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クラウドのためのクラウドブック

ドキュメント内 ケヴィン・ケリー著作選集 2 (ページ 119-125)

18 章 クラウドのためのクラウドブック

マップリデュース(Lisp(リスプ)の二つの関数から合成した名前)

は、通信におけるパケット交換にいくらか似た働きをする。パケット交 換 ―インターネット通信の重要な特徴である― では、メッセージは小さ なまとまり(パケット)に分割されて、そのパケットはそれぞれが別々に ネットワーク上の多くの異なる経路を通って送られる。最終目的地で各 パケットを受信すると、それを合わせて全体を再構成する。もしもネッ トワークの一部が故障していて、一つ(またはそれ以上)のパケットが届 かなければ、異なる経路に切り替えて、正しく届くまで送り直す。マッ プリデュースのアーキテクチャーでは、プログラムの面倒な仕事は、小 さなまとまりごとに細分化される。そのまとまりはクラウドの各ノード に送られて、関与する全サーバーで計算する。ノードが停止していたり、

計算ができなかったりすれば、そのまとまりを再割当して計算を完了さ せる。

この飛びかう断片をすべて把握することが、マップリデュースの役割 である。このアルゴリズムの仕組みは、まず、初めて見る機能を中間的 な部分に分割(マップ)する。これら機能の断片に対して膨大な回数を かけて並列処理し、それから、並列処理の結果を統合して一つにして

(リデュース)、答えをクライアントに提示する。ここで驚くべきことは、

マップリデュースそのものを全く知らない他人が定義して書いたソフト ウェアの関数を、マップリデュースが分割したり統合したりすることで ある。

18 章 クラウドのためのクラウドブック

マップリデュースはハドゥープ (Hadoop) のようなオープンソースの 実装を生み出した。これはジャバで書かれていてリナックス上で実行さ れる。アマゾンウェブサービスはすでにハドゥープを使ったサーバーの クラウドを利用する方法を提供している。ニューヨーク・タイムズの技 術者は、同紙の何十万ページもの PDF を、ハドゥープとアマゾン・クラ ウドを使って作成した。

最終的にはインタークラウド、すなわちクラウドのクラウドができる のだろう。このインタークラウドは、地球上のすべてのサーバー、およ び関係するクラウドブックで構成される「一つのマシン」の規模になる だろう。

クラウドを使う利点をいくつか挙げておこう。

1. クラウドは信頼性が高い。今では、仕事でも日常生活でもすべて 計算機を使うのだから、これは重要である。

2. クラウドはバックアップを忘れない。

18 章 クラウドのためのクラウドブック

3. クラウドは世界中のどの端末からでも 24 時間年中無休で利用で きる。

4. クラウドには無数のソフトがあり、無限の記憶容量がある。

5. クラウドでは境目のない共有と協働が可能である。

今日のニューヨーク・タイムズには IBM がクラウド市場に参入する という記事が掲載されていた。IBM はこの先導的取り組みをブルー・ク

ラウド (Blue Cloud) と呼んでいる。同社は並列処理のクラウド・コン

ピューティングに適したサーバーとソフトウェアを販売するという。ソ フトウェアはハドゥープによるものらしい。この話からすると、すべて のコンピューター・メーカーが大規模な転換をするということになるの かもしれない。ニューヨーク・タイムズは次のように報じている。

「ある意味では、クラウドはグリッド・ユーティリティー・コン ピューティングから進んでいく自然な次の段階である。」と調査会 社 IDC のアナリスト、フランク・ジェンス氏は言った。

クラウドにつなぐための装置は、最小限のものでよい。たとえば、大 規模なディスク記憶装置は必要ではない。ニューヨーク・タイムズの技 術記者ジョン・マーコフは、取材旅行中にノートパソコンが壊れたとき、

やむを得ず一時しのぎにクラウドブックを使ってみた。必要最小限の装 備で、無線 LAN はあるがディスクはない。ジョンは次のように書いて いる。

これで私が発見したのは、ネットワーク接続は必要だが、ディス クはなくても困らないということである。ウェブ・ブラウザーの ファイアーフォックス、グーグルの G メール、ウェブ・ベースの

18 章 クラウドのためのクラウドブック

ワープロであるグーグル・ドックスなどを使えば、手許に記憶装 置がなくても、まったく快適に出張中の仕事ができた。

ホテルの部屋と無線 LAN のあるロビーや会議室を行ったり来た りしながら、容易にネットに接続して、全く問題なく記事を書く ことができた。それ以来、無線でウェブに接続可能な出張者用の 超軽量携帯型機器が、なぜもっと出てこないのかと私は不思議に 思うようになった。

ニック・カーは、パソコンからクラウドへの転換を意味する、"The Big Switch"(邦訳:「クラウド化する世界」)という本(この書名は私が 書いた推薦文にピッタリだ)を書いた人だが、この機器のための素敵な 名前を考えた。それは「クラウドブック」である。彼のブログには、ク ラウドブックに必要と考えられる特性の一覧表がある。彼の空想ではこ れをアップルが設計して、グーグルのサーバーで実行するらしい。この 機器には、まず第一に使い勝手の良い画面があって、強力な電池と無線 LAN が内蔵されているが、ディスクはない。カーが考えるクラウドブッ クの仕様の要点は以下の通り。

1. 安価であること。99 ドルから 199 ドル。記憶領域とソフトの使 用料は個人用なら無料。業務用には月 50 ドル。

2. エネルギー効率が良いこと。LED バックライト、フラッシュドラ イブ、低電力チップを使用する。

3. 丈夫であること。可動部品は少なくする。iPod nano(アイポッ ド・ナノ)を参考に。

4. 移動に便利で融通が利くこと。同期や保存などの操作は不要。

18 章 クラウドのためのクラウドブック

でも、なぜアップルを待つ必要がある? 現在、クラウドブックの候補 として、少なくとも 2 機種が市販されている。まず台湾の eeePC(イー ピーシー)がある。300 ドルで頑丈で超軽量、無線 LAN 内蔵のモバイル ノートだ。同じく台湾製で、ニコラス・ネグロポンテ氏が提唱する「子 供一人に一台のラップトップ (One Laptop per Child)」の XO がある。

これは丈夫で軽量、無線 LAN 内蔵でディスクなしのノートパソコンであ り、価格は理論的にはたったの 100 ドルになるはずだが、最初のうちは 約 200 ドルだという。今から 2 週間(訳注:2007 11 月)、数量限定 の XO OLPC 財団から次の条件で入手できる。400 ドルを寄付する と、1台が自分に、1 台が子供に渡される。

私は今、寄付をしたところだ。XO が届いたら使用感を報告しようと 思う。

(初出: http://memo7.sblo.jp/article/25872133.html) (原文: A Cloudbook for the Cloud)

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