示す。目的地とは、図 3.30 のように、設定路線上にある既存の多摩 センター駅 (D1)、落合地域と永山地域の中心地 (D2)、既存の永山駅 の付近 (D3)、聖蹟桜ヶ丘駅 (D4) の 4 つ目的地とする。また、建物点 と各路線における公共交通機関の最寄り停留場との高低差の分布が図 3.30 にも示した。地下鉄の路線が短く駅数が少ないため、駅と建物 点との高低差が高いことが分かった。一方、BRT 路線の配置範囲が広く、
建物点と停留場との高低差の平均が低い。特に BRT の路線 2 では、東 部に位置する標高が高い聖ヶ丘の付近を通っており、全体の建物点と の高低差が他の路線より非常に小さいことが確認できた。
以上のデータに基づいて、市内の建物点から各目的地までの移動コ ストを算出し、目的地による都市内のアクセシビリティの定量的評価 を行う。
4.3 移動コストの推定結果
上記の分析方法および既存データにより、多摩市の公共交通機関利 用時に各目的地までの移動コストの分析結果を述べる。目的地、路線、
公共交通機関、年齢、および徒歩抵抗による移動コストの変化の比較 も行った。
(1) 目的地による変化
市内の既存建物点から各目的地までの、年齢別の移動コストおよび 移動時間の計測結果を図 3.31 に示す。この結果の散布度を検討する ために、標準偏差を算出した(図 3.32)。
図 3.31 から、目的地によって移動時間および移動コストが変化す ることが分かった。端部に位置している目的地 D1、D2 と D4 よりも、
中心部にある目的地 D3 までの移動時間が比較的短い。移動時間の結 果から見ると、D3 までの移動時間が全体的に短い傾向があり、D1 ま でに比べて、平均値で 2.5 分、最大値(BRT 路線 2 以外)で 3.5 分程 度早く到着できる。高齢者の場合は、この差がさらに増加する傾向も 見られた。同様に、各目的地までの移動コストも変化する。特に、各 建物点から D3 までの距離が他の目的地と比較して短い傾向があり、
D3 までの移動コストも最も小さいことが分かった。また、どの目的 地であっても移動時間と移動コストの最大値と平均値の差が大きく,
移動時間が平均値の約 3 倍近く、移動コストが約 3 倍以上であった。
図 3.32 の標準偏差から、目的地によって多摩市における都市内ア クセシビリティに大きなばらつきがあることが分かった。D3 までの 移動時間および移動コストの標準偏差が小さい傾向があり、アクセシ ビリティの差が他の目的地より小さいことが分った。移動時間と移動
72
第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
コストの標準偏差を比較すると、移動コストは移動時間に対して 1.5 倍以上の結果となった。これは、移動時間が全体の平均値との差が小 さいが移動コストが高い建物点の数が多く、全体の平均値との差が拡 大することによる。目的地までの距離が遠い建物点が多いこと、ある いは経路上に高低差が多いことから距離抵抗と傾斜抵抗による負荷が 大きく、移動コストが高くなり、他の建物点との差がさらに増加する ことのためと考えられる。
以上の考察により、公共施設を計画する際に、全体の住居と目的地 までの相対距離の検討が必要があることが示唆された。
(2) 路線による変化
本分析では、新たな公共交通機関を導入する際に、交通機関の路線
図 3.31 各目的地までの公共交通機関利用による移動コストおよび移動時間
移動コスト移動時間移動コスト移動時間
28.25 29.35 25.83 35.49 97.33
90.27 97.33 97.69
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
20.29 20.9 18.68 25.27 58.79 58.88 58.79 65.26
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
26.56 27.7 24.09 34.23 94.84 90.13 94.84 95.81
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
18.65 19.26 16.94 24 56.3 58.24 56.3 63.39
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
26.76 28.63 25.18 35.03 97.27 95.62 97.27 97.64
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
18.97 20.23 17.95 24.83 56.71 62.93
56.71 65.22
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB 20.28 20.8 18.55 24.49
62.02 59.63 62.02 62.37
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
15.46 15.77 14.34 18.47 40.12 39.45 40.12 44.47
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
25.65 26.72 23.38 33.6 92.74 92.23 92.74 94.24
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
17.81 18.34 16.21 23.43 54.2 60.34
54.2 61.81
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB 17.71 18.21 16.12 22.63 57.42 59.84 57.42 60.2
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
13.01 13.21 11.88 16.65 35.53 41.13
35.53 41.49
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB 18.58 19.15 16.81 23.23
59.52 58.74 59.52 60.5
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
13.81 14.12 12.6 17.21 37.63 39.03 37.63 42.59
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
18.85 20.09 17.91 24 61.96 60.47 61.96 62.33
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
14.21 15.07 13.6 18.04 38.74 41.22 38.74 44.42
0 20 40 60 80 100 120
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
非高齢者高齢者
最大値 平均値
目的地 D1 D2 D3 D4
第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
73
37) 多摩市:市政情報、計画・報告、都市・
交 通、 地 区 計 画:http://www.city.
tama.lg.jp/plan/948/11044/011051.
html、参照 2017.1.7
図 3.32 各目的地までの公共交通機関利用による移動コストおよび移動時間の標準偏差
移動コスト移動時間
高齢者 非高齢者
16.67 15.83 16.3 17.77
10.48 10 10.21 11.04
0 5 10 15 20
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
9.54 9.25 9.07 10.98
6.42 6.22 6.06 7.16
0 5 10 15 20
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
16.04
15.23 15.95 17.72
9.81 9.44 9.88 10.99
0 5 10 15 20
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
9.09 8.84 8.91 11.1
5.93 5.81 5.92 7.26
0 5 10 15 20
BRT1 BRT2 BRT3 SUB 16.32
15.41 16.22 17.72
10.08 9.57 10.11 10.97
0 5 10 15 20
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
9.24 8.84 9.04 10.96
6.05 5.8 5.99 7.11
0 5 10 15 20
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
11.82
10.79 11.38 13.82
7.91 7.22 7.69 8.99
0 5 10 15 20
BRT1 BRT2 BRT3 SUB 17.06
15.68 16.68 18.55
10.92
10.03 10.73 11.79
0 5 10 15 20
BRT1 BRT2 BRT3 SUB
目的地 D1 D2 D3 D4
が都市内アクセシビリティ与える影響を検討するために、各 BRT 路線 の移動時間と移動コストを比較する。
図 3.31 により、BRT の路線よって都市内の移動時間と移動コスト の平均値が異なっている。歩行者にとって、BRT の路線 3 によるアク セシビリティが最も高く、路線 2 が最も低いことが分かった。BRT の 路線 2 では、建物点と最寄り停留場との高低差が各 BRT 路線中に最も 小さいが路線が住宅が多い地区を離れるため、BRT2 による移動コス トは他の路線より高い結果となった。一方、どの目的地においても、
路線 3 による移動時間の平均値は他の路線より 2.5 〜 3.5 分程度短く、
移動コストも低い傾向が見られた。これは、多摩市の地区計画図37)(図 3.33)を参照すると、BRT 路線 3 の沿線上の大部分が住宅が多い地区(唐 木田地区、桜ケ丘地区、諏訪地区、永山地区)を通っており、各建物 点から BRT 停留所までの徒歩距離が短い居住者が多く、BRT がすぐ利 用できるためと考えられる。
また最大値をみると、各 BRT 路線によるアクセシビリティの差は加 齢に従って増加することが分かった。また、年齢により各 BRT 路線に よるアクセシビリティが相対的に逆転する場合も見られた。例えば、
目的地 D3 の移動コストの最大値の結果については、非高齢者の BRT 路線 2 では路線 1 と 3 より高く、最も大きい結果となったが、高齢者 の場合は逆転し、3 つの路線中最も小さい結果となった。最大値を計 測する建物点は特定の位置にあり、停留所までの距離が長く乗車時間 に対する徒歩時間の割合が大きいという特徴がある。乗車時間は年齢 別にみても変化しないが徒歩時間は非高齢者より高齢者の方が長いこ
74
第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
とから、加齢に従って、乗車時間に対する徒歩時間の割合が増加す ると考えられる。また、D3 までの移動コストの最大値の結果により、
年齢別にしても乗車時間が変化しないため、高齢者については、乗車 時間に対して徒歩時間増加の割合は路線 2 より路線 1 と 3 の方が大き ことから、最大値が相対的に逆転する現象が起こしたことが示された。
標準偏差の結果(図 3.32) から、路線 2 が路線 1 と 3 より小さいこ とが判明した。これは、路線 1 と 3 は全体的に路線 2 よりアクセシビ リティが高いが建物点の位置によるアクセシビリティの格差が大きい ことが理由であると考えられる。今後、都市内移動から見たアクセシ ビリティおよび公平性を高くするために、このようなアクセシビリテ ィが低い地域に対して、コミュニティバスなどの交通対策が必要にな ってくると考えられる。
BRT 路線 1、2、3 および地下鉄による各目的地までの移動コストの 分布を図 3.34、3.35 に示す。全体的に各路線沿いおよび目的地周辺 の移動コストが小さく、路線から離れた地域は徒歩距離が長いため路 線沿いとの差は非常に大きいことが示された。どの目的地においても、
公共交通機関の路線が通らない、標高が高い北部の桜ヶ丘地域、東部 の聖ケ丘地域、西部の落合地域は他の地域より非常に高いことが分か った。また、高齢者の結果をみると、全体的に移動コストが激増し、
各地域の差も激変することが見られる。さらに、移動コストの分布を 確認すると、目的地 D3 および BRT 路線 3 によるアクセシビリティが 他の目的地と路線より高いことがわかった。
(3) 交通機関の変更によるアクセシビリティの違い
地下鉄と BRT の路線、駅間隔や速度などの特性が異なるため、これ らの交通機関による都市内アクセシビリティも非常に異なっている。
0 0.5 1
km
N
唐木田駅
多摩センター駅
永山駅 聖蹟桜ヶ丘駅
桜ヶ丘地区
唐木田地区
諏訪地区
永山地区
図 3.33 多摩市の地区計画37)
37) 多摩市:市政情報、計画・報告、都市・
交 通、 地 区 計 画:http://www.city.
tama.lg.jp/plan/948/11044/011051.
html、参照 2017.1.7(再掲)
第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
75
70 - 80
20 - 22 90 - 100 80 - 90 60 - 70 50 - 60 46 - 50 42 - 46 38 - 42 34 - 38 30 - 34 28 - 30 26 - 28 24 - 26 22 - 24 18 - 20 16 - 18 14 - 16 12 - 14 10 - 12 0 - 10 0
SUB BRT1
BRT2 BRT3
SUB BRT1
BRT2 BRT3
目的地 D1目的地 D2
0 0.5 1
km 既存道路 路線 停留所 目的地
移動コスト(分)
N
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図 3.34.1 各目的地までの公共交通機関利用による移動コストの分布図(非高齢者)
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第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価
図 3.34.2 各目的地までの公共交通機関利用による移動コストの分布図(非高齢者)
70 - 80
20 - 22 90 - 100 80 - 90 60 - 70 50 - 60 46 - 50 42 - 46 38 - 42 34 - 38 30 - 34 28 - 30 26 - 28 24 - 26 22 - 24 18 - 20 16 - 18 14 - 16 12 - 14 10 - 12 0 - 10 0
SUB BRT1
BRT2 BRT3
SUB BRT1
BRT2 BRT3
目的地 D3目的地 D4
0 0.5 1
km 既存道路 路線 停留所 目的地
移動コスト(分)
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第 3 章 対象地域の都市内アクセシビリティの定量的評価