第3章 医療就労における看護師候補者の位置づけ
3.3 外国人が日本の医療現場で就労するための資格取得方法
3.3.1 外国人医師の場合
「医師法」では,日本の医師免許を保有していない外国人医師が医療行為をすることは,
禁じられている。そこで,まず外国人が日本で医師免許を取得する方法を述べ,その後,
日本の医師免許がなくても診療が認められている場合について,特例として述べる。
3.3.1.1 外国人が日本で医師免許を取得する方法
① 日本の大学の医学部を卒業後,医師国家試験に合格
外国人が日本人と同様に,学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく日本の大学に おいて,医学の正規の課程を修めて卒業後,医師国家試験に合格し,医師免許を取得する。
以前は,日本の医師免許を持つ外国人医師は,へき地での診療や大学卒業後6年以内の大 学付属病院などでの研修に限られていたが,現在ではそうした条件は撤廃されている。在
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留資格は「医療」である。ただし,在留資格が「定住者」などのケースは,医師免許取得 後の在留資格が「医療」でない場合がある。
② 医師国家試験受験資格認定後,医師国家試験に合格
外国において医学校(医学部)を卒業した者,または医師免許を取得した者が日本で医 師国家試験を受験するためには,厚生労働大臣から医師国家試験受験資格認定を受けなけ ればならない。医師国家試験の受験資格認定は,外国での医学校の就業年数や,医学校卒 業後の該当国の医師免許取得の有無などが審査され,結果としては,(1)医師国家試験受験 資格を認定される場合,(2)医師国家試験予備試験の受験資格を認定される場合,(3)受験 資格が認められない場合の3通りの場合がある。(図5参照)
厚生労働省「医師国家試験受験資格認定について」を参考に,筆者作成 図 5 外国人が医師国家試験を受験する方法 (認可) (不可)
(2) (3)
(1)
日本語診療能力調査
医師国家試験 受験資格認定
医 師 国 家 試 験 受 験 書類審査
(要件に,日本語能力試験N1合格を含む)
医師国家試験予備試験 受験資格認定
医師国家試験予備試験 受験・合格
1年以上の実地修練
②外国の医学部を卒業,または,外国において医師免許を取得
医師国家試験 受験資格認定されず
①日本の大学の医学部を卒業
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(1)の場合は,書類審査後,日本語診療能力調査が行われ,日本語を用いて診察するため に十分な能力を有しているか否かを調査される。書類審査と日本語診療能力調査の両方の 基準を満たせば,医師国家試験受験資格が認定され,医師国家試験に合格すれば日本の医 師免許が付与され,日本で診療を行うことができる。
(2)の場合は,医師国家試験予備試験受験資格が認定される場合であり,2種類の方法が
ある。
1 つは,書類審査の基準を満たしているにもかかわらず,日本語診療能力調査で基準に 達しなかった場合,医師国家試験予備試験受験資格が認定され,医師国家試験予備試験を 受験する方法である。
もう1つは,書類審査の結果,医師国家試験予備試験受験資格認定を受け,医師国家試 験予備試験を受験する方法である。
どちらの場合も予備試験に合格後,さらに1年以上の診療および公衆衛生に関する実地 修練後,医師国家試験受験が可能となる。医師国家試験受験に合格すれば日本の医師免許 が付与され,日本で診療を行うことができる。
なお,受験資格認定審査には,日本の中学校および高等学校を卒業していない者につい ては,日本語能力試験N1(日本語能力試験 1級を含む)の認定を受けていることと明記 されている。
3.3.1.2 日本の医師免許がなくても診療が認められている場合(特例)
① 臨床修練制度
「外国医師等2が行う臨床修練等に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律」におい て,医療に関する知識および技能の修得を目的として入国した外国人医師が,臨床修練病 院等において臨床修練指導医の指導監督の下に業務を行うことが許可されている。ただし,
外国人臨床修練制度は,日本の医師免許を与えるための制度ではない。また,診療などの 医療行為に対する報酬を得ることはできない。日本語能力に関しては,臨床修練を行うの に支障のない日本語等の能力を有することとなっている。在留資格は「研修」である。
2 外国人医師の他に,外国において助産師,看護師,歯科衛生士,診療放射線技師,歯科技工士,臨床 検査技師,理学療法士,作業療法士,視能訓練士,臨床工学技士,義肢装具士,言語聴覚士又は救急 救命士に相当する資格を有する者が該当する。薬剤師,はり師,きゅう師,あん摩マッサージ指圧 師,柔道整復師に相当する資格を持った者の臨床修練は認められていない。
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② 被災地における医療支援
国内被災地において,日本の医師免許がない外国の災害派遣医療チームなどの医師の医 療行為が認められることがある。1995年の阪神・淡路大震災,2011年の東日本大震災で例 外として認められた。
③ 二国間協定(医師資格)の特例措置
二国間協定は,イギリス,アメリカ,フランス,シンガポールの4か国と締結しており,
日本に居住・滞在する外国人を対象に,日本の公的医療保険を利用しないこと等,一定の 条件の下で医療行為を行うこととなっている。この場合の医師免許を取得するためには,
医師法の規定による受験資格認定を受ける必要があり,学力および技能ともに日本の医学 部卒業生と同等以上であると認められた上で,英語で実施される医師国家試験に合格しな ければならない。なお,診療対象が外国人であることから,日本語力に関する記載は見受 けられない。
3.3.2 外国人看護師の場合
外国人が日本で看護師として就労する場合も,医師同様,日本の国家資格を取得しなけ ればならない。そこで,まず,3.3.2.1 で一般の外国人が日本で看護師免許を取得する方 法について,3.3.2.2で看護師候補者が看護師免許を取得する方法について述べ,その後,
3.3.2.3 で日本の看護師免許がなくても看護業務が認められている場合について,特例と
して述べる。
なお,外国人看護師の場合は,3.3.1.2 の③で記述した外国人医師の場合のような二国 間協定の特別措置は認められていないので,英語版の看護師国家試験はない。
3.3.2.1 一般の外国人が日本で看護師免許を取得する方法
① 日本の大学または看護専門学校等で3年以上看護教育を受け,看護師国家試験に合格 外国人が日本人と同様,文部科学大臣の指定した学校教育法(昭和 22 年法律第26 号)
に基づく大学および文部科学大臣の指定した学校において,看護師になるのに必要な学科 を修めて卒業した者,あるいは,都道府県知事の指定した看護師養成所を卒業した者が,卒 業後看護師国家試験に合格し,看護師免許を取得する。在留資格は「医療」である。ただ し,在留資格が「定住者」などのケースは,看護師免許取得後の在留資格が「医療」でな い場合がある。業務内容は日本人看護師と同様である。
② 看護師国家試験受験資格認定後,看護師国家試験に合格
外国において既に看護師免許を取得した者も,日本で看護師として就労する場合には日
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本の看護師国家試験に合格し,国家資格を取得する必要がある。看護師国家試験受験に際 しては,事前に看護師国家試験受験資格認定を受ける必要がある。その際,日本語能力試
験N1(日本語能力試験 1級を含む)の認定を受けていることと記載されている。看護師
免許取得後の在留資格は「医療」であり,業務内容は日本人看護師と同様である。
③ 准看護師免許取得後,看護師国家試験に合格
外国において既に看護師免許を取得した者で,日本で看護師免許を取得できなかった者
(3.3.2.1の②で不合格者),准看護師試験(知事試験)に合格し准看護師免許取得後,看 護師国家試験を目指す方法がある。准看護師試験受験に際しては,事前に准看護師試験受 験資格認定を受ける必要がある。その際,日本語能力試験N1(日本語能力試験 1 級を含 む)の認定を受けていることと記載されている。
なお,准看護師の在留期間は,資格取得後4年間という制限があるため,4 年以内に看 護師国家試験に合格し,看護師免許を取得しなければ帰国せざるを得ない。
3.3.2.2 看護師候補者が日本で看護師免許を取得する方法
① EPAの期間内に看護師国家試験に合格
看護師候補者は,受入れ施設で就労しながら原則 3 年以内に看護師国家試験に合格し,
「EPA看護師」となる。看護師候補者の在留資格は「特定活動」であり,看護師国家試験に 合格し「EPA看護師」となっても,在留資格は「特定活動」である。看護師資格取得後は在 留期間に制限はなく,業務内容は日本人看護師とほぼ同様だが,在宅看護は認められてい ない。また,EPA 看護師が扶養している配偶者または子に限り,日本での滞在が許可され ている。
しかし,平井(2014)は,「EPA看護師の在留資格『特定活動』と『医療』を比較した場合,
『医療』では就労場所の制限がなく,在宅看護も可能になり,配偶者も『家族滞在』とな ることから(『特定活動』の配偶者は『特定活動』),現在国内のEPA看護師は『特定活動』
から『医療』へと変更するものが増えている」3と述べている。
つまり,EPA看護師には,「特定活動」と「医療」の2種類の在留資格が混在しているこ とになる。
② EPAの期間内に准看護師免許取得後,看護師国家試験に合格
3 平井辰也(2014) 「インドネシアEPA看護師受け入れの現状―入国管理政策の問題点―」移民政策学
会14年度冬季大会,www.iminseisaku.org/top/conference/doc/141213_hirai.pdf (2018年12月 30日閲覧)