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1.3 地域別の社会資本整備動向~南関東ブロック~

1.3.1 南関東ブロックの現状および課題

(1) 統計指標から見たブロックの現状

南関東ブロックは、東京都を中心に首都圏を構成し、埼玉、千葉、東京、神奈川の1都3 県で構成される。日本最大の関東平野に位置し、関東ローム層による武蔵野台地や相模台地 などが存在する。また、関東平野のほぼ中心を流域面積では日本一の利根川が流れている。

歴史的には、現在の東京に徳川家康が江戸幕府を開き、明治時代には首都となった。また、

戦後高度経済成長期には地方から人口が大量流入し、インフラ整備なども急速に行われた。

現在は世界有数の国際都市であり、2020年には東京都で東京オリンピック・パラリンピック が開催される予定である。

南関東ブロックは、東京都特別区部(894万人)のほか、横浜市(368万人)、川崎市(142 万人)、さいたま市(122万人)、千葉市(96万人)、相模原市(71万人)などの政令指定都 市が各県に位置している。

図表1-3-1が示すとおり、全国における南関東ブロックのシェアは、人口で27.8%、面積

で3.6%、事業所数で24.8%、県内総生産で32.6%となっており、全国の約3割の経済規模

を担っている。

県内総生産の産業別構成比をみると、1次産業が0.3%、2次産業が16.7%、3次産業が82.7%

となっており、3次産業の構成比が全国(1次産業1.1%、2次産業23.4%、3次産業75.1%)

と比較して高くなっている。

2 次産業では、東京都大田区および川崎・横浜市を中心に東京都、神奈川県、埼玉県に広 がる京浜工業地帯においては、鉄鋼、機械、化学などの重工業の他、食品、繊維などの軽工 業も発達している。また、千葉県を中心とする京葉工業地域では、鉄鋼業や石油化学工業な どの重工業が発達している。

3 次産業では、卸売・小売業、金融業など様々な業種が東京都を中心に集積しており、全 国シェアで35.9%を占め、我が国における一大消費地である。

また、近年東南アジアなどからの外国人観光客が大幅に増加しており、東京オリンピック・

パラリンピックが開催される2020年には、東京都を訪れる外国人旅行者数を現在の2倍強 に相当する年間1,500 万人を目標としている。今後は2020年を一つの目標とし、世界をリ ードするグローバル都市の実現を目指し、南関東ブロック全体として、さらに国際的な発信 力を高める各界の取り組みが予想される。

図表1-3-1 南関東ブロックの各種指標

埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 南関東合計 全国シェア

人口(千人) 7,195 6,216 13,159 9,048 35,618 27.8%

面積(km2 3,798 5,157 2,188 2,416 13,558 3.6%

事業所数(千箇所) 245 190 627 291 1,353 24.8%

建設業割合 11.3% 11.2% 6.8% 10.3% 9.0%

従業員数(千人) 2,492 2,043 8,655 3,371 16,561 29.7%

建設業割合 7.0% 7.6% 5.4% 6.4% 6.1%

県内総生産額(億円) 203,700 187,995 923,878 304,222 1,619,795 32.6%

産業別構成比

1 次産業 0.6% 1.1% 0.0% 0.2% 0.3% 8.3%

2 次産業 24.2% 22.8% 11.8% 22.6% 16.7% 23.2%

(うち建設業) 5.2% 4.9% 4.5% 4.4% 4.6% 5.0%

3 次産業 74.5% 75.4% 88.1% 76.5% 82.7% 35.9%

製造品出荷額(億円) 121,393 123,885 81,982 174,613 501,873 17.4%

農業算出額(億円) 2,012 4,153 271 805 7,241 8.4%

漁業生産額(億円) - 247 253 151 651 4.9%

(出典)総務省「国勢調査(2010年)、「経済センサス(2012 年)」、国土地理院「全国都道府県地区町村 別面積調(2010年)、内閣府「県民経済計算(2011年)」、経済産業省「工業統計調査(2012年) 農林水産省「生産農業所得統計(2012年)「漁業生産額(2012年)」

)全国シェア欄の産業別構成比については、全国の構成比を表している。

(2) 南関東ブロックの抱える課題

国土交通省の首都圏広域地方計画や各自治体の長期総合計画によると、南関東ブロックの 抱える課題として、国際競争力の強化、少子高齢社会への対応、自然災害に対する防災・減 災対策、環境対策などが挙げられている。また、その他に老朽インフラ対策も重要な課題で ある。

①国際競争力の強化への対応

首都圏広域地方計画によると、国際競争力の強化に向けた取り組みとして、国際ビジネス 拠点強化プロジェクト、産業イノベーション創出プロジェクト、太平洋・日本海ゲートウェ イプロジェクトが掲げられている。その中でも太平洋・日本海ゲートウェイプロジェクトに おいては、港湾機能の強化として、京浜港における国際海上コンテナターミナルなどの整備、

道路ネットワーク整備と渋滞対策の推進として、首都圏三環状道路などの高規格幹線道路整 備、公共交通機関の整備、改善として、羽田空港までのアクセスの改善が挙げられている。

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、都心の交通渋滞解消や羽田・成田空港 からのアクセス改善が求められており、それらに対応した動きとして、三環状道路の整備や、

羽田新線などの鉄道整備に向けた取り組みが今後行われる予定である。

②少子高齢社会への対応

南関東ブロックの総人口は、2010年には 3,561.9万人となり、2015年にピークを迎えて

3,589.6万人となる見込みである。人口のピークは、全国が2010年であったのに比べて若干

遅れているが、2015年のピーク以降は減少傾向が続く見通しである。また、2010年で20.3%

となっている南関東ブロックの高齢者層(65 歳以上)の割合は、2035 年には 30%を超え、

その後も上昇を続ける見通しである。南関東ブロックでは、高度経済成長期に大量の人口が 流入し、その受け皿として大規模な公的賃貸住宅が建設された。しかし、少子高齢化と建物 の老朽化の影響で空室率が目立つようになり、公的住宅事業主体による団地再生の動きが活 発化している。

図表1-3-2 人口と高齢者割合の推移

(出典)総務省「国勢調査(2010年)、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(2013 3月)

100.0%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040

65歳以上の割合(南関東) 65歳以上の割合(全国)

人口推移(全国)1975年=100 人口推移(南関東)1975年=100

(年)

南関東

全国

③老朽インフラへの対応強化

南関東ブロックにおいては、高度経済成長期に急速にインフラが整備されたことから、道 路、橋梁、トンネル、河川、下水道、港湾などのインフラの老朽化が進んでおり、早急な対 応が迫られている。図表1-3-3、1-3-4は、それぞれ国土交通省関東地方整備局管内における 建設から50年以上が経過する橋梁、トンネルの割合の推移を表している。20年後には橋梁、

トンネルのいずれも建設から50年以上が経過する割合が60%を超える見通しであり、老朽 インフラの更新が喫緊の課題となっている。

図表1-3-3 建設後 50 年以上が経過する橋梁の割合

(出典)国土交通省関東地方整備局資料

図表1-3-4 建設後 50 年以上が経過するトンネルの割合

(出典)国土交通省関東地方整備局資料

④自然災害への対応強化

中央防災会議「首都直下地震対策等専門調査委員会」から、今後30年以内に南関東にお いてマグニチュード7規模の地震が70%の確率で発生するとの見解が示されており、その 切迫性が指摘されている。避難計画の策定などのソフト対策に加え、建物や構造物の耐震 性能強化や、木造密集地域の解消など、ハード面においてもその対応強化が重要な課題で

ある。また、近年東京においては、時間50ミリを超える豪雨が増加しており、台風による 豪雨などと異なり、短時間で狭い地域に降ることが特徴となっている。高度経済成長期以 降に農地や森林を開発する形で市街化が進行し、宅地などの浸透・保水能力の低い土地利 用の割合が増えることにより、雨水の地下浸透能力が低下し、浸水頻度、浸水被害が増大 している。また、地下街や地下鉄、地下を有する建物など、水害に対して脆弱な施設が増 加していることから、豪雨対策も大きな課題となっている。