• 検索結果がありません。

多様な種、一つの知性

ドキュメント内 ケヴィン・ケリー著作選集 2 (ページ 142-147)

Many Species, One Mind ネットワークの知性に関する素晴らしい歴史書"Darwin Among The Machines: The Evolution Of Global Intelligence"(機械にとってのダー ウィン:全世界的な知能の進化)で、ジョージ・ダイソンが示しているよ うに、全世界的な一つの頭脳という考え方は、技術が出現したごく初期 に生まれている。人間は「機械」を作るとすぐに「人工頭脳」を、そし て、より重要なものとして「地球に一つだけの人工頭脳」を想像してい た。機械に自律的エネルギーを与えた途端に、それが自律的知能を持つ ことを人間は予見していた。

ダイソンの本では、全世界的な人工知能について、サミュエル・バト ラー、ライプニッツ、バベッジ、オラフ・ステープルドンなど歴史上の人 物たちによる驚くべき予知能力に焦点をあてている。ダイソンはこの本 を書き終えたあとで、レポート用紙を持って自分の作業場のテラスにす わって、序文の下書きをしていた。そのとき、人間性の未来におけるあ らゆる経路について短い 2 行詩にまとめた。

人間は一つの種でいるか、多種に分化するか?

人間は多様な知性でいるか、一つに同化するか?

21 章 多様な種、一つの知性

私はこの一節をどこかの石に刻んでおきたいと思う。この 2 行には、

人類にとって重要な長期的シナリオが 4 種類含まれている。

一つの種、多様な知性: 公式な未来の姿。遺伝的改良の結果を交配しな がら、個人の特徴は異なったままで、人間の種としての独自性は損なわ れない。

一つの種、一つの知性: 電子的な媒介を通じて、人間はみんな結合して 超個体になる。超人と言っても良い。私は最初これをボーグと呼んでい

21 章 多様な種、一つの知性

たが、ボーグとは多くの種が同化したものであるという指摘を受けた。

多様な種、多様な知性: スターウォーズの世界である。究極の多様性。

人間は進化して新しい種に分かれていく。その一部は機械と結合してサ イボーグのようになるかもしれない。

多様な種、一つの知性: 人間は生物学的には分化するが、人類圏として は一体化する。何百万もの種が同じ知性を持つ。最も恐ろしくて最も考 えにくいシナリオである。この暗黒面の話がスタートレック・ネメシス であり、ボーグである。歓迎すべき話がサイエンス・フィクション (SF) にあるかどうか、私は知らない。

以前は、私はこの3 番目のシナリオ ――多様な種、多様な知性―― が めざすべき未来だと考えていた。しかし、ダイソンの本を読んでからは

「多様な種、一つの知性」が進むべき道だと思っている。「多様な種、一 つの知性」という言い回しは、この新しい運命のためのステッカーの標 語としては上出来である。

ジョージ・ダイソンは、私への手紙で次のように書いてきた。「多くの 人はたぶん 3 番目のシナリオを好むだろうと思う。あるいは、それが破 滅に対する(多様性による)最大の保険となって、最も豊かな未来を示 してくれると考えるだろう。しかし、第 4 のシナリオ(多様な種、一つ の知性)のように、宇宙には何か内在する力(あるいは偶然による力の 均衡)があって、種は多様性に向かい、知性は統一に向かうのかもしれ ない。」

行き着く先が統一だという考え方は、私には目新しいものである。進 化についての私の見解は、このブログでも概要を示しているが、その見 解では生物の進化が「求める」ものは、進化の多様性に見られるような 本質的な多様性だと思われる。技術の進化も同様であって、より多くの

21 章 多様な種、一つの知性

探索の手段、より多くの創造の方法、さらにはより多くの存在の仕方な どへ向かっている。生物の進化も技術の進化も、選択に関する種類や特 徴、複雑度、多様性を増加させる方向に進んでいる。このように進化は 発散的である。

しかし、少なくとも技術に関して、統一へ向かう傾向があるとしたらど うなるだろうか。技術の進化は発散的でなく、収束的であるとしたら?

再びダイソンの手紙を引用する。「進化と通信ネットワークは、どちら も分岐する作用である。その違いは、種の分化がつながりを断絶する行 為であるのに対して、通信ネットワーク(電気的、化学的、その他何で も)はつながりを形成する(そして維持する)行為だということである。

興味深いのは、生物の進化における種の分化はみごとに成功している一 方で、文化の進化における種の分化(孤立した宗教集団など)では、たい てい失敗している。フリーマン(ダイソンの父)であれば、次のように 言うだろう。その失敗は地球上に十分な余地がなかったせいであり、外 の宇宙空間では文化的な種の分化が繁栄する(スターウォーズの 3 番目 のシナリオ)。しかし、私にはそれが正しいかどうかわからない。」

生物の進化と技術の進化の相違は(生物では絶滅が一つの筋道である が、技術ではそうでないことに加えて)、生物は発散し、技術は収束する ことである。

しかし、その基盤となるものは単なる進化であるし、また、第七界(訳 注:生物分類学で動物界の次に位置するもの。それは技術だとケヴィン・

ケリーは言う。)では、生命が収束する。地球上には多くの種が存在する が、生命は一つである。地球上のすべての生命は、同じ OS(オペレー ティング・システム)を実行している。したがって、地球上では「多様な 種、一つの進化」だと言うことができそうだ。そして、もし、ダイソンが

21 章 多様な種、一つの知性

その著書で言うように、進化はゆっくりと分散する知性のようなものだ とすれば、すでに「多様な種、一つの知性」になっている。

でも進化が一つの知性であるというのは、全世界規模の超個体の「一 つの知性」とは全く異なる。超個体の「一つの知性」は、多数の知性の複 合体である。それはまだ名前がつけられていない種類の知性だ。この巨 大な知性は、知性以外のもので構成された普通の知性では達成不可能な ことができるようになる。

いま何かが知性の本質に取り込まれつつある。知性は他の知能をむさ ぼり食い、吸い込もうとしている。知性は他の知能をさがして融合しよ うとしている。ウェブでの共有という激しい衝動にその状況を見ること ができる。少なくとも人間の知性は、他の人間の知性に入り込もうとし ている。人間はテレパシーにあこがれる。知性は本質的に拡大しようと する。その論理的帰結は「一つの知性」である。

それと同時に、歴史には、知性の種類を増加させようとする明確な傾 向がある。動物に見られるような、そして今では機器にも見られるよう な多種多様な知性である。知性は統一を切望する一方で、多様性や異な る思考方法を求めている。たぶん、それが「多様な種、一つの知性」とし て得られるものである。

(初出: http://memo7.sblo.jp/article/27278913.html) (原文: Many Species, One Mind)

ドキュメント内 ケヴィン・ケリー著作選集 2 (ページ 142-147)