第8章 看護師候補者の研修担当者に対する調査(受入れ病院調査)
8.7 調査結果
8.7.2 学習指導(日本語および看護師国家試験受験のための学習指導)
8.7.2.6 学習指導のまとめ
前項までは,要約版事例・コードマトリックスを基に各病院の学習指導に関するストー リーを形成した。本項では,①日本語の学習指導,②看護師国家試験受験のための指導に ついて各病院を比較しながら,まとめることとする。
13 JICWELSによる看護師国家試験対策の1つであり,看護師国家試験対策講座のインターネット配信の
ことである。基礎・標準レベルと標準・上級レベルがある。
14 日本人と同様の看護師国家試験問題とふりがな付きの看護師国家試験問題の2種類が配布され,試験 時間が1.3倍に延長される。
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① 日本語の学習指導
A病院からE病院までの日本語指導に関するストーリーを整理し,表26に示す。
表 26 各病院の日本語の学習指導
A病院 B病院 C病院 D病院 E病院
日本語指導者 外部日本語教師 (来院)
外部日本語教師 外部日本語教師 (ボランティア)
外部日本語教師 (ボランティア) (通学)
外部日本語教師 (ボランティア)
1週間の回数 週1回 週1回 週1回 週1回 週5回 1回の学習時間 2時間 2時間 2時間 2時間 4時間 教材および指導
方法
日本語能力試験 N3対策本
『新日本語の中 級』
雑誌,漢字ドリ ル,看護師国家 試験の状況設定 問題の事例文の 解説
日常会話,看護 師候補者が書い た文章の添削
日常会話
表26より,日本語の学習指導に関して共通していることは,外部の日本語教師の指導者 がいること,就労時間内に定期的に日本語学習の時間を取っていることが挙げられる。
外部の日本語教師に来院して授業を受けさせているところもあれば,日本語教室へ通学さ せているところもあった。複数の看護師候補者を同じクラスで教え,概ね,週 1回,1回 2時間であるが,E病院はインドネシア第一陣の看護師候補者であったこともあり,日本語 でのコミュニケーションが困難であったため,週5回,1回4時間もの時間を日本語指導 に割いていた。このことから,日本語力を付けることがどの病院においても最重要課題で あると認識されていることがわかる。
学習指導内容は,既習の一般日本語のテキストを使用しての復習,日本語能力試験N3対 策,日常会話,看護師候補者が書いた文章の添削などであった。C病院においては,看護 師国家試験の状況設定問題の事例文の文章理解,および,内容把握を日本語教師が行って いた。
② 看護師国家試験受験のための学習指導
看護師国家試験受験のための学習指導に関するA病院からE病院までのストーリーを整 理し,表27に示す。
表27より,各病院の学習指導で共通していることは,下記の6点である。
(ア) 施設内研修として,定期的に学習時間と場所を確保している。
(イ) 看護師候補者の看護の専門知識に関する疑問点を解説する学習指導者がいる。
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(ウ) 看護の専門家が,看護師国家試験受験のための学習指導を実施している。
表 27 各病院の看護師国家試験受験のための学習指導
A病院 B病院 C病院 D病院 E病院
学習指導者 インタビュイー (勤務せず,看護師 候補者を専任で指 導)
病棟の看護師 インタビュイー をはじめ,病棟 主任,看護師長
インタビュイー (勤務せず,看護 師候補者を専任 で指導)
10人の看護師 長
1週間の回数 5日 5日 5日 2日 5日(5カ月後~) 1回の学習時
間
3時間半 (週1回,1時間半 は,指導者と個別 学習)
毎日1時間 (指導 者と学習) 週4日は,3時間 (自己学習)
2時間 (週1回は,終日 学習日)
8時間 午後
(指導者が2時 間ずつ交代で学 習指導) 教材 『クエスチョンバ
ンク』『レビュー ブック』『正文リ スト』など
eーラーニング,
看護師国家試験過 去問題集
JICWELSの問題 集,看護師国家 試験問題のアプ リケーションソ フト,翻訳アプ リケーションソ フト
『看護師国家試 験準備問題』
『レビューブッ ク』
看護師国家試験 過去問題集,医 学用語辞典,オ ンデマンド講義
学習指導の 特徴
自律学習の強化 職場,生活環境に 慣れるための支援
インタビュイー が立てた学習計 画に沿って指導
2人同時に講義 形式,必要時,別 室で個別指導
要点を講義後, 看護師国家試験 問題を解かせる 10月までは要点学
習,10月以降は看 護師国家試験過去 問題を解かせる
2回目の受験の3 か月前から,午後 は学習時間。その うち,週4日,1日 1時間,看護師長 が学習指導する
週1回10問テ ストを実施し, 誤答となった問 題を全員で復習
10月から,終日 学習時間とす る。そのうち週 3日は,インタ ビュイーが指導
看護師国家試験 1か月前,終日 学習時間
学習ノート作成さ せる
翻訳アプリケー ションソフトを 使用し英語で説 明
JICWELSの集合 研修で行われる 看護分野に沿っ て予復習
オンデマンド講 義(JICWELS)で, 進捗状況を把握 し,疑問点をメ ールでオンデマ ンド講師に質問 し,解決させる 看護師国家試験の
状況設定問題の事 例文を看護師候補 者に説明させ,理 解度を把握する
病棟のペアの看護 師が,現場で見聞 した未知の語を教 える
看護師国家試験 のアプリケーシ ョンソフトを使 用し,全員で同 一の問題を解く 看護師国家試験の
頻出箇所を指摘 し,教材で重点的 に学習させる
病院の受入れ体制 がよくとれていた
学習指導者がい ないときは,学 習室で自習
看護学校の看護 師国家試験対策 講座を日本人と 共に受講させる 重点学習後,看護
師候補者自身で,
関連する過去問題 を解かせる
応援しているとい う意思を伝える工 夫
月1回,看護学 校で看護教員か らEPAのみのク ラスで学習
雑談の時間を設 け,看護師候補 者の学習,生活 の相談を受けた り,仲間意識を 高めたりした
【准看護師とし て勤務する元看 護師候補者への 指導方法】
インタビュイー が,個別に勤務 時間外で支援。
看護師国家試験 問題のアプリケ ーションソフト と模擬試験を活 用。6回目の受 験で合格。
毎週,理解度チェ ックテスト
学習に専念できる 環境を作る
モチベーション の維持 学習振り返りシー
ト,ポートフォリ オで学習管理する
看護師候補者の学 習方法を尊重し,
サポートする
EPA看護師が後 輩を教える時間 を確保する 看護師候補者の意
見を尊重する
学力差に対応する 成功モデルが身 近にいる
模擬試験 JICWELSの模擬試 験
JICWELSと業者の 模擬試験
JICWELSと業者 の模擬試験
JICWELSと業者 の模擬試験
JICWELSと業者 の模擬試験 准看護師試
験
最後の年に受験 本人の意向による 受験させず 正看護師を目指 すため,在留期
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間延長目的で受 験
(エ) JICWELSの学習支援,市販の参考書,および,携帯電話のアプリケーションソフトな
ど複数のリソースを組み合わせて活用している。
(オ) 看護師国家試験直前に集中的に学習する時期がある。
(カ) 模擬試験を受験させ,看護師候補者の弱点を学習指導にフィードバックさせている。
まず,各病院で共通して実施されていたことは,就労・研修時間内に学習時間を取り,
学習場所を与えていること(ア),および,看護師候補者が理解できない点を解説する看護 の専門家がいること(イ,ウ)が挙げられる。学習指導者はA病院およびD病院はEPA専 任のインタビュイー,B病院はペアを組んだ日本人看護師,C病院およびE病院は看護師 長や主任からなるチームなど病院によって様々であった。
次に,使用教材はJICWELSの書籍,および,看護師候補者の意見を取り入れながら,市販 の 参 考 書 や 問 題 集 や 医 学 用 語 辞 典(電 子 辞 書)を 選 定 し て い た 。 ま た,書 籍 だ け でな く,JICWELSの学習支援であるe-ラーニングやオンデマンド講義,あるいは,看護師国家試 験のアプリケーションソフト, 翻訳アプリケーションソフトを活用していた。さらに,C病 院とE病院では,看護専門学校へ通学させるなど,様々なリソースを活用していた(エ)。
さらに,各病院とも看護師国家試験の直前になると,看護師国家試験受験対策としての 本格的な学習を集中的に実施している(オ)。
A 病院では10 月までは各看護学の要点学習をし,10 月以降は看護師国家試験過去問題 集を使用しての学習に切り替えている。B病院では,2 回目の看護師国家試験受験の 3 か 月前から看護師候補者は半日勤務し,午後は学習時間とし,その内1日1時間は看護師長 が個別に学習指導を行っている。D病院では,10月から終日学習時間とし,その内3日間 はインタビュイーがついて学習指導を行っている。E 病院は,普段は午前勤務,午後は学 習時間としているが,看護師国家試験1か月前になると,終日学習時間としている。
また,JICWELS の模擬試験をはじめ,業者の模擬試験を受験させ,看護師候補者の苦手 な分野を把握した上で,フィードバックを行い学習指導に生かしていた(カ)。
次に,看護師国家試験受験のための学習指導に関する各病院の工夫,および,特徴につ いて述べる。
A病院では,最初の 1年は自律学習に力を入れている。市販の参考書およびJICWELSか
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ら配布されるテキストの重要項目を選出し,看護師候補者に重点的に学習させている。し かし,ただ単に語彙を調べ,テキストを読んで理解するだけでなく,学習が終わると,看 護師候補者自身が学習した項目に関連する看護師国家試験問題を探し,解いて知識を確認 するように指導していた。また,看護師候補者に学習したことを整理する「学習ノート」
を作成させていた。さらに,看護師候補者の学習をポートフォリオで管理していた。
また,B 病院では,生活に慣れるための支援を重視し,早く日本に慣れることにより学 習に専念できる環境作りに努めていた。B 病院においては,看護師候補者が病院に配属当 初は,日本語の学習指導は行っていたものの,看護師国家試験の学習指導は積極的には行 わず,病棟でペアとなった看護師から実際に看護補助業務を行う中で,未知の言葉の意味 を教えてもらう,あるいは,病棟の 2~3 人の看護師から看護師国家試験の問題集を用い て,不明な点を教えてもらうことを通して,病院内での人間関係を良好に保ちながら,看 護の専門の学習指導を徐々に実施していた。
C 病院においては,看護師国家試験に合格した看護師候補者も後輩を指導する時間をと っていた。看護師候補者は身近に成功モデルがいるので,励みになっていた。
D病院では,看護師候補者を対象としたJICWELS の集合研修の講義内容に合わせて,予 復習を実施していた。
E病院では,学習指導者の多さが特徴である。病院では10人の看護師長が学習指導に当 たっていた。また,JICWELS のオンデマンド講義の講師,および,看護学校の看護師国家 試験対策講座の講師からも指導を受けていた。