第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
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62
第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
この理由としては、最もアクセシビリティが低い建物点が交通機関路 線から離れ、徒歩距離が長いためと考えられる。交通機関別の移動時 間をみると、前章の解析結果と同様に、速達性に優れることから、バ スより BRT と地下鉄の移動時間が短いことが再現できた。
また、高齢者 (70 歳以上)を対象した場合の各公共交通機関利用時 の移動コスト集計結果を図 3.17 に、移動コスト分布を図 3.18 に示す。
非高齢者の結果と比較すると、高齢者は非高齢者よりも徒歩速度が遅 いことで徒歩時間が長くなる。これによって、高齢者にとって歩行に よる精神的・体力的負担が他の年齢より大きく、移動コストが非高齢 者の結果の 1.6 〜 1.9 倍程度である(図 3.19)。加齢と共に、徒歩の 距離抵抗の影響も大きくなると考えられる。特に、目的地の周辺にあ る建物点は、公共交通機関を利用せずに直接に徒歩で移動するため、
非高齢者より高齢者の方が移動コストが圧倒的に高い結果となった。
また、高齢者は非高齢者よりも、交通機関の選択により移動コストが 大きく変化する傾向が見られる。特に、地下鉄は駅の間隔が大きいた め他の公共交通機関より徒歩時間が支配的となり、高齢者にとってア クセシビリティが低くなることが分かる。一方、BRT については、非 高齢者と同様に、高齢者の場合も移動コスト・移動時間がともに最も 小さく、どんな年齢に対しても、効果が高い交通期間と考えられる。
(2) 宇都宮駅西口へのアクセシビリティの定量的評価
非高齢者の建物点から対象地域の中心に位置している宇都宮駅西口 までの移動コスト集計結果を図 3.20、移動コスト分布を図 3.21 に示 す。
対象地域の中心に立地しているため、端部の目的地より移動距離が 短く移動コストが小さい。移動時間の集計結果から、端部の目的地よ り中心部までの平均移動時間が約 3 分を短くなった。しかし、目的地 が中心にあることで交通機関の利用時間は減少するが、直接徒歩で向 かうことができる建物点以外では、建物点からバス停・駅までの徒歩
1.59 1.66 1.65 1.78 1.83 1.86
1.0 1.5 2.0
BUS BRT SUB
移動コスト
1.31 1.35 1.36 1.35 1.39 1.40
1.0 1.5 2.0
BUS BRT SUB
平均値 最大値
移動時間
図 3.19 非高齢者に対する高齢者の比率(その 1)
第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
63
70 - 80
20 - 22 115 - 130100 - 11590 - 10080 - 9060 - 7050 - 6046 - 5042 - 4638 - 4234 - 3830 - 3428 - 3026 - 2824 - 2622 - 24
18 - 20
16 - 18
14 - 1612 - 14 130 - 145
10 - 12
0 - 100
移動コスト(分) 低 --- 高
バス停・駅 道路
N
0 1 2
km
BUS
BRT
SUB
目的地
目的地
目的地
30 60 90 120 150
移動時間(分)
BUS BRT SUB
平均値 最大値 0
平均値 最大値
0 30 60 90 120 150
移動コスト(分)
BUS BRT SUB
平均値 最大値
平均値 最大値
23.3 23.4 27.5
71.7 72.4 73.0
15.5 14.9 16.6
37.2 34.0 33.2
図 3.21 建物点から宇都宮駅西口までの移動コスト分布図(非高齢者)
図 3.20 建物点から宇都宮駅西口までの移動コスト集計結果
(非高齢者)
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第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
図 3.23 建物点から宇都宮駅西口までの移動コスト分布図(高齢者)
図 3.22 建物点から宇都宮駅西口までの移動コスト集計結果(高齢者)
30 60 90 120 150
移動時間(分)
BUS BRT SUB
平均値 最大値 0
平均値 最大値
0 30 60 90 120 150
移動コスト(分)
BUS BRT SUB
平均値 最大値
平均値 最大値
39.1 40.4 46.6
131.4 138.2 139.6
21.3 20.9 23.2
51.1 48.3 48.1
70 - 80
20 - 22 115 - 130100 - 11590 - 10080 - 9060 - 7050 - 6046 - 5042 - 4638 - 4234 - 3830 - 3428 - 3026 - 2824 - 2622 - 24
18 - 20
16 - 18
14 - 1612 - 14 130 - 145
10 - 12
0 - 100
移動コスト(分) 低 --- 高
バス停・駅 道路
N
0 1 2
km
BUS
目的地
BRT
目的地
SUB
目的地
第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
65
1.68 1.73 1.69 1.83 1.91 1.91
1.0 1.5 2.0
BUS BRT SUB
1.37
1.40 1.40 1.37
1.42 1.45
1.0 1.5 2.0
BUS BRT SUB
移動コスト
平均値 最大値
移動時間
時間は変化しない。従って、徒歩の距離抵抗も変化しないと考えられ る。これにより、建物点の位置によって移動コストの差が大きいこと が分かった。特に地下鉄は、他の交通機関より移動コストの最大値が 大きく、アクセシビリティが低い地域が多い。またバス利用の場合は、
移動距離が短いことにより、BRT と移動コストがほぼ一致し、地下鉄 よりやや低い。移動コストの集計結果によれば、目的地が端部に位置 する場合と異なり、平均値・最大値はともにバスの結果が最も小さい ことが分かった。
移動時間については、各交通機関の優劣は最大値と平均値では逆転 しているが、どの場合にも BRT が地下鉄とバスとの中間的な結果を与 え、言わばバランスが良いと考えられることが分かった。一方、速達 性に優れる地下鉄は、乗車時間が短いものの駅までの徒歩時間が長い ため、地下鉄を利用すると、他の交通機関より全体の平均移動時間が 長い結果となった。
高齢者を対象とした場合の、宇都宮駅西口までの移動コスト集計結 果を図 3.22、移動コスト分布を図 3.23 に示す。年齢別に比較すると、
目的地を変えて移動距離が短くなっても高齢者は徒歩移動よる体力的 負担が大きく、非高齢者より移動コストが圧倒的に高いことが分かっ た。具体的には、図 3.24 により高齢者の移動コストの結果は非高齢 者の結果の 1.7 〜 1.9 倍、移動時間の結果は 1.4 倍程度となっている。
また、中心部までの短距離移動に変更することによって、高齢者がバ スを利用するアクセシビリティの高さが顕著に表れており、地下鉄や BRT より、バスを利用した方が体力的負担が少なく、徒歩の距離抵抗 が減少する。以上より、年齢と移動距離により、公共交通機関の優劣 が大きく変化することが分かった。
(3) 交通機関、目的地別比較と考察
各目的地の結果を比較すると交通機関と目的地の位置が移動コスト に大きな影響を及ぼすことが分かる。施設が地域の中心部にある場合、
図 3.24 非高齢者に対する高齢者の比率(その 2)
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第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
移動距離が短いため、住宅から乗り場が近く、すぐに乗車できるバス または BRT は移動コストが小さくメリットがある。地下鉄は乗車時間 が短いが駅までの徒歩時間が長く、体力的負担が大きいため、移動コ ストが他の交通機関より高くメリットが小さい。一方、中心部から離 れた施設の場合では全体的な移動距離が長くなるため、速達性の高い 地下鉄と BRT はバスより移動時間が短く大きなメリットがある。しか し、駅までの徒歩距離が長いことに加えて駅内でもホームまでの移動 時間と階段上り下りによる体力的な移動抵抗があることで、地下鉄の 移動コストが相対的に高いことが示された。以上の結果から、移動距 離によって各交通機関のメリットの変化が生じることが分かった。
3.4 小括
宇都宮駅周辺を対象として、実際の建物点から公共交通機関を利用 して各目的地までの移動コストおよび移動時間を算出したところ、第 2 章の線形都市内移動モデルでの解析結果の現象と共通の現象が見ら れた。まず、都市内移動における徒歩の距離抵抗が公共交通機関の優 劣に大きな影響を及ぼすことが確認できた。この影響により、都市内 の移動距離により、各交通機関によるアクセシビリティが変化し、さ らに相対的に逆転することも見られた。また、年齢別にみると、加齢 と共に徒歩抵抗の影響が大きく増加することが分かった。本結果によ り、採り上げた目的地のいずれであっても、高齢者の移動コストは非 高齢者の移動コストの約 1.6 〜 1.9 倍の結果となっている。なお、本 分析は距離抵抗のみを考慮したが傾斜抵抗も考慮したとき、この結果 がさらに明確化されると考えられる。この点については、次節に述べ る。
4. 多摩市のアクセシビリティの定量的評価
ここでは、多摩市を対象に前節の分析に傾斜抵抗も勘案してアクセ シビリティを評価する。
4.1 多摩市地域の概要
東京都西南部の多摩地域南部に位置する多摩市を第二実証実験の対 象とする(図 3.25)。多摩市は、1960 年代に開発が始まった日本最大 規模のニュータウンである多摩ニュータウンの中で最も初期に完成し た地域を含んでいる。50 年間にわたって開発された現在の多摩市は、
「少子高齢化」、「人口減少」、「住宅問題」という様々な社会問題を抱 えている23)。この問題に対応するために、多摩市では近年、都市イン フラの再整備などの都市空間の再構築計画が進み、より暮らしやすい 街へと進化を遂げている24,25)。
23) 多摩大学(社会工学研究会):多摩 ニュータウンの再生、多摩学電子新 書、Vol.7( 多摩学新書 )、2009 24) 多 摩 市: 第 五 次 多 摩 市 総 合 計 画
(2011)
25) 多摩市:行政材診断白書 (2003)
第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
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町田市 八王子市
日野市
府中市
稲城市
川崎市
唐木田駅
多摩センター駅
永山駅 聖蹟桜ヶ丘駅
若葉台駅
はるひ野駅 多摩動物公園駅
高幡不動駅 中河原駅
0 0.5 1
km
N
鉄道線図 3.25 多摩市(東京都)
(1) 市内移動の問題
多摩市は、多摩丘陵が南部にあり、多くの谷戸が形成されていた地 域である。宅地開発地区は、丘陵地の宅地造成が行われ、急傾斜地や 高低差のある宅地などが各所で見られる。市域は谷状の地形に沿って、
東北東から西南西方向に長い形状をなし、起伏にとんだ地形を形成し ている26)。道路形態も、起伏が大きく、東西方向に勾配の急な箇所 があるなど、徒歩において、やや快適性を欠いた箇所が見られる(図 3.26)27,28)。鉄道について、市内には聖蹟桜ヶ丘駅(京王線)、永山駅(京 王相模原線、小田急多摩線)、多摩センター駅(京王相模原線、小田 急多摩線、多摩都市モノレール線)、唐木田駅(小田急多摩線)が設 置されている。路線バスについては、バスは京王電鉄と神奈川中央交 通の 2 社が運行しており、主に市内の各地域と鉄道駅を結んでいる。
しかし、丘陵地の特徴として、駅やバス停までの段差、坂道等により、
特に高齢者等にとって、バス停までの移動に困難を抱えている。また、
鉄道、モノレール、バス等の乗換えにおいては高低差により、不便が 生じていると見られる。
(2) 高齢者社会における都市内移動
多摩市は、高齢人口(65 歳以上)が近年、急増傾向であり、平成 17 年には年少人口(0 〜 14 歳)を上回り、現在高齢化率は 25.4% と なっている29)。多摩市高齢者実態調査 ( 平成 26 年 )30)によると、日 常生活における高齢者の外出頻度(買物)は、「週 2 ~ 3 日」が 28.7
%と最も多く、次いで「ほぼ毎日」が 25% となっている。外出する際 の移動手段は、全体では、「徒歩」の 73.4% が最も多く、次いで「路 線バス」53.9%、「電車」44.9% となっている注 5)。高齢社会の現状にお いて、段差、坂や傾斜の多い丘陵地の特性を踏まえると、公共交通機
出典 ) 多摩市:多摩市交通マスタープ ラン (2004)
図 3.26 多摩市の主要な道路 の勾配状況27)
26) 多摩市:多摩市都市計画マスタープ ラン(2013)
27) 多摩市:多摩市交通マスタープラン
(2004.3)
28) 多摩市:多摩市人口ビジョン検討資 料 (2015.10.08)
29) 住民基本台帳人口 ( 平成 27 年 1 月 1 日現在 )
30) 多摩市:多摩市高齢者実態調査報告 書 (2014.12)
注 5) 高齢者実態調査報告書は、2014 年 5 月に実施した「高齢者の暮らしに 関する調査」、「介護保険居宅サービ ス利用者調査」、「介護保険施設サー ビス利用者調査」、「介護保険サービ ス未利用者調査」、「介護保険事業所 調査」の 5 つの調査結果を報告書と してまとめたものである。