度は埼玉が10.0%と最大で、千葉の5.1%、茨城の2.8%と続き、東京はマイナス、神奈川 は反動減でマイナスとなっている。昨今の倉庫出来高の好調な伸び率を支えている関東に おいて、より港湾に近い、東京、神奈川エリアから徐々に内陸部に倉庫投資が広がってき ていると推察出来る。

‐50.0%

‐40.0%

‐30.0%

‐20.0%

‐10.0%

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

九州・沖縄 四国 中国 近畿 中部 北陸 関東 東北 北海道 全国 (%)

(年度)

図表1-2-61 倉庫出来高の前年度比伸び率推移と都道府県別寄与度(関東)

(出典)国土交通省「建設総合統計」を基に当研究所にて作成

( 2 ) 変動要因の考察

①国内貨物輸送トン数と倉庫ストック

前項 1.2.2 にて民間非住宅建設投資が民間設備投資動向に大きな影響を受けることが見

てとれたが、倉庫に着目した場合、その変動要因にどのようなものがあるのか考察する。

倉庫の需要は国内の経済動向により貨物量が増加し、輸送需要が増えることによって強 くなると考えられ、国内の貨物輸送トン数に関連して推移すると思われる。図表1-2-62は 倉庫の着工床面積の推移と国内貨物輸送トン数の推移を比較したものである。

図表1-2-62 倉庫着工床面積と国内貨物輸送トン数の推移

(出典)国土交通省「交通統計関連資料集」を基に当研究所にて作成

‐50.0%

‐40.0%

‐30.0%

‐20.0%

‐10.0%

0.0%

10.0%

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30.0%

40.0%

50.0%

91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13

長野県 山梨県 神奈川県 東京都 千葉県 埼玉県 群馬県 栃木県 茨城県 関東全体 (%)

(年度)

0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000

1980年度 1981年度 1982年度 1983年度 1984年度 1985年度 1986年度 1987年度 1988年度 1989年度 1990年度 1991年度 1992年度 1993年度 1994年度 1995年度 1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度

倉庫着工床面積 国内貨物輸送トン数

(千㎡) (千トン)

見通し