• 検索結果がありません。

1.3 地域別の社会資本整備動向~南関東ブロック~

1.3.2 主要プロジェクト等の動向と期待される効果

ある。また、近年東京においては、時間50ミリを超える豪雨が増加しており、台風による 豪雨などと異なり、短時間で狭い地域に降ることが特徴となっている。高度経済成長期以 降に農地や森林を開発する形で市街化が進行し、宅地などの浸透・保水能力の低い土地利 用の割合が増えることにより、雨水の地下浸透能力が低下し、浸水頻度、浸水被害が増大 している。また、地下街や地下鉄、地下を有する建物など、水害に対して脆弱な施設が増 加していることから、豪雨対策も大きな課題となっている。

Ⅰ.各環状道路の概要

A)圏央道(首都圏中央連絡自動車道)

【概要】

整備位置 ・・・都心から半径約40km~60km

連絡予定拠点・・・横浜、厚木、八王子、川越、つくば、成田、木更津 道路延長 ・・・約300km(170kmが供用中)

圏央道は首都圏三環状道路の、一番外側に位置する環状道路であり、大東京都市圏を形成 している。首都圏の道路交通の渋滞緩和、環境改善、地域中核都市間の連絡強化、地域開発、

災害時の代替路としての機能が期待される。

B)外環道(東京外かく環状道路)

【概要】

整備位置 ・・・都心から半径約15km

連絡予定拠点・・・東京都心・副都心エリアの周辺都市(大田区・世田谷区・練馬区・

川口市・市川市)

道路延長 ・・・約85km(約34km供用中)

外環道は都心部からの放射道路を相互に連絡、都心部の通過交通を分散、バイパスさせ、

渋滞緩和や環境の改善が期待される。東名高速道路(東名JCT)と関越自動車道(大泉JCT)

間の東京区間の本線工事の施工者が2014年4月に決定し、完成に向け大きく前進している。

C)中央環状道路(首都高速中央環状線)

【概要】

整備位置 ・・・都心から半径約8km

連絡予定拠点・・・新宿、渋谷、池袋、羽田空港、東京港など 道路延長 ・・・約47km

中央環状線は、新宿・渋谷・池袋などの副都心エリアを環状に連絡し、三環状道路の一番 内側に位置する。首都高速都心環状線の渋滞緩和をすることにより、所要時間短縮を実現、

都心の高速道路ネットワークの機能強化が期待される。2015年3月7日に中央環状品川線が 開通し、全線開通となった。

Ⅱ. 三環状道路の整備効果 A)東京都心の渋滞改善効果

東京都心の交通は慢性的な渋滞が発生しており、東京都心の平均旅行速度は時速16kmで あり、全国平均の半分以下となっている。都心に向かう車のうち6割は都心に用のない通過 交通とされており、地域都市間を結ぶ三環状道路の整備により通過するだけの車両がバイパ スされ、都心の渋滞緩和が期待できる。

中央環状線(3号渋谷線~4号新宿線)を例に取ってみると、図表1-3-6に示すように開通 後、都心環状線の交通量が中央環状線に流れることによって渋滞長が約26%緩和されている。

また、都心環状線の交通量も約2割減少している(図表1-3-7参照)。

図表1-3-6 都心環状線の渋滞長変化 図表1-3-7 首都高速交通量変化

(出典)国土交通省関東地方整備局資料 (出典)国土交通省関東地方整備局資料を基に 当研究所にて作成

B)首都圏における物流の改善効果

京浜港は国内最大のコンテナ取扱量を誇っており、そこまでの輸送手段のうち自動車輸送 が約99%を占めている。よって、都心の交通渋滞の緩和や生産工場から輸出港までのより効 率的な動線確保は、我が国企業の国際競争力を向上させる上で重要な要因となっている。

例えば、八王子から京浜港へ輸送を行う場合、圏央道を経由する事により、所要時間は約 6割削減が可能となった(図表1-3-8参照)。また、混雑による到着の遅れが是正され、定時 性が確保されることとなる。鉄道輸送などに対し、自動車輸送が寄与する割合が大きい分、

これらの時間短縮が経済活動に与える影響は大きく、三環状道路周辺に物流施設や生産拠点 を設置する動きが加速するものと思われる。

図表1-3-8 中央道八王子 JCT~京浜港への所要時間

(出典)国土交通省関東地方整備局資料

路線 区間 開通前

交通量 開通後

交通量 増減 増減率

( %)

都心環状 三宅坂JCT~代官町 12.4 9.9 -2.5 -20

都心環状 谷町JCT~霞が関 12.0 9.7 -2.3 -19

都心環状 浜崎橋JCT~芝公園 12.8 12.2 -0.6 5

中央環状 中野長者橋~西池袋 3.6 6.6 3.0 83

中央環状 富ヶ谷~初台南 - 4.0 -

-3号渋谷 高樹町~谷町JCT 11.1 8.8 -2.3 -21

4号新宿 外苑~三宅坂JCT 9.3 8.7 -0.6 -7

5号池袋 西神田~竹橋JCT 8.9 7.6 -1.3 -15

C)都市機能の再配置の促進

圏央道沿線では、工業団地や商業施設の立地が活発化している。図表1-3-9で示すとおり、

新規工場立地面積を全国と比較すると圏央道沿線での新規立地面積の伸びは、全国平均の約 3倍となっている。

また、商業施設などの立地も相次ぐと予想され、地域拠点間をつなぐ環状道路の整備が新 たな雇用や開発を促進させ、地域活性化につながっている。今後、圏央道を最も大きな円と した環状道路網が完成することにより、大東京都市圏の効率化が促進されていくと思われる。

図表1-3-9 圏央道の開通と新規工場立地面積(累計)の推移

(出典)国土交通省関東地方整備局資料

D)災害道路としての役割

東日本大震災において迅速な救援活動や緊急輸送における高速道路の重要性が改めて認識 された。首都圏においても災害時に首都機能を維持し、救援・救護活動を支える活動拠点を 結び、交通手段の代替性、多重性を確保するためにも三環状道路の整備は重要である。道路 整備によって、首都圏の防災機能の強化が図られることが期待されている。

②鉄道

Ⅰ.リニア中央新幹線整備

東京・名古屋・大阪の三大都市を結ぶ鉄道の大動脈である東海道新幹線を運行する企業で ある東海旅客鉄道株式会社(JR 東海)は、今後発生が予測されている南海トラフ地震に対 する備えや東海道新幹線の経年劣化を鑑みて、大動脈輸送の二重系化を実現することで将来 のリスク発生に備えることを提言し、超電導リニアによる中央新幹線整備事業を 2015 年春 に本格着工し、2027年の開業を予定している。開業にあたっては、首都圏の発着駅は品川駅 として、神奈川県の橋本駅付近を通過する予定である。

大阪府が2014年6月に公表した「リニア中央新幹線開業に伴う経済波及効果に関する調 査結果」を見ると、開業年度の波及効果は、東京圏において2,670億円、全国では5,260億 円と推計している。

工事施工個所は深さ40m以上の大深度地下部分であることや、中央アルプスや南アルプス などの山岳地帯が続いておりトンネル区間が多く、その掘削には高度な技術が必要とされる。

図表1-3-10 リニア中央新幹線

(出典)国土交通省資料

A)品川駅(東京都)

起点となるターミナル駅は、東海道新幹線の品川駅直下約40mに、アンダーピニングによ って構築、現在の東海道新幹線・品川駅(港区)の直下に南北方向で計画している。ホーム の延長は約1km、ガイドウェイ走行となるため、最大幅は新幹線よりも広い約60m とし、

区道243号線などの地下の一部を占有する。地下空間の基幹インフラへの支障を回避するた め、ホーム階の深さは約40mとなる。敷地面積は約3.5haを想定している。

図表1-3-11 ターミナル駅(品川)駅平面図

(出典)東海旅客鉄道株式会社資料

図表1-3-12 東京都ターミナル駅の概要

(出典)東海旅客鉄道株式会社資料

B)橋本駅周辺(神奈川県)

新駅は現在の神奈川県立相原高校(移転予定)の地下部分に設置され、地上部約 10haが 開発の中心となる予定である。地下駅の建設はオープン掘削によるもので、地面をすべて掘 って地下駅を建設する形式である。

リニア中央新幹線における中間駅建設費負担について、JR 東海の従来の考えは「中間駅 建設費は地元負担」であったため、地元自治体は約2,200億円の負担を強いられることとな っていた。しかし、自治体からの負担軽減についての強い要望を踏まえ、結果的に用地取得 の斡旋などを地元自治体に協力してもらう形で、JR 東海が中間駅の建設費負担をする方向 となった。

図表1-3-13 橋本駅のイメージ

(出典)東海旅客鉄道株式会社資料

Ⅱ.在来新線

A)品川~田町間の新駅

山手線の駅間で最も距離がある「品川~田町駅間」に 30 番目の新駅として設置される予 定となっている。新駅の位置は品川駅から約0.9km、田町駅から約1.3km。羽田空港へのア クセスの良さなどから、首都圏と世界、国内の各都市をつなぐ広域交通結節点としての役割 が強まっており、目指すべき将来像などについて、国・東京都・関係区などと検討を進めて いる段階である。また、開業については、2020年東京オリンピック・パラリンピックに合わ せた暫定開業となる模様である。

B)虎ノ門新駅(日比谷線)

2014年10月10日付の「特定都市再生緊急整備地域 東京都心・臨海地域に関する都市再 生緊急整備協議会」において、環状第二号線新橋・虎ノ門周辺地区整備計画が決定され、交 通結節機能の強化の一環として、東京メトロ日比谷線霞ケ関駅~神谷町駅間に新駅を整備す ることなどが位置付けられた。

日比谷線の新駅は、霞ケ関駅から南に800m、神谷町駅から北に500mの地点に設置され、

2014 年 6 月にオープンした複合施設「虎ノ門ヒルズ」の敷地の西側に整備する予定となっ